公園ボランティアの担い手の皆さんに、ご自分たちの公園での活動をレポートしてもらう「わたしたちの公園愛護会」。今回は横浜市の師岡打越第三公園のテラダ夫妻からです。
公園花壇のリニューアルに取り組んだ理由
こんにちは!テラダ夫妻のユリです。
今回は、愛護会で取り組んだ公園花壇のリニューアルについてお話しします。
まずは取り組みの背景について。
師岡打越第三公園では、2020年に公園花壇を大規模にリニューアルしました。雑草を抜き、土を耕し、既存の植物の配置を変えて、新しい植物を植え付けました。近年注目されている自然風の植栽「ナチュラリスティックガーデン」を目指しています。
リニューアルに取り組んだ理由は大きく2つ。
1)愛護会を引き継いだこと
2)コロナ禍で公園に居る時間が増えたこと
引き継いだ愛護会の花壇をまた素敵な場所にしたい
公園花壇のリニューアルに取り組んだ理由の一つ目は、2020年の春に先代から愛護会を引き継いだことです。引き継ぎにあたり、様々な資料と共に、過去の活動写真も見せてもらいました。そこに写っていたのは、手入れの行き届いたとても美しい花壇の姿。
今の花壇とは異なる姿に、少し複雑な気持ちになりました。
「綺麗でしょう?こんな時代もあったんだけどねぇ、だんだん手入れが大変になって・・」と、先代。
再現は難しいかもしれないけれど、かつての花壇のように、また公園花壇を素敵な場所にできないかな・・?と考えるようになりました。
コロナ禍での公園コミュニケーション
公園花壇のリニューアルに取り組んだ理由の二つ目は、コロナ禍を迎え、この公園で過ごす時間が増えたこと。
平日も週末も近場で過ごすようになり、この公園は近所の子どもたちの定番の遊び場となりました。親たちも自然と公園付近で過ごす時間が増え、花壇を眺めつつ世間話をする機会が増えました。
「これからどんな花を植えようか」「水やりってどうする?」など、特に待ち合わせをすることもなく、たまたま居合わせた人同士で、ゆったりのんびり作戦会議。
先代メンバーがその場にいることもあったので、植物の育て方や入手の仕方、公園の歴史や関係者などを、気軽に教えてもらうこともできました。
ただ、公園は素敵にしたいけれど、各々仕事や育児に忙しい。無理なく続けていくためにはどうしたらいいのかな・・というのが共通の課題認識でした。
図鑑や本で調査、ヒントをくれた地元の園芸店
さて、何かと沼にハマりがちな我が家。
自宅の庭づくりに挑戦中だったこともあり、公園植栽の企画にもすっかり夢中になっていました。植物図鑑やガーデニングの本を広げては夜な夜な家族で作戦会議。
手入れが簡単で見栄えのする花壇について、参考になりそうな世界中の事例を調べました。悩める私たちにヒントをくれたのは、日頃からお世話になっている地域の園芸店のオーナーさん。
公園花壇をもっと素敵にしたい、でも手間はかけられない・・
そんな私たちの我が儘を、「ナチュラリスティックガーデン」なら解決できるかもしれない、と気づきを与えてくれました。
四季折々の景色を楽しむ「ナチュラリスティックガーデン」
ナチュラリスティックガーデンとは、直訳すると自然風の植栽。ニューヨークのハイラインをはじめ、近年世界的に注目されているガーデンスタイルです。
日本の公園花壇では、夏はマリーゴールドやペチュニア、冬はビオラやパンジーといった、季節の一年草を植えつけて、年に何度か植え替える手法が多い印象です。
私たちの公園花壇でも、一年草を植え替えることで、花の咲く花壇を維持しようとしていました。
一方、ナチュラリスティックガーデンは、宿根草や多年草が花壇のメイン。冬に地上部が枯れた後も、根が冬を越し、また春に芽吹く植物なので、一年草のように季節ごとに植え替える必要はありません。花が終わった後の枯れ姿も、季節の移ろいとして楽しみます。
宿根草や多年草は、植え付けてすぐは株が小さいので、一年草花壇と比べてしまうと少し淋しい印象かもしれません。しかし、時間をかけて育てることで、暑さや寒さ乾燥にも強い立派な株へと成長していきます。宿根草の多くは開花期が短いことも特徴ですが、開花期の異なる様々な品種をバランス良く配置することで、四季折々の植物を楽しむことができます。
一年草と宿根草、どちらにもメリットとデメリットがあります。どちらが正解というわけではありませんし、両方のいいとこ取りをすることも可能ですが、
・季節ごとの植え替えが不要で、古くなった花の苗を処分しなくても良い
・ある程度株が育てば、水やりの頻度は少なくてOK(雨水で十分)
・ナチュラリスティックガーデンの参考事例がとにかく素敵!
