2022/6/22

小学生に大人気!公園で学習の支援に取り組む

荏田猿田公園(横浜市)

各地の公園ボランティアの活動を紹介するコーナー「となりの公園愛護会」。公園ボランティア団体の中には、地域の小学校と連携して、授業の支援をしている方々もいます。

地域の営みに光を当てるローカルウェブメディア「森ノオト」さんとのコラボレーション第3回です。

横浜市青葉区とNPO法人森ノオトは、花と緑を通じた対話(=ダイアログ)を通して、花と緑の活 動を始めるきっかけや、活動をしている人同士のつながりをつくる、「フラワーダイアログあおば」 事業を協働で行っています。この活動の一環として、NPO法人森ノオトが地域のボランティアの みなさんを取材した記事をご紹介します。
>> ウェブメディア『森ノオト』

荏田猿田公園愛護会のみなさん

横浜市青葉区内で花や緑と関わる活動をしている方々にスポットを当てて、点在する活動を面的にネットワークしていくシリーズ。今回取り上げるのは荏田猿田公園愛護会のみなさんです。町内にある荏田西小学校と連携して、公園の花壇に花の苗を植えるイベントの様子や、普段の活動についてご紹介します。

東急田園都市線江田駅から徒歩約10分、東名高速道路に隣接した荏田猿田公園は、歴史が好きな人には有名です。なぜなら、はるかむかし、この辺りが武蔵国都筑郡だった時には、政治の中心地、役所があった場所だからです。

土地区画整理の際に、公園含め道路を挟んだおよそ200メートル四方に、「郡衙(ぐんが)」の遺跡が発掘されました。

地域メディア『ひろたりあん通信』の連載「歴史探偵・高丸の地名推理ファイル」2002年8月号によると、郡衙は、今でいう市役所のようなもので、租(そ)や調(ちょう)といった都へ納める税(特産品)を集積し、検査したあと国府に運ぶのが仕事であるとのこと。

沿線の駅で比較すると、ちょっと寂しげな江田ですが、実は、江田から市が尾のあたりは縄文の遺跡も残っていて、古くから人が住みやすかったエリアと考えられます。

律令国家の時代には、街道が集中し、人や文化が交流する重要拠点だったと言われています。なお、「江田」なのか、「荏田」なのか?にも様々な推論があるようです。

(荏田西二丁目には、他に振袖公園と荏田西二丁目公園がある)

荏田猿田公園では、毎月第2第4火曜日に愛護会活動が行われています。荏田西二丁目自治会の環境部の下部組織という位置付けで、2010年に発足して今年で9年目、現在29名の会員がいます(取材当時)。

活動日には毎回15名ほどが集まり、通路や排水溝の掃除や、草刈り、落ち葉や枯れ草の処理、竹林や花壇の手入れなどを行なっています。

愛護会活動が始まったきっかけは、年に一度の業者による草刈りだけでは草が伸び放題で荒れており、治安の悪さにもつながっていたこと。

「子どもたちが安心・安全に遊べる公園にしよう」をモットーに、活動にかかる経費は、横浜市から愛護会への補助金と自治会からの支援、それから新年会やお花見、暑気払いなどの会費でまかなって、継続してきました。

公園全体がなだらかな斜面となっていて、真ん中には広い原っぱが広がっている、下の方に見えるのはバスケットコートのある運動場)

荏田西の住宅街はできてから25年ほど、二丁目の自治会が発足したのも12年前ほどと、青葉区の中では比較的新しい、若いまちです。しかし、愛護会には、農家を営む古くからの住民の方が参加してくれていて、そのおかげで最初の資材が揃いました。

愛護会会長の武内和雄さんは「草刈機の扱いなんかも教えあいながらね。花のことも全然知らなかったから、ここで手入れの仕方を覚えていきました」と語ります。

2015年からは、荏田西小学校の授業の支援として年に1、2回、生徒たちと共に樹名板を作ったり、花の苗を植えるイベントを行ってきました。

また、自主イベントとして、町内に呼びかけて、夏の夜にセミの羽化の観察会を行うなど、地域との連携を積極的にしています。青葉区の土木事務所とも良好な関係を築いています。

