様々な公園ボランティアを紹介するコーナー「となりの公園愛護会」。公園ボランティアの皆さんの中には、「毎日欠かさず公園そうじをしている」という方がいらっしゃいます。第14回は、公園そうじを始めとした毎朝の活動で地域の笑顔と安心を守っている、こんな方!
早朝の公園そうじで、石ころひとつない公園
アンケートでこんなコメントをいただいていました。
桜の落ち葉が毎日70リットルの袋に一杯になる。私達が毎日きれいに掃いて袋に入れているので、近所の方々が葉っぱが飛んでこなくなったことに感謝の言葉をくれる。石ころも無く転んでも怪我しない公園。休みなく朝5時過ぎから毎日掃除しているので、きれいな公園で子ども達も喜んでいる。
聞けば、まだ暗くて寒い冬の朝も、雨の降る朝も、毎朝5時半から公園清掃をされているとのこと。どのような方が、どのような思いで活動されているのでしょうか。
厚木市にある山際公園(やまぎわこうえん)。40年ほど前のエリア一帯の宅地造成の際に計画的に作られた住宅地の中の街区公園です。平らで見通しの良い園内には、複合遊具やユニークなブランコのほか、近所の子どもたちがボール遊びをする広場があります。防災倉庫のほか、地域住民が相互交流できる施設「市立老人憩いの家」が隣接しているため、地域の活動やイベントの中心となっているような公園です。
お伺いした日は、自治会と子ども会合同の餅つき大会が行われているという特別な日。コメントをくださった齋藤孝弘さんにお話を伺いました。
自治会長は、元刑事さん!?
キリッとした佇まいの齋藤さん。お話を伺うと、42年間神奈川県警で刑事のお仕事をされていたとのこと。
もともと、2020年の神奈川県での愛護会アンケート(厚木市の団体さんにも実施)で、みんなの公園愛護会を知り、その後LINE公式の友だち登録をしてくださったり、今年のアンケートにも回答くださったというご縁があり、取材の申し込みをしたところ、餅つき大会の日にお伺いさせていただくことになったのでした。
刑事時代は、数々の難事件を担当し、捜査や取り調べの日々。毎日激務で、家に帰れない日も多かったそうです。齋藤さんの取り調べで事件が解決に繋がったことや、有名な事件の捜査本部エピソードなど、TVドラマ以上とのこと。私たちが知らないだけ・気づかないだけで、安全な暮らしは日々誰かに守られているんだということを思わずにはいられません。退職後は、大学で職員や学生の様々な相談に応じたり、保護司として法務大臣の任命を得て、刑務所から出所した人の社会復帰や更正を助ける仕事をされているとのこと。自治会長に13地区の連合会長、頼もしく優しいお人柄で、様々な場所で多くの役割を担っていらっしゃるようです。
毎朝の公園そうじ、始めたきっかけは?
「公園そうじは、自治会長になった時に始めたんですよ。毎朝5:20に起きて、朝の散歩と筋トレを兼ねて公園そうじをしています。それからシャワーと朝食を済ませて、小学校の登校の見守り。子どもたちと挨拶運動をして、その後大学に出勤、という毎日ですよ。」と話してくださった齋藤さん。毎朝の活動は公園そうじだけじゃないようです。
それまで公園はあまりきれいではなかったそうですが、齋藤さんが自治会長になって毎朝の公園そうじが始まると、ゴミひとつない、石ころも落ちていないきれいな公園になって、遊びに来る子どもたちが増え、大量の落ち葉が飛んでいくこともなくなり、近所の人たちにも喜ばれているとのことでした。
自治会長の4年間は毎朝一人で活動、そして4月に自治会長を交代しても、公園そうじは継続。今は、新しい自治会長さんとお2人で毎朝公園そうじをされているとのことで、早朝の運動がすっかり日課になっている様子を話してくださいました。
寒い冬の時期まだ暗い朝も落ち葉を掃き、多少の雨なら傘をさして公園掃除。竹箒で波の模様を描くように公園全体をきれいに整えているそうです。
毎日続けるモチベーションは?
「子どもたちには、いつもきれいな公園で遊んでほしいから。そして怪我しないように。この辺りで唯一の遊び場だから、喜んでくれれば。」と優しい笑顔で話してくださる齋藤さん。落ち葉の季節などは特に、1日空くと汚い状態になってしまうそうで、毎朝休みなく続けていると話して下さいましたが、決して簡単なことではありません。
小学校の登校見守りも、子どもたちが安全に登校できるよう、毎朝欠かさず。いつも元気に挨拶する子、顔馴染みになった子。毎朝子どもたちと挨拶を交わすことで、元気をもらっているとのことでした。
公園を散歩するご近所さんからの「きれいになったね」の一言や、いろいろな人からの感謝の言葉が、励みになるし、幸せを感じると話して下さいました。
地域のイベント、餅つき大会
この日は、自治会と子ども会、そして自治会の和太鼓部合同の「餅つき大会」が行われる日で、公園は朝から活気づいていました。餅つき大会は、2年ぶりとのこと。「火を焚く時はいつもこの中なんですよ」と、ブランコの柵の中に作ったかまどで、餅米を蒸しています。確かにここなら子どもたちが間違えて近づいてしまう危険もなさそうです。
自治会の餅つき大会専用の臼と杵でついたお餅は、憩いの家の中へ。室内では、子ども会のお母さんたちが、お餅を丸めたり、小さく分けたり。きなこやあんこ・大根おろしなどと一緒に美味しそうになっていくお餅。自治会と子ども会を中心とした多世代交流。
少子高齢化で、最近は解散になってしまう子ども会も多い中、皆さん楽しそうに活動されている様子に温かい気持ちになります。お餅は、公園に来たご近所の皆さんに、次々と振る舞われていきました。
子どもたちも、お餅つきに参加して、冬のイベントを楽しんでいました。町内にアナウンスして回り、子どもも、大人も、お年寄りも、みんなで声をかけ合い、色々な人が集い、あちこちで挨拶の声と笑顔が溢れた、良い時間が流れていました。地域のイベントって良いものですね。お餅つきがひと段落したら、和太鼓部の演奏、と続いていく山際公園でした。
人生、世の為、人の為。
餅つき大会の他にも、屋台や抽選会で盛り上がる夏祭りに、防災訓練イベントなど、地域の交流の起点になっている山際公園。齋藤さんは毎朝の公園そうじの他にも、市と自治会協働の防犯対策として公園の前に防犯カメラを設置したり、不法投棄されたゴミの処理を手配したり、住民の声を集めて自治会の定款を今の時代に合った内容に変更したりと、様々なことをされてきたそうです。また選挙管理委員や、公民館など、これまた様々な地域の役割を担っていこうとされています。
「目に入ったものは、出来る限りやっています。街のために出来ることを、1つでもやれれば、人生良いかな。仕事も長年『世の為、人の為に』と思ってやってきましたが、それはこれからもずっと変わりませんね。」と齋藤さん。「世の為、人の為」という言葉が印象的でした。誰かがやるだろうではなく、みんな気づいたことをやっていけると良いよねと優しく話して下さいました。
【基本情報】
団体名 | 山際公園愛好会 |
公園名 | 山際公園 (厚木市) |
面積 | 760 m2 |
基本的な活動日 | 毎朝5:30- |
いつもの活動参加人数 | 1-5人 |
会の会員数 | 100人以上 |
活動内容 | 活動内容:ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、他団体と連携したイベント |
設立時期 | 1980年代(昭和55-64) |
参加者イメージ | シニア中心 / その他大人 |