2023/6/7

おどろきを味わえる体験型ハーブガーデン

緑の創作園(武蔵野市)

全国の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、触ったり嗅いだりを促す体験型のハーブガーデンを楽しく維持されているこちらの皆さんです。

多様な植物管理をする「M’s Garden みどりの食いしん坊」

2022年の公園ボランティア実態調査アンケートでこんなコメントをいただいていました。

ハーブを多品種植えています。種を採取して育苗したり、挿し木をして公園に植えています。ボランティアによる活動は23年目に入りました。年一回オープンガーデンを開催(約200名参加)、今年も仲間が増えました。ー M’s Garden みどりの食いしん坊

200名も参加するイベントとは?!そして「M’s Garden みどりの食いしん坊」というキャッチーな団体名に惹かれ、活動におじゃますることにしました。


緑の創作園(みどりのそうさくえん)は武蔵野市八幡町3丁目の閑静な住宅街にある公園。この地域の緑化推進の拠点になる公園として整備されたという背景もあるそうで、雰囲気も名前もユニークですが通常の都市公園とのこと。面積のほとんどに木々や花が植わっており、休憩用ベンチが2つ中心部に設置されています。

緑が盛んな時期は植物に誘われ、花を眺めに訪れる方がいらっしゃいました。すこし日陰で休憩する、そんな使い方をする人が多いようです。

(緑が美しい季節です!)

こちらの公園で活動しているのは、「M’s Garden みどりの食いしん坊」の皆さん。多様な種類の草花を管理するボランティアグループです。

5月は年に一度のオープンガーデン!

お伺いした日は5月下旬。年に一度のオープンガーデン後初めての活動日でした。

オープンガーデンとは、毎年5月の土曜日に緑の創作園で開かれるイベントのこと。美しい時期を迎えた植物を楽しむとともに、来場した方へ公園内で育てたハーブ苗や花苗をプレゼント、ハーブティーやクッキーの販売、またテントでは園芸相談も行われています。

市民への開放を目的に、年に一回はガーデンを地域の人と楽しみたいという思いから、武蔵野市緑のまち推進課とM’s Gardenの共催で開催しています。準備から当日の運営まで、基本的にM’s Gardenのメンバー14名と市役所から2名のサポートのみ。コロナ禍は中止したものの、近年は来場者が200名近くと、かなりの大盛況だそうです!すごい!

(今年のオープンガーデンの様子:写真提供M’s Garden )
(メンバーみんなでパチリ。皆さん素敵な笑顔です。:写真提供M’s Garden)

今年のオープンガーデンを終えたこの日は、「みなさんお疲れ様でした」からスタート。

それぞれ気になっていた作業を開始。作業は基本的にオープンガーデンの準備と基本的にそれぞれがやりたいことを自由に作業するスタイルとのこと。

田嶋さんは、花の色が分かるよう苗に、しるしつけを行っていました。

「枯れちゃうと分からなくなるでしょう?誰かがやらなきゃと思ってたの」と。先を見据えた、今しかできない重要な作業ですね。

(白いニゲラを括ります)

メンバー最年長89歳という井田さんは、実のついたジューンベリーの枝を剪定。「歳だね〜」と謙遜しつつ、ハサミで太い枝を切る力、すごいです…。

(緑に赤い実が映えるジューンベリー。6月に実るからJune Berryというらしい)

若松さんはタイルの隙間に生える雑草取り。「取ったほうがいいかな〜って思ったから」とのこと。

若松さんはこの活動に参加されて約2年半ほど。元々植物画を描くのが趣味で、色々な植物が見られるこの公園が気になり訪れていたそう。当時草木に名札がなかったことに、「つくってみては?」と提案したところ、「じゃあ、メンバーになってつくって!」と声をかけられたんだそう。今や草木のほとんどに手書きの名札がつけられています!

一目惚れした草木に名前がついていると、とっても助かりますよね。

(若松さんお手製の手書き名札)

落合さんと重さんはバラが咲く周辺の草取りを。重さんはバラの育成から剪定のスペシャリストで、あまり手をかけられていなかった部分を手入れしてくださっています。

若手メンバーのお二人はこのハーブガーデンに惹かれ、参加を始めたそう。「素敵な場所だなと思ったけど、ネットなどにも情報がなく詳細が掴めませんでした!けどオープンガーデンで活動を知って、参加するようになりました。」

(これはあれかな?〇〇かな?と、みんなで話しあって作業を進めます)

オリジナルハーブティーでほっ、とひといき♩

作業の途中は、ガーデンでとれたハーブを使ったハーブティーと代表石井さんのお手製クッキーが振る舞われました。美味しいお菓子・お茶とともにおしゃべりが弾みます。

(この日はレモングラス・レモンバーム・ブラックミントのブレンドティー)

触ってみて!嗅いでみて!食べてみて!

このガーデンで特徴的なものが「Touch me!さわってみて、カオリをたのしんで」のサイン。

ソーセージでよく見かける「セージ」、馴染みあるスパイシーな香り「カレープラント」、爽やかな「ブラックミント」などその種類の豊富さもあり、おっ!と思わず触れてしまう、視覚の鑑賞以上の楽しみがあります。

(イラストもかわいい『Touch me!サイン』)

また、この日ちょうどよく実のなっていたジューンベリーも「よかったら食べてみて!甘いわよ!」とみんなでパクリ。う〜んほのかに甘くてフレッシュ!

