2024/9/25

互いを認め合う「ルール(仮)」の運用、公園でもっと自由に活動を

草香江公園(福岡市)

地域の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、ボール遊びのマナー問題をきっかけに8年ほど前に地域住民とともに公園ルールづくりに取り組んだ、こちらの皆さんです。9月の公園清掃の活動日にお伺いしました。

住民の声を集めてできた公園

福岡市中央区にある草香江公園(くさがえこうえん)は、市営地下鉄七隈線の六本松駅より徒歩15分ほどの閑静な住宅街の中にある公園です。公園には遊具がなく、広々とした広場が印象的。もともとは地元企業の社宅があった土地でしたが、住民運動によりその跡地はマンションではなく公園となりました。

(社宅があった時より植えられている木々が大きく育ち、木には子ども達と一緒に樹木医に話を聞きながら作成した手作りのプレートがつけられています)

こちらの公園で活動しているのが草香江公園愛護会の皆さんです。活動の様子は、月に一度ほどのペースで「草香江公園だより」を発行し、回覧板で地域の皆さんに発信されています。

(写真も添えられており、活動の様子が分かりやすいです)

お伺いした日は、公園清掃の活動日。公園愛護会の皆さんと、町内会の担当者、地域の子ども会の子どもたちが、おおよそ月に一度(第2日曜日)、一緒に公園清掃をしています。町内会では月ごとに担当者が決まっており、子ども会では会の有価物回収日に子どもたちが公園清掃に参加しています。

(清掃道具は公園の物置に保管されており、公園清掃の日に皆さんに貸し出しています)
(公園清掃の様子)
(気づいた方が落ち葉などを掃除できるよう、箒と鬼熊手は常に立てかけられています)

清掃に参加している子どもたちにお話を伺うと、遊具がないからこそ「ボールを使ったり自分たちで遊びを考えたり、自由に遊べる公園」なのだそう。ほか、ご近所の方の散歩ルートだったり、ペットのお散歩で寄り道したりと、ご近所の方々にとっても、草香江公園は身近な存在のようです。

草香江公園での活動やルールについて、草香江二丁目4区町内会会長の貞弘孝道さんと、草香江公園愛護会の嶽村久美子さん、上利勝美さんにお話を伺いました。

(左から愛護会の嶽村さん、上利さん、町会長の貞弘さん。嶽村さんはこの日お会いできなかったのでお電話にてお話を伺いました)

地域を巻き込んでルールづくりを開始

近年、近隣住民や公園利用者から安全性等の問題が指摘され、ボール遊びができる公園が減少している中、草香江公園ではバットやラケットなどの道具を使用することはできませんが、「やわらかいボール」であればキャッチボールや、フェンスにぶつけなければサッカーボールを使ったボール遊びをすることができます。

公園にはもともと福岡市による一般的な表示「野球やソフトボールをしてはいけません」の看板があり、危ない遊び方をしている場合には注意することがありましたが、ボール遊びもあたたかく見守っていました。しかし、公園利用者がボール遊びをして近隣の家にボールが入ってしまうことがあり、度々近隣住民により問題としてあげられていました。

ボール遊びに関するマナーを中心に公園利用者と近隣住民との間で折り合いがつかず、地域の中で公園利用の問題に関してだんだんと声が大きくなっていきました。子どもたちに”公園で遊ばないように”と伝えるご家庭もあり、次第に公園から聞こえる子どもたちの声が減っていってしまったそうです。

そこで、当初より区役所へ公園利用の問題については相談をしていたそうですが、話し合いによりこの問題を解決できないかと、2015年に公園愛護会の会長嶽村さんが行政にかけ合ったところ、各公園で独自のルールを作成してもよいと聞き、福岡市 みどり推進課(現活用課)やNPO法人九州コミュニティ研究会などと一緒に「活気ある公園づくりプロジェクト」がスタートしました。

問題提議をされていた近隣住民の方々も含めての地域住民へのアンケート(回答数215/小学校にも回答を依頼)やワークショップ、出前講座を経て、1年がかりで「みんなの草香江公園版ルール」(仮)が完成。完成したルール(仮)は、ルールブックとして近隣住民への配布や回覧板などで周知されたほか、公園を訪れた人の目につくように、公園内の物置や看板に拡大されたものが掲示されています。

(物置に貼られているルールに関する掲示物。ルールと合わせて、「ルールのポイント」が併記されており、なぜこのルールが定められているのかなど、公園利用者にとって分かりやすいですね)

