各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、古くから地域に残る樹林を守り育てる活動を続けている、こちらの皆さんです。
約370種類もの植物が見られる「もえぎ野ふれあいの樹林」
横浜市青葉区にある「もえぎ野ふれあいの樹林(もえぎのふれあいのじゅりん)」。東急田園都市線の藤が丘駅から徒歩10分ほどの住宅街の中にある広さ1.4ヘクタールの小高い森です。
もえぎ野公園と道を挟んで隣接するこの場所は、市街地に残る緑地を保全・育成しながら人々にふれあいの場を提供する「ふれあいの樹林」制度により、横浜市が土地所有者から借りる形で1998年に開園しました。その後2011年までに土地の3/4が”みどり税”等で横浜市に購入され、横浜市の所有となっています。
昔からの雑木林や里山の面影を残す樹林には、地域の希少種や園芸種など370種類もの植物が見られ、鳥や昆虫も多く棲んでいます。樹林内には、遊歩道が整備され、天気の良い日には展望所から富士山も望めるそう。
こちらで樹林の保全や維持管理のボランティアを行っているのは、もえぎ野ふれあいの樹林愛護会の皆さん。9月最初の活動日に、会長の杉浦一夫さんほか、メンバーの皆さんにお話をお聞きしました。
もえぎ野ふれあいの樹林愛護会は、樹林の土地所有者だった故石原力氏を初代会長に、樹林が開園した1998年から活動開始。草刈りや落ち葉掃き、遊歩道の管理、植物の保護育成をはじめ、地域イベントを行ったり、子どもたちの自然観察学習の手伝い、本格的な植物調査や開花調査も続けています。
これまでの活動が評価され、今年2023年には第34回「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰も受賞されました。
本格作業で地域の里山環境を継承
愛護会活動は毎週日曜日の午前中。最近は夏の暑さが厳しいため8月は夏休みとし、全体での活動はナシにしているとのことで、この日は夏休み明け最初の活動日となりました。
活動開始の9:30になると、まずは輪になって全体ミーティングからスタート。杉浦会長の挨拶のあと、今村総務担当から夏休み中の草刈り実施報告や、来訪予定者の連絡、市役所とのやりとりなどの情報が共有されました。
この日の作業は、アジサイの剪定と草刈りが主な活動。活動拠点の建物の中から、次々と道具を出して、いざ作業。ガソリンで動く刈払機やバリカンも活用しながら、どんどん作業を進めていきます。
大規模作業は主に男性陣がどんどん進めていき、女性陣が植物の保護や写真撮影といった細やかな仕事を担当するなど、自然と役割分担ができている様子。チームワークも抜群です。
作業の途中、きれいなアジサイの花を洗っている女性が。ドライにして取っておいて、晩秋のイベントで行うリース作りの材料にするそうです。淡い色がそのまま残ったきれいなドライフラワーになるとのこと。おしゃれなリースになりそうです。
現在会員は35名で、開園当初からのメンバーもいれば、地域の町会長になって参加するようになった人、森や自然・緑が好きで参加するようになった人など、様々です。会員は常時募集中。3ヶ月間のお試し期間があるのは、まずは参加して、やってみて、自分に合うかどうか?を決めてほしいからとのこと。
地区センター主催のウォーキングの会で愛護会メンバーと知り合って話を聞き、植物が好きだしどんなかな?と思って参加するようになったという方もいらっしゃいました。
イベントで地域交流
もえぎ野ふれあいの樹林では、地域の人たちとの交流イベントも大切にしています。
7月には「樹林であそぼう!夏休み」を4年ぶりに実施。スズムシの無料配付や、竹切り体験、竹コップや竹トンボ作り、笹舟、葉っぱで遊ぼうなど、盛りだくさんの内容です。大人と子ども合わせて118名もの人が訪れ、楽しい時を過ごしたそうです。
また、11月には「樹林まつり」を開催予定。こちらも4年ぶりの開催です。かつて行われていた焼き芋大会から形を変えてできた樹林まつり。2019年には、竹トンボ、竹笛、ドングリのトトロ、クリスマスリース、ひっつき虫のダーツ、松ボックリ釣り、竹の輪投げ、竹細工、花炭販売などが行われていました。こちらも今年は久しぶりに地域の人々とのふれあいの場として賑わいそうです。
