2023/7/21

多種多様な植物・生き物に出会える小平唯一のビオトープ

あじさい公園(小平市)

全国の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、小平唯一の池を管理されているこちらの団体さんです。

四季折々、多様な生き物・植物が楽しめる「アジサイ公園ビオトープ」

2022年の公園ボランティア実態調査アンケートでこんなコメントをいただいていました。

小平唯一の池で、7月から10月までハスやスイレンが見事な花をつけ、またトンボや蝶もたくさん見れるので、親子連れや常連客でその季節はにぎわいます。

活動は、植物をはじめ生態系全体の持続可能な見守りをテーマとしていますが、根気と体力と好奇心が絶対条件です。

小平市唯一の池で多様な生き物・植物の手入れをしていらっしゃる!ということで活動にお伺いしました。

あじさい公園(あじさいこうえん)は、小平駅南口から緑道を通っていくとすぐの場所に位置します。ホタルを飛ばすよう実験している水池や多様な生き物・植物が楽しめる池、さらに初夏に色とりどりの紫陽花がたくさん咲くなど、とても自然豊かな公園です。毎年6月には「こだいらあじさいまつり」が開催されたり、その自然の豊かさもあって子どもからシニアまで幅広い世代が訪れています。

7月から8月いっぱいは蓮と睡蓮が楽しめます

お伺いした7月初旬、見頃は過ぎていましたが、公園名物の紫陽花はまだちらほらと咲いていました。大ぶりで色鮮やかな紫陽花が通路を囲むように植えられており、見頃時、それはそれは迫力ある風景なんだろうと想像できます。

(紫陽花に囲まれている道)

池では蓮がちょうど綺麗に開花していました。横長な池は、蓮が咲いているゾーンと睡蓮が咲いているゾーンがゆるやかに2つに分けられています。今睡蓮が咲いているゾーンはかつて蛍を飛ばそうと試みたこともあるそうで、その名残で分けられているとのことでした。

現在池には、蓮だけではなく、カキツバタなどの植物に加え、鯉や金魚、メダカ、カメ、季節によってはカルガモといった生き物が生息しています。日差しが強い真夏日でしたが、池の前で足を止めて眺める方も多々いらっしゃいました。

(透明感あふれる蓮の花。とっても神秘的です)
(睡蓮もちらほら咲いていました)

変化を見逃さない!毎日の管理

こちらの池のお手入れをしているのは、公園アダプト登録団体「アジサイ公園ビオトープ」の皆さん。代表の戸田彰さんにお話をお伺いしました。

(池に入る時の必需品)

1月〜2月頃は池周辺に植っている木々の落葉清掃やスイセンの花がら摘みを。3月〜4月頃は重労働である蓮の植え替えを、6月〜9月ではスイセンや蓮の追肥など手入れを中心に作業。10月〜12月は池の周りのユリやギボウシの茎や葉を整理するというのが大まかな池と周辺の管理作業のスケジュールです。

蓮が鉢植えなので、春に行う蓮の植え替えはとっても重労働。泥が入っている鉢を持ち上げる、というだけでもかなりの力仕事なのでしょう。他のメンバーにも協力してもらい、1番の大仕事は乗り越えているといいます。

これらは基本的に戸田さんがほぼ毎日池のチェックを行っている延長線上で行われているというのが驚きです。気がついたことがあれば手入れを行う、それがとても大切だといいます。

「池の管理で大切にしているのは観察力かな。小さなことでも、何か前回見た時と変わった点がないか気にかけています。」と戸田さん。我が子のように大切に思う気持ちを感じます。

(この日も蓮の茎が浮いてきているね、と再度埋め込む作業もしていました)

池ができた経緯

実は、この池が整備されたきっかけにも戸田さんは関わっていらっしゃるそうです。

2008年頃、小平駅前の花いっぱい運動に参加していた戸田さんは、市役所の環境部 水と緑と公園課と会話する機会が多かったとのこと。当時、あじさい公園の場所が周辺道路をつくるための窪地だったこと、この先どうしていくのか話していくうちに、池を作ることを提案したそうです。

そうしたこともあり、池が整備された2011年春から維持管理も始まりました。2018年頃からは市の公園アダプト制度へ登録し、活動しています。

整備された池はコンクリートで縁取られ、池の底には10~20cmほどの泥が堆積して、そこが微生物や水生昆虫の棲み処ともなっています。用水と水道水の両方が流れており、普段は用水を主としていますが、真夏と真冬は水温調節のため水道を主とするなど、細やかな水質管理もアジサイ公園ビオトープの戸田さんたちによって行われています。

(あじさい公園誕生の秘密については「市報こだいら」でも紹介されています)

