2024/12/19

訪れる人を魅了する花壇の裏側には、数々の実験やスキルの循環あり

舞鶴公園(福岡市)

地域の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、創意工夫と実験を繰り返し、10年以上にわたり広大な公園の花壇を手入れしてきた、こちらの皆さんです。今回は11月の活動日にお伺いしました。

福岡城跡内にある歴史ある舞鶴公園

福岡市中央区の福岡城跡内にある舞鶴公園(まいづるこうえん)は、国有地の無償貸付により設置された公園です。福岡市の中心地天神より徒歩約15分、日本有数の水景公園とされている大濠公園に隣接し、国内外問わず多くの観光客や地元の方々が日々訪れています。公園内にはたくさんの桜や梅の木、立派な藤棚もあり、それぞれの開花の時期には道行く人のフォトスポットにもなっている人気の公園です。

(園内マップ。広大な敷地の中には、陸上競技場や福岡城本丸跡など様々な施設や史跡があります(画像提供:公益財団法人 福岡市緑のまちづくり協会 舞鶴公園管理事務所))

こちらの公園で、三の丸スクエアと三ノ丸広場の花壇のお手入れなどをしているのが、舞鶴公園フラワーボランティアの皆さんです。舞鶴公園フラワーボランティアは、公益財団法人 福岡市緑のまちづくり協会 緑の活動支援事業の活動団体として認定されている団体です。

会員のほとんどが、福岡市認定の「緑のコーディネーター」の資格を持っているという珍しい団体でもあります。「緑のコーディネーター」は、養成講座を受講し認定審査に合格したのち、得意分野ごとに人材バンクに登録し、”花や緑に関する知識・関心を有するもの”として、市民活動の支援を行っています。緑化活動の指導者やアドバイザーなど地域の様々な場面で活躍しています。

舞鶴公園フラワーボランティアの会員の皆さんも、他の場所で花壇整備の活動をしていたり、小学校で生活科の鉢植え講師をされていたりしています。活動メンバーはご近所の方に限らず、早良区や城南区など福岡市内全域より通われているそうです。

(観光客や地元の人で賑わう三ノ丸広場の花壇の春の様子(写真提供:舞鶴公園フラワーボランティア))

舞鶴公園フラワーボランティアは長年の活動実績から、現在では多くのボランティアの受け入れも行っており、この日は企業ボランティアと、個人ボランティアの方も一緒に活動をされていました。会長の前田郁子さんにお話を伺いました。

(左上の黄色いエプロンの方が前田さん。緑のコーディネーターのエプロンをしています)

少しずつ積み重ねた花壇の手入れと観光地ゆえの課題

もともと病院の植栽ボランティアをされていたという前田さん。「福岡市が誇る大濠公園に隣接するにも関わらず、当時舞鶴公園には訪れる人が少なかった。三ノ丸広場には立派な芝生があるのだから、大濠公園から続く道沿いの花壇にビビットなお花を植えて、舞鶴公園に人を呼べないか」と考え、当時受講していた緑のコーディネーターの同期(6期生)と共に舞鶴公園フラワーボランティアを立ち上げました。

それから、知人の紹介で入られた方や「緑のコーディネーター」の研修先として舞鶴公園を訪れ、活動を知り加わった方など、現在総勢20名以上の方が活動されています。毎月第2水曜日と第4日曜日が活動日ですが、前田さんをはじめ、毎日誰かしらは来ているそうです。「朝起きて、行く場所が決まっているとうれしいよね」と前田さんは言います。

活動日は9:45から朝礼が始まり、その日の活動内容と役割分担について代表の前田さんより説明があります。活動内容については、事前にメールでも会員へ送付しています。この日は、会員以外の当日参加の企業ボランティアや個人ボランティアも含めて約30名が参加。これだけ多くの方々を動かすため、その日手入れする花壇ごとにリーダーや担当者を決めたり、事前に植栽の図面を書いて花壇にラインを引いたり、事前準備に余念がありません。

(朝礼の様子。参加するボランティアの方々も含めて活動内容について話を伺います)
(この日は、パンジー、ユリ、ラナンキュラスなどを植えました。大濠公園から続く道沿いの三ノ丸広場の花壇前にて、まずはパンジーの植え方の説明がありました。前日のうちに、花壇内にラインを引くなどの準備をされたそうです)

舞鶴公園フラワーボランティアでは、現在35か所ほどの花壇の手入れをしていますが、旧舞鶴中学校跡地の三の丸スクエアの周囲にある池の周りは草も多く、除草するところから始めました。池の周りや、建物の入り口、周囲など少しずつ手入れをしていき、管理している福岡市との関係性も少しずつできていきました。

(三の丸スクエアの池の植栽。現在はきれいに整備されています(写真提供:舞鶴公園フラワーボランティア))

