2021/4/12

地域で見守り、対話を続ける公園

チャレンジパーク赤松(茅ヶ崎市)

地域の公園ボランティアを紹介するコーナー「となりの公園愛護会」。いろいろな活動をされている皆さんにお話を伺って、その知恵やアイデア・情熱をシェアしています。第4回は、公園を含めたみんなの居場所を地域住民の手で作り守っている、こんな愛護会。

地域のボランティアが法人化して運営している公園愛護会!

アンケートでこんなコメントをいただいていました。

建物と公園の運営を茅ヶ崎市からまかせていただき、近くの小和田地区まちぢから協議会でボランティアを集め、運営しています。大きな公園なので、近くの保育所からもたくさんの人が来てにぎやかです。ボール遊びもできるので、トラブルも多いのですが、このコロナの時代にでもたくさん遊んでいます。夏とか風が強い日等、水まきも大変です。

工場跡地の大規模開発でできた公園。まちぢから協議会(茅ヶ崎市で定めている地区ごとの地域コミュニティ、複数の自治会が集まって作られる)と、地元のボランティアで結成した一般社団法人が、カフェ+コミュニティルームの運営や、公園の管理もしている。平成30年土地活用モデル大賞にも選定された、住民主体のまちづくりモデル。計画段階から一緒に作った公園と隣接のコミュニティ施設を管理し、地域みんなの居場所をつくっている姿は「公園だけにとどまらない地域の愛護会の発展系!?」ということで、お話を伺ってきました。

茅ヶ崎市にあるチャレンジパーク赤松と赤松どんぐり公園。JR東海道線辻堂駅やショッピングモールからほど近い、大きなマンションの横。計画から一緒に作られた地域のコミュニティ施設「YU-ZUルーム(ユーズールーム)」に隣接する、開かれた公園です。カフェやキッチンスタジオもある「YU-ZUルーム」と、小さな子も遊べる砂場や遊具のある「赤松どんぐり公園」、そしてボール遊びもできる広場「チャレンジパーク赤松」が一体となって地域のみなさんの居場所になっています。

こちらの公園ボランティアをしているのは、小和田まちぢから協議会一般社団法人辻堂西口YU-ZUルームの皆さん。会長の新倉さんや、毎日のように公園を見守られている宗田さん、皆さんにお話を伺いました。

基本的な活動は、毎月第1日曜の朝。一斉清掃は、6つの自治会の役員が集まって、年間計画で雨でも活動。そのほかに、YU-ZUルームの地元ボランティアの皆さんで、毎日、公園の見守りや、砂場ネットの開け閉め、土埃防止のための水撒きなどをされているとのこと。

YU-ZUルームには、キッズスペースのあるカフェやテラス、赤ちゃんがハイハイしてOKなレンタルスペース(畳/板張り)、料理教室のできるキッチンスタジオ、作品を委託販売できるボックスショップがあり、そのひとつひとつが住民参加で計画・設計され、運営されています。(コロナでしばらくお休み中)

作るときから、住民参加で

「ここはもともと乾電池の工場だったんですよ。その後、開発する企業や市、地元住民で話し合って、地域に開かれた公園や広場・コミュニティ施設ができました。」まちぢから協議会の中に部会を作り、70回以上も対話を重ねて、施設や設備の要望などが設計に組み込まれていったそうです。

公園づくりには小学生(小和田小学校4年生のグループ発表)の意見やアイデアも取り入れて、公園の名前も小学生の意見が入っているのだとか。何年もかけて、作る段階から地域全体で積極的に関わられていたことを、教えてくださいました。

「この辺りはボール遊びできる公園が少ないから、ここはボール遊びができる公園にしよう、と住民の話し合いで決めてね。」貴重な広い公園を、どうデザインするか?話し合いの中で、ボール遊びができるような平らな面を確保して広場を作ることにしたり、芝生の広がる公園にしたり、公園内を3つの対象年齢別にゆるやかにゾーン分けして、だれもが安全に楽しく遊べるような工夫をしていったそうです。

公園愛護会の活動はどんなメンバーがやっているのですか?

「毎月の一斉清掃は、近隣の6つの自治会から役員が、まちぢから協議会のメンバーとして参加しています。そのほかでも、空手教室の小学生たちが練習後にみんなで掃除をしてくれたり、何か作業をしていると子どもたちが手伝ってくれますよ。」YU-ZUルームのボランティアの皆さんが、毎日公園にいて、公園が快適であるよう、砂場のネットの開閉や水撒きをはじめ、細かな作業をいつもされているからこそ、公園を利用する子どもたちも自分たちのできることをやろうという気持ちが芽生えてくるのかなと、お話をお聞きして思いました。

伺った日は、4月の一斉清掃の日。基本的に自分の気になるところを掃除するスタイルで、おひとりおひとりに声をかけながら、重点作業が必要な箇所をお知らせしていく宗田さん。この日も、水道の周りの砂をさらったり、砂場のゴミを取ったり、伸びはじめた草を刈ったり、風で土埃が舞うのを抑えるための水撒きをしたり、みなさん手際よく作業されていました。

