全国さまざまな地域で行われている公園ボランティア。担い手として身近な公園で活動をする他にも、さまざまな方法で公園愛護の活動に関わる人たちがいます。今回は、行政と協働で、公園愛護会をはじめ花と緑の活動の担い手拡大のための PRを行う、NPOの取り組みをご紹介します。
地域メディアの視点で紹介する公園ボランティアの活動
横浜で地域メディアを運営するNPO「森ノオト」さんは、横浜市青葉区と「フラワーダイアログあおば」という市民協働事業を行っています。その一環として、地元の公園愛護会の活動を紹介する記事を書かれているのですが、自然との調和や地域コミュニティを大切に、地域に軸足をおいた暮らしや子育てをする皆さんの視点で書かれる記事の数々は、とても興味深く、私たちみんなの公園愛護会の思いとも近いので、森ノオトの記事をこちらでも紹介する取り組みを始めています。
これまでの森ノオトの記事
>> 桜台公園は自慢の公園!〜桜台公園の「公園おじさん」、目黒測さん
>> 楓公園へサンドイッチを持ってでかけよう
>> 小学生に大人気!公園で学習の支援に取り組む 荏田猿田公園
そんな森ノオトの皆さんが行っている「フラワーダイアログあおば」とは、一体どんな取り組みなのか?地域のNPOと行政との協働はどのように行われているのか?そして、公園ボランティア活動のPRに民間の団体が関わることで生まれる良さとは?など、フラワーダイアログ事業を担当する、森ノオト コミュニティデザイン事業部マネージャーの梅原昭子さんに、お話をお聞きしました。(上の写真の中央が梅原さん、左は事務局長の宇都宮さん、右は編集長の梶田さん)
緑や公園の魅力を発信する行政とNPOの協働事業
2018年から行っている青葉区区政推進課とNPO法人森ノオトの市民協働事業「フラワーダイアログあおば」とは、一体どのような取り組みなのでしょうか。
テーマは、花や緑に関わる次の担い手を育てること。地域の自然や公園の魅力を発信することで、花や緑の活動を市民にもっと広げていこうというもので、大きくは以下のような事業を行っているそうです:
1)花や緑の担い手を取材し記事として発信
2)イベントや学びの場の企画運営
取材記事は、地域の公園で活動する公園愛護会の活動を紹介したり、緑の専門家や企業も含め担い手となる地域の人の顔や思いなどを伝えるものが多く、花や緑を守る活動をキーワードに、地域の担い手にスポットライトを当てています。
取材を通して、地域の花や緑の活動を知り、担い手と繋がることで、まずは横の繋がりのネットワークが出来てきたとのこと。また、記事を通して、新しい担い手になっていく子育て層に活動の魅力を伝え、対話のきっかけづくりを。そして、街歩きイベントや、花と緑について学ぶ講座を開催し、世代を越えた出会いの場や対話の場をつくることを行ってこられたそうです。
地域に暮らす子育て層に届くアプローチ
もともと、環境やエコに関心のある子育て世代のファンが多い、森ノオト。2009年からスタートした森ノオトWEBメディアには、自然との共生、地域や暮らしをテーマにした、読み応えのある記事がたくさんあります。
また、森ノオトでは市民ライターの育成も行っていて、地域の人が書き手となって活躍しています。自らの思いを発端に書かれる記事の数々や、そこから生まれる繋がりは、共感のコミュニティに育っているようです。
森ノオトのライターは、地域で子育てをしている人が多いので、地域に暮らす人の視点で、公園ボランティアの素晴らしさや、行政だけでは伝えきれない情報を、人々に身近なこととして楽しく伝える工夫がされています。
取材をして記事にすることで、子育て層に地域活動を知ってもらう機会が増えているそう。実際に主力の担い手になっていくには10年単位の長い時間が必要かもしれませんが、対話の場があったり、情報が見れる場所があれば、次のきっかけになっていくことを、梅原さんは話してくださいました。
それぞれの活動や人の魅力を伝えていく
1年目は、青葉公会堂での講演会や、緑や街歩きのイベントを行いながら、これまで知り合うことのなかったコトや人を知り、対話する場作りを実施。
2年目は、公園を会場に緑を見て造園家から手入れ方法を学ぶ体験型イベントや、取材をきっかけに繋がった担い手が講師となって花や緑に触れるイベントなどを企画実施し、取材発信と場づくりが発展していったそうです。
