様々な公園ボランティアを紹介するコーナー「となりの公園愛護会」。公園ボランティアの活動、長く続けている人もいれば、新しく始める人もいます。どんな人が、どんな理由で始めたのか?第13回は、今年の春に公園愛護会を新設して公園ボランティアをスタートしたという方に、活動を始めた理由やその楽しさについてお話をお伺いしました。
子育て世代を中心に、2021年春に活動スタート
藤沢市にある高谷下公園(たかやしたこうえん)。藤沢と鎌倉との市境にほど近い住宅地にある街区公園です。園内は、遊具ゾーンと広場ゾーンの2つのブロックに分かれており、間にはフェンス、周りには様々な樹木が植えられています。遊具ゾーンには、ブランコやすべり台、鉄棒、砂場、といったオーソドックスな遊具が並ぶ、どことなく昭和の雰囲気が感じられるゆったりとした公園です。
こちらの公園でボランティア活動をされているのは、ご近所にお住まいの有志の皆さん。活動が正式にスタートしたのは、今年2021年の4月。スタートから半年ですが、現在のメンバーは42人。ご近所の子育て家族が中心になっているそうで、基本的な活動は、公園の清掃と除草、落ち葉かきなど。愛護会を立ち上げられた代表の木村さんにお話を伺いました。
公園ボランティアの活動を始めようと思ったきっかけは?
「長男が生まれてから、8年くらい、ずっと公園で遊んでいるのですが、ベンチやフェンス・遊具などが他の公園に比べて傷んでいるのが気になっていて。公園は毎日のように使う所でもあるし、三男が生まれて、まだまだ公園にはお世話になる、これからも安心して遊ばせたいと思ったのが始まりです。」
夏はお子さんたちとの早朝の虫取りから1日が始まるというほど、公園とともにある暮らしを楽しんでいらっしゃる木村さん。お子さんたちと公園を利用する中で、危ないと気になった枝を切るにしても、掃除をするにしても、肩書きが必要だと考えたそうです。他にも壊れた遊具やハチの巣などを見つけた時、市役所に要望を出すにしても、なるべくたくさんの人の声を代表した立場の方が届きやすいのではないかと考え、この公園に愛護会がなかったこともあり、地域の人に声をかけて、新しく公園愛護会を結成することにされたということでした。
公園を頻繁に利用する子育て世代だからこその、暮らしに根ざした出発点ですね。
1人でやるより、公園を使う地域のみんなで
まずは、子どもが通っていた幼稚園の送迎バス仲間に声をかけるところからスタート。続いて、同じ公園を利用しているもう一つの幼稚園のバス利用者家族、公園で遊んでいる時に知り合った家族、と徐々に声をかけて輪を広げていったそうです。
市境に近い場所で、公園には隣の鎌倉市から遊びに来る人もいるようです。公園への気持ちがあれば住んでいる地域に関係なく活動参加歓迎!という考えで、いつも遊んでいる子どもたち、その子どもたちに引っ張られてやってくる親御さん、クラブ活動の自主練習、犬の散歩、健康維持やウォーキング、通勤通学で前を通過する人など、いろいろな形で公園に関わっている人たちに参加してもらいたいと思っていると話してくださいました。
申請の手続きについてや、他の公園愛護会がどんな活動をしているのか情報収集をしている時に、みんなの公園愛護会を見つけてご連絡をくださったのがきっかけで、今回お話を聞かせていただくことになったのでした。
まずはフェンスを直したり、砂場の枠の発掘も
正式スタートからまだ半年。しかもそのほとんどは緊急事態宣言の期間で集まっての活動ができない、という状況の中でも、愛護会の活躍は公園の中でキラリと光っていました。
市役所との会話を進めるうちに、まず老朽化したベンチが修理され、ブランコや鉄棒の修理や塗装が入り、見通しの悪い垣根が剪定されるなど、公園が少しずつ目に見える形で変わっていったそうです。一方、破損して穴だらけになってしまっていたフェンスは、市役所ではすぐには修理対応できないということで、愛護会のみなさんで少しずつ編み直しの応急処置を進めているとのことでした。
そして、車で通る時に公園から出てくる子どもが見えづらく危険だったという、公園の入口横のツツジの刈り込み。こういうのはまさに公園を日常的に利用する生活者ならではの視点で、きっと年数回の行政の点検や剪定では気づきにくいポイントですね。
長い年月で砂がかぶって隠れていた砂場の枠を子どもたちが見つけ出し、清掃の一環で掘り起こしたりもしているそうで、公園の元々の姿や設計した人の意図を時間を超えて想像したり、発掘作業は大変ながらもなんだか楽しそうです。
このように市役所公園課と会話する中で、行政と愛護会がそれぞれ力を出し合って、公園がより安全に遊びやすい場所になるのは、公園ボランティアの価値だなぁと思わずにはいられません。
