連載コラム
2023/9/25

持続してゆくコミュニティ、みんなで育てる芝生の秘密

イクシバ!プロジェクト

フカフカの芝生を地域に根付かせ“緑と人の輪”を育てることを目的とするNPO育てる芝生イクシバ!プロジェクトの尾木和子さんによる公園芝育て連載、今回は第2回です。(第1回はこちら


前回は芝生育て、みんなでやると楽しいよ!最高よ!でも作業時間はマックス1時間ね、というお話をしました。

いや、楽しいと言われてもそんな人は集まらないのよ。だって芝生は大変だから手は出せない、と思っている方もいると思います。そこで今回はどんなグループが馴染みやすいのか、のヒントをお話ししたいと思います。ちょっと生育とは離れた組織論みたいな話です。

芝生ボランティアに必要なたった一つの条件

確かに、「芝生=大変」に根拠はあります。それは、芝生の維持管理はある程度までは関わらないと維持できません。年に1度や2度だけ雑草とりをしても・・・そんな回数では、功を奏さない。少ない回数を中途半端にしてもやるだけ無駄になるだけです。

では何回必要でしょう?

計画を立てるときに回数や成果を求めて立てるのが普通です。しかし逆説的ですが、ここは地域の公園ボランティア活動。一旦、注力ポイント軸を少しずらしてみましょう。つまり視線を芝生から人に、維持に必要な回数を埋めるための活動ではなく、参加してる人の満足を徐々に満たすことに注力してみます。最初が肝心。それから活動回数を上げてゆきましょう。

いうまでもなく芝生維持管理では、人の手が入れば入るほど良くなります。それに私の経験値では関われば関わるほど、もっと人の気持ちが芝生に近づき、愛着が生まれるようです。

「えぇぇ、でもうちの地域ではそんな風にはなりませんよ」と心配されると思いますが、「心配いりませんよ」と申し上げたいです。たった一つの条件は、まず活動がその人の自由意志であること、です。

自由意志での参加が活動を育てる

私が今までキックオフに関わった場所では、どこでも芝生を続ける人が生まれています。1ヶ月に1度程度しかできないと思っていた活動が毎週集うようになったり、誰も音頭取りしなくても毎朝雑草取りする人が生まれたり・・・もっと芝生を良くしたいと芝種の変更をしたり、そんな活動につながっています。

きっとそれは参加してくれた人の心境の変化かと思います。

・今までどう扱って良いのかわからなかったが、何をすべきか知り動きやすくなった
・やればやるほど芝生は応えてくれる
・多年草の芝生。これを大事に育てることは未来へつなぐ行為、将来のこの町、この地の子どものためになる
・この活動に参加が純粋に善意でしかなく、同じような思いの人との出会いがある
・ただの草と思っていた芝生に引き込まれる魅力がある!

等が挙げられると思います。

自由意志の素地が大事と申し上げました。その人が思い切り活動できる場所であることが大事です。ボランティア活動は無理をしては続きませんので、動員や強制することはしないでくださいね。それを使うと一見活動が軌道に乗ったように見えて、でも実は一過性のものになるケースの方が多いです。年に一回だけのイベント開催ならそれもいいでしょう。でも芝生はその回数では無理です。馴染みません。だからこそボランティア活動の本質に立ち返る必要があります。

ボランティアとは、その活動を別にしなくても自分の生活に支障がないもの、本来的にはやる義務も義理もないものです。そこを認める。そこを乗り越え参加するからこそ、純粋に善意を持ち寄れる場所になり、その方が芝生育てに馴染みます。

花に話しかけたら応えるなんて話を聞くことがありますが、芝生も同じ。動員で、やらされてる心で世話されるより、本心で活動自体や芝生を大事に思ってくれている人に育ててもらうこと、芝生との距離感を近く感じてくれる人の方がいいのです。

ですので、最初は回数は少なくてもいいです。しかしそのうち「また次の作業が楽しみだわ」とか「次の作業まで待てないわ、なんだか心配・・・」という人が生まれてきます。それがその地での芝生育て活動の萌芽です。芝生を育てると同時に、、活動自体もみんなで育てる。そうすることで、ボランティア活動として、自由意志のスタンスを維持しつつ、作業回数を増やして行けます。

多年草の芝生を育て続けるために必要なこと

萌芽が生まれ、もっと活動として充実してゆくまでは、2パターンあります。一つは芝生にかける思いの強い人がいればその人が牽引してゆく。もう一つは最初は私たちイクシバ!のような俯瞰する支援団体が緩やかに牽引し、組織文化を根付かせるお手伝いをする。理想的なのはその両方です。

芝生は多年草。続けさせることが命題です。組織の風通しをよくして持続しなければ意味がありません。強力なリーダーは頼もしいですが、ワンマンに陥ってはいけません。できるだけ知識と経験をみんなで共有し、誰が欠けてもその地で芝生が長く続く組織文化を根付かせること。いつでも新しい人が入りやすく、辞めたい人が辞めやすく、一旦休止したい人が休みやすく、戻って来やすい。そんなみんなの居場所となればいいですね。居心地がいいから続く。きっと災害になってもその顔なじみさんたちは良き助け合いができると期待します。

今までの地縁組織のルールとは少し異なることかも知れません。中には「そんな美しいこと言って人が集まるか!」という人もいるかも知れません。実際これはイクシバの黎明期にかけられた言葉です。でもね、できると思いますよ。心配しないで、芝生が人を集めてくれます。人はあたたかいものです。そういう人の集まり、できますよ。地域住民”全員”が関わる必要なんてないのですから。最初からハードル上げずにしがらみや心理的圧迫感をできるだけ排除した、ネオ地縁組織で芝生育ていかがですか。

あら、今回もボランティア1時間で終わらせる、の話に進めませんでした。

次こそ、そのお話をします。

(おしゃべりしながら雑草取り)


取材・執筆
取材・執筆
尾木 和子

NPO法人育てる芝生イクシバ!プロジェクト代表理事。芝草管理技術者。芝生大好き。雑草も好き。人生を教えてくれるのが芝生と雑草。好きが高じて芝生資格を取得。誰かと一緒に芝生育てをすることが好きなので、一人でもコツコツ芝生育てするのか?と問われるとNO。人が好きだけど、『仲良くしようね!』と親睦自体が目的の場所は苦手。こんな私にとって、いろんな人と一緒に芝生を育て、自然に仲良くなって、気持ちいい環境を作るのは最高の喜び。みんなー!芝刈りしようぜ!

NPO法人育てる芝生イクシバ!プロジェクト代表理事。芝草管理技術者。芝生大好き。雑草も好き。人生を教えてくれるのが芝生と雑草。好きが高じて芝生資格を取得。誰かと一緒に芝生育てをすることが好きなので、一人でもコツコツ芝生育てするのか?と問われるとNO。人が好きだけど、『仲良くしようね!』と親睦自体が目的の場所は苦手。こんな私にとって、いろんな人と一緒に芝生を育て、自然に仲良くなって、気持ちいい環境を作るのは最高の喜び。みんなー!芝刈りしようぜ!

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