2022/7/15

気楽にはじめて、気楽にやめられる みどりのサポーター

長岡京市(京都府)

みんなの公園愛護会では、地域の人々とともに、公園をより良くしようと頑張る行政の取り組みにも注目しています。

インクルーシブ公園づくりのための市民ワークショップなども実施している京都府の長岡京市で、「気楽にはじめて、気楽にやめられる、自分にできる範囲の社会貢献」をスローガンにした公園ボランティア制度があると聞きました。

気楽にはじめて気楽にやめられるとは、入口のハードルが低くとても親しみやすい雰囲気ですが、それはどのように生まれたのか?そして実際のところ気楽にやめる人はどのくらいいるのか?長岡京市 建設交通部 公園緑地課長 鈴木秀治さん(上の写真右)と、公益財団法人 長岡京市緑の協会 事務局長 志水忠弘さん(同 左)​​にお話をお聞きしました。

まちの魅力を高める「みどりのサポーター」

公園や緑地・道路の清掃に、花や樹木のお世話などを行う「みどりのサポーター」。2名から登録することができ、登録すると花苗や肥料の支給、スコップなどの道具の貸し出しが受けられたり、ボランティア保険の適用もあります。活動費や報奨金の支給はなく、活動回数の制限などもない、ボランティア制度です。

みどりのサポーターは、2人から80人ほどのグループまであり、それぞれのできる範囲でさまざまな活動をしているそうです。公園のゴミ拾いや、除草、花壇づくり、植栽の水やり、落ち葉の清掃、樹木の剪定などに加えて、芝はりや芝生の管理、広場の整地、公園の砂場の猫よけネット張り、道路のゴミ拾いや落ち葉清掃、駅前のポイ捨てやガム除去、ゲートボール場の草引きと清掃、落ち葉の堆肥化や花苗づくりをする団体も。

「市内の公園の管理は行政だけでは難しいので、市民の皆さんの力が必要なんです。それは、経費削減といった部分もありますが、それよりも、まちの魅力を高めるという点での価値や効果が大きいと思います。」と、みどりのサポーターの存在意義を話してくださった鈴木さん。ご自身もみどりのサポーターとして職場の皆さんと草刈りの活動をされているそうです。

公園の草がぼうぼうで遊べないような状態は残念ですが、サポーターの活動でいつもキレイだと、それはまちの魅力になること。活動をすると、公園もキレイになるけれど、心の中もキレイになって、やりがいもあること。季節の花が咲いていると、通りかかった人も優しい気持ちになる効果があること。さまざまな価値を教えてくださいました。

(みどりのサポーターみなさん:長岡京市より提供)

気楽にやめられる、自分にできる範囲、という気軽さで市民の1%が担い手に

公園ボランティアに限らず、何かを始める時に、やってみたい気持ちはあっても、大変そうかな?いつまでできるかな?と見えない不安はつきものですが、やめてもいいんだよ、自分でできる範囲でいいよ、と始めから言ってもらえるのは、とても安心感があり、はじめてみようかなという気持ちを後押ししてくれたりもします。

「気楽にはじめて、気楽にやめられる、自分にできる範囲の社会貢献」というスローガン。
これは、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

「市の緑の基本計画の策定検討委員会で、みどりのサポーターについて検討がされる中で出てきました。市民に協力してもらうにしても、町内会にお金を配って公園掃除の仕事を増やすというのでは、足かせになるだけ、それでは立ち行かなくなる、という話が委員会の中であったんです。そこからですね。」と話してくださったのは、志水さん。

活動は好きな時に自由に、気負わず。準備はゼロで大丈夫。2人以上で簡単に登録。そのようにして、多くの人が関わっていける仕組みをスタートさせたのが、2004年。そこから18年、市の広報誌で定期的に紹介したり、地元のFMラジオでの紹介や、市内の循環バスでの広告など、少しずつ告知を広げながら、みどりのサポーター登録者は予想以上に増えているとのこと。

「やはりご高齢やご病気などで辞められた人はいますが、それよりも増える方が多くて。」と話してくださったお二人。

登録者の9割は高齢者だそうですが、みどりのサポーター活動で元気に体を動かしたり外に出ておしゃべりをしたりして健康寿命を伸ばしていらっしゃる模様。草の伸び過ぎた公園があまりに気になって登録したという人や、地元の商店会、企業、学校、保育園、子どもと一緒に活動する人など、色々な人がいらっしゃるとのこと。コロナ禍でも登録は増えたそうです。

みどりのサポーターの活動者数は、今では110団体、1427名(2022年5月)。これは市の人口の1.7%以上にあたります。一部の人たちが頑張るだけでなく、こんなにも多くの市民が関わってることは、とても誇らしいことだと話してくださいました。

