2023/11/17

悩みの種が地域の中心的な存在に、猫がつなぐコミュニケーションの輪

南江口北公園(大阪市)

大阪公立大学の大学院生が、大阪市の公園愛護会の皆さんの活動を紹介する「大阪となりの公園愛護会」。公園の利活用やランドスケープ設計を学び研究する大学院生の視点で、公園ボランティア活動を紹介します。

今回は、公園活動も地域猫活動もと活発に活動する南江口北公園(みなみえぐちきたこうえん)愛護会の皆さんです。みんなのリーダー佐藤会長と気の合う仲間たち、その信頼関係が心にグッときます。

地域猫活動も行う南江口北公園愛護会

公園ボランティア実態調査アンケートでこんなコメントをいただいていました。

地域猫の件、平成29年度には28匹でしたが、令和3年10月4日現在は6匹までにした事。皆様の協力で現在になりました。又、十三公園事務所の方々の協力もありました。

その他にも、毎週ラジオ体操を行っていること、小さな子どもが砂場で楽しく遊んでいることなどが書かれていました。

どんな公園か気になり、南江口北公園愛護会会長の佐藤光政さんにお電話で取材のお願いをすると、「この公園はいつもキレイにしていて、10年間にわたって連続でNo.1で表彰されているよ」とのお話が。これは是非見てみたい。そこで、大阪市東淀川区にある南江口北公園愛護会の皆さんにお話を伺いに行きました。

南江口北公園は、大阪市の北端を東西にはしる神崎川と、大きな淀川に挟まれた場所、大阪市営南江口第5住宅の団地内にあります。公園内には、広場とブランコやすべり台といった遊具、ゾウやカバのいる砂場があります。この公園は団地外から多くの子どもが遊びに来るそうで、夕方だと20人くらい遊んでいることもあるのだとか!

(団地の中にある南江口北公園)
(ゾウやカバは砂場の中で水浴び中)

周りは木々に囲まれていますが、驚くことに落ち葉一つありません!そこにはこの公園で活動されている南江口北公園愛護会の皆さんの活躍があります。皆さんこの日も朝の6時から清掃活動をされていたそうです。

会長の佐藤光政さんと、この公園で活動されている清水宏さん、山口巳貴子さん、西川満智子さんにお話を聞きました。

「みんなのリーダー佐藤会長」が誕生するまで

今ではすっかりキレイな南江口北公園ですが、10年前、佐藤さんがこの団地に来たばかりの頃は草がボーボーのひどい状態だったそうです。愛護会活動が2年目となるその年、佐藤さんは町会長になりました。そこへ地域連合のトップに「この公園、何とかならんか。」と声を掛けられたのがはじまり。自治会でも3度、公園管理に関する会議を行ったそうですがもうお手上げだったのだとか。

そこで佐藤さんは自治会に、この南江口北公園の管理を佐藤さんに一任してもらうよう掛け合ったそうです。その後も、市や地域の監督、担当者にも「俺がやるから。」と掛け合い、「みんなのリーダー佐藤会長」が誕生しました。

(頼れる「みんなのリーダー佐藤会長」)

地道な地域猫活動を続けてきたからこそ!

また、この周辺には多くの猫が棲みついていたそうで、それも一つの大きな問題でした。愛護会メンバーの西川さんは現在、地域猫の担当です。

地域猫の問題は一時ニュースになるほど全国で話題になりましたが、この地域でもかつては猫の増えすぎが問題視されていました。

猫の世話をするボランティアはいたそうですが、エサをやるだけで猫は増える一方。ボランティアでの猫管理に有志から寄付があったこともありましたが猫の管理は困難だったのだとか。地域の中でもエサをやりたい人と、猫が増えるのを好ましく思わない人との間で溝が生じており、地域の悩みの種でした。

20年以上前から棲みついていた猫は、2017(平成29)年には28匹にもなり、周辺住民が勝手にエサをやることも問題となっていました。

そこで、西川さんらは、この地域の公園管理をする十三公園事務所の所長や担当者の方と地域猫の管理について相談し、西川さんら公園愛護会が代表となって地域猫の管理を行うようになったそうです。

