2022/12/1

公園ボランティア実態調査2022 調査レポート 〜全国自治体編〜

一般社団法人みんなの公園愛護会では、公園愛護会、公園アダプトほか、様々な制度で行われている市民の公園ボランティアに関して、全国の自治体を対象にその取り組みを調査しました。その結果についてレポートします。

【調査の趣旨】

公園愛護会はじめ各自治体で行われている市民の公園ボランティアに関する実態と現状を多角的に把握し、高齢化および担い手不足が課題とされる公園愛護会など住民による地域の公園への積極的な関わりをサポートするための参考にする。

2021年の調査で、全国の自治体における制度の有無や公園ボランティア支援に関する概要を取りまとめた。今回の調査では、公園ボランティア制度のある自治体を対象に、支援に有効な情報や担い手拡大のための取り組みについてアンケートを行った。

【調査方法】

期間:2022年7月~8月

方法:インターネットフォームおよびメール

対象:公園ボランティア制度を有する全国の310自治体 公園ボランティアに関わる担当者

【調査結果】

回答数

回答数:230

回答率:74.2 %

1)公園ボランティア活動の支援について知りたいこと

【Q】公園ボランティアの活動支援について、どんな知見やノウハウが知りたいですか?
  3つまでお答えください。

回答のあった自治体のうち半数以上が、新規の団体の結成が増える方法が知りたいと選択。既存の団体に新しい参加者が増える方法とともに、新しい担い手をどのように増やしていくか?に注目していることがわかった。

加えて、担い手を自治会・町内会以外に広げていく方法企業や保育園・学校など地域住民以外の組織に新しく担い手になってもらう方法など、担い手層の拡大に関する知見やノウハウを求めていることもわかる。

既存団体の活動満足度向上や、連絡の効率化についても一定のニーズがある。高齢化等による担い手不足が深刻な問題であるといったコメントも多く見られた。

2)公園ボランティアの担い手を拡大する取り組みについて

 2-1 地域住民以外の担い手

【Q】公園ボランティアの担い手に、地域住民以外の方はいますか?

地域住民の関わりが大きい公園ボランティア。
担い手を拡大する取り組みのひとつとして、地域住民以外の存在について調査した。

最も多かったのは、企業(65.6%)。84自治体で企業が公園ボランティアの担い手として活動していることがわかった。次に、社会福祉施設小中学校保育園・幼稚園商店会、と続いた。

一方で、担い手は地域住民のみで、それ以外の担い手はいないという所も多い。

 2-2 企業からの支援や関わり

【Q】担い手以外の関わり方として、企業からの支援や関わりはありますか?

地域住民以外の担い手として最も多かった企業。
担い手として特定の公園でボランティア活動を行う以外の関わり方についても調査した。

関わりが ある:12.7% / ない:87.3%

ある場合:詳細を教えてください

  • 樹木や花苗などの寄付
  • 軍手やボランティア用ゴミ袋の寄付
  • 公園ベンチの寄付
  • ベンチや遊具の塗装、施設修繕など
  • 公園ボランティア活動を支える基金への寄付

このほか、特定の花壇を支援するスポンサー花壇への参加、不定期でのボランティア活動参加などのコメントもあった。また、市内の造園業者で結成された組合など、ひとつの企業単独ではなく同業者組合として地域の公園のサポートに関わっている例も報告された。地域の企業が、さまざまな形で、地域の公園を良くするための活動を行っていることがわかる。

 2-3 活動への参加を促すサポート

【Q】既存の団体への参加者を増やすサポートとして行っていることを教えてください

既存の団体への参加者を増やす取り組みとしては、自治体のホームページで各団体の活動や参加方法を
紹介するが最も多く、公園に活動を紹介する看板を設置自治体の広報誌で紹介と続いた。

自治体SNS、地域FM、バスや駅での広告など自治体主導で広報するほか、公園の掲示板やスマホアプリで公園情報や愛護会の活動を担い手から発信しやすい環境を構築しているという自治体もあった。

広報の充実に積極的に取り組む事例がある一方で、コロナ禍のため広報は自粛中というコメントもあった。

 2-4 間口を広げる取り組み

【Q】より多様な人が担い手として参加できるようどのような取り組みを行っていますか?

