大阪公立大学の学生が、大阪市の公園愛護会の皆さんの活動を紹介する「大阪となりの公園愛護会」。公園の利活用やランドスケープ設計を学び研究する学生の視点で、公園ボランティア活動を紹介します。
今回、取材に訪れたのは、大阪市西淀川区にある竹島公園(たけじまこうえん)です。
石碑に相撲場、隠れた魅力が尽きない竹島公園
竹島公園はJR加島駅を出てすぐ、住宅地内にありながらアクセス性の高い公園です。
広い公園内にはブランコ、砂場、山型遊具、滑り台、うんていなど、遊具が充実しています。取材中も朝早くから子どもたちや親子に利用されていました。
放課後や休日の昼間は子どもたち、夕方には家族での利用がよく見られるそうです。特に最近は周囲に住宅が増え、家族連れが多くなったのだとか。隣の区から子どもたちが遊びに来ることもあるそうです。
公園内には「天神社趾」と書かれた大きな石碑が堂々とそびえたっています。というのも、ここは元々、天神社があった場所なんだとか。江戸時代から地域住民に崇敬されていましたが、1909年に淀川区の香具波志神社に合祀されるかたちで、御社は移築されたそうで、歴史や史跡好きの方が石碑を訪ねてくることもあるそうです。
また公園内の一角には相撲の練習場が設けられています。何十年も前からあり、毎週のように子どもたちが相撲に励んでいたというこの練習場。なんと幼き日の大関・貴景勝も練習に使用していたそうで、メディアが取材に来たこともあったのだとか。今は隣駅の尼崎の方に屋根付きの練習場ができたため、使われる頻度は減ったようですが、地域の方によって毎年公園事務所への申請と整備が行われているこの練習場で、現在も相撲の練習している子どもたちがいるそうです。
伝統的な神事でもある相撲が地域で親しまれ、若い世代に引き継がれているとは素敵ですね。また身近な公園でその文化に触れる機会は貴重なのではないでしょうか。今後もここから未来の力士が生まれてほしいです。
そんな竹島公園で活動をされているのは竹島公園愛護会の皆さん。会長の水谷康弘さんをはじめ、会の皆さんにお話を伺いました。
道具もこだわり、工夫を凝らした公園掃除
広い公園ながら、多人数で分担しててきぱきと作業が進みます。
「春であっても、木はとにかくすぐに葉が落ちるし生える」という皆さん。
取材に伺ったのは5月末。4か月前に剪定が入ったらしく木はすっきりしている状態でしたが、それでも落ち葉は絶えないようです。木は公園の縁に植えられていることが多く、向かいの家の方によく葉が飛んでいくため、公園の外側も入念に落ち葉を集めます。
雑草抜きにも余念がありません。広い場所は柄の長い草削り(窓ホーを使っていらっしゃいます)で、かがまず作業、花壇の隅などは小回りの効く柄の短いもので丁寧に除草するなど、場所によって長さの違う草削りを使い分けられていました。
今年は雨が多く、すぐに雑草が生えてきてしまうそうです。今年は草が生えるのが速い、と他の公園愛護会でもお聞きしましたが、共通の苦労なのかもしれません。
ここで登場するアイテムが「ふるい」です。抜いた雑草や落ち葉をふるいにかけて、付着している土を落とすことで、ごみの重量を減らすことができます。
こちらでは砂場の掃除をされていました。砂場から出てしまった砂を元に戻します。ここでもふるいが大活躍。砂をふるいにかけて石やごみを取り除き、安全な砂場を維持しているのですね。物が紛失しやすい砂場の手入れをすることで、忘れ物チェックにもなるそうです。終わったら落ち葉かきやほうきで砂場を慣らします。「日本庭園みたいやろ」とお茶目な笑顔を浮かべられていました。
掃除をする前から目立ったごみはみられませんでしたが、「マナーの悪い人は少なくなってきた」という声もありました。愛護会の皆さんの地道な活動によって維持されている公園を見て、綺麗に使おうと思ってくれたのではないかなと思いました。
子どもたちのために、安全な公園を維持
愛護会メンバーの多くは町会の班長さんや役員さんで構成されています。「来れるメンバーが来れる範囲で」との事でしたが、大勢の方が参加されていました。町会の役職をされている方以外にも、水谷さんをはじめとして有志で来ている方や、50年以上参加している方、普段から公園の見回りや掃除をやっているメンバーもおられます。
お話を伺った皆さんから「子どもたち」という言葉が良く聞かれたのが印象的でした。「子どもたちの見守りも兼ねて」「子どもたちが遊んでいるのを見るとやりがいを感じる」といった声や、遊んでいる時の様子、竹島公園で行われるラジオ体操にも子どもたちが参加することなどを教えていただきました。
実際に子どもの安全や利用を考えて掃除している様子が伝わり、公園という場所を通して地域全体で子どもを見守っているように感じました。そんな環境の中で子どもたちが遊び、育っていくと思うと素敵ですね。
また竹島公園は緑の維持活動が評価され、かつて初代国土交通大臣であられた扇千景さんによって表彰されたこともあるそうです。その時のような整備された公園を維持したい、と話してくださった方もおられました。
地域を自分事として捉える
会長の水谷さんは現役で仕事をしながら、公園活動も精力的に行っておられます。そのタフネスさには本当に驚かされました。活動の日以外にもよく公園の様子を見に来ては、掃除をされているそうです。「少しずつ、継続は力なり。」仰られたその言葉通り、コツコツと堅実に活動をされている様子が伝わってきました。
また、インタビュー中の「自分自身でやらないと。誰かがやるだろうじゃ駄目。」という言葉が印象的でした。
地域について何か思うところがあっても、いざ自分が行動を起こすのは難しかったり、ついつい他人任せにしてしまうことも少なくありません。しかし、皆がそのような考え方では状況は好転しません。住民一人ひとりが地域への愛着や誇りを持ち行動を起こすことで、課題の解決や、互いに支え合えるコミュニティの形成に繋がります。
地域のことを他人事にして放置するのではなく、自分事として捉えて行動を起こす。まず自分にできることから探してみようと思わされた取材でした。
【基本情報】
団体名 | 竹島公園愛護会 |
公園名 | 竹島公園(大阪市西淀川区) |
面積 | 2,013 m2 |
基本的な活動日 | 毎月第4日曜 8:00〜 |
いつもの活動参加人数 | 23人ほど |
会の会員数 | 同上 |
活動内容 | ごみ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、利用者へのマナー喚起 |
設立時期 | 1961年10月 |
主な参加者 | 近所の方、地域の班長さん |
活動に参加したい場合は? | 活動日に直接公園におこしください! |