2026/8/3

緑を守る活動に気軽に参加したくなる仕組みとデザイン

神戸市(兵庫県)

みんなの公園愛護会では、地域の人々や公園ボランティアとともに、公園をより良くしようと頑張る行政の取り組みにも注目しています。

神戸市では既存の活動に加えて、さまざまな人が多様な形で公園や緑に楽しく関わる仕組みづくりが行われています。この一連の取り組みについて、お話をお聞きしました。

単なる景観から人々の「佇まい」へ。公園の価値を捉え直す

政令指定都市の中で、一人当たりの公園面積・緑の保全区域ともに第1位の神戸市。明治時代の六甲山の植林を始め、緑を守り育てる取り組みにも歴史があります。最近では公園の一部を菜園化する「こうべ菜園プロジェクト」や、企業が集う「緑縁座」、個人でも参加できる「箒衆」など、さまざまな取り組みを耳にするようになりました。

これらの新しい関わりづくりについて、神戸市企画調整局 部長(都市デザイン担当)の本田亙さんと、建設局 公園部 企画課 課長の尾添順さんにお話をお聞きしました。

(左から、4月から新設された企画調整局都市デザイン課の本田さんと公園部企画課の尾添さん)

まずはじめにお話くださったのは、公園の価値を捉え直すことについて。自然があり、誰でも使える、目的不要で使い方自由な公共空間である唯一無二の都市空間である公園を、単なる景観だけではなく、そこで行われる人々の営みも含めた「佇まい」と定義し、つくって終わりではなくハードとソフト両面から処方箋を入れ続け、良くしていく姿勢を大切にされているそうです。

市内にある約1700公園のうちおよそ950公園に、まちの美緑花ボランティア公園清掃ボランティアといった既存の活動はあるものの、後継者がいない、活動が知られていないという課題もありました。そこで「管理=掃除・草刈り」というこれまでの認識を「公園・緑に関するすべて」と改め、いろいろな関わり方と仕組みのデザインを行うことなりました。

そして、緑を支えるのはボランティアだけでなく、公園で遊ぶ・歩く・使うなど、日常の中で関わるすべての人に対象を広げ、みんなでこれからの緑を支えていこうと、間口も広げていこうとしてます。

“1人の頑張り”より“10人のついで”。日常の善意を生かす「箒衆」

これまでの公園管理活動は、団体としてボランティア登録をして活動することが前提でした。 「子どもを遊ばせるついでにちょっと掃除したい」「毎日のラジオ体操のついでにみんなでちょっとホウキを使いたい」という人に、団体を新しく結成したり、既存の団体への加入を勧めても、「そこまでは、、」という反応。このような市民の声から生まれたのが、日常の延長線上の善意を生かす「箒衆(ほうきしゅう)」の取り組みです。

公園内に誰でも使える掃除道具を設置し、公園を利用する人がやりたい時にその道具を使って掃除ができるというもの。登録すればボランティア保険の加入サポートを受けることができます。

「箒衆」のこだわりは、参加してみたくなるデザインです。参加へのハードルを極力低くし、お揃いのビブスや手袋・箒・トング・ちりとりなどのグッズに気分も上がります。

箒衆の倉庫「緑縁蔵」は、市販の物置を市内の木材や廃材でデコレーション。市民と一緒につくるワークショップも開かれました。みんなでつくる過程も楽しく、目を惹きながらも景観に馴染むデザインになっています。

登録は40代が約30%、子どもからシニアまでさまざまな人が登録して活動中。兵庫区の湊川公園でスタートした箒衆の取り組みは、今後ほかの公園にも広がっていく見込みです。

(箒衆の活動の様子:写真提供 神戸市)
(箒衆のための道具が入った倉庫「緑縁蔵」、市内の木材や廃材を利用して市民と一緒につくった)

あらゆる営みを「〇〇衆」と命名!統一デザインで楽しく見える化

さらに神戸市は、掃除をする「箒衆」をはじめ、樹木の伐採や活用をする「樵衆(きこりしゅう)」など、さまざまな行為を「〇〇衆」と名付け、活動を楽しく見える化する取り組みを進めています。

個人を最小単位とした緑のコミュニティ全体を「神戸緑縁衆(こうべりょくえんしゅう)」とし、既存の活動も新しい活動もデザインを統一することで、公園や緑に関わるすべての営みを浮かび上がらせ、楽しく参加できるための仕組みづくりが始まっています。

(緑のコミュニティを「神戸緑縁衆」と名付けて公園に関わる全ての営みを楽しく見える化:神戸市市政調査会資料より)

緑縁衆の衆派は上の図に限らず、さまざまな実験からも生まれているとのこと。たとえば、小学校と地元の公園管理会が連携して、小学校区内にある7つの公園の定期清掃を手伝うとスタンプがもらえるスタンプラリープロジェクトも「印巡衆」と名付けられていました。

印巡衆の「まのっこうえん」プロジェクトは、近所の公園のお手入れを定期的にしている人がいることを子どもたちが知る機会となり、保護者たちも積極的に参加したり、管理会の人たちにとってもやりがいにつながる良い効果があったそうです。