制度がスタートして10年経過した頃からは、10年継続して活動するサポーターの表彰も開始。今では39団体が10年以上活動しているそうで、それは全団体の1/3以上。こちらも予想以上に十分な状況とのこと。

楽しみを増やしてモチベーションアップ

気楽にやめられると言っても、長く続けている人が多いみどりのサポーター。その秘訣をお聞きすると、皆さんの声を聞くことにヒントがあるようでした。

他のグループと交流したいという声から始まった「みどりで笑顔のつどい」は、年に1回、市内の全サポーターが集まる交流の場。そこでは、講演会や、サポーター体験談の発表、そして10年表彰や功労者表彰の式典、川柳コンテストの表彰など、毎年さまざまな楽しみがあるそうです。そのほかにも、どんなことをしたいか?毎年アンケートを取って皆さんの声を聞いているとのこと。

(共感したり、ちょっと笑えたり、ついついほっこりする、みどりのサポーター川柳)

コロナ禍でつどいの開催を見送った2020年、2021年は、つどいの代わりに「みどりで笑顔のたより」という冊子を発行して、全サポーターに配布したそうです。冊子では、30団体のサポーターの皆さんから近況報告として、写真やコロナ禍での工夫、笑顔のエピソードなどが紹介されているほか、緑の協会理事長や市長からのメッセージ、サポーターの全体マップ、10年表彰の団体紹介が掲載されていました。冊子の全ての内容はPDFでも公開されています。

コロナ禍での工夫として、10年表彰の出張表彰についても教えてくださいました。これまではつどいで行っていた表彰を、各団体の活動場所へお祝いメッセージと共にお届けしたというもの。これまでは、代表者だけの参加になっていた表彰も、個別にお届けすることで代表以外のメンバーの皆さんと分かち合え、喜んでもらえる良い機会になり好評だったそうで、その様子はホームページでも紹介されています。

(みどりで笑顔のたよりに掲載されている近況報告、団体名も皆さんユニーク)

みどりのある暮らしを市全体で

長岡京市には、お子さんの誕生の記念に、市の木「もみじ」や市の花「きりしまつつじ」の苗木をもらって自宅に植えられる「誕生記念樹配布事業」というものがあり、子どもが生まれた市民は誰でも申請できるそうです。子どもの頃から緑に親しむ良いきっかけになりますね。

この記念樹配布事業は長岡京市緑の協会が行っているのですが、その後、誕生記念だけでなく、結婚の記念樹配布も開始。そして昨年からは、長岡京市のパートナーシップ制度のスタートに伴い、パートナーシップ記念樹もスタートしたとのことでした。

長岡京市緑の協会とは、市内の緑に関する事業を担う公益財団法人で、市役所と市民の間に立って、スピード感と自由度を持ちながら、さまざまな取り組みを行っているそうです。

市民も行政も、みんなで楽しみながら、自然に親しみ、緑を守っていこう、そして人々の声を聞いていこうという姿勢が、公園ボランティアの担い手増にも繋がっているのかなと思いました。

(長岡京といえば長岡天満宮、この八条ヶ池畔のキリシマツツジが市の花になっているそう)

【基本情報】

取り組みの名称みどりのサポーター
実施自治体長岡京市 建設交通部 公園緑地課
事業の目的気楽にはじめて気楽にやめられる、自分にできる範囲の社会貢献制度の一つです。市民等が市の管理する公園及び道路等の緑化及び環境美化活動にボランティアとして参画することにより、市内全域の緑化及び環境美化に対する市民の意識の高揚を図ることを目的としています。
協力団体公益財団法人長岡京市緑の協会
取り組みの詳細長岡京市緑の協会ホームページをご覧ください
自治体からのメッセージ<長岡京市>
長岡京市ではインクルーシブ公園づくりをはじめ、地域の皆様の誰もが楽しめる公園づくりを目指しております。市や長岡京市緑の協会だけでなく、地域の皆様と協働で、より良い公園づくりを行っていきます。

<緑の協会より>
緑の協会では、みどりのサポーター以外に、長岡京市の緑化の推進及び普及啓発のために活動を行い、市民の皆さんと協働して、まちの環境をよりよくしていこうという活動を行っています。
地球温暖化対策のひとつとしてつる性植物のグリーンカーテンコンテスト、夢人生記念樹木配布として、お子さんが生まれた方やご結婚された方への記念樹の配布、公園施設を活用した、子どもの森フェスタや農業体験学習、寄せ植えなどの緑化講習会の開催など各種の活動を行っています。
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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