ビオトープへの思い

池を管理していく上で意識しているのは多種多様な植物・生き物が共存するビオトープであること。持続可能な環境をいかに保っていくかという思いが、日々の管理にも表れているようです。

例えば、カメが蓮の茎を食べてしまうため定期的にエサを与えたり、状況に応じた管理が行われています。

戸田さんご自身が生き物好きということもあってですが、花をはじめ、水生昆虫、魚、カエル、カルガモ、トンボ、蝶に遭遇できる環境は今や地域にとっても貴重な場所となっています。

池に暮らす多種・多様な生き物たち

これまでも紹介してきた通り、池にはたくさんの生き物が生息しています。
多様な生き物の一部をご紹介します!

⚫️亀のごんちゃん

池に1匹で生息する亀は通称「ごんちゃん」。いつしかその名で呼ばれるようになったとか。7〜8年前から住み着くようになりました。

(泳いでくるごんちゃん)

⚫️カルガモ親子

5年ほど前からカルガモがやってきて、卵を産み孵化するようになったそうです。

取材時も池にあるカキツバタの鉢の中で巣ごもりするお母さんカモを見ることができました。池の近くにカラスの巣があるので、これまでカラスに襲われてしまうケースも度々あったそう。カモの邪魔にはならない程度でワイヤーのカバーをさりげなく設置しました。その甲斐あってか、今年もすでに4羽の赤ちゃんカモが誕生したそうです。今年はさらにその赤ちゃんが巣立ってから、10日ほどしたらまた別のカモが卵を温めています。

もしかしたらこの池で生まれた子が大人になってまた帰って子どもを産んでいるかもしれませんね。

▼今年のカルガモ親子の様子をご近所さんが紹介している動画もあります。とっても可愛らしいですね。

⚫️蝶やトンボ

昆虫類もたくさん生息しています。この日もトンボが池の周りを飛び回っていました。山椒の木には、アゲハ蝶が何十羽も集まる時もあるそう。日本最大と言われるオニヤンマがいることもあるそうです。虫好きさんや子ども達にはたまらないスポットですね。

ちなみに戸田さんの帽子についているのも「オニヤンマ」(!)もちろんレプリカで、おにやんま君という虫除けグッズ。オニヤンマを天敵とするアブやブヨに効果的だそうです。

(麦わら帽子によく似合う!)

唯一無二の自然環境を守っています

戸田さんにとって、この活動のやりがいはどこですか?と問うと
「なにより、健康維持とボケ防止だね!」と元気よく答えてくださいました。

現在、81歳。思うように身動きが取れない泥の中もテキパキと動く姿。やはり体を動かすことは健康維持の秘訣ですね!

また戸田さんは池の管理を始め、絵に描いてみたいと思い、水彩画教室にも通い始めたそう。一つのことから楽しみや趣味が広がっていくなんて、とっても素敵じゃないですか!

(戸田さんが描いた水彩画:柔らかい雰囲気で優しさが伝わります)

この活動に必要なことはなんですか?とお聞きすると「根気と体力、あと多様な植物・生き物の生態系を守りたいという思いが必要!」とややハードル高く感じる意見をいただきました。それだけの思いを持って戸田さんが活動に取り組まれている裏返しですね。

さまざまな植物や生き物に出会える小平唯一のビオトープにぜひ訪れてみてください。

【基本情報】

団体名アジサイ公園ビオトープ
公園名あじさい公園 (小平市)
面積2,766 m2
基本的な活動日予定日を決めず必要に応じてメンバーに声を掛けて実施
いつもの活動参加人数1-4名程度
会の会員数4名
活動内容除草、落ち葉かき、低木の管理、池の管理
設立時期2011年春
参加者イメージ生き物が好きな人、地道な作業や汗かくのが好きな人
活動に参加したい場合は公園においでください
取材・執筆
取材・執筆
高村 南美

大学生の時に公園にはまり、豊島区南池袋公園マルシェにキャストとして参加するなど。初めての街に行く時は待ち合わせより少し早くついて近くの公園に行くのがちょっとした趣味です。公園専門メディアPARKFULメンバー。公園の維持団体向けサービス「PARKFUL Watch」のユーザーサポートとしても公園愛護会のみなさまに接点あり。

大学生の時に公園にはまり、豊島区南池袋公園マルシェにキャストとして参加するなど。初めての街に行く時は待ち合わせより少し早くついて近くの公園に行くのがちょっとした趣味です。公園専門メディアPARKFULメンバー。公園の維持団体向けサービス「PARKFUL Watch」のユーザーサポートとしても公園愛護会のみなさまに接点あり。

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