2023/11/21

3つの制度と市立公園一括指定管理で市民が主役の公園づくり

東村山市(東京都)

みんなの公園愛護会では、地域の人々や公園ボランティアとともに、公園をより良くしようと頑張る行政の取り組みにも注目しています。

東村山市では、市民による公園での積極的な活動を行政がサポートしています。以前ご紹介した稲荷公園で活動する大岱稲荷プロジェクトの活動もそのひとつ。毎月開催の三世代交流イベントに加えて、10月には年1回500人規模の音楽イベント「おいなりサンデー」なども行われており、今年は過去最高の盛り上がりだったようです。どのような枠組みで、どのようなサポートが行われているのか、東村山市 みどりと公園課 課長補佐(公園係長兼務) 安部芳久さんと みどりの係係長 髙橋亮太さんにお話をお聞きしました。

(安部さん(左)と髙橋さん(右):東村山市の公式キャラクターひがっしーも一緒に)

協定書の締結で活動の幅が拡大

東村山市には、公園・緑地ボランティアという制度があり、ボランティア登録した個人が、公園や緑地などでの清掃や草刈の活動を行っています。ボランティアはそれぞれのペースで自由に活動し、それに対し市役所からはゴミ袋の提供やゴミの回収、保険の加入や必要に応じて道具の提供などを行うというものです。

加えて、一般的な清掃だけでなく、生物多様性の保全や公園を起点とした多世代交流など、積極的な活動をする公園については、公園管理業務に関する協定書を締結し、協定に基づくサポートを行っています。

協定締結により、外来種駆除のための生き物の捕獲や、落ち葉を使った焼き芋など、通常の公園利用の範囲を超えた活動が認められ、市としても責任を持って継続的に支援することができるようになったそうです。2016年からスタートした協定は、現在、熊野公園の再生、北山公園での外来種防除、稲荷公園での三世代交流と3つの公園で締結され、それぞれの公園で積極的な活動が行われています。

(北山公園かっぱの会の活動で外来種捕獲のためのカゴ罠を仕掛けている様子)

大きなイベントを市との共催にして資金や人員サポートも

協定を締結する公園では、公園で様々なイベントが行われています。中でも稲荷公園での「おいなりサンデー」や北山公園での「わんぱく夏まつり」など年1回の大きなイベントは、地域住民にとっても人気の催しとして定着しているようです。

これまでも市役所の職員ができる範囲のサポートをしてきたそうですが、みどりの基本計画改定に伴い仕組みを整理し、イベントを市との共催とする取り組みがスタート。イベントの共催は、協定のもう一段階上の取り組みとして位置付けられ、「公園・緑地ボランティア」「協定締結」「イベント共催」と3階建てのサポート体制ができました。

共催にすることで、ステージ設営などの費用にみどりの普及啓発に関する補助金が使えるようになったり、市報での告知や運営人員として職員の派遣ができるようになったりと、職員が異動や退職をしても継続的にサポートできる体制が整ったといいます。

(稲荷公園のおいなりサンデーに向けステージの設営をする髙橋さん(左))

仕組みの整理にあたっては、ボランティア団体と何度も話し合いを重ね、理解を得ながら進めていったとのこと。結果、ボランティア団体のやりたいことを実現しやすくなり、お金の面でも人員サポートの面でも喜んでもらえていることを話してくださいました。

このように仕組みが整理された背景には、2020年に「東村山市みどりの基本計画2021」と「東村山市公園管理のあり方」の検討が同時期に行われ(さらに「都市計画マスタープラン」と「総合計画」も同じ時期に策定され4つ同時に進行されていたそうです!)、2022年から街区公園を含む市内のほぼ全ての市立公園を一括で指定管理にしたこともあるようです。

市内の169公園の維持管理や市民協働に関する方向性・コンセプトを決め、一括で指定管理に出すにあたり様々な事柄を整理していったタイミングで、公園のハード整備や維持管理を行う公園係と緑化推進や啓発を行うみどりの係が協力しながら、市民がやりたいことを実現し、継続的にサポートするための体制を整えていったことを教えてくださいました。お話から、お二人のそれぞれの職能を活かした役割分担とチームワークの頼もしさを感じます。

(北山公園の水田でボランティアさんと一緒にはさ​​掛けをする安部さん(右))

市内の全公園の維持管理を民間企業に委託

2022年7月から、街区公園や仲よし広場、農業公園も含む市内の169公園の維持管理を約10年間の一括指定管理にした東村山市。指定管理を請け負っているのは、アメニス東村山市立公園グループです。

アメニス東村山市立公園グループでは、指定管理をスタートして2年間は、全169公園をスタッフが毎日巡回して日々の公園の点検や利用状況の確認をすることにしています。ルートやスタッフのシフトも工夫しながら、暑い日も雨の日も毎日巡回するのは簡単なことではありません(小さな公園のほとんどは住宅地の中にあり狭い道も多いので巡回は自転車を使っているそうです!)。

