各地の公園ボランティアの活動を紹介するコーナー「となりの公園愛護会」。地域の子どもたちを思って、公園をより楽しく安全な場所にしようと活動されている方もいれば、その活動を応援している方もいます。
地域の営みに光を当てるローカルウェブメディア「森ノオト」さんとのコラボレーション第2回。地域で子育てをする親の視点で、公園愛護会の方々の活動を紹介する、温かい記事です。
横浜市青葉区とNPO法人森ノオトは、花と緑を通じた対話(=ダイアログ)を通して、花と緑の活 動を始めるきっかけや、活動をしている人同士のつながりをつくる、「フラワーダイアログあおば」 事業を協働で行っています。この活動の一環として、NPO法人森ノオトが地域のボランティアの みなさんを取材した記事をご紹介します。
>> ウェブメディア『森ノオト』
楓公園愛護会のみなさん
美しが丘西三丁目にある楓公園。トウカエデやイロハカエデなどの木々が悠々と並び、葉が色づく季節には、大勢の人が写真を撮りに訪れます。公園の中ほどには、遊具や広場もあり、すすき野北自治会エリアの中心に位置していることから、多世代の地域住民が集まる場にもなっています。そんな楓公園をこよなく愛する愛護会のみなさんは、「わたしたちは地域の宝だね」と笑い合う何とも魅力的な方々なのです。
出産とともに青葉区へ引っ越してきた私の公園デビュー、それが楓公園でした。ヨチヨチ歩きの子どもが楽しめる遊具があり、目の行き届く公園の広さに、安心して心地よく過ごしたことを覚えています。それから楓公園は、子どもの成長とともに遊び方を変えながらも、わたしたち家族の身近な公園となっていきました。
そんな楓公園で、去年の秋、ベンチの手入れをしていた愛護会会長の仲津和夫さんに出会いました。手入れされたベンチに座りながら「座り心地がいいですね」と話をしたら「ものづくりが好きなんです。木でおもちゃも作っているんですよ」と屈託のない笑顔。
どんなおもちゃなんだろうと想像をしていたら「あの倉庫にありますよ、見ますか?」と公園の倉庫を指さしました。え?と思いながら倉庫の中を見てみると、木製のやっとこやペダルなしバイクなど、立派な作りの木のおもちゃがどんどん出てきて、夢中になっておもちゃ作りの話を聞きました。「子どもたちと遊ぶのが好きで、木のおもちゃ作りをはじめたんです。子どもたちから「おっちゃんあれ出して~」なんてお願いされるんですよ」とチャーミングに微笑みます。
「この前、近所の方が公園でテントを張ってたの知ってる?ああいう雰囲気が僕は好きなんですよ。サンドイッチを持って来て食べていくようなそんな公園がいいな~と思いますね」と目を細めます。
「自治会長さんとも相談しながら、公園の看板には、木に登らない、ボール遊びはやめようという言葉はなるべく書かないようにしています。子どもたちが走り回って遊んでいるのを見ているのが嬉しいので、そのあたりは自己責任でいいのでは、と僕は思うんですよ。ただこの公園は児童公園なので、未就学児くらいのおちびさんも多い。そのくらいの子どもたちが安心して遊べる公園づくりということも大切にしています。」
小学生たちがサッカーをやっていた時に遊具のほうにゴールを作ろうとしていたので、小さい子たちにあたってしまうから、とゴールは片側だけにしてもらうようお願いしたこともありました。それから、サッカーボールが道路に飛んでしまうので、土木事務所にお願いして柵を作ってもらったこともあります。
そのほかにも、仲津さんは土木事務所とのコミュニケーションも大切にしながら、花壇づくりや公園整備にも意欲的に取り組んでいます。腰が痛くならないしボールが飛んできても大丈夫なように花壇の位置を高く設置したり、手入れをしたベンチは、おしゃれなゼブラ柄にしたりと、公園で過ごす人が心地よくなるようなアイディアをたくさん目にすることができます。
「わたしたちは地域の宝」。地域で活躍する愛護会メンバー
公園や子どもたちへ愛情たっぷりにお話される仲津さんの人柄にどんどん引き込まれますが、ほかの愛護会メンバーのみなさんもとても楽しくて愉快な方たちばかり。木のおもちゃや設計担当の仲津さんをはじめ、草刈りや小木の刈り込み担当の林富雄さん、花壇やお花担当の浅見祥子さん、毎日のお掃除担当大原義男さんと、現在4名(取材時)で、それぞれが得意分野を活かしながら活動しています。
林さんは「活動の負担?それはないね。とにかく草をきっちりまっすぐ刈り込むのが、好きなんだよ。ほら、あそこも少し伸びてきているでしょ、ああいうところ見ていると刈り込みたくなるんだよね~。刈り込んだあとにパーっとそろっているのを見ると、ホントに気持ちがいいよ」と笑います。