公園の歴史や植生を紹介、アツすぎる公園愛護会のホームページ
高谷下公園愛護会にはホームページがあって、これがまたかなり濃い内容になっています。公園愛護会の活動内容や予定はもちろん、それ以外にも、公園の成り立ちを含む周辺地域の歴史や、公園内にある様々な樹木の紹介、また公園で見られる花や実・セミなどの虫についてのまとめなど、公園をより深く楽しむためのヒントが多く紹介されています。
また、市役所に出した要望の一覧、老朽化したベンチや破損したフェンス、見通しが悪くなって危険になっていた植え込みについても、その後どのように対応されたのか、改修や検討の状況が、分かりやすくまとめられています。
公園のこと、愛護会のことが、とても良く分かり、読み物としても興味深く面白い内容です。近所の公園を中心に、ここまでいろいろなことを掘り下げて楽しめるというのは、ひとつの発見ですね。
半径250mのご近所さんに届けたい情報
「調べてみると”街区公園”というのは、半径250mに住む人が利用することを前提に計画・設計されているようなのですが、高谷下公園は公園の面積も、隣の公園までの距離感も、まさにぴったりで面白いんです。」と話してくださった木村さん。聞いてみると、公園の利用者も半径250m圏内から来ている人が多いようです。この人たちに、地域の情報を届けたい、そんな思いで情報発信をされているとのことでした。
ゆくゆくはこの近くに住んでいる人に向けたフリーペーパーを作りたいという夢についても話してくださいました。半径250m界隈で起こっている超ローカルな話題が書かれたフリーペーパー、面白そうです。
公園を楽しむ解像度を高める
これだけ充実した自然観察や地域の調査を始めたきっかけは、緑地保全NPOによる学びの場にあったそうです。研修で出た「1年を通して同じ場所の生き物や自然の観察をする」という課題に対して、身近にある公園をフィールドワークの場所に選んだ木村さん。公園に生えている植物や見かける生き物を、じっくり観察して、ひとつひとつ調べていったそうです。
そんな風に公園を見てみると、確かにとても多くの種類の樹木や草花があり、季節に合わせて日々変化している様子が感じられます。虫も鳥も、季節によって様々な姿を見せてくれます。
ある日、お子さんが見つけたキレイなチョウは、調べてみると「アカボシゴマダラ」という外来種だということが分かったそうです。元々はアジアにいたチョウを誰かが持ち帰って放してしまったと言われていて、オオムラサキなどの在来種にも影響があるとされ、国立環境研究所でも侵入生物に指定されているのだとか。例えばこんな風に、近所の公園で気軽に見つけたチョウが、生き物と環境のことを考えるきっかけになった、というお話もしてくださいました。環境問題は、気がつかないだけで、身近なところに存在し、影響を及ぼしているんですね。
公園を中心とした地域みんなで、公園のこと・地域のことを考えたい
公園をもっと楽しむことと、公園愛護会の活動をきっかけに、この地域に住む人たちといろいろな会話がしたい。そんな未来への思いも、木村さんが公園愛護会を立ち上げた理由のひとつのようです。
月末の公園掃除は、愛護会員以外でも参加歓迎。本当は掃除以外のことをたくさんやりたい。たとえば「自転車整備の日」みたいなものを作って、地域の子どもたちの自転車のサドルの高さを見てあげたり、簡単な調整やグリスアップをやってあげるというアイデアも。坂道が多い地域ということもあり、ブレーキの利かない自転車で遊びに行かせるのは恐ろしいという親心からのステキな発想です。
ほかにも、藤沢市の公園では花火は禁止となっているようですが、かと言って、公園以外に花火が出来そうな場所も身近にないのが現実。地域の小さなお祭りとして、みんなで手持ち花火を楽しむことはできないだろうか。愛護会が窓口になって、時間、安全、後片付けなどに配慮して、地域の人々と会話をすることで、そんなことも実現可能なんじゃないか。そんないろいろなお話をしてくださいました。
たしかに、公園愛護会を軸に、地域の人々が会話を重ねていくことで実現できそうなお楽しみがたくさんありますね。今後が楽しみです。
【基本情報】
団体名 | 高谷下公園愛護会 |
公園名 | 高谷下公園 (藤沢市) |
面積 | 2,440m2 |
基本的な活動日 | 毎月最終土曜日の朝7:00-8:00に清掃・設備の点検活動 日頃の公園利用時に見回りとゴミ拾い・持ち帰り |
いつもの活動参加人数 | 10-20人 |
会の会員数 | 42人 |
活動内容 | ゴミ拾い, 除草, 落ち葉かき, 施設の破損連絡, 愛護会活動のPR, 新メンバーの募集や勧誘 |
設立時期 | 2021年4月(令和3年) |
参加者イメージ | 子ども / 子育て世代 / その他大人 |