いろいろな公園ボランティア活動を紹介するコーナー「となりの公園愛護会」。皆さんにお話を伺って、その知恵やアイデア・情熱をシェアしています。第8回は、みんなの通り道になっている公園を地域のコミュニケーションの場にしている、こんな愛護会。
清掃だけじゃない、公園の在り方が進化!?
アンケートでこんなコメントをいただいていました。
愛護会発足時は公園の清掃などがメインでしたが、花植え、花名前のポスター、コロナ禍マスクの作り方、次回作業ボランティア日を掲示、本の交換会等々、公園の在り方が進化していると感じます。
地域の公園で、マスクの作り方紹介や、本の交換会まで。清掃はもちろん、それだけでなく公園の在り方の変化への視点がユニークで、発展的な活動が行われている愛護会。「きっと何か面白いことが起こっている!」ということで、お話を伺ってきました。
川崎市宮前区にある平池の谷公園(たいらいけのやとこうえん)。緑地に近い住宅地にある斜面を利用した公園です。園内は、上下2つのブロックに分かれており、上のエリアには水道とベンチ、下のエリアにはシーソーと動物型のスプリング遊具公園、さらに階段を降りるともう一つの入口があり、近くの住民の通り道の役割も担っているという公園。大きなケヤキの木の周りに花だんがあります。
こちらの公園ボランティアをしているのは、ご近所の有志の皆さん。代表の吉永さんと参加されていた皆さんにお話を伺いました。
基本的な活動は、公園の清掃と花だんの管理、除草、落ち葉かきなど。毎月活動日を決めたら声をかけあって活動しています。大きなケヤキの木の周りにつくられた花だんの他、公園の外周を取り囲むフェンスの足元にもぐるりと季節のお花が植えられています。お花の活動のほか、低木の管理や、長い階段の掃きそうじ、秋にはケヤキの落ち葉かきも。
活動しているのはどんなメンバーですか?
「ご近所の有志の方です。この公園は、この坂の上の宅地開発で作られた公園で、坂の上に住んでいる私たちみんなの良い通り道になっているんですよ。」と吉永さんが教えてくださいました。10年ほど前、大規模な宅地開発で49世帯の家が建ったとき、それまで山だったこの場所が公園になったそうです。新しくできた宅地に引っ越してきた人と、元々住んでいた人みんなが使える、バス停や学校への歩行者だけの近道ができ、通学路としても使われているんだとか。古くからお住まいの方に加えて、新しいエリアに住む人々が、声を掛け合って世代を問わず参加。町内会の活動等ではなく、個々人がボランティアとして参加する公園愛護会です。
公園愛護会の活動を始めたきっかけは何ですか?
「公園ができた頃、この公園が地域のコミュニティの場所になるようボランティアを募集しています、という案内を見て申し込みをしました。」便利な近道ができ、通学路にもなっている公園。ここが地域のコミュニティの場になっていったら、どんなに素晴らしいことでしょう。
仲間集めは、近くのお花屋さんが紹介してくれたご近所さんに、思い切って声をかけたところからスタート。ドキドキしながら、インターホンを押して、公園のボランティアを一緒にやりませんか?とお話が始まったそうです。
そこから、周辺の家に公園ボランティア参加募集のチラシを配ったり、お子さんの繋がりから声をかけたりして、徐々に活動の輪は広がっていきます。毎日みんなが通る場所だから、お花があるといいなと思って花を植え、育て、ゴミを拾う、そうやって、細く、長く、無理せずに、10年続けることができたことを話してくださいました。
会話のきっかけになる愛護会活動
公園そうじをきっかけに、地域に顔見知りが増える。それは、ちょうどアンケートでも書いてくださっていました。
年1回花苗提供の植栽時のこと。クロッカスの球根を植えた(小学3年男子)彼が、学校帰り偶然出会った私に「まだ芽が出てないよ〜」と話しかけて来た時は嬉しく感動しました。毎日通学路の公園を通る度に確認しながらの登下校だったのでしょう。心優しい大人になる事でしょう。
お伺いした日は、小学生の親子連れも複数組参加されていました。小さな頃から花植えを手伝っていて、来れる時には毎回参加しているという小学5年生は、毎日通る公園で、花が育っていく様子をみるのが楽しいとも話してくれました。活動を通して世代の異なるご近所さんと顔見知りになったり、子どもの成長をみんなでゆるやかに見守ったり、部活などが忙しくなって活動に参加する機会が減っても、家庭内で「今日公園キレイになってたね」などの会話が生まれたりしていることを教えてくださいました。
