各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、明治時代の別荘地の歴史を今に伝える、藤沢市のこちらの公園です。
かつての庭木が100年の時を超えて見守る中、子どもたちや地域住民が「自分の居場所」として愛着を育む温かな活動の姿と、楽しみながら続ける公園づくりの秘訣を伺いました。さらに、地区内の愛護会がつながる「友の会」の存在も。公園からまちを潤す豊かなコミュニティの形に迫ります。
明治時代の別荘地にある子どもたちに人気の「タコ公園」
藤沢市にある橘公園(たちばなこうえん)。江ノ電石上駅から歩いてすぐの閑静な住宅地の中にある街区公園です。
訪れるとまず目をひくのが、公園のシンボルになっている真っ赤なタコのすべり台。地元の人たちからは「タコ公園」という愛称で親しまれています。見通しの良い園内には、ちょっとしたボール遊びができそうな広場や、ブランコやうんていなどの遊具にベンチ、大きなクスノキやヤマザクラ、マツなどの樹木、季節の花が彩る花壇もあります。

藤沢駅からも近い便利な場所にあるため、近隣の住民はもちろん、毎日複数の保育園児たちが入れ替わり立ち替わり遊びに訪れるという人気の公園です。
こちらで活動するのは、橘公園愛護会のみなさんです。会長の村林勝さんと大田哲夫さん、メンバーのみなさんにお話を伺いました。

湘南の海と緑に恵まれ、明治時代から別荘地として人気を博した鵠沼地区。近くには秩父宮殿下が最期を迎えられた別邸や、名だたる財界人・軍人の別荘があったこと、そして戦後の変化を経て、1960年代の区画整理事業により現在の「鵠沼橘」という住所が生まれたことなど、この地で生まれ育った生粋の地元っ子である大田さんが、地域の歩みを教えてくださいました。
橘公園も、その区画整理事業の際に生まれた公園で、なんと周辺住民が土地を20%ずつ出し合って作られたのだとか。この場所はもともと高さ20mほどの松山で、大きなクスノキやヤマザクラで遊んでいたという大田さんが、土地の変遷を語ってくださいました。鵠沼地区には、平安時代や鎌倉時代からの歴史が残る場所もあるとのこと。
このような公園の成り立ちや地域の歴史を地元の方から直接お聞きできるのは、公園ボランティア取材の醍醐味の一つでもあります。

公園掃除から広がる地域のつながり
マンションにお住まいの村林さんは、「目の前の公園がきれいなら、みんな気持ち良いだろう」という思いで、おひとりで公園掃除を始めたといいます。そんな村林さんの姿を見て大田さんが声をかけ、町内の有志を中心に公園愛護会が結成されました。
毎月第2・第4日曜の朝が定例活動日。愛護会のメンバーにはマンション住まいの方も多く、代々この地に住む人と新しく移り住んだ人の自然な交流の場にもなっているようです。先日、活動20周年で市から表彰も受けました。
「ここは子どもたちの声がたくさん聞こえていいですよ。どんどん遊びにきてほしいですね」と話してくださった村林さん。ご自身の健康維持も兼ねて、活動日以外も気になった時に落ち葉はきなどをされているそうで、いつも持参するという「マイ道具」が詰まったバッグも見せてくださいました。

便利道具が大活躍、安心・安全・快適な公園づくり
お伺いした日は、年末の活動日。この時期の主な作業は落ち葉集めです。橘公園にはヤマザクラなどの落葉樹に加え、大きなマツが多いため、雨風の後はマツの葉が大量に落ちて大変なのだそう。
園内の広場や一段高い樹木エリア、さらに外周の道まで丁寧に掃き進めるみなさん。園芸用ふるいや、穴のあいた「てみ」を使い、落ち葉と砂を上手に仕分けます。尖ったマツの葉で袋が破れないよう気を配りながら、手際よく作業が進みます。
「本当は根元の土に還して栄養にしてあげたいんだけどね」と、樹木への愛着を語ってくださったメンバーさんも。
こうした愛護活動のおかげで、ポイ捨てゴミも減ったといいます。「最近はゴミを持ち帰る人が増えました」との声もあり、公園美化が地域の防犯やマナー向上にもつながっています。




子どもたちも楽しく参加、花植えや樹名板づくり
色とりどりの花壇は、春と秋に地域の子どもたちと一緒に植えています。11月に植え替えた冬の花壇には、パンジーやビオラ、ストックといった花が彩りを添えていました。
花植えに参加した子どもが公園に遊びに来て「これはボクが植えた花だよ」と誇らしげに話してくれることもあると、大田さんは目を細めます。

橘公園にある樹木のほとんどには樹名板がつけられています。これは、近くの保育園の子どもたちと一緒に作っているもので、卒園記念として毎年つけているそう。子どもたちのかわいい文字や絵が書かれた樹名板は、見ているだけでつい笑顔になってしまいます。
「自分の花」や「自分の木」がお気に入りの公園にある。それは子どもたちにとって、地域への愛着の第一歩になりそうです。

我々が楽しまなきゃ!コミュニケーションの場をつくる活動
活動がひと段落すると、お楽しみのお茶の時間です。公園の目の前にあるメンバー宅の庭先にテーブルを出し、コーヒーとお菓子を囲んでのおしゃべりタイムが始まりました。
昔の出来事や、通りの名前の由来、大田さんの子ども時代の秩父宮殿下エピソード、橘公園にまつわるこれまでの話…。楽しい話に次々と花が咲きました。
「我々が楽しまなきゃ、来た人も楽しめないでしょ」と大田さん。活動後には必ず、みんなが楽しむための時間を設けることで、地域のコミュニケーションの場を育んでいます。
町内会館がないこの地域では、公園が活動の拠点。お祭りや夜間の防災訓練もここで行われます。かつてヤマザクラに飛来したニホンミツバチをみんなで見守ったこともあるそうです。
「安心安全な公園はまちづくりの基礎。公園をよくすることは、地域をよくすること」という言葉に、活動の真髄が詰まっていました。

鵠沼地区の公園愛護会が集う「友の会」
鵠沼地区には、市内で唯一、地区内にある17の公園愛護会が集まる連合会「友の会」があります。大田さんはその会長としても尽力されています。
年に2回の集会のほか、市民センターまつりで花苗の販売をしたり、友の会で購入した草刈機を共同利用しているとのこと。草刈機は、扱いがラクな充電式のものをバッテリーもセットにして台帳で管理しているそうです。1つの団体で購入するには高額なものも、地域の複数の団体で融通し合う仕組みは素晴らしいアイデアです。苗の販売も「自宅に花を植える人が増えれば、まちが潤い、みんなの喜びになる」という利他的な思いから続いています。
2月には、地域の魅力を深掘りする「まちづくりミーティング」のテーマとして「公園」が取り上げられるとのこと。地域のみなさんが公園の未来を語り合う、素敵な場になりそうです。


【基本情報】
| 団体名 | 橘公園愛護会 |
| 公園名 | 橘公園(藤沢市) |
| 面積 | 1,291 m2 |
| 基本的な活動日 | 毎月第2・4日曜 朝 |
| いつもの参加人数 | 6-7人 |
| 会の会員数 | 13名 |
| 活動内容 | ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、利用者のマナー喚起、愛護会活動のPR、地域のイベント、他団体と連携したイベント |
| 設立時期 | 20年以上前 |
| 主な参加者 | ご近所の有志のみなさん |