「これも今までの公園愛護会での実績があったからこそできたことです。」と西川さんは当時を振り返って語ってくださいました。

その後、避妊・去勢や子猫を里親に出すといった活動を続け、今では地域猫は4匹にまで減らすことに成功。かつて15年間、朝は3時に起きて、また夜も猫にエサと水をやり続けていたという西川さん。これは、なかなか簡単にできることではありません。昔は地域猫活動に文句を言っていた近所の人も、今では猫がご飯を待っている姿を見つけると「ごはん待ってるで。」と声を掛けてくれるようになったのだとか。

猫を介してちょっとした地域のコミュニケーションが生まれているのでしょうか。

取材に伺った日、私は会うことはできませんでしたが、今では地域のアイドルのような4匹の猫ちゃん、会ってみたいものです。

砂場の消毒や本格的な樹木の剪定も

普段の活動は毎週水曜と日曜の2回、ごみの清掃がメインだそうです。夏は1回の清掃でごみ袋2袋分ほどですが、秋になると落ち葉が増えて3倍以上になるとのこと!

(協力して落ち葉を集めていきます)
(夏はこのぐらいですが、秋は本当にごみ袋だらけになるそうです)

…とここまでは他の愛護会と同じように見えますが、ここからすごいのは他の活動のバラエティの豊富さ!

まずは公園に植えられている木の水やりと施肥、そして砂場の消毒です。これらは2~3ヶ月に1回、セットで行っているそうです。特に、砂場は子どもがよく遊ぶ場所ですが、散歩中の犬や地域に棲みついている猫の糞もあるそうで、掃除をし、砂を掘り返して柔らかくしたうえで、顆粒タイプの消毒剤を混ぜています。ここまで手間をかけることで、小さい子どもを安心して遊ばせられるようにしているんですね。

(肥料がまかれた植木(左)と、白い消毒剤がまかれた砂場(右))

次に、刈り込み。これは最低でも6月と12月の年2回されているそうで、主に会長の佐藤さんが担当されています。見せていただいたのはご自慢の道具たち。ハサミをはじめ様々な道具を使って美しく形を整えます。その仕上がりはまるでプロのよう!!

(美しく整えられた低木たち、その仕上がりはプロの技あってこそ)

これには佐藤さんのご経歴に秘密が。佐藤さんは元々鉄道関係のお仕事をされていた時、樹木の管理や剪定なども担当されていたとのこと。当時は、お昼休みも使って地道に、道具や工具を使う練習も続けていらっしゃったのだとか。そんな長年かけて磨いてきた技術を活かしてこれらの作業をされています。現役時代と比べたら、公園での刈り込み作業も何のその。本格的な道具を使うので、他の人がケガをしないように佐藤さんが担当されているそうです。

「自分がやらんと指くわえたって仕方ない。自分でできる範囲は自分でやらな。」

本当に頼もしい存在です。

努力が実り、ついに表彰!

このように、コツコツと続けてこられた南江口北公園愛護会の皆さんの活動は実を結び、「公園美化運動功労者表彰」に選ばれることになりました。今年度は何と、愛護会と佐藤さんが、活動・在任期間10年以上の団体・団体の長を表彰する市長表彰に、メンバーの清水さんが活動期間5年以上の個人を表彰する区長表彰に選ばれました!

これには建設局や自治会長等の推薦が必要だそうで、この愛護会やメンバーの方が地域の方々にも認められ信頼されている証だと感じます。

また、大阪市建設局からの表彰は今回が初めてではありません。というのも、南江口北公園愛護会は2018年にも区長表彰に選ばれた実績があります。その時には、表彰のうわさを聞き他の地域の人がどんな公園なのだろうと見に訪れたこともあったのだとか!

(今年度の「公園美化運動功労者表彰」の通知)

仲間との役割分担が管理の秘訣!

