2023/2/17

寒空の中でも温かい地域柄がにじみ出る公園

西天満公園(大阪市)

大阪公立大学の大学院生が、大阪市の公園愛護会の皆さんの活動を紹介する「大阪となりの公園愛護会」。公園の利活用やランドスケープ設計を学び研究する大学院生の視点で、公園ボランティア活動を紹介します。

3回目となる今回は、世代を越えて、仲良く楽しく活動する西天満公園(にしてんまこうえん)愛護会の皆さんです。ご近所さんには、愛護会の枠を越えて、自発的に活動する人もいるとのこと。皆さんの仲の良さに心が温まります。

西天満公園愛護会の皆さん

公園ボランティア実態調査アンケートでこんなコメントをいただいていました。

私達が定期清掃をしている様子を見ていた青年が毎朝出勤前に公園の清掃をするようになって早1年以上になります。この姿に刺激されたのか同じマンションに住む女性も彼に同調するようになりました。ちなみに、私たちは昨年度の大阪市社会福祉協議会の『善行賞』の候補に推薦し表彰されました。

大阪市北区の西天満公園愛護会の皆さんの活動にお伺いしました。

西天満公園は、大阪メトロ南森町駅やJR大阪天満宮駅から徒歩5分の場所にあり、広い広場や砂場のほか、ブランコやすべり台といった遊具もあります。遊んだり走り回ったりと、子どもたちが楽しく体を動かせそうな公園です。

公園の中央ではハト時計(?)のハトが公園をジッと見守ります。

(オフィス・マンション街の中にある西天満公園。広い砂の広場が目を引きます)
(公園の中でもシンボルとなる時計のハト:かつては定時になると、小鳥の鳴き声やメッセージが流れていたそうです)

インタビュー当日。朝の7時から活動をされているとのことで15分程前に伺うと、何ともうすでに公園の中や外で落ち葉を掃除する人の姿が。後ほど伺ったところ、皆さん6時半から掃除を始められていたそうです、早い!

(寒空の中、皆さん黙々と落ち葉をかき出します)

会長の黒田益弘さんと、この日清掃活動をしていた井筒由裕さん、亀井一郎さん、今井健太郎さん、井出一二三さん、植月正起さんにお話を聞きました。

オフィス・マンション街にぽっかりたたずむ西天満公園

大阪市北区にぽっかりとたたずむ、ここ西天満公園。周りはオフィスやマンションに囲まれています。
地域の交流の場になっていて、ご近所さんはもちろん、保育園や幼稚園の子どもが遊びに来たり、小学生が夕方に遊びに来たりします。オフィス街の中にあるため、お昼には近くで働く人々の休憩の場としても使われます。

公園の中にソメイヨシノの木があるので春はお花見の場として活躍、今はなくなったそうですが夏には盆踊りも開かれていたのだとか。

そんな西天満公園での活動は、今は落ち葉やごみの掃除がメインだそうです。コロナ禍になって、公園を使う人が増え、お昼にはタバコやお弁当の空き箱、夕方にはビールの空き缶をポイ捨てして行くようになり、ごみの量が増えたのだとか。それほど、屋外の休憩の場としてよく使われているんですね。

昔はこの公園では、ご高齢の方々が掃除などの活動をされていたそうです。そのうち、活動できなくなった方から徐々に辞めていき、ついにはメンバーが2人になってしまいました。

「このままでは公園が死にそう…!」

危機感を覚えたご近所の方が自発的に掃除に参加するようになり、そこから1人、2人と増え、今ではメンバーが10人以上になったのだとか。

最近はまたメンバーが減ってきているそうですが、「今のままでも十分、みんなで協力してやっているから。」との力強い声が。メンバーの皆さんの団結力の強さを感じます。

この日、皆さんは1時間半ほど落ち葉を掃除されていました。公園の周りの溝に溜まっていたイチョウの葉も…このとおり!すっかりキレイになりました。

(公園周りの溝の掃除前(左)と掃除後(右):落ち葉がなくなってスッキリしました)

皆さん楽しそうに声を掛け合い、協力しながらどんどん落ち葉を集めていきます。集まった落ち葉は大きなごみ袋に10袋以上も。1時間半でここまで集められるのは、やはり皆さんで協力し合った賜物ですね。

(落ち葉の山、制作中)

自由に楽しく活動する皆さん

このように和気あいあいと行われている活動ですが、どのような方が来られるのかお聞きすると…「自由」だそうです。来たい人が自由に掃除に参加するそうで、「愛護会」という枠にとらわれず、皆さんが自発的にやりたくてやっているとのこと。