担い手拡大・公園ボランティア参加の裾野を広げる・より多様な人が担い手として参加するための取り組みとしては、町内会の許可がなくても登録できるが最も多く、登録人数や活動回数の規定がない緩やかな制度で活動開始へのハードルを下げている自治体が多いことがわかった。

立ち上げサポートの充実や、市民ボランティア講習、体験の場づくりや連携の支援など、活動の具体的な第一歩を一緒に踏み出せる取り組みも一定数ある。

スマホアプリやメールを活用して、平日日中の電話連絡が難しい人でも簡単に連絡やコミュニケーションができるようにしたという例もあった。

日本語、英語、中国語、韓国語、ベトナム語など多言語で案内チラシを作成し配布しているというコメントもあった。

 2-5 具体的な取り組み内容

【Q】公園ボランティアの担い手を増やすために行った施策を教えてください。
  以下に、実施した項目があれば、内容をお答えください。(R2,3,4年度)

回答数

1位 WEBサイトに掲載:81件

どこに?公園課、公園での活動やみどりの取り組みのページ、ボランティアページ
なにを?制度・参加方法・実施要項、愛護会がある公園/ない公園の一覧を掲載、団体の活動を紹介

2位 広報誌に掲載:50件

どこに?市の広報誌、区民版、課の広報誌、町広報、社会福祉協議会の広報誌
なにを?愛護会制度紹介と募集、愛護会活動紹介、イベントやボランティア養成講座、都市緑化月間に緑のまちづくりへの参加を呼びかけ
頻度は?年1回、毎年4月/5月/8月/3月、みどり特集の時期、年2回 定期的あるいは不定期

3位 チラシ配布:30件

どこに?役所関係:役所1階・各課窓口・チラシコーナー・支所、土木事務所、公園事務所
市民活動支援センター、地域コミュニティーセンター、公民館、住区センター、社会福祉協議会
 学校、図書館、文化センター、ボランティアセンター
各連合自治会、子ども会、回覧、全戸配布
ショッピングモール、観光施設、駅、バスの待合所情報コーナー

4位 イベント:17件

ボランティア登録者対象園芸講座、樹木剪定講習、スキルアップ実践講座、視察研修会、健康づくり講習会、公園愛護会表彰式、公園愛護のつどい
一般市民対象公園で植栽イベント、収穫体験、種からの花づくり、花壇管理イベントを実施しながらボランティアの担い手も募集
対象限定なし活動内容を紹介するパネル展、緑化啓発イベント

5位 ポスター掲示:14件

どこに?公園(大きな公園、活動のある公園、活動のない公園、愛護会掲示板)
町会掲示板、地区ごとの掲示板
役所(PRスペース、課の窓口)、支所、市民センター
駅、港、バスの車内

エピソード:公園掲示板や町会掲示板、社会福祉協議会の広報誌等を通じて会員募集を行ったところ、興味を持った同じシニア世代の方が活動に参加してくれた。

6位 SNS:6件

ツールは?Facebookページ、Instagram、Twitter、公式ブログ
運用単位は?市の公式アカウント、局の公式アカウント、課の公式アカウント

その他:

  • 実証実験(学校等新たな担い手による活動、新たな担い手と既存団体のマッチング)を実施
  • スマホアプリPARKFULで公園情報や愛護会の活動を発信できる環境を構築している
  • 市民大学で「みどりのボランティア講座」を実施し、ボランティアを始めるきっかけとしている
  • 自治会長や公園の近隣住民に直接制度概要を説明し、登録を呼びかける
  • 頻繁に公園を利用される団体に呼びかけをしている

 2-6  Good News、嬉しかったこと

【Q】公園ボランティアに関するgood news、良かった取り組み(個別団体のこと/自治体としての取り組みでも)、担当として嬉しかったことなどを、ぜひぜひ教えてください!

コメントより一部を紹介

●Good News:

  • 愛護会の清掃活動で公園がきれいに保たれている
  • 定期的、自主的に花苗植栽・除草等に取り組むなど、積極的に活動している団体が多い
  • 活動する公園に愛着をもつボランティアの方が、日々の公園の清掃・除草作業だけでなく、見回り・施設の破損状況等も随時報告してもらえるので、いつも助かっています
  • 地域住民の公園への関心が向上した
  • 日々の清掃などの取り組みのみならず、花植えや樹名板の設置など発展的な取り組みを行う団体もあり、地域の交流拠点として公園を有効活用しているように感じた
  • 「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰の推薦、これまで複数団体が受賞し喜ばれている

●良かった取り組み:

  • 花苗配布による緑化活動で町内の広い範囲で季節の花が楽しめた
  • 刈払機や芝刈機等の機器を貸し出し、愛護会の皆さんに除草作業を行っていただいている
  • 公園ボランティア情報誌の発行:取材に対して、自分達の活動を知ってもらえるとやりがいを感じてもらえた事、発行を楽しみにしてくれる市民が増えた事も
  • ミックス球根の配布:球根ミックスによる花壇づくりの普及により、子どもたちや親、新しい住民の活動への参加につなげる
  • 緑の基本計画に愛護会活動を掲載したところ、活動が活発な愛護会の方々に大いに喜んでいただけた
  • 公園の設計から地域と一緒になって考え、開園に合わせて清掃、除草、花壇づくりだけではなく、遊び道具の貸し出しや見守りイベントなど幅広い活動を行う愛護会が誕生した
  • 人数が減り活動継続に不安があった団体と地域住民及び町内会が連携し、継続的な活動に発展したこと
  • ボランティア団体と一から花壇の植栽を行ったことで、担当されている公園への思い入れを作るきっかけになったように感じました
  • 市ではあまりできないようなイベントを開催してもらったお陰で、普段よりも多くの方に公園を利用していただけた
  • 水辺守の継続的な協力、現地で多様な水草が再生し、カイツブリの繁殖開始、絶滅危惧種のミズアオイの再生など成果がでたこと