ここ南江口北公園では、佐藤さん、清水さん、山口さん、西川さんの4人で活動していますが、しっかりと役割分担をされています。コロナで集まることが難しくなり、役割分担の意識もより一層強化されたようです。

佐藤さんは愛護会会長としてみんなを力強く引っ張り、培ってきた技術を活用して定期的に植木の刈り込み作業をされています。副会長の清水さんはラジオ体操の担当。ラジオ体操は2015年にスタート。2020年からはコロナ禍で中止にしているそうですが、今復活を狙っているそうです。もう一人の副会長山口さんは掃除の責任者。この公園で何か問題が生じたら会長の佐藤さんに連絡します。総務の西川さんは地域猫の担当。今では4匹になった地域猫のお世話をずっとずっと続けてこられました。

このように細やかな役割分担をして、各々がきっちりと役割をこなすことが上手く愛護会活動をしていく秘訣なのだと教えてくださいました。

(公園の周りまで清掃する山口さんと清水さん)
(作業後メンバーに飲み物を配る西川さん。冷え冷えを配るために小さめのクーラーボックスを持参する佐藤さんの優しさも光ります。)

信頼できる仲間とともにこれからも

ここ南江口北公園は今、地域の見守り拠点、また子どもへの教育の場となっています。

6年ほど前に砂場横の排水口いっぱいに砂を詰めるといういたずらをした(想像するとすごいいたずらですね…!)子どもたちを佐藤さんが注意したり、ごみのポイ捨てをした子どもに拾って帰るよう注意したり…。昔は中学生くらいの子どもがタバコを吸うような場所にもなっていたそうですが、「監視カメラがあるよ」と注意したところ来なくなったのだとか。

このように、今では地域ぐるみで子どもを見守る教育の場となっています。特に、清水さんや山口さんは公園の目の前の棟にお住まいだそうで、いつも公園の様子を見守ってくれています。

(砂場横の排水口、安全のため佐藤さんが蓋裏に網を取り付けました)

そして、取材中に私が見ていて感じたのがメンバー同士の信頼の厚さ。

「何かあったら俺に言ってくれたらOK。」と笑う佐藤さん、佐藤さんがいないときも率先して作業されている清水さんや山口さん、西川さん。

「みんな頭もしっかりしているし、『俺が活動が出来なくなったら頼むぜ』ってみんなにも言ってあるから。」と佐藤さん。

また、今活動が出来ているのは十三公園事務所のサポートあってこそなのだそうです。

「大変よくしていただいた十三公園事務所の方々に対してお礼申し上げます。特に、公園愛護会を担当されている職員の皆様、今後もよろしくお願いします。」と深い感謝の言葉を口にしていました。

「まずは健康第一で、無理しないように、長生きする」というのが今後の目標だそうです。

これからも信頼できる仲間とともに協力して、ここ南江口北公園での活動は続けていかれるでしょう。

その頼もしい皆さんの姿が、眩しく感じました。

【基本情報】

団体名南江口北公園愛護会
公園名南江口北公園(大阪市東淀川区)
面積915 m2
基本的な活動日毎週水曜と日曜の朝6:00~
いつもの活動参加人数4人(コロナ禍になってから)
会の会員数15人くらい
活動内容ごみ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、利用者へのマナー喚起、愛護会活動のPR、新規メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、遊びの見守り、高齢者など地域の声がけ
設立時期2013年7月
主な参加者アクティブシニア
活動に参加したい場合は活動日に来てください(会長が声かけもします)
取材・執筆
取材・執筆
中元 菫

大学では都市計画から公園のデザインや利活用まで、幅広く勉強しています。公園を日々手入れする愛護会の存在を知り、レポーター活動を始めたことをきっかけに公園を見る目が変わりました。活動レポートが読んだ人の楽しみや励み、新たな気づきになれば嬉しいな。大阪公立大学大学院 農学研究科 緑地環境科学専攻 緑地計画学研究室所属。

大学では都市計画から公園のデザインや利活用まで、幅広く勉強しています。公園を日々手入れする愛護会の存在を知り、レポーター活動を始めたことをきっかけに公園を見る目が変わりました。活動レポートが読んだ人の楽しみや励み、新たな気づきになれば嬉しいな。大阪公立大学大学院 農学研究科 緑地環境科学専攻 緑地計画学研究室所属。

みんなの公園愛護活動レポートに戻る