みんなの公園愛護会では、地域の人々や公園ボランティアとともに、公園をより良くしようと頑張る行政の取り組みにも注目しています。
先日お話をお聞きした福岡市の「企業版公園愛護会」で参考にした他都市の取り組みとして、北九州市の「北九州市公園応援団」をご紹介いただきました。
そこで今回は、地域住民による公園愛護会活動に加えて、企業や学校などのボランティアが公園育てを担う「北九州市公園応援団」について、北九州市 都市整備局 河川公園部 公園管理課 管理係長 村山英亮さん(上の写真左)、ご担当の久重路由賀さん(同 右)にお話をお聞きしました。
55年の歴史と1000団体超が活動!北九州市の公園愛護会
1970年からスタートした北九州市の公園愛護会には、55年の歴史があり、市内およそ1700の公園のうち、1065の公園で活動が行われています。ほとんどは、地域の自治会や町内会、子ども会、老人会などの地縁団体とのことですが、お友達同士や趣味のサークル仲間といったグループの登録も自由で、さまざまな方が活動に参加されています。
北九州市の特徴のひとつとして、公園愛護会の活動する公園では委託業者による除草が入らないため、愛護会のみなさんの活動の中心は「除草」になっていることが多いそう。加えて、ゴミ拾いや花壇づくりなどの活動にも励んでいるとのこと。


政令市最高水準の高齢化に、全団体アンケートでヒントを探る
北九州市は政令指定都市の中で最も高齢化率の高い都市で、高齢化率は31.2%(2023年1月)。公園愛護会の担い手も、80歳代の方も多いそうですが、みなさんお元気に、そして熱心に、活動されている団体がとても多いそうです。
そんな中、公園管理課では、公園愛護会の今後の運営や方針づくりを考えていくにあたり、今年度市内の全団体にアンケートを実施中。
アンケートでは、活動の負担や苦労していることなどを具体的に聞く設問のほか、今後の活動の継続性、そしてどうすれば続けられるか?などを聞いています。8割を超える回答率になる見込みだそうで、この回答率の高さからも、愛護会のみなさんの熱意と期待値が伺えます!
アンケートの結果は、夏の酷暑の対策や支援のあり方を含めた今後の方針づくりのエビデンスにしていくことを話してくださいました。
企業が社会貢献として参加できる「北九州市公園応援団」
こうした背景の中、企業やNPO法人、学校などの団体が公園の清掃活動などを行う、新たな公園ボランティアの取り組み「北九州市公園応援団」が、2024年からスタートしました。

きっかけは、小倉駅前の公園で落ち葉掃きをボランティアで行っていた企業の存在で、その善意の社会貢献活動を市が認定する形で制度づくりをしたとのこと。制度化することで「それならうちもやってみよう!」とさらに多くの企業や団体に活動が広がっていく形ができています。
公園応援団の活動は、概ね月1回程度の公園の除草や清掃。北九州市に事業所があり、市内で事業活動を行う企業や、市内に活動拠点がある有志団体なら、公園応援団としての活動が可能です。
活動場所は、基本的には既存の公園愛護会が活動していない公園が想定されており、市が活動場所のマッチングも行っています。申し込みは随時受け付け、1年ごとに更新の確認があります。
企業を後押しする入札加点や看板設置のインセンティブも
公園応援団へのサポートは、以下のようなメニューがあります。
・認定書の発行
・市の公式ホームページやSNSでのPR
・公園への看板設置や、SNSでの活動PRが可能に
・建設業種企業向け 市の総合評価落札方式における加点0.1点(条件あり)
また、公園愛護会と同様の以下のサポートも受けられます。
・公園内に用具庫の設置が可能に
・市民活動保険への加入(条件あり)
・まち美化ボランティア袋の配布
・花苗の助成(市民花壇制度)
公園愛護会には、それぞれの愛護会が小学校区ごとにまとまって組織される地区連合会、さらに7つの行政区ごとにまとまった区連合会があり、研修会やお便りの発行などの自主的な活動が行われているそうです(それもユニークでいい活動ですよね!)。
一方で大きな違いは、公園応援団は、活動に対する助成金がないという点です。活動報告書の提出の必要もなく、事務手続きが比較的シンプルになっています。制度を創設したばかりなので、連合会のような横のつながりは現在のところないとのことですが、今後の活動の広がりが楽しみです。
公園に設置できる看板は、横90センチ×縦60センチを上限に「私たち(公園応援団名)は、この公園の除草・清掃を行っています」などの言葉と、会社名やロゴ、ホームページにつながるQRコードを掲載できるというものです。

