2023/5/31

公園花壇の写真集をつくり、ボランティアに配付

杉並区(東京都)

みんなの公園愛護会では、地域の人々や公園ボランティアとともに、公園をより良くしようと頑張る行政の取り組みにも注目しています。

東京都杉並区で、ボランティアがつくる公園花壇の写真集が作られ、ボランティアの人々に配付されているというお話をお聞きしました。

区役所職員がつくる、季節ごとの公園花壇の写真集について、杉並区みどり公園課 みどりの協働係長 西谷淳さんにお話をお聞きしました。

5人集まればOK「花咲かせ隊」と「すぎなみ公園育て組」

杉並区には、複数の公園ボランティアに関する制度があり、多くの人が公園でのボランティア活動に関わっています。その中でも、公園で花壇の活動をするのが「花咲かせ隊」、清掃や植栽の手入れなどを自主的に行うのが「すぎなみ公園育て組」という、名前もユニークな取り組みです。

「花咲かせ隊」とは:地域の人が区立公園で主体的に行う花壇作りなどの緑化活動を区が支援する制度。花の苗・肥料・園芸用品・腕章などを支給・貸与。

「すぎなみ公園育て組」とは:地域の人が区立公園で主体的に行う清掃や植栽の手入れなどの活動を区が支援する制度。清掃用具・園芸用具・ビブスや腕章などを支給・貸与。

どちらの制度も、区と協定を締結すれば、活動に必要な物品の支給や貸与を受けることができたり、ボランティア保険への加入ができたりするというもの。

区内に住む人や働く人が5人以上集まれば結成できるというハードルの低さもポイントで、町会はもちろん、ご近所のお友達グループや、ラジオ体操仲間、商店会、ご家族で登録など、いろいろな人が活動されているそうです。

杉並区の花咲かせ隊とすぎなみ公園育て組の皆さんは、公園ボランティア実態調査2022にも参加くださっていたのですが、楽しい雰囲気のグループ名が多い気がしたのは、制度のネーミングに呼応する部分も大きいのかもしれません。

(梅里中央公園にある梅中花咲かせ隊さんの花壇)

花壇のサイズはどこでも4m2まで

花咲かせ隊制度のユニークな点はもうひとつ、花壇のサイズが4m2までと決まっていることです。公園のサイズにかかわらず、花壇のサイズは4m2まで。そして、年3回配付される花苗は、1m2あたり25株の計算で、1花壇あたり最大100株というもの。

花咲かせ隊の参加申込みをすると、公園のどこに花壇をつくるか?区役所の人と一緒に現場で相談しながら決めた後、区長と協定を締結するそうです。どんな枠をつくる/花壇の枠はつくらないなども、公園の環境や花咲かせ隊のメンバーと区役所で相談しながら決めていきます。

そのようにしてできた花壇に、花咲かせ隊の皆さんは、年3回季節ごとに花苗リストの中から最大100株を選んで、それらの花を植え育てていくそうです。

大きめの公園では、1つの公園に複数の花壇グループが活動するケースもあります。5人で4m2、メンバーが10人に増えたら2グループに分かれてそれぞれ4m2、と活動場所を広げていく方々もいるんだとか。

季節ごとの花苗のリストは、2000年の制度開始以来、これまでの20年以上のやりとりの中から、様々な要望を取り入れて多年草なども入ったものになっているそうです。見せていただくと、それぞれの花の色や高さ、特徴、日向/日陰耐性、病害虫情報、主役や準主役・脇役といった使い方のポイントなど、詳しい情報が写真と一緒にコンパクトにまとまっていました。

同じ面積の花壇に、同じリストから花を選んでも、同じ花壇にならないのが面白いところ。この中からどんな花を選んで、どう組み合わせて、どう植えるか?花の種類の組み合わせやデザインによって、それぞれ個性的な花壇ができるというのも、興味深いところです。

(同じ梅里中央公園にある、こちらはハッピーガーデンさんの花壇)