実がなると鳥が食べに来るので、こんなふうに活動日にちょうどよく食べられるタイミングはあまりないそうですが、みんなでわいわいと実食するのもこの活動の楽しみなんだそう。

Touch me!サインを置き始めたのは、「来た人におどろいてほしい!」という気持ちから。

キャッチーな団体名 みどりの食いしん坊も「こんなかんじだからよ、」と笑って教えてくださいました。

(みんなで実をとる作業)

おすそ分けから生まれる新しいつながり

作業を続けていると、「八重咲きのドクダミが珍しいですね!」偶然通りかかった女性がメンバーへ声をかけました。ジューンベリーの足元に植わっているドクダミ、よく見ると花びらが数枚重なっています。

メンバーの山口さんは女性の「ずっと探していたんです!」という言葉を聞くと、ちいさなポットに数株入れ、たくさんあるのでよかったらどうぞとおすそ分け。女性はとても嬉しそう。「花が好きなんです。この活動もずっと気になっていたので、次回参加したいです。」と、新しい繋がりが生まれていました。

(何層も花びらが重なる八重咲きのドクダミ)

3名にインタビュー

今年で活動23年目を迎えるM’s Garden みどりの食いしん坊。

作業の後は、代表の石井和子さん、活動初期から参加する山口さん、皆川さんにインタビューさせていただきました。

(左から山口さん、皆川さん、石井さん ブルーを基調としたおそろいコーデが素敵!たまたまだそう)

活動ノウハウをあれこれを聞きました!

長く活動し、便利グッズのおすすめを紹介していただきました。

「最近買って便利だったのは、草取り一番かな!Youtubeにて園芸のノウハウを紹介する「カーメン君」から教わって買いました。」と石井さん。ギザギザの刃であらゆる雑草が簡単に抜けるという園芸用ノコギリが最近のお気に入りに加わった石井さんは、専門家の動画をみて日々勉強しているそうです。

仲間を増やす試みも色々とされている中、効果的なのは「イベント開催」とのこと。1番市民の方に活動を知ってもらえる機会なんだとか。確かに、今日参加されているメンバーも多くはオープンガーデンがきっかけでした。また、最近はインスタグラムも活用(ID:msgarden11)。興味を持ってくれた人が調べた時に情報がしっかりキャッチできるようにしたいとホームページの開設も検討中だとか。

インスタグラム ではガーデンの現在が垣間見れます)

活動のはじまり

活動が始まった経緯はなんだったのでしょうか?

「この地域に引っ越してきて、手続きで市役所通いをしていた時、役所の方に植物がお好きならこういう活動をしませんか?と「みどりのまちづくりレポーター(当時)」への加入を勧められました。当時の市長の方針もあり、緑を大切にする条例が色々出来たんです」と山口さん。

石井さんと皆川さんも、みどりのまちづくりレポーターとして活動、3人はそれからのお知り合いだとか。月1回の講座を受けるなどしたのち、レポーターメンバーのガーデニング好きでグループを結成し、緑の創作園で活動することになったそうです。市と協定を締結して、緑ボランティアとして活動開始。当時のイングリッシュガーデンブームを受け、ハーブの栽培が始まりました。

それぞれの秘訣

22年間という期間続けられた秘訣は?とお聞きすると、

「楽しく」「無理なく」「何でも言い合える仲」「休みたい時は休む」「健康のもと」「花が好き」

と色々なワードが返ってきました。メンバーそれぞれがこの活動にしっかりやりがいを感じていることが分かる瞬間でした。

「みどりの愛護 国土交通大臣賞」も受賞

M’s Garden みどりの食いしん坊の活動は近年、色々な賞も受賞されています。

2020年には第31回「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰を受賞。2021年には「全国花のまちづくりコンクール」優秀賞も受賞されました。「住宅街で市民が身近に楽しめるガーデンという点が評価されました」と石井さん。賞の名に恥じない活動を、ということでメンバーのやる気アップにも繋がっているようです。

(「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰の記念品)

「みどりの発信基地」としてこれからも

地域との交流を深めるオープンガーデンは活動初年度から続けてきました。

「緑の発信基地」として、市民へ苗を配布するのがこのガーデン最大の使命なんだそうです。

たった1回の活動にお邪魔しただけですが、その使命は日々果たされているんだろうと思える瞬間をたくさん見ることが出来ました。

「M’s Garden みどりの食いしん坊」の『M』は
Midori (みどり)・Minnano (みんなの)・Musashino (むさしの)から。

キャッチーな団体名にも植物を地域と楽しむ心意気が、しっかり込められていました。

これからも遊び心たっぷりの皆さんの活動を楽しみにしています!

【基本情報】

団体名M’s Garden みどりの食いしん坊
公園名緑の創作園 (武蔵野市)
面積592 m2
基本的な活動日毎週木曜日10:00~12:00(雨天の場合振替あり)
いつもの活動参加人数10名程度
会の会員数14名
活動内容除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、地域のイベント
設立時期2000年
参加者イメージご近所の花好き、アクティブシニア
活動に参加したい場合は?毎週木曜日の活動当日、公園においでください!
取材・執筆
取材・執筆
高村 南美

大学生の時に公園にはまり、豊島区南池袋公園マルシェにキャストとして参加するなど。初めての街に行く時は待ち合わせより少し早くついて近くの公園に行くのがちょっとした趣味です。公園専門メディアPARKFULメンバー。公園の維持団体向けサービス「PARKFUL Watch」のユーザーサポートとしても公園愛護会のみなさまに接点あり。

大学生の時に公園にはまり、豊島区南池袋公園マルシェにキャストとして参加するなど。初めての街に行く時は待ち合わせより少し早くついて近くの公園に行くのがちょっとした趣味です。公園専門メディアPARKFULメンバー。公園の維持団体向けサービス「PARKFUL Watch」のユーザーサポートとしても公園愛護会のみなさまに接点あり。

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