公園応援団の制度ができたことで、市内の幅広い企業からの参加がありました。商工会議所や市政だより、ホームページなどで告知を始めて、徐々に増えていき、現在では、造園業、土木・建築業、塗装業、学校、銀行、保険会社、美容室など17の公園応援団が活動をされています。
看板設置、入札加点などのインセンティブを狙って参加されている企業はいるものの、お聞きすると、多くは社会貢献を目的に活動されているので、現状としてはあまり使われていないというお話もありました。



地域とのつながりを大切にする、丁寧なコミュニケーション
毎年の公園愛護会の表彰式の前には、各団体の活動に出向いて写真撮影やインタビューをされているという村山さんと久重路さん。地元の人々との対話をとても大切に考えていることが伝わってきます。
公園応援団の活動を始めるにあたっても同様で、市が地域と丁寧にコミュニケーションを取って、進めているというお話を聞かせてくださいました。
地元の方々は長年活動されてきているので、突然全然知らない人が入ってくると悪い気がする人もいるかもしれないと、公園愛護会のない公園では地域住民や地元自治会に、愛護会がある公園には愛護会にも直接ヒアリングをして、企業が公園応援団として活動することへの意向を確認をされているとのこと。さらに、会長さんだけでなく地域の皆さんに知ってもらうため、地域で回覧してもらうための資料を作って渡しているというお話も!
新しい取り組みを進めるときに、これまで長く公園を守り育ててきた地域の人々の理解を得て丁寧に進めていくことを、とても大切にされていました。
公園応援団は、公園愛護会が高齢化で減少することを見込んだ単なる補完の策ではなく、企業や学校など新しいプレイヤーが緑のまちづくりに関わりやすい、新しい入口のひとつとして、また社会貢献活動のひとつとして機能しています。
「楽しくやってもらう」広がる緑のまちづくり
「楽しくやってもらうのが長続きの秘訣」と話してくださったお二人。公園応援団でもすでに楽しい活動が広がりはじめているようです。たとえば、公園応援団として活躍する第一学院高等学校さんとトップ保険サービスさんは、ともに協力して活動コラボをされた実績もあるとのこと。公園応援団という活動を通して、参加団体が横のつながりをもち、活動の幅を広げられていることは、市役所としても喜ばしく、感謝の思いも大きいとのお話でした。
緑のまちづくりには、公園愛護会、公園応援団、一人一花運動のスポンサー花壇、市民花壇など、さまざまなメニューがあります。これらの制度を通じて、「やってみたいけれど二の足踏んでいる人」や、公園や緑に興味のある潜在層(サイレントマジョリティー)が、一歩踏み出しやすいように継続して工夫していくことが必要であることを教えてくださいました。


公園応援団の認定企業の1つ、株式会社月形のみなさんに取り組みについてお聞きしました。
【基本情報】
| 取り組みの名称 | 北九州市公園応援団 |
| 実施自治体 | 北九州市(福岡県) |
| 事業の概要 | 地域の方々にとって身近な存在である公園の除草や清掃を、活動登録した企業や団体の方に行っていただく制度です。公園がきれいに過ごしやすくなり、活動を行ってくださる団体のイメージ向上にも繋がります。 |
| 取り組みの詳細 | 北九州市のホームページをご覧ください |