2022/8/3

熱い想いと地道な活動で生まれ変わった公園 そして次の世代へ

美しが丘公園(横浜市)

各地の公園ボランティアの活動を紹介するコーナー「となりの公園愛護会」。行政と地域NPOが協働で愛護会のサポートをする取り組みについて、先日「地域のNPOだからこそできる行政と公園愛護会のサポート」の記事でも紹介しましたが、地域の営みに光を当てるローカルウェブメディア「森ノオト」さんとのコラボレーション第4回。愛護会の設立と、区内で最も汚いと言われていた公園がイキイキとした人気の公園に生まれ変わったストーリーです。(本記事は2018年に取材したものです。その後、メンバー構成も変わっています)

横浜市青葉区とNPO法人森ノオトは、花と緑を通じた対話(=ダイアログ)を通して、花と緑の活 動を始めるきっかけや、活動をしている人同士のつながりをつくる、「フラワーダイアログあおば」 事業を協働で行っています。この活動の一環として、NPO法人森ノオトが地域のボランティアの みなさんを取材した記事をご紹介します。

>> ウェブメディア『森ノオト』

美しが丘公園愛護会の皆さん

東急田園都市線たまプラーザ駅北口からまっすぐ歩くこと10分。今ではたくさんの人で賑わう美しが丘公園が「青葉区で最も汚い公園の一つ」(土木事務所)と言われていたことを知っていますか?そんな公園がどうやって今のようにイキイキとした公園に生まれ変わっていったのか、公園愛護会の方々にお話を伺ってきました。

私と美しが丘公園との出会いは5年ほど前。

大型遊具やログハウスもあったため、引っ越してすぐ子どもを連れて遊びに行きました。それから息子が幼稚園の間、ほぼ毎日何時間も過ごしていた場所なので、我が家にとってとても馴染みのある公園となりました。

(美しが丘公園のシンボルツリーであるヒマラヤ杉。毎年11月下旬頃、点灯式が行われ、イルミネーションで彩られる)

そんな美しが丘公園のお話を聞けるということで、今回公園愛護会の町田威さん、辺見真智子さん、須田春雄さんにお会いしてきました。

冒頭でお伝えしたように、美しが丘公園が生まれ変わっていったのには、この熱い想いを持った3人のキーマンの存在があります。

辺見さんと町田さんが、公園愛護会の活動につながる美しが丘連合自治会の活動を始めたのが平成14年頃。その時すでに連合自治会の役員だった須田さんが世代交代を図り、より良い方法を模索していく中で、町田さんや辺見さんなど数名の若手を新たなメンバーとして迎えたことが今の美しが丘公園愛護会の始まりでした。

(左から、町田威さん(美しが丘公園愛護会会長)、辺見真智子さん(美しが丘連合自治会会長)、須田春雄さん)

当時、どの単位自治会にも属さない広大な美しが丘公園は、地区の公園として、連合自治会長が同時に公園愛護会長を兼ねていました。しかし、連合自治会として防災や防犯の事業を次々立ち上げるなかで、なかなか公園までには手がまわらなかったそう。

翌年の平成15年、商店会や自治会が協力して、毎月一回清掃をする「クリーンたまプラーザ」という試みを開始したことや、同時期に横浜市が市内の家庭ごみ排出量を13年度に対し22年度までに30%削減する「横浜G30プラン」が提唱されたことなどもあり、周囲のゴミに対する意識が変わっていきました。

しかしそんな活動もむなしく、公園の利用者がどんどんゴミを捨てていくので、とうとう美しが丘公園は「青葉区で最も汚い公園の一つ」(土木事務所)と言われるほどになってしまいました。

そんなころ、平成18年に須田さんが連合自治会副会長を退任したことをきっかけに、自治会をリタイアした方など、須田さんを慕う地域の人たち数名が公園愛護会の花壇班を結成。

青葉土木事務所の第1号公園コーディネーターの応援のもと、石ころだらけの土地を掘り起こし、均し(ならし)、花壇を28面ほど作り、花が植えられるまでになっていきました。

そしてその花壇作りが功を奏し、ゴミを捨てていく人がすっかり減り、だんだんと今の姿に近づいていくことになったそうです。

(現在老人会の6名が花壇班として活動しています。バス通りにある花壇11面のうち2面は近隣の美しが丘中学校の生徒が年に2回花を植えに来てくれている:取材当時)
(このひまわりは93歳で亡くなるまで花壇班で活躍してくださった飯島忠雄さんから受け継いだ種から咲いたもの。飯島さんは代々美しが丘に住んでいた農家の方。須田さんは種だけでなく飯島さんの想いも受け継ぎ、愛護会の活動を続けているのだと語ってくれました)

