2023/10/12

活動を讃え知識を深める 公園愛護のつどい

横浜市(神奈川県)

みんなの公園愛護会では、地域の人々や公園ボランティアとともに、公園をより良くしようと頑張る行政の取り組みにも注目しています。

横浜市港北区で公園愛護のつどいが4年ぶりに開催されるというお話をお聞きし、その様子を見学させていただきました。

4年ぶりに開催、公園愛護のつどい

横浜市では、公園愛護会のメンバーなど地域の緑化に関わる人を対象に、公園や緑化維持のあり方を考えるための機会として、区ごとに「公園愛護のつどい」が開催されています。港北区では、2009年から毎年秋に行われ、今回が13回目とのこと。2019年秋以降はコロナ禍の影響で通常のスタイルでの開催を見送っており、4年ぶりに港北公会堂で開かれました。

港北区には164の公園と4つの緑道があり、168の公園愛護会があります。今回のつどいでは公園愛護会活動をする人々はもちろん、港北オープンガーデンに参加された人や、区役所屋上や地区センターのガーデニングクラブ活動に参加されている人など、緑や花に興味のある地域の方は誰でも歓迎とのこと。公園愛護会をできるだけ多くの人に知ってもらうことで、次の担い手を発掘し、公園愛護活動を始めるひとつのきっかけになればという目的もあるそうです。当日は、およそ150名の方の参加がありました。

公園は人々が健康になる場所

港北区長から開会の挨拶があった後、「公園浴で健康になろう!」と題し、千葉大学園芸学部教授 岩崎寛氏による講演が行われました。環境健康学の視点から、植物との関わりによるストレスの軽減や自然治癒力の向上、園芸療法や緑地福祉のお話が、様々なデータとともに、わかりやすく紹介されました。

身近な緑である公園での5分間の休憩が、森林浴と同じように、人々の健康に良い効果があるという「公園浴」のお話や、触れたり摘んだりできるハーブの花壇づくりを通して、自らが積極的に公園に関わることで、地域に愛着が湧き、多世代交流の場となった事例の紹介もありました。

公園愛護会活動は、公園を良くするだけでなく、自分自身や地域の健康にも寄与しているので、周りの多くの人と一緒にできると良いというお話もあり、皆さん熱心に聞き入っていました。

(千葉大学 岩崎寛 教授による講演「公園浴で元気になろう!」)

愛護会活動がより充実するための情報あれこれ

休憩時間には、ロビーでパネルの展示が見られるようになっていました。

・港北区の公園でよく見かける樹木
・公園愛護会制度の紹介
・公園愛護会向け技術支援の紹介
・公園愛護会活動発展のヒント など

近所の公園に行くのが楽しくなったり、愛護会活動がより充実するような情報が、まとまって見られるのも良いですし、気になったことはその場ですぐに区役所のスタッフに相談できるのも良いですね。

また、近所の愛護会の皆さん同士の交流の場にもなっていて、あちこちでおしゃべりに花が咲いていました。

(ロビーにはパネルや愛護会グッズが展示されていました)

後半は、永年継続20年以上の愛護会長と港北土木事務所長との対談が行われました。冒頭の写真のように、壇上では6名の愛護会長さんが、それぞれの公園での活動の様子や、続けてきた工夫や大切にしていることなどについて、写真も交えて、港北土木事務所長の奥野雅量さんが丁寧にお話を聞いていきます。

愛護会長を続けて30年という松の川緑道公園愛護会の田辺美紗代さんは、昔ドジョウを獲ったり楽しく遊んだ松の川の環境悪化を目の当たりにして、自然と生物が共生できる土の道を守ろうと「緑道にしてほしい」と要望をしたところから、生物多様性と人々の健康を大切にした活動は40年続いていることを教えてくださいました。

そのほかにも、グランドゴルフやボーイスカウトなど公園を利用する団体に参加を呼びかけて愛護会メンバーの増やした愛護会長さんや、自分の庭のように様々な花を育て地域の人々の目を楽しませているという愛護会長さん、危険なものがないか毎朝必ず公園全体を見回って安全確認をしているという愛護会長さんも。

それぞれの公園での活動の歴史や、時間の積み重ね、思いがずっしりと感じられる温かな時間になりました。

そして最後は、お楽しみの抽選会です。区内の公園でよく見かける樹木が描かれた10種類のカードの中から1枚が配布資料に同封されており、自分の樹木が呼ばれたら大当たり、ガーデニング手袋がもらえます。様々な年代の参加者にもわかりやすく、身近な樹木のことを知る機会にもなる、よく工夫された方法で、職員の皆さんの知恵と経験の蓄積を感じます。

(港北区の公園でよく見かける樹木、こちらは「イロハモミジ」)

4年ぶりの開催となった公園愛護のつどい、コロナ前よりもまだ参加人数は少なかったとのことですが、とても賑わっていました。

この日司会を務めたのは、公園愛護会等コーディネーターの今井和子さん。横浜市の公園愛護会等コーディネーターは、公園や植物に関する相談ごと、技術支援を受けたい、イベントをしたいなど、公園愛護会活動をする皆さんのなんでも相談窓口で、とても頼りにされています。つどい終了後も、「お元気ですか?」「今度また相談にいくね〜」など、愛護会の皆さんと今井さんとの会話が聞こえてきました。

(明るい声でつどいの司会をされていた今井さん、笑顔がステキです)

先日取材をさせていただいた大倉山公園愛護会の皆さんもいらっしゃっていました。この辺りは地域のつながりもあり、花や緑が好きな人が、一つの公園だけでなく、近所のいくつかの公園での活動に参加したり、お互いに行き来しあって助けたり、ということもあるそうです。

参加者には、スイセン(テータテート)の球根と、横浜市の公園などの剪定材を原料とした堆肥「はまっ子ユーキ」のお土産も。土木事務所の職員さんたちが、お一人お一人に手渡されていました。

4年ぶりの開催で「やっぱり会えるのはいいね」という声も聞こえた公園愛護のつどい。公園愛護活動を楽しんで行う人々に向けた情報提供の場でもあり、自治体と愛護会の担い手の、また担い手同士の交流の場としても、とても賑わっていました。

公園愛護のつどいは、横浜市の各区で、それぞれ地域ごとの特徴や環境・個性を生かした内容で毎年開催されているそうです。

(配布された資料とアンケート、樹木カード、抽選会のガーデニング手袋)
(会場となった港北公会堂)

【基本情報】

取り組みの名称公園愛護のつどい
実施自治体横浜市港北区
事業の目的公園愛護会員の交流と公園愛護会活動の周知
取り組みの詳細横浜市港北区のホームページをご覧ください
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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