手探りで始めた中で気づいたことは、講演会で有名な講師の話を聞いて学ぶだけではなく、活動している人にも話してもらうことの大切さと面白さ。
「公園愛護会の活動をしているような花や緑の担い手の人は、聞けばみんな話したいことがあるし、面白いんですよね」と話す梅原さん。
私もこれまで各地の公園ボランティアの担い手にインタビューをしてきて、大共感!どんな担い手さんも、みなさんそれぞれ続けてきた経験と思いがあって、そこから紡がれる言葉には厚みと深みがあります。
愛護会の伴走支援プロジェクトも
3年目には、ひとつの公園愛護会をモデルに、活性化の伴走支援も実施されています。担い手不足という課題を持ちながらも、意欲的に活動するひとつの公園愛護会と共に、既存の愛護会メンバーだけでなく、地域を巻き込み、近隣住民の力で公園により一層の賑わいづくりを試みようというもの。
約半年間、定期的に会議の場を持って、対話の場の基礎をつくり、その後は地域の当事者だけで自走できるように、伴走支援をしていったそうです。
園芸の専門家を呼んで花を育てる活動の入口を作ったり、公園ファンクラブとしてLINEグループを作って交流しやすくしたり、といった工夫をしながら、森ノオトライターでもある公園利用者に、PTA、おやじの会、町内会、小学校の校長先生や、別エリアからも興味もあるという人など、いろいろな人が参加する場に。
話し合いの機会があると、結束して、雰囲気も良くなるようで、いろんなイベントアイデアが生まれているそうです。その結果、未来図を描いたり、「樹名板を作ろう」「球根を植えよう」「天体観測」など3つのイベントを自分達で企画し成功。活動を知る人や、見ている人が増えている状況で、これからも続いていきそうとのこと。
保木公園愛護会の伴走支援プロジェクトについてのレポート▼
民間の団体が関わることで生まれる良さとは?
「私たちは、担い手ではないけれど、地域の担い手にとっては、まず自分たちの活動について、興味を持って聞いてくれる人がいるということが嬉しいことなんですよね。そこから接点を作れる。さらに、点ではなく、面で見ていくことができるので、良い意味での比較をしながら特徴を捉えて紹介できるし、課題も見えてくる。次の世代にあった活動の仕方を考えるきっかけにもなりますね。」と梅原さん。
一つ一つの活動はそれぞれ自分たちで頑張ってやっているけれど、他の人たちがどうしているのか?を知る機会は多くありません。地域のNPOだからこそ、横の繋がりを広げていける可能性もあるし、多くの活動を見てきたからこそ、客観的な視点で、より多くの人に伝えていくことができることでしょう。
公園には地域活動したい人が関わっていける余地がある
梅原さんたちは、森ノオトの事務所のすぐ近所の公園の愛護会活動もされています。地域の町内会からバトンを渡され、月1回の愛護会活動を仕切っているとのこと。毎月第3土曜に開催している定期清掃の時間を、地域の新しい繋がりづくりの時間にしようと、有志で「ピクニック部」を立ち上げたそうです。地域の人はもちろん、大学生や近くの企業と会話ができるようなイベントの企画もされています。
「緑や土と共にある暮らしをつくりたい人、ご近所さんとの良好な関係づくりや地域のことに興味や関心がある人は、遠くの山にキャンプや登山に行かなくても、家の近くの公園にそのヒントはあるんですよね。近所の公園が、そういう人たちの活動の場になっていくといいですよね。」と話す梅原さん。
高齢化と担い手不足が課題と言われ続ける公園ボランティアですが、緑や花の活動が好きな人や、地域のことに興味関心がある人は、若い世代の中にも当たり前のようにやっぱりいます。でも知らなかったり、入口がわかりにくいという理由で、まだ接点がない人も多いのかもしれません。
公園には、大きな可能性がある。そんなことを思わずにはいられません。
森ノオトさんと同様に、私たちもできることをやっていきたいと思います。
これからも引き続き、森ノオトさんの記事を紹介・転載していきます。
【基本情報】
団体名 | NPO法人森ノオト |
プロジェクト | フラワーダイアログあおば |
協働自治体 | 横浜市 青葉区 総務部 区政推進課 |
事業の目的 | 花と緑を通じて地域の賑わいを創出し、多世代交流の中で、地域に愛着を持ち主体的にまちづくりに関わる市民を支援すること |
取り組みの詳細 | 森ノオト フラワーダイアログ 特集ページをご覧ください |
ウェブメディア『森ノオト』 フラワーダイアログ 特集ページ ▼