大阪公立大学の学生が、大阪市の公園愛護会の皆さんの活動を紹介する「大阪となりの公園愛護会」。公園の利活用やランドスケープ設計を学び研究する学生の視点で、公園ボランティア活動を紹介します。
今回、取材に訪れたのは、大阪市生野区にある北鶴ふれあい公園(きたつるふれあいこうえん)です。
歴史ある商店街で有名な鶴橋地域にある公園
北鶴ふれあい公園は、JR線・近鉄線・大阪メトロの3路線が交わり、乗り換え駅として利用客が多いことで知られる鶴橋駅から徒歩3分と非常に駅から近い場所に位置しています。戦後まもない頃から賑わったという歴史ある商店街や市場などが多く、エキゾチックな雰囲気もあり、多くの観光客が訪れるエリアです。

入り口付近はケヤキがわさわさと生い茂り、公園の中に入るとつい走り出したくなるような広さの原っぱがあります。この原っぱからはJR環状線の線路を見ることができ、ひっきりなしに電車が行き交うようすを見ることができました。

公園ボランティア実態調査アンケートでこんなコメントをいただいていました。
どちらかと言えば、大人の公園です。
どういうことなのでしょうか?北鶴ふれあい公園愛護会会長の南本貞彦さんほか、メンバーの皆さんにお話を伺いました。

北鶴ふれあい公園愛護会では、メンバーが徒歩や自転車で集まり、草刈り・落ち葉やごみの清掃などを毎月の定例活動日に行っています。
この日の活動には6名のメンバーが集まっていました。私たちが到着すると、すでに公園前の溝を掃除するメンバーの方の姿も。重い蓋を持ち上げて、落ち葉や砂を掻き出しています。毎月の活動日に溝の掃除をし、一ヶ月分の落ち葉をきれいにするのが恒例なのだとか。またクスノキやケヤキの木が多く、特にケヤキの葉が落ちる秋頃の掃除は大変だそうです。昨年公園の樹木を剪定してもらったことで少し掃除の負担が減ったとおっしゃっていました。

メンバーで役割分担をしながら公園内のごみ拾いや広場の草刈りも進めます。人手がないときは数カ所だけにしたり、夏など落ち葉の少ない季節は短縮して工夫をしています。

公園に落ちているごみにも公園の個性が出ます。北鶴ふれあい公園にはすぐそばにコンビニがあり、購入した食べ物を公園で食べてそのまま捨ててしまう人が多いのだそう。この日集めたごみの中にはファストフードのごみもありました。さらに、本来公園内でタバコは吸えないのですが、この公園ではタバコのポイ捨ても多く、取材中にも公園でタバコを吸ってそのままポイ捨てして去ってしまう利用者がいました。

アンケートでいただいていた「大人の公園」という言葉についてお聞きすると、地域の子どもが少なく、メインの利用者が大人ばかりである公園の現状について話してくださいました。現在は近隣の小学校の学級数が1クラスだけになっているほか、公園の隣を含め近隣に老人施設が2軒あるなど、地域内でも少子高齢化が進んでおり、子どもの利用は少ないとのこと。老人施設の居住者のお散歩にもよく利用されているそうです。
芝刈機で緑の原っぱづくり
大阪市では公園愛護会向けに芝刈機の貸し出し支援があります。北鶴ふれあい公園愛護会では、広い緑の原っぱのお手入れのため、月に一度の活動日に合わせて真田山公園事務所から電動芝刈機を借りて草刈りを行っています。この日は広場の半分ほどの草刈りをしました。

タンポポやシロツメクサが咲く広場なので、この時期は特に近隣のお年寄りから「見頃なのに刈るのはもったいない」という声も上がるそうですが、つまづいてしまう恐れがあることや、伸びきってしまうと夏場に刈りにくくなってしまうので、安全や夏のことを考えて春先からこまめに刈っているそうです。この広場は犬の散歩にも使われるので、歩きやすい場所にすることは公園を利用する人たちのために重要な要素になります。

南本さんやメンバーで交代しながらどんどん草刈りを進めます。この日は少し湿気があったので、芝刈機の中ですぐに草が絡まったりへばりついたりしてしまい、5分に1回ずつ芝刈機に溜まった草を掃除する必要がありました。タイヤにも刈った草がまとわりついています。

こまめに芝刈機を掃除しながら作業が進むようすを見ていると、みるみるうちに広場の草がきれいに刈り揃えられてしまいました。

写真でもわかる通り、芝刈機が通った場所とそうでない場所の差は一目瞭然です。この日に終わらなかった部分は、公園事務所から芝刈機を借りている1週間のうちに進めるそうです。
また、公園事務所による刈払機・芝刈機等機器の安全講習も受講しており、さまざまな機械を駆使して公園をきれいにされています。