●担当として嬉しかったこと:

  • 「公園の花壇が美しい」と地域の方々が喜んでおり、愛護会の方々のモチベーションも上がっているとのお話を聞いたとき
  • 自分が清掃している公園をきれいですねと褒めてもらえ、今では公園清掃が生きがいになっていますと、ボランティアの方からお聞きできたのは担当者として嬉しかったです
  • 植栽完了の写真に、楽しそうに花植えをしている写真があったとき
  • ボランティアの方から活動が生きがい等の実際の声を聞き、公園ボランティア制度の重要性を再認識できた
  • 登録の呼びかけをした結果新規の団体登録があったこと、活動立ち上げから相談のあった団体の活動が軌道に乗ったこと

 2-7 参考にしたい事例

【Q】他の自治体の取り組みについて、良いなと思ったことを教えてください。
また、どんな自治体の、どんな事例を参考にしている/したいですか?

コメントより一部を紹介

●公園ボランティア活動の支援策

  • 物資の提供や機材の貸し出し
  • 横浜市の公園愛護会等コーディネーター
  • 横浜市の職員による公園維持管理に必要な機器の操作や、道具の扱い方などを学ぶための講習会は活動の幅を広げたり、モチベーションアップにもつながるため、参考にしたい
  • ボランティアポイントの活用

●お便りや情報誌

  • 横浜市や大阪市の公園ボランティア情報誌を参考に誌面を作成しています
  • 東京都中央区の花咲く街角事業の「中央区花咲く通信」の取り組みでは、活動紹介や草花管理の方法の紹介をされており、各団体のやる気につながる良い取り組みだと思いました

●公園の利活用

  • 大阪市の公園利活用事業「パークファン」を事例に今後公園利活用のメニュー内容を考えていく上で参考にしています
  • 公園の動植物の観察会や公園マナー啓発は、普段、公園を利用していて気にかけなかったことを知るいい機会だと思った。都内の多数自治体で事例あり
  • 神戸市みなとのもり公園:高架下の公園とニュースポーツを組み合わせて、賑わいを生み出している。清掃から補修まで管理運営委員会が行っている。

3)公園ボランティアについての優先度や取り組み状況

 3-1 自治体行政の中の「公園」

【Q】自治体行政において「公園」の優先度はどのくらいですか?

市長のマニュフェストや議会の施政方針、自治体の総合計画や実施計画などの取り扱いを参考に、自治体行政における公園の優先度についてを聞いた設問。

1)2)あわせて32%の自治体が公園の優先度は高いと回答。3)の整備の優先度は高めも含めると約半数(48%)が公園に対して積極的な姿勢であることがわかった。

3)からは、整備に比べて維持管理が後回しにされているという実態が一定数あることもわかる。

最も多かったのは、4)高くも低くもなく、現状維持(48.5%)であった。

 3-2 担当としての思い

【Q】上記の取り組み状況について、担当者としてどのように感じていますか?

自治体の取り組み状況に対する担当者の思いとして最も多かったのは、2)課題はあるが、おおむね満足している(35%)であった。

満足しているとは言えない場合でも、やっていきたい思いがあったり、現状を変えるべきだと感じる現場担当者は多い。

 3-3 公園ボランティアの取り組み状況

【Q】「公園ボランティア」についての取り組み状況はいかがですか?

公園ボランティアについての自治体の取り組み状況。約2割の自治体が優先度高めで前向きな姿勢で公園ボランティア活動の充実に取り組んでいることがわかった。

最も多かったのは、4)現状維持だけで精一杯(46.6%)。次に、3)優先度は中程度、課題は見えているがどうしていいか分からない(24.7%)という回答が多かった。

様々な主体と協働を進めたいと考えているものの、他の業務も多く人員に余裕がないといったコメントや、コロナの影響により活動が縮小してきているというコメントもあった。

公園ボランティアにどこまで求めるのか?その目的や目標を改めて明確にして、公園の維持管理を考えていく必要があるといったコメントも見られた。


【調査を終えて】

公園ボランティア実態調査2022全体を通してのコメントを、公園ボランティア編の最後に掲載しています。ぜひ公園ボランティア編も合わせてご覧ください。

調査に際し、ご回答くださった皆さま、ご協力くださった皆さま、どうもありがとうございました。

2022/12 一般社団法人みんなの公園愛護会


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公園ボランティア担い手による活動の知恵やノウハウを調査した「公園ボランティア編」のレポートはこちら

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