今回お話を聞いた中で一番若い今井さんは、近くに所属する団体があり、他のメンバーもよく手伝いに来られています。また、アンケートに登場した青年や女性の方も自発的に活動されていたようで、女性の方はおととし引っ越されて今は来ていませんが、かつては不定期で朝に掃除をされていたそうです。

大阪市社会福祉協議会の「善行賞」も、ご近所のマンションの住民の方が朝4時から掃除を続けられた結果、受賞されたそうです。真面目でアクティブな方がたくさん住んでいる地域なんですね。

(世代関係なく力を合わせて落ち葉を集める様子。確かにこんな姿を見たら一緒に活動したくなるかもしれませんね。)

公園だけじゃない、元気でアクティブな活動の数々

「今でも外ばかり出てるよ。」と語ってくださったのはこの日の紅一点、井出さん。この公園愛護会の活動以外でも、地域の活動に積極的に参加されているそうです。老人福祉センターのボランティアに行き、週2回、60歳以上の方と一緒に健康のための「100歳体操」に参加したり、朝には交差点で学童の見守り活動をされたり。

他の方も、朝の交差点での学童の見守りや、ボーイスカウトに参加されていたようで、アクティブな方が多くて驚きです。自分のやりたい活動に積極的に参加することが元気の秘訣なのかもしれません。

楽しいのが一番!心温まる交流の場に…

今回のインタビューで印象的だったのは、やはり皆さんの仲の良さ。

世代は違えど、お互いを「息子みたいなもんや」、「両親みたいなもんや」と言い合うほどです。普段からあだ名で呼び合ったり、冗談を言って笑い合ったり。転勤で引っ越しても、引っ越し先に訪れる時には電話で連絡を取って会うこともあるのだそう。

このような仲の良さは地域全体にも広がっています。

お話を聞いたこの場所は、西天満公園からすぐ目の前にある喫茶店、「珈琲苑」さん。皆さんは、毎回活動の後に、こちらで朝食をとられるそうです。お店の方も西天満公園愛護会の活動を応援されています。ご近所のお店も一緒になって公園愛護活動を支えているなんて、地域の温かさを感じずにはいられません。私もコーヒーをいただきましたが、寒い日だったこともあり本当に美味しく、沁みわたりました。

(皆さんで「珈琲苑」さんに入っていく様子)

地域の住民の方は子ども達に対する目も優しいそうで、見守りや声掛けも自然に行われているのだとか。子どもからも親しまれ、信頼関係で結ばれているそうです。本当につながりの強さを感じる、温かい地域柄なんですね。

メンバーの皆さんから一番よく聞かれたのは「自由に楽しくやっている」との声。今のメンバーになって10年以上経ち、皆さんで会うのが楽しみでやりがいになっているそうです。

会長の黒田さんは、活動を始めたきっかけをこう話してくださいました。

「24年前に公園の前に引っ越してきた頃、周辺の地域の人となじむにはどうしたらいいだろう?そう考えていた時、ふと公園を見ていたら清掃活動をする人の姿を見つけたんです。これなら!と思って、今の愛護会に入って活動を始めました。」

(会長の黒田益弘さん)

活動するにあたりご苦労されていることをお聞きした時、皆さん「あんまりないなぁ」と答えられたのには驚きました。しかし、それは助け合いで乗り切れるから。「何とかしてくれへん?」で誰かが助けてくれるから、とのことで納得です。

インタビュー中には皆さん何度も、

「自由に楽しくいかな。」

「楽しい1日を送らんと損!」

と口々に語ってくださいました。そんな皆さんだからこそ、楽しんで活動できるのは間違いありません。

(楽しそうにインタビューを受けてくださる様子。皆さん本当に仲が良い。)

インタビュー後、黒田さん、今井さん、井出さんはお昼ご飯にうどんを食べに行くことにしたようです。「また後でな、ふふふ…」なんて笑い合いながら約束を交わす嬉しそうな姿が印象に残りました。

【基本情報】

団体名西天満公園愛護会
公園名西天満公園 (大阪市北区)
面積2,482 m2
基本的な活動日毎月第2、第4土曜の朝7:00~
いつもの活動参加人数7-8人
会の会員数12-13人
活動内容ごみ拾い、除草、落ち葉かき、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、利用者へのマナー喚起、愛護会活動のPR、地域のイベント
設立時期1968年5月
参加者イメージ子育て世代、アクティブシニア
活動に参加したい場合は第2、第4土曜に公園に来てください

(取材・執筆:中元菫)

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