2022/6/16

ボランティアだから楽しく!数々の小さな工夫や便利グッズも

甘沼パノラマ公園(茅ヶ崎市)

各地の公園ボランティア活動を紹介するコーナー「となりの公園愛護会」。今回は、眺めの良い公園で、楽しくほっとする花壇を作っている、こんな公園愛護会の皆さんです。

集合住宅住まいの花好きの皆さん

公園ボランティア実態調査アンケートでこんなコメントをいただいていました。

自分の庭を持っていない集合団地住まいの私にとって、公園を掃除したり、花だんの手入れする時間帯はとてもうれしく貴重です。花だんの花々もさりげなく季節感が出るように種類や色合いに工夫しています。

6月の初旬の活動日に、お話をお伺いしました。

(”オクトスの森”という名前もおしゃれな手作り看板)

茅ヶ崎市にある甘沼パノラマ公園(あまぬまぱのらまこうえん)。大きなマンションの横にある、細長い形の提供公園です。茅ヶ崎市の中でも最も標高の高い地域にあるとのことで、その名の通り見晴らしは抜群。市内の街並みの向こうに相模湾や江ノ島が、晴れた日には伊豆大島まで見渡せるそうです。

こちらの公園でボランティア活動をしているのは、甘沼パノラマ公園愛護会「オクトスの森」の皆さんです。服部惠美子さん、村松章生さんをはじめ、皆さんにお話をお聞きしました。

(茅ヶ崎の街の向こうには海や江ノ島が見えて、まさにパノラマビュー!)

花は地元の生産者さんから直接購入

坂を登り切った頂上にあるこの公園は、マンションの皆さんの散歩コースになっている他、近くの保育園や学童の子どもたちが遊びに来たり、桜の季節はお花見で賑わい、夏祭り(コロナでここ3年は中止が続いています)が行われたり、キッチンカーを呼んだこともあるそうで、地域の人々に親しまれています。

細長い公園内で、入口から奥まで続く通路に沿って、公園を利用する人々の目を楽しませている花壇。この日は年に2回の花の植え替えです。

「花はいつも近くの生産者さんから買い付けているんですよ。生産者さんから直接買うから、いつも良い苗が手に入るんです。今回も、服部さんが今朝買い付けに行ってくれて。」と話してくださった村松さんの横には、いろいろな色のペチュニアや日日草が元気に並びます。

集まった皆さんは、植栽ボランティアの腕章をつけあったり、シャベルやジョウロ、バケツなどの道具を出したり、水を汲んだり、いつも通りの準備を手際良く進めていらっしゃいました。

(クリップとマジックテープの腕章をみんなでつけあって準備完了)

花の配置は、会長の服部さんの担当です。日陰になりやすいこの場所にはこの花を、こっちのエリアは紫に、こっちは赤・白・ピンク・オレンジをモザイクのように。色のバランスを見ながら、次々と配置していきます。

数日前に村松さんが土に肥料をまいて天地返ししておいたとのことで、土はフカフカ。花の位置が決まったら、シャベルで苗のサイズの穴を掘って、根にしっかり水が届くように掘った穴に水を入れ、苗を植えてギュッギュとしたら出来上がり。

(穴を掘る役と、水を入れて苗を入れる役のチーム作業で進めていきます)

以前、お子さんと一緒に公園で遊んでいた時に参加したのをきっかけに、この日も参加しましたという方も。私も一緒にお手伝いさせていただきましたが、初対面でも、一緒に花を植えながら、土に触れたり、花の種類や名前を教わったりするのは楽しい時間ですね。

作業がラクになる便利グッズあれこれ

花の植え替えは、低い位置での作業が多く、足や腰に負担がかかりがちですが、随所に皆さんの工夫が光ります。

まずは、しゃがまなくても、少しかがむだけで、土を掘ることができる、柄が長めのシャベル。細身で先が尖っているので、穴が掘りやすい上、根っこを切るのにも便利なんだそう。

(これがあれば、しゃがまずに土が掘れる!大人気の柄の長いシャベル)

そして、服部さんスペシャルの移動式チェア。座りながら、横移動もスムーズです。細長い花壇の作業ですが、1回1回、しゃがんだり、立ち上がったりすることなく、そのままの姿勢でスイスイ移動しながら作業がはかどります。

(スイスイ移動しながら花苗をレイアウトしていく服部さん)

他にも、オリジナルのひざパッドを活用するメンバーも。簡単に取り外せるウレタンのひざ当てですが、それがあれば、ひざをつく時にラクで、負担が全然違うんだそうです。とても便利なので、片方はお仲間にプレゼントしたんだとか。

(大活躍のひざ当ては、100均で見つけた掘り出しものだそう!)