公園が地域のコミュニケーションハブに
地域の住民みんなが毎日通る公園では、花を植えれば多くの人がその変化に気づき、少しずつ育ってくる様子を一緒に見守り、楽しむということが日々起こっているようです。次回の活動日程の案内や、公園の花の紹介など、掲示物を通した会話も充実している印象。
花の紹介は、はじめは名前を小さく書いて花の横に挿していたそうですが、ある時から、まとめて写真つきでポスターにすることにしたそうです。花の名前を、写真と一緒に、見頃の時期や花言葉もつけて、花の近くのフェンスに掲示してありました。名前だけでなく、ちょっと気になる花言葉や、いつ頃どんな花が咲くのかなど、いろいろな情報があると会話のきっかけにもなりますね。通る人に、少しでも楽しんでもらいたくて、という思いが伝わってきます。
コロナ禍でマスクが品薄になった時期、マスクが買えず困っている人が多かったので、少しでも誰かの助けになればと、インターネットで公開されていた、手持ちのハンカチを使った簡単なマスクの作り方を掲示したこともあったそうです。心細い時期、そういった優しい情報に救われた人もいたことでしょう。
自治会の公式活動ではないけれど、花の購入のための予算を確保してもらったり、地域のコミュニティの場になるようにと、自治会長に相談して、公園で本の交換会を企画したこともあったそうで、公園活動の幅もどんどん広がっていきます。
私たちの「となりの公園愛護会」で紹介したみんなで水やりするジョウロのアイデアも、すぐに取り入れて実践されていました。以前公園に遊びに来ていた子どもが、両手でそっと水を運んで花に水やりをしていたこともあったそうで、この間早速ジョウロを使って水やりしている親子を見かけたよ、という話で皆さん盛り上がっていました。
公園が、地域の情報の交差点になっているような雰囲気。そして情報と一緒に、ご近所さんの優しさのやりとりが行われているようでした。
活動の楽しみやモチベーションって、何ですか?
「毎日通る場所が、みんなにとって気持ち良い場所であってほしい。そして地域のコミュニティの場所であってほしい。」そんな思いが、この公園でのコミュニケーション量を増やしているのかもしれません。
「お花が育っていくのを見ているのが楽しくて。」自分の家ではできないけれど、みんなと一緒なら教えてもらいながら楽しくできるし、良い気分転換になると話してくださった方もいました。
「公園愛護会があるおかげで、いつも気持ちよく公園を歩くことができるんです。こういった地域の公園を良くするボランティア活動が、地域に与える影響は大きいと思います。そういう活動に関われることは喜びです。いいところに引っ越してきたなあと思います。」というお話をしてくださった方もいました。
中心となって動く人がいてこそ、続ていく活動。新しいことに挑戦しようとする人、アイデアを上手に形にする人、参加する人、感謝を伝える人、いろいろな人の力が合わさって、良い循環が生まれているように見えました。
立場を超えた交流をしてみたい
ボランティア募集の呼びかけにあった「公園を地域コミュニティの場所に」という考えに共感して、始めた公園愛護会の活動。以前に一度、役所(道路公園センター:川崎市の各区に設置され公園管理をしている部署)の人と一緒に公園そうじをしたことがあって、話している中で、立場の違いから、普段知ることのないような、新しい気づきがあったそうです。
区内にも多数の公園がある中、行政職員と一緒に公園そうじをするのは、なかなか難しいことも多いかもしれませんが、より有意義な地域の公園づくりのため、そういった立場を超えてじっくり交流できる機会が、またあるといいな、とおっしゃっていました。
【基本情報】
団体名 | 平池の谷公園愛護会 |
公園名 | 平池の谷公園 (川崎市宮前区) |
面積 | 373m2 |
基本的な活動日 | 毎月1回 |
いつもの活動参加人数 | 8人くらい(年1回の川崎市統一美化の時は25-30人) |
会の会員数 | 5人 |
活動内容 | ゴミ拾い, 除草, 低木の管理, 花壇の管理, 植物の水やり, 施設の破損連絡 |
設立時期 | 2011年(平成23年) |
参加者イメージ | 子ども / 子育て世代 / その他大人 |