地域で見守り、対話を続ける公園

ボール遊びができる広場があり、いつもきれいで、見守る大人のいる、この公園には、子どもたちが自転車に乗って遠くからも遊びに来ます。この大人たちは毎日のように見守り、声かけをされているそうで、顔見知りの子どもたちも増えているとのこと。危ないときは注意したり、子ども同士の小さなトラブルにも対処。注意されたことは、子どもたちみんな、よく聞くそうです。公園に、地域のやさしい大人たちの目があることは、きっと親にとってもありがたいことでしょう。

地域で話し合ってルールを決めて、ゾーン分けをしたりボール遊びができる公園。木登りをする子もいるし、ゲームをしたり、ボールがフェンスを越えてしまったり、保育園の散歩利用も多く、いろいろな人が利用します。「できるだけ看板をつけないようにってしてるんだよ。」と会長の新倉さんが話してくださいました。まずは、話してお互いにわかることが大切だから。なぜいけないのか?みんな自分で考えられるはずだから。

たとえば、硬いボールを使っている小学生にも、周りに小さい子がいる時は「危ないよ」と話しかけるけれど、誰もいなかったら特に注意せずしばらく見ておくことや、木登りをする子どもたちの様子をそっと見守っていることを話してくださいました。

そんな風に、通り一遍の規則ではなく、その場の状況や、周りとの関係で考え、危ない時には話して注意をされるそうです。確かに看板は少なく、最低限あったものも「ボール等が入ったら管理室に来てください」など、優しい言葉の呼びかけでした。公園が出来たあとも、対話は続いているのですね。

地域の公園に関わる楽しさって何ですか?

「50年近くこの辺りに住んでいるけど、この公園ができて子どもをよく見かけるようになった。子どもたちを見ているだけで嬉しくなりますよ。」と話してくれた方もいました。公園を見渡せるテラスに座って、子どもたちの遊ぶ姿を眺めるのが楽しい、そのために公園に来られるという地域のお年寄りの方もいらっしゃるそうです。

コロナでなかなか集まりやイベントもできない昨今ですが、昨年のお盆には、盆踊り中止の時でも、四つ葉のクローバーの形にキャンドルを灯して、送り火のようにしたそうです。出来ることを考え工夫しながら、地域で楽しむ。公園は、近所の新たな出会いの場にもなっているとのことでした。

「地域の子どもたちや、お年寄りの居場所としても、みんなで守るべきところだから。」まちを守り支える使命感のようなものが、皆さんの中で燃えているようでした。

子どもたちも手伝いたくなる大人の姿

芝を育てたり、土埃を防ぐために水を撒いたり、毎日の公園しごとをボランティアで行っている愛護会のみなさん。その様子を見ている子どもたちは、自分もやってみたくなるようです。ホースでの水撒きは、小さい子の注目の的。彼らの「やってみたい」という気持ちに応えて、親子で水撒きをやってもらうこともあるそうです。

「大人が働いているところが面白いのかな。いつも公園でいろいろな作業をしていると、子どもたちが手伝わせてって来るんだよ。」と新倉さんも教えてくださいました。高校生も、小学生も、2-3歳の小さな子も。芝を育てるための土を掘るのも、子どもは自分たちで考えて工夫しながら、やってみようとするそうです。

「いろいろあるけど、嫌だ、大変だと思ったことはない。子どもの姿をみて、声を聞いてるだけでも楽しいよ、元気もらって生きてるから。」とおっしゃっている姿が印象的でした。

おまけ:木の根っこを掘ったり、石畳を復元した公園

新倉さんは、近くの東小和田公園の愛護会もされていて、その公園での活動のことも話してくださいました。市が樹齢数十年の大木を伐採したあと、残った根っこを自分たちでひとつずつ掘り返していったこと。太い幹や、切った枝でベンチをつくったこと。公園の古い図面に石畳があるのを見つけて、掘ってみたら数十センチ下に石畳の通路があって、復元したこと。新倉さんの自転車には、いつもいろんな道具が常備されているそうです。

プロフェッショナルな?公園しごとに驚いていると、この辺りは昔、川があったこと、乾電池に関連する町工場がたくさんあったことなど、今は見えずとも確かにそこにあった町の様子を話してくださいました。少し違った視点を持つだけで、公園も街歩きも楽しみが広がりますね。

↑ 東小和田公園の手づくりベンチと復元された石畳

【基本情報】

団体名一般社団法人辻堂西口YU-ZUルーム・小和田地区まちぢから協議会
公園名チャレンジパーク赤松公園 ・ 赤松どんぐり公園 (茅ヶ崎市)
面積3,292m2 ・ 1,530m2
基本的な活動日毎月第1日曜日
いつもの活動参加人数20人くらい(役員なので入れ替わりあり)+毎日3-5人
会員数20人(まちぢから協議会)
活動内容ゴミ拾い, 除草, 落ち葉かき, 低木の管理, 花壇の管理, 植物の水やり, 施設の破損連絡, 利用者へのマナー喚起, 愛護会活動のPR, 新メンバーの募集や勧誘, 地域のイベント, 子ども向けイベント, 他団体と連携したイベント, 遊びの見守り, 公園再整備に関する活動, 協議会
設立時期2018年(平成30年)
参加者イメージ子ども / 子育て世代 / その他大人
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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