花植えや草刈りなど低い位置での作業は、身体に負担がかかることも多いですが、皆さんそれぞれ工夫したり便利グッズを活用しながら、楽しく活動していらっしゃいました。

(仕上げの水やり!こぼれ種から芽が出たというヒマワリも元気に育っています)

好きだから、それぞれのペースで続けられる

花好きの皆さんが集まって、おしゃべりしながら楽しく作業をする、春と秋の花の植え替え。その他は、花柄を摘んだり、少し植物を増やしたり、皆さんそれぞれ個人のペースで関わっているそうです。

「ボランティアだから、楽しくね!」と余った花苗を、みんなで分けて、もらって帰ったり、というのも楽しみの一つとのこと。

「ここは、みんながお花を見ていってくれるから」と活動の喜びを話してくださるメンバーさんもいらっしゃいました。

花が好きだから、という服部さんは、県立の辻堂海浜公園で20年ほど花のボランティア活動をやっていたという公園ボランティアのベテランです。80歳を過ぎてなお、畑に手芸にと、お元気に活動されていらっしゃいます。

「こういう作業、私は好きだから、まったく苦にならないんですよ。キレイにしていると気持ちが良いし、ゴミも増えないんですよ。」と笑顔の村松さん。

毎週火曜には、朝およそ1時間かけて、公園内を竹ボウキで掃いて砂を慣らしているそうです。また、草刈機を使っての本格的な草刈りも。

隣接するマンションの業者除草作業日に合わせて行うことで、景色の統一感を守りながら、昔からこの土地にある自然の草花は少しずつ残したりという工夫もされているそうです。

刈った草はしばらく乾かしてから袋詰め。乾かしておくことで、量も減って軽くなって運びやすくなる上、処理する時の環境負荷が小さく済むことを教えてくださいました。優しさを感じるエコなひと手間が随所に感じられます。

(いつもこんな感じでやってます、と竹ボウキで掃く村松さん)

花や土を介して広がるご近所さんの関係

マンションのベランダで植物を育てている人は多く、皆さん楽しんでいらっしゃいます。たくさん増えた花を、公園の花壇の片隅に植えたり、お互いにあげたりもらったりもするそうです。育て方や増やし方の話、季節ごとの変化、共通の話題に事欠きません。

育てていくと増えていく植物ですが、最近は高齢化で、少しずつ減らしている方も多いのだとか。そして、マンション住まいの皆さんにとっての困りごとの一つは、土の処分。土はゴミとして回収してもらえないケースが多く、処分に困るという声もよく聞かれるそうです。

鉢植えで使っている土は、培養土など栄養ある土が多いし、公園愛護会で引き取って、公園の土に一緒に混ぜ込んでやっていくのもいいかもね、なんていう話も出ていました。それが実現したら、助かる人は多そうですね。

皆さんの活動を通して、花やタネ、土、優しさ、いろいろな循環が生まれていました。花や土を介して、ご近所さんとの関わりが、さらに広がる素敵な活動だと改めて感じました。

(坂の上にある眺めの良い公園は、老若男女問わず人気のお散歩コース)
(遊具広場と通路の間は長いベンチになっていて、みんなで並んで座れて楽しい)
(斜面を利用したロングスライダーは、江ノ島に向かってすべっていく感覚!)

【基本情報】

団体名甘沼パノラマ公園愛護会(オクトスの森)
公園名甘沼パノラマ公園
面積1,672 m2
基本的な活動日毎週火曜、花植えは春と秋の年2回
いつもの活動参加人数5人
会の会員数5人
活動内容ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡
設立時期2017年
参加者イメージその他大人
活動に参加したい場合はコロナ禍で広く声掛けしていませんが、マンション内の掲示板でもお知らせしています。よろしかったら公園に遊びに来てください。
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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