各地の公園ボランティア活動を紹介するコーナー「となりの公園愛護会」。今回は、都会のど真ん中でコツコツと芝生育成を楽しむ、こんなみなさん。
都会のど真ん中にあるオアシス
地域の色々な世代の人が公園の芝生を手入れしているという話を聞き、知った「イクシバ!プロジェクト」。とても見やすいHPや、かなり本格的に芝生のお手入れをしている様子に惹き込まれ、今回取材させていただくことになりました。

東京都中央区、勝どき駅のほど近くにある黎明橋公園(れいめいばしこうえん)。名前の通り、黎明橋の側にあり、高層ビルや企業の名前が入ったビルに囲まれています。
決して大きくはないですが、遊具やキャッチボールのできるコーナーがあったりと子ども達が楽しむには十分な要素が揃っています。そして芝生エリア。訪れた5月下旬には青々とした目に優しい芝生が広がっていました。
こちらの公園でボランティア活動をしているのは、「イクシバ!プロジェクト」の皆さん。フカフカの芝生を育てることに特化した公園ボランティアグループです。
芝生を長く楽しむためのメンテナンス
活動は日曜日の朝9時からスタート。みんなで円になってまずは準備運動。準備ができたら、早速芝刈り開始です!私も、説明を聞きながら一緒に作業に参加、芝刈りに初挑戦しました。


この日は、元気に伸びている冬芝を、その下に生えている夏芝に陽が当たるようにカット。作業は長期的に芝生を楽しむためには今どんな手入れをすればよいか、という観点で行なっており、一部のメンバーがまるで話しかけるように芝生を確認し決定していました。
初めて見ると、2種類の芝生が植わっていることも分からないくらいですが、そこには夏芝と冬芝がしっかり存在しているとのこと。いつも活動しているみなさんには芝生が違ったように見えているのでは・・と思わずにはいられません。早速、芝生管理の奥深さに触れた気がしました。

連携プレーで作業はきっちり1時間!
芝刈りを始めると、あたりは芝の良い香りにつつまれ、刈った後がラインになるのもなんだか気持ち良い感覚です。どんどん芝刈りを行う人、刈った芝を集める人、連携プレーでサクサクと作業は進んでいきます。芝刈り作業は列になって行います。後ろの人は前の人と半分ずつ外にずらして進むのですが、それがなかなか難しい!ガタガタにならないように想像より集中力が必要でした。


子ども達もたくさん参加していました。小学2年生の女の子はお父さんと参加。子どもの方から、やってみたい!と希望して、幼稚園生の頃から参加しているんだそう。慣れた手つきでみんなから刈った芝を集めていました。

刈られた芝はかなりの量。雑草が混ざっていないものは倉庫裏にあるコンポストに入れられます。コンポストとは、生ゴミや落ち葉などの有機物を微生物の働きを利用し堆肥として活用する容器のことです。近年、循環型社会の取り組みのひとつとして注目されつつあります。
この日、芝をコンポスト前で集めていたのは青木さん。公園近くにお住まいで、昨年お仕事をリタイヤし、体を動かす機会として参加されていらっしゃるとのこと。公園の堆肥は秋頃に出来る予定で、芝生への活用はもちろん、地域の方にもどうぞ、と配るんだよ、と優しい笑顔で教えてくださいました。

芝刈り以外にも、雑草を抜くチームもいらっしゃいました。
お母さま方がマイチェアを持参して、せっせと雑草抜き。手を動かしながら、おしゃべりも進みます。「いい情報を得られるのよね〜」と和気あいあい。「ここ、いい公園でしょ!」と楽しそうにお話ししてくださいました。
小さな子も雑草抜きをお手伝い。お友達の誘いで、子どもが参加したい!ということで兄弟で参加。親御さんからしても、子どもが土いじりができる貴重な時間となっているそうです。

「作業時間はきっかり1時間で終える!」とのことで、時間近くになると子ども達でお茶の準備。参加者を数え、協力して配布します。

芝刈りが終わると、芝生の上をみなさん思わずゴロン。曇っていた天気もちょうど晴れてきて、「この公園いいでしょ」という言葉を思い出しました。
子どもも大人も関係なく、芝生のお手入れを通じておしゃべりしたり一緒に寝転んだり…そんな風景が広がっていました。