広場には多くのハトがいました。また、夏には原っぱの草への水やりと暑さ対策のため公園内に水をまいていますが(猛暑の中のこの作業も大変です!)、水まきが終わるとハトがその場で水浴びをしているようすを見ることができるそうです。
公園内ではハトに餌をやる人がいるそうで、ハトの糞がこびりついた箇所も見られました。
「ハトに餌をやる人は純粋にハトがかわいい、餌をあげたいという気持ちでやっているかもしれないけれど、近隣に棲みついたり糞の被害が出るからね」と南本さんは話します。

毎日会長と二人で公園を育てます
この公園ではふれあい花壇が活用され、公園を花壇で彩ります。この花壇は、公園の目の前にお住まいの藤賀広一さんが、毎日様子を見てお世話をされています。
藤賀さんが花壇のお花をひとつひとつ解説してくださいました。公園愛護会交付金を使って近くのホームセンターでお花の苗を購入するほか、北鶴ふれあい公園からほど近い巽公園にある花づくり広場から苗をもらってきて、お花を植えているそうです。また、大阪市のグリーンコーディネーター資格をもつ方から管理を習い、日々のお世話に活かしているとのこと。


会長の南本さんと藤賀さんは毎日この公園で清掃と花壇のお手入れをしており、公園愛護活動の主力として活躍されています。特に雑草やタバコのポイ捨ては毎日の清掃の賜物で公園内はとてもきれいでした。他のメンバーも町内会の役員を中心に月1回の活動を継続し、仲を深めています。
若い人が少なく、町内会のメンバーが年々減っており活動が大変になっているとのことでしたが、それでも活動を続け、毎日清掃をする南本さんと藤賀さんへの尊敬がメンバーの皆さんのお話からひしひしと伝わってきました。
「会長さんのおかげで公園がきれいになっている」「リーダーが引っ張ってくれている」「月1回しか活動していないから…」と謙遜するメンバーの皆さんにも、南本さんが「無理せんといてや~」「やりだしたらキリがないからな」とメンバーを気づかいながら明るく接している姿が印象的でした。
世代を超えて人と人をつなぐ愛護会活動
シニア世代が多く活躍する北鶴ふれあい公園愛護会ですが、若い方もいらっしゃいます。お話をお聞きすると、3~4年ほど前に近隣に引っ越してきて、地域の人がやっている様子を見たときに、お年寄りばかりで手伝おうと思って参加したとのこと。公園愛護会のメンバーは昔からこの地域に住んでいる人が多いので、みんなと仲良くなれたらという思いもあったことを教えてくださいました。
参加するようになって顔見知りになり、やがて仲良くなると、何かあったら頼れる関係にまでなったといいます。一軒家で周りに知人がいない中でも、公園愛護会の活動はコミュニケーションの場になっているそう。お仕事で関わる子どもたちをこの公園に連れてくると、子どもたちも愛護会メンバーもみんな喜んでくれるので嬉しいというお話も聞かせてくださいました。
「自分の住んでいる地域に貢献したい」「地域の人と仲良くなりたい」という思いが公園愛護会での活動に繋がり、人と人を結ぶきっかけになりました。この方にとっては愛護会活動を通した嬉しいことはそれだけでなく、お仕事で関わる子どもたちにも喜んでもらえていることがやりがいになっているそうです。

もはや哲学?公園愛護会活動の極意
毎日公園の清掃と花壇のお手入れをして、愛護会メンバーから信頼を集めるリーダーである会長の南本さんに、愛護会活動のやりがいや楽しさを感じる瞬間を聞いてみました。すると、なんとごみ拾いにおける極意が。
「ごみ拾ってたら、ごみの方から『ここにいますよ、拾ってください』という声が聞こえるようになるねん」
おとぎ話のような言葉ですが、お掃除を極めた南本さんにはごみが拾われたがっている声が聞こえているそうです。ごみも捨てられたくて捨てられているわけではないのですね。
北鶴ふれあい公園では公園内にタバコの吸い殻が多いため、喫煙所を設置できないかと考えておられるようです。みんなが快適に使いやすい公園になるように行動を起こしたり工夫を重ねたりしていく北鶴ふれあい公園愛護会の皆さんは、今後も愛される北鶴ふれあい公園を作り続けてくださるでしょう。


【基本情報】
団体名 | 北鶴ふれあい公園愛護会 |
公園名 | 北鶴ふれあい公園 (大阪市生野区) |
面積 | 2,500m2 |
基本的な活動日 | 毎月第3日曜日 |
いつもの活動参加人数 | 5-6人 |
活動内容 | ごみ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、利用者へのマナー喚起、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、子ども向けイベント、高齢者など地域の声がけ |
設立時期 | 平成9年8月1日結成 |
主な参加者 | 地域の有志、町内会の役員、子育て世代 |