(樹名板の裏には、作った子どもたちの名前が刻まれている。写真左奥に竹林があり、その右手には、生物多様性を守るため雑草を刈り過ぎないエリアを残している)
(2018年度は5月29日に、荏田西小学校の3年生4クラス約150名が公園に集合。花の植え付けと落ち葉掃除をするクラスと、竹林で竹皮の掃除をしてから花の植え付けをするクラスの二手に分かれて作業をした)
(一人ひとつ苗を植え付ける。ニチニチソウ、ペチュニア、トレニア、マリーゴールド、色鮮やかな苗が用意されていた)

手慣れた様子でテキパキ作業を終えた子に声をかけると「家でも野菜とか、花とか、お母さんと色々植えているよ」との返事が返ってきました。普段、土をさわることのない子は、戸惑いながらも、愛護会のおじさんや引率の先生、友達の声がけで、無事植え付けを完了することができました。

(次は落ち葉の掃除です。東名高速道路に隣接しているエリアは、日があまり当たらないため昼間でも薄暗い。かつては、辺り一帯に街灯がなく、夜になると懐中電灯を持って歩いたという話も頷ける)
(15分ほどの清掃作業で、こんなにたくさんの落ち葉が集まった。作業を終えた子どもたちの心は既に給食の揚げパンに移っていたのが可愛らしい)
(愛護会会長の武内さんが最後の挨拶で「人数がたくさんいると、あっという間に作業が終わるね。みんなありがとう、助かったよ!」とお礼を言うと、子どもたちからは「公園愛護会に入りたい!」という声がたくさん上がった)

思わぬ愛護会人気には、みなさん苦笑しつつ、とても嬉しそうでした。実際に、荏田猿田公園では絶賛会員募集中ですので、ご近所の方は火曜日の午前中に公園を覗いてみてください。今後は、月2回ではなく、毎週火曜日に活動を増やすそうですよ!

(子どもたちが帰った後に、水やりや追加のお手入れを黙々と行う愛護会メンバー。「集まる人はみな気持ちの良い人で、強制しなくても作業に来てくれるし、仲間割れのような意見の対立もほとんどないんです」と武内さん)
(公園内の竹を花壇のフェンスとして活用する。これも農家の高橋さん(写真右)の知恵で、竹を切って細く割り、両端を少し尖らせて土に差し込みやすいよう加工がされていた。こういう仕事を何気なくできるのがステキ)
(公園内に2カ所ある堆肥置き場では、冬の間に貯めた落ち葉を熟成中。足元にあるものを循環させるしくみが整っている)

荏田猿田公園は、こうして地域の方が丁寧に手入れを重ねることで、人々の憩いの場所に育ってきたのですね。駅方面へ行く人の通り道にもなっていて、取材中もスーツを着たサラリーマンから主婦、学生まで様々な人が行き来していました。

斜面地だったり、エリアごとに趣が違うのも面白く、古代の記憶が息づいていると知ると想像力も刺激されて、さらに楽しい、無限に遊べる場所でした。子どもたちが作った花壇のその後も、ぜひ見に行ってみてください。


【基本情報】

団体名荏田猿田公園愛護会
公園名荏田猿田公園 (横浜市青葉区)
面積8,817 m2

(取材:梅原昭子(森ノオト))

*この記事は2018年6月に取材されたものを転載・再掲載しています。


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取材・執筆
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森ノオト

横浜市青葉区を拠点に、NPO法人森ノオトが運営するローカルウェブメディア。2009年に創刊し、伝えたい思いをもった生活者が書き手となり、広告に頼らず寄付をつのり活動を続けています。2018年度から青葉区と花と緑の活動を通じた対話を生み出す「フラワーダイアログあおば」に取り組んできました。地域のふだんの営みに光を当て、いつもの風景がちょっと違って見えるような記事を送り出しています。https://morinooto.jp/

横浜市青葉区を拠点に、NPO法人森ノオトが運営するローカルウェブメディア。2009年に創刊し、伝えたい思いをもった生活者が書き手となり、広告に頼らず寄付をつのり活動を続けています。2018年度から青葉区と花と緑の活動を通じた対話を生み出す「フラワーダイアログあおば」に取り組んできました。地域のふだんの営みに光を当て、いつもの風景がちょっと違って見えるような記事を送り出しています。https://morinooto.jp/

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