この美しが丘公園、地域の人々に密着した「街区公園」でなく、少し広いエリアの利用者のための「近隣公園」という位置づけのため、「誰かがやってくれるだろう」と皆が思い、「当事者意識を持ちづらいことで、なかなか公園愛護会の活動に関わろうとしてくれる方がいないのが課題」だと町田さんは言います。

(7月1日に除草作業があり、120名近くの参加があったが、そのほとんどが日ごろ多目的広場を利用している団体(今回参加していたのは少年野球チーム、成人ソフトボール、ママさんソフト等)や、老人会、自治会、商店会の方々への声掛けによるもの。町田さんは、もっと一般の方にも参加してもらいたいそうです)
(小学校でもらったハーブボランティアのチラシを見て参加された方の姿もありましたが、一般の方は2組ほど)

活動を開始した頃から15年近く経ち、現愛護会のメンバーの高齢化が進んでいる中、これからの公園のことを考えると、若い世代に愛護会に参加して欲しい、という思いが3人にはあります。

現在、美しが丘地区では連合自治会の主催で桜まつり(4月)や盆踊り(7月),防災のつどい(10月)、美しが丘公園落ち葉清掃(11月)、年末防犯パトロール(12月)など、年間を通じてさまざまな地域行事が開催されています(取材当時)。多くの方が参加しますが、イベントから自治会活動や公園愛護会活動への参加に結びつくことはあまりないのだと町田さんは言います。

かく言う私も、そうしたお祭りなどのイベントには参加しながらも、「自治会や公園愛護会活動は、たくさんの年配の方々で組織されたもので、育児で手いっぱいな自分には縁遠いもの」と思い、参加しようと思ったことはありませんでした。

しかしそんなイメージとは裏腹に、公園の整備のような地域活動は、本当にごく一部の方の善意と熱意で成り立っていていること、そしてたくさんいる周辺住人のほとんどがそのことを知らずにいることが今回の取材でわかりました。

そして「公園をキレイにすることだけが愛護会のゴールではない」と会長の町田さんは言います。

今年、愛護会では、もっと公園を身近に感じてもらおうと、新しくハーブボランティアの活動を開始し、小中学生の子どもを持つ保護者の方々などへの声掛けも始めたそう。

(ラベンダーは3種類、その他、カモミール、タイム、ローズマリーが植えられました。除草作業後、雑草に隠れていたラベンダーが顔を出し、辺り一面ふわっと爽やかな香りが。このハーブを使ったワークショップも何か企画できたら、と辺見さん)

その活動とは別に、現在年に一度公園清掃をしてくれている美しが丘小と美しが丘東小など、近隣に住む子どもたちにもっと美しが丘公園に親しみをもってもらえるように、自然観察や落ち葉たきなど、昔ながらの文化を伝えられるようなイベントも企画したいという思いがあることも話してくれました。

実は我が家、落ち葉を集めたき火で焼き芋をさせてあげたいと思い、昨年方々を調べて探したのですが、なかなか近くで見つけられずにいました。

しかしご近所とつながり、しかるべき手続きをとれば自分の暮らしのすぐそばで実現することができるのだ、ということを初めて知り、地域や人とつながることの面白さを実感しました。

花壇づくりは毎週土曜に行っているそうですが、その他、11月の落ち葉清掃後にはすいとん入り豚汁、年末防犯パトロール後にはミネストローネなどを参加者にふるまうお楽しみの予定もあるそう。

「ボランティアを長く続けていく極意は、できる範囲で活動し、けっして無理はしないこと」と町田さん。「楽しくなけりゃボランティアじゃないよ」と須田さん。

皆さんも気軽に地域のボランティアに参加してみませんか。


【基本情報】

団体名美しが丘公園愛護会
公園名美しが丘公園 (横浜市青葉区)
面積21,832 m2
基本的な活動日毎週土曜日午前(花壇づくりの活動)
設立時期2006年
活動に参加したい場合は月一回程度またはそれ以上、作業できる方は、美しが丘公園愛護会(青葉区美しが丘1-15 たまプラーザ団地自治会館)までご連絡を

(取材:中西るりこ(森ノオト ライター卒業生))

*この記事は2018年7月に取材されたものを転載・再掲載しています。


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