2025/9/5

17の小さな公園で市民が運営する「コミュニティプール」

春日井市(愛知県)

みんなの公園愛護会では、地域の人々とともに公園をより豊かな場所に育てていこうと頑張るみなさんを応援しています。

今回は、「地元の小さな公園に子ども向けのプールがあって、その運営を地域の人がしているんだけど、これって推しの公園育てだよね!」という会話をきっかけに、取材を開始。調べてみると、公園ボランティアではないものの、市民協働による豊かな公園づくりと、公園を起点とした多世代交流の姿が見えてきました。


春日井市では、市内の複数の街区公園や児童遊園に子ども用のプールが併設されており、子どもたちの夏休み期間中、地域の人たちが運営する「コミュニティプール」が長年にわたって開かれています。

このユニークな取り組みについて、春日井市 建設部 公園緑地課 岩田蛍汰さん、宇佐見佑太さんにお話をお聞きしました。

(左から岩田さんと宇佐見さん)

あちこちの公園に、夏だけ開かれる子ども用プール

春日井市にはおよそ500カ所の公園がありますが、そのうち19の街区公園と2つの児童遊園、1つのちびっ子広場には子ども用プールが併設されています。これらのプールは、夏休み期間中だけ開かれ、子どもたちの夏の遊び場となっています。

プールには「コミュニティプール」と「徒渉プール」という2種類があり、コミュニティプールは2歳から小学6年生まで、水深の浅い徒渉プールは2歳から小学3年生が対象です(一部を除く)。

記録によると、これらのプールは、1979年から1993年(昭和54年〜平成5年)にかけて設置されたそう。コミュニティプールは、スポーツ推進のレクリエーションのための国の補助金で、徒渉プールは自衛隊の基地のある地域住民に向けたスポーツやレクリエーションのための防衛省の補助金が活用されたとのこと。30〜40年前の当時の記録をたどり、その経緯を教えてくださいました。

(二子山公園にある味美南部地区徒渉プール:特別にプール終了後の時間に見学と撮影の許可をいただきました)

運営は地域住民の手で。長年受け継がれる活動

春日井市のコミュニティプールのユニークな点は、地元の自治会や町内会を中心に、地域の人たちが運営していることです。

市が直接運営するのではなく、地元の団体に業務委託されています。年度初めにプール運営の意志確認が行われプールのオープンが決まると、ろ過装置などの機械が正常に動くか業者による点検が行われます。地域の団体は、冬の間休んでいたプールの水を抜くところから、清掃、水はり、消防救急課と連携してのAED講習などの事前の準備、プール期間中の監視員や受付業務、水質確認、施錠といった日々の運営までを担っているとのこと。

そのため、プールを開くかどうかはもちろん、開場期間や時間帯も、地域の団体に委ねられています。各プールの開場期間などは春日井市のホームページで確認できます。

40年以上続くこの取り組みは、コロナ禍で一旦すべてのプールが運営中止になった時期もありましたが、その後見事に復活しました。昨年(2024年)は16公園のプールがオープンし、延べ1万6,000人ほどの子どもたちが利用したそうです。今年は17のプールが開き、毎日子どもたちで賑わっているといいます。

コミュニティプールがある地域では、歩いて行ける場所に子どもたちの水遊び場があり、見守ってくれる大人がいるという安心感があります。夏の暑い時期、公園が豊かな場所に変わり、地域の人々の交流を生む場になっていることは、本当に素晴らしいですね。

(更衣室やシャワー室もレトロな雰囲気で、大切に使われてきたことが伝わってきます)

「毎年来てくれる子どもたちがいるから、できるだけ開きたい」という地元の人の声もあるそうです。子どもたちの楽しそうな笑顔や成長を間近で見られることが、地域の人たちの大きなモチベーションになっているようです。

また、プール遊びにはさまざまなルールがあるため、子どもたちがルールを学ぶ場としても活用していきたいという声も聞かれました。

コミュニティプールの運営を担うのは、町内会連合会のような複数の町内会が連携・協力する組織が多いようです。最近の猛暑や町内会の高齢化もあり、監視員が集まらないなどの課題もあるんだそう。

全国的にもめずらしい公園プールの市民協働

市が街区公園にプールを整備し、地域の人々が子どもたちのために長年にわたって運営されている例はめずらしく、長年蓄積してきたノウハウはあるものの、市としてはプール設備の老朽化やその対策が課題とのこと。

プールサイドの過熱対策に人工芝を敷いたり、日よけのテントを持ち込んでもらうなど、運営面でも工夫を重ねています。市民協働による公園運営のひとつの形として、地元のみなさんからの要望にはできる限り耳を傾けて応えていきたいと話してくださいました。

周辺自治体には同様の施設はないそうで、もし全国に同じような取り組みをしている自治体があれば、ぜひ情報共有をしたいとのことでした(ぜひお気軽にみんなの公園愛護会までメールください!)。

小さい子も安心して利用することができる公園の子ども向けのプール。春日井出身の人にコミュニティプールについてお聞きすると、「子どもの頃は当たり前のよう通っていました!」「近所の公園にあるから安心で、夏にはいつも公園のプールで遊んでいましたよ」という話を聞かせてくださいました。

あちこちの街区公園で、こうした子どもたちのためのプールが、地域の人々の温かい手で長年開かれ続けている例を今回初めて知りました。地域みんなで子どもの育ちを見守り、夏の公園の利活用の幅を広げ、地域の多世代が交流するきっかけにもなっているコミュニティプール、ステキな取り組みです。

(かわいいイルカが泳いでいます。プールごとにいろいろなイラストが残っているそう、味がありますね)

【基本情報】

取り組みの名称コミュニティプール
実施自治体春日井市(愛知県)
事業の概要複数の街区公園や児童遊園に併設された子ども用プールを、地域住民が中心となり運営する取り組み。市が運営主体となる団体に業務委託を行い、プールの開場期間や時間帯、日々の運営を地域の団体に委ねている。地域の子どもたちの夏の遊び場として長く親しまれている。
取り組みの詳細春日井市のホームページをご覧ください
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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