もともとはパイロットだったということで、公園前の坂道を走る車の危険性について「ここは緩やかな坂道になっていて、抜け道として走る車のスピードが出やすいんです」と指摘します。そこで県警に働きかけてゾーン30(時速30キロの速度規制)として設定してもらうなど、公園に集う人たちの安全にも情熱を注いできました。
そもそも愛護会の活動に参加するようになったのは2013年。自治会の会長となったのがきっかけです。「楓公園愛護会は、すすき野北自治会との関わりが強いんですよ。年に3回の定期清掃や10月のお祭り前の掃除も、自治会の厚生部が連絡をすると120人くらいの方が集まります。掃除をしながらおしゃべりをしてお互いに仲良くなったり、公園がコミュニケーションの場にもなっています」と振り返ります。
また、楓公園愛護会は、平成21年には横浜市から清掃活動に対して表彰されたり、平成30年には東急の「みど*リンク」アクションに認定されて、公園内に藤棚を作ったりと積極的な活動を行っています。
浅見さんは、12年前公園に植えてあるパンジーの花がらが気になって取っていたところを仲津さんに声をかけられて活動に参加しました。
「公園は子どもたちの遊び場だから、花壇をどんどん増やすということだけではなくて、遊ぶ場所も大切にしていきたい」と話します。
「雑草とりをしている時に、地域の方からご苦労様!と声をかけてくださると嬉しいですね。わたしたちも自治会の活動を通して、初めて自治会や愛護会のことを知りましたから。愛護会の活動を知らない地域の人も多いんじゃないかしら」と思いを巡らせます。
子どもと地域のひとが接する機会
大原さんは、自治会の活動で公園の倉庫のカギを預かったことをきっかけに愛護会活動に参加するようになりました。「毎朝7時半から嶮山小学校の学援隊として旗振りをして、家へ帰る途中に楓公園に寄って掃除をするのが日課です。
落ち葉を掃除することで、自分の気持ちもスッキリするんですよ」と爽やかな笑顔で話します。「下校時も公園で掃除をしていると、子どもたちが公園に遊びにやってきて、今日の給食は何だった?なんて楽しく話したりもしています」
学援隊の活動は、10年以上前から続けています。「旗振りをしているときの子どもたちとの会話が、とても楽しいですね。令和2年にすすき野小学校が閉校になるときに、学援隊の活動もなくなってしまうのかな、これからどうしたらいいんだろうと落ち込んだこともありましたが、今は嶮山小学校の学区で活動を続けています。子どもたちからも名前を覚えてもらって、お互いに挨拶をするんです。自分から挨拶する子どもたちも増えてきて、すごく嬉しいですね」と子どもたちを思い浮かべて満面の笑み。
「雨の日の活動はもちろん、雪の日は自宅から学校までを2往復して雪かきをしていたこともあるんだよ、ほんとすごいよね」とほかの愛護会メンバーからも感嘆の声が上がります。
そのほかにも、子どもと地域の人が接する機会が多いほどいいと、毎週木曜日の夕方には、見回り隊としても活動しています。
メンバーのみなさんが愛護会や地域活動に熱心に取り組まれている一方で、すすき野北自治会エリアも近隣地域と同様に、世代交代の時期を迎えています。
花壇の花植えを担当している浅見さんは「去年、まるい形の花壇を2つ作りましたが、花の手入れをやるには時間がかかります。カエデの葉もざっくざく落ちるので、それを掃くのも一苦労なんですよ。ほかにも活動に参加してくださる方がいると助かります」と、話します。
メンバーを増やすことを考えて、新しい試みもとりいれようかとみなさんでお話されていました。
心地よい公園にあるもの
会長の仲津さんや愛護会のメンバーのみなさんは、それぞれ多彩でお話も面白く、あっという間に取材の時間が過ぎていました。みなさんのお話からは、地域に暮らす子どもたちへの自然な愛情を感じて、その思いに度々胸を打たれました。子育てをしていると、一生懸命になるあまりに、息が詰まることもよくあります。今回、身近なところに地域の人たちがあたたかく見守ってくれる場があるんだと知り、ふっと心が軽くなりました。
楓公園愛護会のみなさんは、まさに地域の宝!共働きで子育てに追われる毎日、愛護会に入ろうと考えるとちょっと勇気が必要ですが、公園で花壇の手入れをしていたり、お掃除をしている愛護会メンバーとお話をするだけでも、とても楽しく過ごせると感じました。
公園の遊具で、ヨチヨチ歩いて遊んでいたわが子も今は小学生。これからは、ともに暮らす地域の人たちに思いを巡らせながら、サンドイッチを持って、また楓公園へでかけようと思います。
【基本情報】
団体名 | 楓公園愛護会 |
公園名 | 楓公園 (横浜市青葉区) |
面積 | 2,831 m2 |
(取材:松井ともこ(森ノオト))
*この記事は2021年5月に取材されたものを転載・再掲載しています。
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