例えば、以下のようなルールが記載されています。

アクティブタイム(音を出して楽しく利用できる時間)を設定 8:00~20:00
・散歩などの近隣に迷惑のかかりにくい静かな利用は、時間外でも可能
硬いボールを使用してはいけません(野球・ソフト・テニスボールなど)
・公園で道具を使ってボールを打つようなスポーツは、予測できない場所に飛んでいく場合があります
・素振り等も他の利用者に被害が発生する可能性がありますので、原則として禁止します
自転車やバイクを敷地内に乗り入れてはいけません
・公園でのバイクなどの利用は、騒音の問題と接触などの事故が考えられるため禁止とします
・原則、公園内で自転車に乗る事は出来ませんが、保護者同伴であれば自転車練習に限り可能です
たき火や打ち上げ花火をしてはいけません
・公園でのたき火や打ち上げ花火は、近隣住宅への煙の問題や火災のおそれがあるので、使用できません
・音が鳴る花火等はアクティブタイムのみに限ります
・手持ち花火などの場合も火の後始末を必ずおこなって、ゴミを持ち帰りましょう
貼り紙や広告物をとりつけてはいけません
・公園内に貼り紙等を勝手に貼る行為は、公園の情報を増やす事になり、何が大切な情報なのかをわかりにくくする可能性があります
・地域(自治体・愛護会)の掲示等も撤去日を設定します
ペットの散歩は、飼い主の責任です
・ペットは言葉を話す事が出来ません、ペットの気持ちがわかる飼い主だからこそ、マナーをきちんと守って公園での散歩等を楽しんでください。散歩の時間を決めてペット仲間と情報交換なども良いですね
(公園前の看板。文言はプロジェクト参加者みんなで考え、住民の方に図案を依頼し、福岡市中央区で作成。禁止事項ばかりではとの意見も出たそうですが、簡潔にまとめられています)
(ルールは一度決めてしまうとなかなか変えることができないため、「(仮)」はつけたままで今後もしばらく「公園ルール(仮)」を運用していくそうです)

ルール(仮)ができてから、公園利用に関する問題も減少し、公園で遊ぶ子どもたちも増えていきました。嶽村さんは、ルールづくりにおいて意見を主張するだけではなく「互いを認め合う」事が大事だと話します。ルール(仮)の運用が始まって8年ほどが経ち、地域の人からは「ボール遊びに関してもう少しルールを緩めてもいいのでは」との意見もでているそうです。

プレイパークで公園の可能性を知る

草香江公園では、イベントとして2006年からお月見会やハロウィンの企画を行ってきたそうです。2011年からは毎年秋に「草香江公園であそぼう(プレイパーク)」事業を実施しており、公園愛護会ではその運営のお手伝いをしています。もともと町内会長だった嶽村さんが、当時県内各地で「プレイパークの会」を発足していた知人に依頼して「なぜ遊び場が必要か」を学び、この事業が始まりました。

プレイパークの日には、公園で五平餅を焼いたり、木登りをしたり、普段の公園ではできない遊びを子どもたちは楽しんでいるそうです。子どもたちはもちろん、そのご両親や地域の町内会の方々など世代を超えて多くの人が集まるイベントになっています。

(プレイパークの様子。立派な木々が多くあるので、木登りなど木々を活かした遊びは草香江公園ならでは:草香江公園愛護会提供)
(プレイパークの様子。青空の下、キャンバスいっぱいにのびのび絵を描く子どもたち。自宅ではなかなかできない経験ですね:草香江公園愛護会提供)

プレイパーク事業は、ただ遊ぶだけではなく、地域の人に”公園でこんなことができるんだ”という公園の可能性を知ってもらうにもいい機会となっているようです。公園でできるいろんな遊びや活用の仕方を知ることで、遊びだけではなく公園活用のアイデアも広がりそうです。

「草香江公園をもっと地域の人が自由に活動できる公園にしたい」と話す嶽村さん。ルール(仮)は、地域の人に育てられながらまだまだ試行期間中です。きっちり定めていないからこそ、今後の公園利活用について余白があるようにも感じました。

そして、インタビューに答えてくれた子どもたちが「自分たちで遊びを考えて、自由に遊べる公園」と言っていたように、嶽村さんたち公園愛護会や地域の皆さんの思いが子どもたちにも伝わりつつあるように思います。

今年もプレイパークを実施予定とのことで、今後の活動も楽しみです。

(草香江公園憲章には、公園が住民運動によりできた旨が記載されています。今回お話を伺い、地域住民の声によってできた公園を、地域にひらかれた公園として大事にしていきたい、というお気持ちが伝わってきました)

【基本情報】

団体名草香江公園公園愛護会
公園名草香江公園 (福岡市中央区)
面積1,246 m2
基本的な活動日(公園清掃)毎月第2日曜 10:00頃~ 
(イベント)毎年開催予定
いつもの活動参加人数(公園清掃)12名ほど
会の会員数(公園愛護会)草香江2丁目4区6人を中心に、校区草寿会や子ども会とも連携
活動内容ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、利用者へのマナー喚起、愛護会活動のPR、地域のイベント、子ども向けイベントなど福岡市中央区管理調整課公園係と連携
設立時期1997年
主な参加者公園愛護会、町内会、子ども会など地域の皆さん
活動に参加したい場合は公園での催しは、公園設置の掲示板に表示。みんなで見守ってください
取材・執筆
取材・執筆
栗原 香小梨

子どもの頃からTHEインドア派だったのですが、自身の子どもが生まれたことをきっかけに公園に遊びに行くようになりました。"子どもの遊び場"というだけではなく、よく会う知り合いができたり、そこから会話が生まれたり、公園を中心に広がるコミュニティに関心あり。現在は、子ども関連のNPOで活動をしながら、地域の仕事、文化を引き継ぐ方々をテーマにライター活動もしています。

子どもの頃からTHEインドア派だったのですが、自身の子どもが生まれたことをきっかけに公園に遊びに行くようになりました。"子どもの遊び場"というだけではなく、よく会う知り合いができたり、そこから会話が生まれたり、公園を中心に広がるコミュニティに関心あり。現在は、子ども関連のNPOで活動をしながら、地域の仕事、文化を引き継ぐ方々をテーマにライター活動もしています。

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