すべての花壇の1年をまとめた写真集

みどり公園課では、そんな皆さんの春・秋・冬の花壇の様子を写真に撮って、1年分の写真集にして配付しているそうです。

頑張って育てたキレイな花をもっと多くの人に見てほしい、みんなの花壇の様子を見たい、記録として残しておきたい、そんな思いに応えるように、4年前から始まった写真集づくり。

(写真集の中を開くとこんな感じ:花壇ごとに春・秋・冬の様子が掲載されています)

写真の撮影と編集は、みどり公園課みどりの協働係の職員3人で手分けして行っているそうです。

「曇天が良いんですよ。天気を見ながら、その日に行ける人が、自転車で公園を回って写真を撮っています。みんなが見るであろう角度で、花壇全体をありのまま撮影することを心がけています。」と撮影のポイントを話してくださった西谷さん。

全区を北と南のエリアに分けて、2冊の写真集を制作し、各団体に配付する花咲かせ隊の写真集は好評!それぞれの花壇の様子はお互い参考になり、切磋琢磨する材料になっているということでした。

(花咲かせ隊が活動する公園マップや、活動場所の詳細と団体名一覧などの情報もあります)

37年間の区役所勤務の中で、およそ32年公園に携わっていらっしゃるというベテラン職員の西谷さんは、制度のことをはじめ、多くの公園の花壇のことや、晴れよりも曇りの方が良い写真が撮れること、花咲かせ隊の皆さんとのやりとりなど、様々なことを優しく教えてくださいました。

個人で登録できる「みどりのボランティア杉並」

5人集まれば活動が始められる「花咲かせ隊」と「すぎなみ公園育て組」の他にも、杉並区には個人で登録できるボランティア制度があるとのこと。「みどりのボランティア杉並(通称:みボ杉)」と呼ばれているそうで、これもやはりちょっとユニークな呼び名です。

公園ボランティアをやってみたい人の入口や入門編の位置付けで、区役所主導のプログラムに沿って、地域のみどりを守り、増やし、育てていく活動とのこと。

「みボ杉」は、特定の公園での活動ではなく、区内の公園や緑地・いこいの森など、様々な場所で、花壇の管理や野草園の管理、剪定、除草など様々な活動を行いながら、自分にあった活動を見つけることもできます。

たとえば、屋敷林などは、持ち主だけで管理をするのは大変なので、緑の享受を受ける区民みんなでサポートしようと、区役所が仕切りながら、落ち葉掃きを区民ボランティアと一緒に行うそう。

月5回ほどの活動日は自由参加。行ける日に行けば良いという気軽さもちょうど良いようです。退職後、時間にゆとりのできた人が地域のために活動を始めるという方も多いとのこと。

さまざまな場所でのみどりの管理を学びながら体験する「みボ杉」の登録は2年間。その後はひとり立ちして活動してほしいという願いから、最大でも4年間までとなっているそうです。

区立公園以外の民間の施設や都の公園での活動(認定みどりのボランティア団体)と人材の交流なども行われているようで、様々な人々が、様々な方法で、地域のみどりを守っていることがわかります。

花壇づくりに清掃や緑の管理など、自分に合ったスタイルで、気軽に地域の公園ボランティアに関わることができるのは素晴らしいことだと感じました。同時に、花の写真集のように、活動の成果がひとつの形になって記録されたり、多くの人の目に触れ、横のつながりや仲間づくりにも寄与するサポートも、素敵な取り組みだと思いました。


【基本情報】

取り組みの名称花咲かせ隊 写真集
実施自治体杉並区 みどり公園課
事業の目的(花咲かせ隊)区民の皆さんの力で公園の花壇のデザインを考え、植え付けから水やり、草取りなどの日常の世話を行います。区民の皆さんが主体となって花壇づくりを行うことで地域の公園が明るくなります。緑化活動を通して、地域の環境美化コミュニティの醸成を図ります。
取り組みの詳細杉並区ホームページをご覧ください
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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