ということで、私たちの花壇では「ナチュラリスティックガーデン」づくりに挑戦してみることになりました。
いざ、挑戦!大切な思い出を残しながら新しく
「ナチュラリスティックガーデン」づくりに挑戦してみることになった私たち。
改めて公園花壇を観察してみると、ツルバキアやシラーなどの毎年咲く球根植物や、シバザクラなどの多年草も存在していることに気がつきました。
「この苗は、○○さんのお庭から株分けしてもらったの・・」「これは昔○○公園からお裾分けしてもらったのよ・・、みんなで車で運んでね~・・」など、先代にお話を聞くと、実はそれぞれの植物に歴史あり。
「好きにやっていいよ!」と言われて引き継いだけれど、大切な思い出は出来る限り残したい…!
そこで、まるっと花壇を作り替えるのではなく、既存の植物たちをうまく活用することに。
そのまま花壇に残すと少し浮いてしまうので、配置を換えたり間引いたり、植物の特性に合わせて植える環境を変えたりと、あの手この手で新しい花壇に馴染むように取り組みました。
こんな景色を作りたい、想いとともに各所に相談
私たち公園愛護会の年間の活動予算は、行政から支給される2万円。既存植物を活用することで、多少は予算を抑えることはできましたが、1株300円~1,000円ほどする宿根草の苗を、十分に揃えることは難しい状況でした。
何か良い手立てはないか・・・と、色々な人に相談しました。
なんでも良いから植物が欲しい、ではなく『こういう景色を作りたい』と想いを伝えることも忘れずに。
ご縁というのは不思議なもので、ここで運命の出会いを果たします。
「イベントで配布される予定だった植物の苗が行き場を失っている」と、知り合いから情報が入りました。コロナ禍でやむを得ず苗の配布イベントが中止になってしまったとのこと。担当の方をご紹介頂き、なんと100株ほど無償で譲り受けることとなったのです。それも、私たちが喉から手が出るほど欲しかった、憧れの宿根草や中低木ばかり。
それもそのはず、それらの苗を手配していたのは、日本を代表するナチュラリスティックガーデンのガーデナーさんでした。この奇跡のようなご縁で、私たちの公園花壇リニューアル作戦が一気に加速したのでした。
大人も子どもも地域のみんなで一緒に作業
こうして費用の問題は思わぬ形で無事に解決。2020年5月、ついにリニューアル作業を行いました。
《作業工程》
1)雑草抜き&既存の植物の待避
2)土作り
3)新しい植物&待避していた既存植物の植え付け
大人から子どもまで総勢約20名で、半日がかり。作業当日は、町内会の方々や、苗をお譲り頂いたプロのガーデナーさんたちも現場にかけつけてくれました。
初夏の爽やかな気候の中、和やかな雰囲気で作業は進みます。そんなみんなの様子を見て、先代メンバーの1人が「最高だ・・」と口にしてくれました。その言葉を聞いて、最高に嬉しいのは、引き継いだ私たち。やって良かった!と思うことができました。
そうして花壇のリニューアルは無事に完了。
完了といっても、1つ1つの苗は小さく、株間をたっぷりと空けているので見た目はスカスカ。苗がこの環境に合うかも未知数だったので、その後の生育をみつつ植え替えや追加も検討していく必要があります。
まずは大きな一歩を踏み出した1日となりました。
テラダ夫妻とみんなの公園愛護会のこれまで▼