作業後には、イクシバ!プロジェクトの代表 尾木和子さん、長尾美奈子さん、参加メンバーの半田さん長谷川さん、HP等を担当している井上さんにお話をお伺いしました。

イクシバ!のはじまりとこだわり
一体どのようにイクシバ!プロジェクトは始まったのでしょうか?
「2013年、鬱蒼とした森のようだった公園が改修され、芝生広場が作られるということで、管理を手伝ってくれないかと、以前幼稚園の園庭の芝生化を実現した経験のある私たちに声がかかったのが始まりです。」
他の場所の公園にも芝生広場が整備されましたが、維持管理がうまくされない結果、砂地化されてしまったケースもあるそうです。
生き物である芝生は手入れをし続けないとじきに枯れ、それは悲しい姿になってしまうことを知っていた尾木さん達は、地域の方々が維持管理していくのがよいと考え、町会と一緒に「育てる芝生〜イクシバ!プロジェクト」を立ち上げました。
当初、尾木さん達はあくまで芝生管理について町会の方々に教える立場でしたが、高齢化もあり、徐々に組織の中心として携わることに。そのように元々地域の中心的なメンバーでなかったため、よりオープンで気軽に参加できる組織作りには、ものすごく気を使っていらっしゃいます。
「参加者がそれぞれライフスタイルを重視しつつ、時間のある時に気軽に参加できる組織づくりを心がけています。1回メンバー登録をしたら自由に退会しにくく、その後、顔を合わせにくくなるような組織では本来の芝生の手入れどころではなくなるので、そういった心理的不安を無くすような組織でありたいと思っています。」と尾木さん。
私も今回取材で初めて活動に参加しましたが、他のメンバーの方々のウェルカムな雰囲気にとても助けられ、純粋に作業を楽しむことができました。尾木さんや長尾さんのそういった思いがメンバーにも浸透しているからかもしれません。
大学生の半田さんと、会社の研修として前回初めて参加し、今回は個人で参加したという新社会人の長谷川さん。若手2人に参加しやすい点を聞くと、「作業は日曜日朝9時から1時間ときっちりしているところ」と答えてくださいました。1時間ならさくっと時間的負荷が少なく、よい朝活になりますよね。
活動を知ってもらうためWEBやSNSを積極的に活用
いろんな方に活動を知ってもらうために、公園に遊びに来ている人へチラシを配ったりもしているそうです。2人の娘さんを持つパパである井上さんは、娘さんと日曜の午前中に公園に遊びに来ていたところ、イクシバ!の活動を知り、参加するようになったとのこと。
参加するうちに、当時はブログのみだったHPを、井上さんが現在のものにリニューアルさせました。SNSも積極的に活用していて、作業の風景がリアルタイムでよく伝わってきます。

参加してみたいな、とちょっと気になっている段階の人にとって、SNSでオープンになっているのはありがたいですよね。ありのままを載せつつも、内輪感が強すぎないようにすることには気をつけているとのこと。ここでも参加しやすい雰囲気作りの工夫がみられました。
>> 「イクシバ!プロジェクト」ホームページ
>> インスタグラム
芝生に引き寄せられる人々
通常の作業に加えイベントも行っているイクシバ!プロジェクト。直近4月16日には、区民フリーマーケットを開催。出店者待ちが出る人気イベントです。
区民のリサイクルを目的としたイベントですが、芝生活動について地域の方々に広報する機会でもあります。その他には芝生のレクチャー体験など、芝生の手入れの延長線上にあるイベントが多いそうです。
時には、芝生を活用するイベントやりなよと言われることもあるそうですが、やはり毎回の作業を楽しんでくれる人が増えてくれることが仲間作りになるので、そこに繋がるイベントにしたいとのこと。芝生に惹きつけられて集まる団体であるために、色々と考えられていることが分かりました。
今後やってみたいことは何ですか?とお伺いすると、「芝生婚活なんてどうかな?」なんて、妄想が色々と広がるなか、「こういった活動をいろんなところで広めたいと思っています」と話してくださいました。
全国に手入れされず残念な状態になっている芝生は多い中、地域で手入れをするようになれば、芝生が元気になるだけでなく、それ以上の価値がもたらされる公園が増えていくだろうと、その思いに共感しました。




【基本情報】
団体名 | 育てる芝生〜イクシバ!プロジェクト〜 |
公園名 | 黎明橋公園 (東京都中央区) |
面積 | 7,103 m2 (芝生エリアは約2,000m2) |
基本的な活動日 | 毎週日曜日 朝9:00-10:00 |
いつもの活動参加人数 | 20〜30人 |
会の会員数 | 79人 |
活動内容 | 芝生育成、新メンバーの募集や勧誘、地域向けイベント |
設立時期 | 2013年 |
参加者イメージ | 子ども / 若者 / 子育て世代 / その他大人 |
活動に参加したい場合は | ホームページやSNSをチェック!当日の飛び入り参加も大歓迎です |