10代〜50代の「谷間世代」を呼び戻す、3つのアプローチ

公園のメインユーザーである子どもたちと自治会やボランティア活動で関わるシニア世代以外の、公園谷間世代と呼ばれる10代〜50代の人たちをはじめ、できるだけ多くの人が公園に関わってみたくなる仕組みも動き出しています。

①こうべ菜園プロジェクト

公園内のあまり使われていない場所に菜園を作り、レンタル農園として市民に貸し出すというもの。現在は3公園でスタートしています。

都賀川公園では、川沿いのあまり使われていなかった場所がローカルファーム大石という菜園になりました。菜園事業者が運営するこのレンタル菜園では、6平方メートルの区画を借りて、自分の好きな野菜を栽培することができるそうで、ナスやトマト、とうもろこし、スイスチャード、いちごなど、さまざまな野菜が育てられていました。ユーザーは40-50代が約70%とのこと。

神戸市では、まちなかの公園・空地・建物の屋上等で農に触れ収穫を楽しむ「アーバンファーミング」が広がっています。こうべ菜園プロジェクトも、各地で審査を通過した優先交渉者が公園の地元自治会や周辺住民と丁寧に対話を進めているそうです。

その中で、現在は区画貸しを主とした形ですが、収穫物をみんなで分け合ったりするテーブルを置きたいという声が出るなど、コミュニティ活動につながる動きが出始めているというお話もありました。

(こうべ菜園プロジェクトでできた都賀川公園のローカルファーム大石)
(チラシがおいてありました:いつでも申し込める月額制で、道具や資材・栽培サポートもあります)

②バスケットゴール倍増計画

プロバスケットボールチーム神戸ストークスの本拠地移転をきっかけに、市内のバスケットゴールを50から100に増やそうという「バスケットゴール倍増計画」も、公園谷間世代を公園に呼び戻すきっかけになっています。

SoooGoodながた西山さんの連載でも紹介されていた神楽公園のバスケットゴールもそのひとつ。中高生が積極的に公園に通い、交流が生まれるきっかけになっているとのこと。神楽公園では、バスケットゴールがきっかけで高校生が公園管理会を結成するという新たな動きも!

バスケットゴール倍増計画は、現在80ほど。ゴールに加えて、3X3ができるコートを各区に1ヶ所ずつ整備し、今年度中に目標の100ヶ所に到達予定とのこと。

(神楽公園では3X3のコートの色を決めるワークショップに高校生も参加:写真提供 SoooGoodながた)

③オンラインで予約できるオープンレンタルスペースで「やってみたい」を後押し

つくしが丘公園では公園内の柵で囲われた一部のスペースを、オープンレンタルスペースとして貸し出しています。つくしBASEと呼ばれるスペースは、エーとビーの2つありどちらもLINEから予約可能。利用料金はクレジットカードのオンライン決済です。

ドッグランとしての利用が80%とのことですが、ボール遊び、BBQ、日曜大工、移動図書館、地域の集会、バザーやフリーマーケット、ヨガ教室やクラフト教室などのワークショップ、カフェ、手作り雑貨販売など、公園でできることの可能性が広がっています。

(オンラインでサクッと借りられるつくしが丘公園のレンタルスペース「つくしBASE」:写真提供 神戸市)

企業もゆるやかにつながる「緑縁座」

企業との共創を進めるため場「緑縁座(りょくえんざ)」も作られ、交流や勉強会などが始まっています。メンバーは、地元神戸の企業を中心とした32社(2026年2月現在)。今年は、5月30日のゴミゼロの日に合わせて市内各地の公園周辺で神戸緑縁座参加企業による清掃活動、”Kobe Park 530(公園をごみ0に)”を行うなど、実践的な取り組みが生まれています。

(Park530の様子:写真提供 神戸市)

まとめ

このように、公園や緑にまつわるあらゆる活動に「〇〇衆」と楽しく名前をつけて、ロゴマークや参加したくなる仕組みのデザインも含めて、一体的に「見える化」していく神戸市の取り組み。

公園に来る“ついで”に、ひとりから参加できる公園清掃「箒衆」をはじめ、利活用の幅を広げる菜園プロジェクトやレンタルスペース、企業が集まる「緑縁座」など、多様な主体がそれぞれのグラデーションで関われる選択肢が用意されています。

公園に来る人が気軽に緑を守る活動に参加したくなる仕組みとデザインを仕掛け、公園で行われる人々の営みそのものを豊かな「佇まい」として育んでいく。そんな神戸市のこれからの緑のプラットフォーム「緑縁 GREEN HUB」の広がりに、今後も注目していきます。


【基本情報】

取り組みの名称神戸緑縁
実施自治体神戸市(兵庫県)
事業の概要神戸市では、主に公園や街路樹などの「緑」を支える人を、清掃や手入れを担うボランティアに限らず、遊ぶ・歩く・使うなど、日常の中で関わるすべての人へと広げていこうとしています。そうした一人ひとりの関わりが、これからの緑を支えていくという考え方です。
この想いをもとに、”緑”を”縁”に市民や企業がゆるやかにつながる関係を「緑縁」と名付けました。企業の連携の場を「緑縁座(りょくえんざ)」、市民の関わりを「緑縁衆(りょくえんしゅう)」と呼んでいます。
取り組みの詳細緑縁衆・緑縁座については神戸緑縁のホームページをご覧ください
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフトしたのち、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフトしたのち、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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