しかし、観光地ゆえの課題もあります。花壇に看板やロープを設置しても、花壇の中に入り込み写真撮影をし、大切に育ててきた花や植物が踏まれたり折られたりすることがあるのだとか。4か国語での看板設置等の対策をしていますが、なかなか改善されないそうです。綺麗な花と撮影したい気持ちは分かりますし、「私たちが大切に育てた植物と写真を撮っていただいて、思い出として残るのは嬉しいけれど、お花や植物は大切に扱っていただきたい」と前田さんは話します。

(観光客の方にも理解いただけるよう、4か国語で看板を設置しています)
(この日、花壇を踏み荒らされない対策として、踏まれても強い植物を公園の名が刻まれた石の周囲に植えていました。木の柵などは、舞鶴公園管理事務所が設置。困ったことがあれば公園管理事務所が資材を提供したり、市と交渉するなどしてサポートしてくれるそうです)

学びの時間から生まれる素敵な循環

舞鶴公園で多くの花壇を整備しているフラワーボランティアの皆さんですが、緑の活動支援事業の助成金のほか、舞鶴公園で開催されるイベント等に出店した際の収益を運営資金にしたり、夏場はお金をかけずにさし芽でどんどん増えるポーチュラカなどの植物を植えたり、植栽計画や運営を工夫されています。

(4月の藤まつりの様子。舞鶴公園フラワーボランティアの皆さんも出店し、育てた花苗等の販売をしたそうです(写真提供:舞鶴公園フラワーボランティア))

また、福岡市より提供された三の丸スクエアの建物の裏手側をバックヤード・圃場として使用し、購入した苗や球根、全国の花友(お花が好きな友達)からもらった種をまいて育て、株分けや分球(球根を分けて増やす)をして植物を増やす取り組みもしています。

(市より提供された大きな部室。もともと中学校の部室だったそう。中には育苗中の植物や、ショベルなど様々な道具があり、耕運機もありました)
(部室の中で、道具の手入れを専門でする会員さん)

「次はあれやってみよう!」「どうやって増やそうか」と、会員からアイデアが出て、それをバックヤードや圃場で試しているそうです。増やした苗や球根が余った際には、緑のまちづくり協会を通して、ほかの緑の活動支援事業の活動団体にもおすそ分けしています。

(三の丸スクエアの裏手バックヤードには育苗中の鉢がずらりと並んでいます)
(広い敷地内であちこちに指示を伝えるため、自転車で移動する前田さん。「実験が好きなのよ」と笑って教えてくれました)

活動日は、毎回午前9:45から午後15:00ごろまで活動をしています。長い活動時間ですが、午前中は「花壇整備の時間」。お昼休憩をはさみ、午後はバックヤード・圃場での苗植えや収穫などを行う、「学びの時間」と決めて活動されています。

この「学びの時間で、スキルとして持って帰るものがあるからこそ、みんな継続して活動してくれている」と前田さんは言います。帰りに、余った苗などがあれば会員の皆さんに配布することもあるそうです。

ほかの団体でも花壇整備をされている会員が多いからこそ、知識や技術を持ち寄ってアイデアが生まれ、またここで生まれた知識や苗・球根を持ち帰って、各々の地域で広めていく、そういった地域の花壇を彩る素敵な循環ができていました。

(福岡市植物園より譲り受けたラナキュラスラックスの球根を育てたもの。緑のまちづくり協会を通し、緑の活動支援事業の活動団体へ植物園の宿根草の配布についてLineで連絡が来るのだそう(写真提供:舞鶴公園フラワーボランティア))

【基本情報】

団体名舞鶴公園フラワーボランティア
公園名舞鶴公園 (福岡市中央区)
面積42.7ha (その中の35か所の花壇と三の丸スクエアで活動)
基本的な活動日第2水曜日、第4日曜日 9:45~15:00頃(お昼休憩あり)※9:45~朝礼
いつもの活動参加人数25名ほど
会の会員数28名ほど(うち7名が男性会員)
活動内容花壇の管理、除草、植物の水やり、利用者へのマナー喚起、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、子ども向けイベント など
設立時期2013年
主な参加者お花や植栽が好きな地域の皆さん
活動に参加したい場合は舞鶴公園管理事務所までお問い合わせください
取材・執筆
取材・執筆
栗原 香小梨

子どもの頃からTHEインドア派だったのですが、自身の子どもが生まれたことをきっかけに公園に遊びに行くようになりました。"子どもの遊び場"というだけではなく、よく会う知り合いができたり、そこから会話が生まれたり、公園を中心に広がるコミュニティに関心あり。現在は、子ども関連のNPOで活動をしながら、地域の仕事、文化を引き継ぐ方々をテーマにライター活動もしています。

子どもの頃からTHEインドア派だったのですが、自身の子どもが生まれたことをきっかけに公園に遊びに行くようになりました。"子どもの遊び場"というだけではなく、よく会う知り合いができたり、そこから会話が生まれたり、公園を中心に広がるコミュニティに関心あり。現在は、子ども関連のNPOで活動をしながら、地域の仕事、文化を引き継ぐ方々をテーマにライター活動もしています。

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