その結果、故障や危険に至る前段階での修理や保全、民間ならではの柔軟な対応が可能になったといいます。たとえば、市役所による直営管理では、植栽管理・遊具の修繕・トイレの給排水など項目ごとに予算が決まっていて発注業者も都度選定する必要があるなど、制約が多く、急なトラブルや予定外の事態への対応が難しかったそうです。これが指定管理者制度を導入したことで、指定管理者の判断で予算の配分や時期も柔軟に対応できるようになりました。ゴミがあれば拾い、草が伸びれば刈り、老朽化したトイレの詰まり予防対策に20公園でまとめて高圧洗浄を行うなど、日々の見守りと専門的な知識や技術を生かした先回りの対処も可能になったそう。市が10年かかって出来なかったことも、どんどん実績として上がってきているとのことでした。

また、公園ボランティアや市民からも、公園の利用やイベントが増える土日に連絡が取れるようになって助かるという声や、要望への対応もスピードアップしたという声が増えているとのこと。市民から寄せられる要望やご意見の数も2割ほど減ったそうです。

市民と民間企業と行政が協働で

市民協働による公園づくりの項目も指定管理業務の中に入っているため、公園・緑地ボランティアへの支援や、協定締結公園での活動やイベントのサポートも指定管理者が行っています。

市民による公園への積極的な関わりと、指定管理者による維持管理、市役所による伴走型の支援。このような形で市民と民間企業、行政が力を合わせて公園をより良くしていこうという取り組みが始まり、ちょうど軌道に乗り始めたところのようです。

また、市内の全公園を一括で指定管理するというスケールメリットを活かし、市内の公園における植栽管理の中で発生した木や竹などを資材として他の公園で活用していこうという動きも出てきています。市内の公園で伐採された竹を別の公園で工作イベントに使ったり、北山公園の田んぼや農業体験公園の畑、水車苑の水車など、市内の特徴ある公園同士を横に繋げて面白い企画を考えていこうというもの。

実際に、稲荷公園と隣の恩多野火止水車苑(おんたのびどめすいしゃえん)に設置された寄付ベンチは、市内の公園で出た間伐材を利用して、地元の建設業者の協力で作られました。この建設業者は、指定管理を行うアメニス東村山市立公園グループを構成する企業の一つで、壊れてしまった水車の修繕も行うなど地域密着の活動をしています。

このように、市内の公園同士のつながり、さらにはボランティア同士の横のつながりも作りながら、小さな公園の有効な活用方法の探求や、より多くの市民が公園管理に楽しく関わり、公園をもっと自由に使える土壌を、指定管理の約10年の間に公民連携で作っていけたらと話してくださいました。

(市内の公園の間伐材を活用して作られた恩多野火止水車苑の寄付ベンチ:デザインもオリジナル)

コミュニケーションを大事に伴走型で支援

制度を考える3年間を経て、公園の維持管理を一括で指定管理者に任せるなど改革を行ってきた東村山市。これからの市役所の仕事として、新たな公園の整備や、Park-PFIを活用した新しい公園づくり、小規模公園の機能再編などにも力を入れていくとのこと。

開かれた公園づくりのために、大切にされているのは利用者ファーストの考え方。公園は、道路や河川などと比べても、使い方や管理の仕方に自由度があり、行政の判断に委ねられている部分も多いといいます。だからこそ、公園を使う人や周りに住む人も含めた、地域の人々の話をじっくり聞いて、人々の望む公園の姿をしっかりと見極めていくことが重要だと話してくださいました。

市民が公園に積極的に関わることに、市役所が伴走型で支援するという形は、市内でも浸透し始めたようです。先日も、小学校からの相談でみどりと公園課と指定管理者が授業をサポート。子どもたちが考える地域のボランティア活動として公園での遊具のペンキ塗りを協働で行ったそうです。

(小学校の授業の一環として子どもたちと一緒に公園遊具のペンキ塗り)

子どもたちが公園管理に関わることは、その体験自体学びの機会になるだけでなく、その結果が公園の一部として残り続ける良さもあるとのこと。子どもたちが絵を描いたプランターやトイレのタイルが公園にあることで、自分たちの公園として愛着を持ち続けることができるといった具合です。また、いくつかの公園では、かつて活動やイベントに参加した子どもが大きくなってまたボランティアとして帰ってくるといった良い循環も生まれているようです。

市民と一緒に公園づくりをしていこうという雰囲気や文化は10年前くらいからあり、泥臭い地道な苦労をしながら作ってきたことが、ここで制度として整えられました。ただ、制度だけ作ればうまくいくわけではない難しさもあるといいます。理解や協力を得るための説明を重ね、信頼関係を構築しながら、持続可能な形を作っていくための対話は続いているようです。

市民の「やりたい」を実現する市民が主役の公園づくりは、市民協働と公民連携の体制整備とともに、市民や指定管理者とのコミュニケーションや対話を大事に、進められていました。

(熊野公園ではあえて草を刈らないエリア「バッタ王国」をつくりました)
(北山公園で市民団体の皆さんと一緒に行った生き物調査)

【基本情報】

実施自治体東村山市 みどりと公園課
取り組みの名称公園・緑地ボランティア、公園管理業務に関する協定の締結、市立公園の指定管理者による管理
取り組みの詳細東村山市のホームページをご覧ください

(写真提供:東村山市)

取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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