このほかにも、地域での昔遊びの手ほどきや、小学校の自然観察のサポート、ボーイスカウトの樹林探検の受け入れなども行っているそう。
樹林を訪れる人のために、季節ごとの植物の案内も置いています。日々、地域とのつながりの機会を多く持ちながら、樹林の保全活動を続けていらっしゃいます。
広報誌や写真集も発行
もえぎ野ふれあいの樹林愛護会では、2ヶ月に一度広報誌「もえぎ野ふれあいの樹林たより」を発行しています。内容は「今月の主役」コラムから始まり、最近の活動報告、お知らせなど、写真つきでA4サイズ4ページに渡ります。
今月の主役コラムは、マリーゴールド、ツミ(日本最小のタカ)、オニシバリ(ジンチョウゲ科の小低木)など樹林で見られる動植物の話題から、樹林内にある窪地が誕生した由来など歴史的なものまで、毎号とても読み応えがあります。また活動の様子も、作業内容や参加者、ミーティング内容まで詳しく書かれていて、竹林間伐・山桜調査・クズの根掘り・竹垣補修など多岐に渡る活動の様子が伝わってきます。
手づくりの温かさと、皆さんの個性にグッと引き込まれるような内容のこちらの広報誌を担当しているのは、大熊裕子さんです。
137号も続く広報誌。コラムの依頼や編集はお一人で担当されているとのこと。ご自身の勉強にもなると楽しんで取り組まれていることを教えてくださいました。
隔月発行の広報誌のほか、樹林で見られる動植物が季節ごとにまとめられた写真集も発行しています。こちらの写真もすべて大熊さんが撮影されたとのこと。植物班として、植物の調査や希少植物の保護なども、興味を持って積極的になさっています。
「ここには、めずらしい植物がちょっとずつ残っているんです。コロナで旅行に行けない日々でしたが、ここには来れて、作業もあるし、好きな人たちと一緒に活動できるので、救われました。」と話してくださった大熊さん。
かつてこの地がまだふれあいの樹林として開放されていなかった頃から、この緑地に興味があったという大熊さん。個人の所有地だと立ち入ることもできないけれど、ふれあいの樹林として開放されて、こうして手入れをしたり、自然の恵みを共に享受できることの素晴らしさを話してくださいました。
熱い想いとコミュニケーション
これだけの本格的な樹林保全活動と、イベント、広報誌の発行など多岐に渡る活動を行うには、熱い想いと共にやはりメンバー同士のコミュニケーションが大切のようです。
活動開始前のミーティングに加えて、活動終わりのミーティング、そして毎月一回の「月例ミーティング」といったように、全員で意見交換をする時間が多く取られています。活動中はそれぞれが担当する場所でバラバラに作業をしているので、気づいたことを共有したり、今後の作業計画やイベントに向けての話し合いをしたり、リラックスしながら話す良い時間のようです。
地域のことを思い、お互いの得意を生かしながら、自然の環境を守り続けているもえぎ野ふれあいの樹林愛護会の皆さんでした。
もえぎ野ふれあいの樹林愛護会の取り組みについては、森ノオトさんでも取り上げられています。(2020年の記事です)
【基本情報】
団体名 | もえぎ野ふれあいの樹林愛護会 |
活動場所 | もえぎ野ふれあいの樹林 (横浜市青葉区) |
面積 | 約 14,000 m2 |
基本的な活動日 | 毎週日曜日 9:30-12:00 |
いつもの活動参加人数 | 20人くらい |
会の会員数 | 35名 |
活動内容 | ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、植物の保護育成、施設の破損連絡、利用者へのマナー喚起、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、子ども向けイベント、竹林の管理、遊歩道の管理、子ども向け自然観察のサポート、植物調査・開花調査 |
設立時期 | 1998年 |
活動に参加したい場合は | 日曜日の9:30に来てください! |