2025/8/20

企業も公園育ての一員に。新制度「企業版公園愛護会」スタート

福岡市(福岡県)

みんなの公園愛護会では、地域の人々や公園ボランティアとともに、公園をより良くしようと頑張る行政の取り組みにも注目しています。

公園を地域交流の場にするコミュニティパーク事業、企業も一緒に市民参加を盛り上げる「一人一花運動」を実施する福岡市で、企業等が公園育てに関わる新たな取り組みが始まりました。地域の人たちが公園を守り育てる公園愛護会制度に加えて、企業や団体も公園でのボランティア活動に参加しやすくなる新メニュー「企業版公園愛護会」です。

この企業版公園愛護会について、福岡市 みどり運営課 課長 小山雅之さん(上の写真中央)、管理運営係長 浜部竜郎さん(同 左)、ご担当の入戸野太朗さん、西原哲矢さん(同 右)にお話をお聞きしました。

市内の75%の公園で活動がある福岡市の公園愛護会

福岡市の公園愛護会は、1969年からスタートし、現在では市内の約75%にあたる1276公園で活動しています。地域の自治会や子ども会、老人会、スポーツチームなど、さまざまな団体、個人の皆さんが協力し、ゴミ拾いや草刈りなどの活動を続けています。

全国的にも高齢化や担い手不足が課題と言われていますが、福岡市でも同様で、公園に関わる仲間を増やすためにも、個人だけでなく、企業や団体など法人の協力も求めていこうという考えで、多様な主体が広く関われる仕組みの検討が始まりました。

公園愛護活動の仲間を増やす新メニューづくり

また同時に、複数の企業にヒアリングをしてみると、企業も公園でのボランティア活動をしたいという声があったり、届出などはしていなくても自主的に公園清掃を行っているという会社もあったそう。

自主的な企業の公園ボランティア活動を支援する制度はなく、地域住民を対象として設計された既存の公園愛護会制度に当てはめてもニーズが異なりマッチしないことから、企業向けの新メニューづくりが行われることになりました。

市からの支援内容や書類手続きは違っても、別の制度として分けてしまわずに、地域の公園を愛護する団体として同じように取り扱っていこうという思いから、「企業版公園愛護会」という名前に。企業が対象というわかりやすさと、公園育てに関わる公園愛護会の仲間が増えるイメージが伝わってくるネーミングです。

ヒアリングで支援メニューや関わり方のニーズをキャッチ

制度づくりにあたっては、既に地域の公園でボランティア活動を行っている4社にヒアリングをして、支援メニューの検討をしたことを教えてくださいました。

市としてどうサポートしていくのが良いか?どのような形なら、負担なくさまざまな企業に継続的に取り組んでもらえるのか?参加メリットや認定基準、役割や関わり方はどのようにデザインするのか?

ヒアリングを通してわかったことは、地域貢献したいという企業の思いを大切に、清掃活動以外の負担ができるだけない形を作るのが重要だということ。

企業にとって参加しやすい形を追求し、たとえば報償金は支給しない代わりに煩雑な事務手続きは求めないといった「企業版公園愛護会」の形が作られました。

(第一弾認定企業となった九州旅客鉄道株式会社 建設工事部のみなさん:提供 JR九州 建設工事部)

煩雑な手続きはゼロ!企業が活動しやすいシンプルな仕組み

こうして、企業が参加しやすい公園愛護会メニューができました。ポイントは、シンプルさ。認定後はホームページでPRされるほか、美化活動の日程や内容は企業等の自主性にお任せ、計画書なし、報告書なしで、事務負担も最小限、という形です。

(福岡市の従来の公園愛護会と、新メニュー企業版公園愛護会の比較:福岡市ホームページより)

従来の公園愛護会と同様に、以下のサポートを受けることもできます。
・ゴミ袋の配布、作業後のゴミ袋の回収
・草刈り機の無償レンタル
・清掃用具倉庫の設置許可(倉庫の購入と設置費用は団体が負担)
・団体表彰

事務書類を極力なくしてシンプルにすることは、企業の負担を軽減し、参加しやすさ・継続しやすさにつながるというのは、多くの企業が参加する一人一花運動のインタビューでもお聞きしたことでした。登録するだけで、気軽に参加できるというのは大きなメリットです。

このほか、企業版公園愛護会の認定企業は公園内に活動紹介看板の設置ができたり、別途申し込むことで花壇活動ができたり、地域のまちづくりに協力する「ふくおか共創パートナー企業」への登録ができるなどのプラスのメリットも用意されています。詳細は、福岡市のホームページで、よくある質問としても紹介されています。

現在の認定企業は、5社。上の写真でもご紹介した九州旅客鉄道株式会社 建設工事部(東区 馬出御所ノ内公園)、マタケ造景株式会社(東区 八尻公園)、明治安田生命保険相互会社 城南営業部(中央区 六本松2号公園)、がんばり屋さん(西区 西部運動公園)、福岡環境整備株式会社(博多区 堅粕公園)のみなさんです。

(企業版公園愛護会 認定企業みなさん:提供 各認定企業各社・福岡市)

企業版公園愛護会第一弾認定企業の1つ、九州旅客鉄道株式会社 建設工事部のみなさんに取り組みについてお聞きしました▼

公園を起点に、企業と地域がつながる未来へ

従来の地域住民による公園愛護会は基本的に1公園1団体ですが、企業版公園愛護会は1つの公園で既存の団体との共存や複数団体での活動が認められています。

企業版公園愛護会の認定にあたっては、その公園で活動する公園愛護会や町内会の了承が必要になっており、必然的に地域とのコミュニケーションが生まれる仕組みになっています。

市が接続点になることで、企業と地域とのコミュニケーションが生まれ、公園を起点に地域と企業がタッグを組んでまちづくりに関わったり、ビジネスにつなげてもらうといった未来の姿についても話してくださったみどり運営課のみなさん。

スポンサー花壇の寄付や花壇づくり、PRなどの一人一花運動とはまた違った形で地域活動に参加する企業版公園愛護会。汗を流して地域の公園をきれいにするというシンプルで手触り感のある具体的な地域貢献は、大企業はもちろん地元の事業所やお店など、大小さまざまな企業や団体が前向きに関われる可能性のある活動です。

企業版公園愛護会制度については、北九州市の「北九州市公園応援団」を参考に認定基準や活動内容などの制度設計をされたそう。同じ課題感を持つ県内の政令指定都市で、連携しながら認知を広げて、多くの企業が参加する制度に育てていけたらと話してくださいました。

今後、北九州市の取り組みについてもぜひインタビューしたいと思います。

【基本情報】

取り組みの名称企業版公園愛護会
実施自治体福岡市(福岡県)
事業の概要公園の清掃活動などにご協力いただける企業・団体のみなさまと公園の維持管理に取り組んでいく制度で、地域住民を対象とした既存の公園愛護会制度に追加する形で2025年に創設した企業・団体向けのメニューです。以下の要件を満たした企業・団体を認定し、その活動を支援します。
【対象者】福岡市の公園の近隣に事業所を有する企業・団体
【活動公園】原則として、活動を行う社員・職員等が主に勤務する事業所の近隣にある公園
【活動内容】清掃等の美化活動(概ね月に1回以上)
取り組みの詳細福岡市のホームページをご覧ください
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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