全国の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、企業で公園の花壇管理を10年以上続けている、こちらの皆さんです。
企業が取り組む公園ボランティア
これまでにも企業が行う公園ボランティアを取材し、より多世代が参加できる新たな形として可能性を感じてきました。
そして、2022年の公園ボランティア実態調査アンケートではこんなコメントをいただきました。
会社のSDGs活動の一環として取り組むことにしました。花壇やプランターに植えた花の水やり・雑草とり等を、社員が3グループに分かれて、当番制で担当しています。仲間を増やすために、社内ホームページを利用しての活動紹介をしています。
長きに渡って公園ボランティアに取り組み、様々な工夫を凝らして活動していらっしゃる…!ということで、実際にお伺いし、お話を聞いてきました!
第一三共株式会社の研究センター前にある宇喜田川公園
宇喜田川公園(うきたがわこうえん)は都営新宿線船堀駅から徒歩約15分ほどの距離にある長細い公園。かつては川だったため、長細い形なんだそうです。(そういえば名前にもその名残が。)
長細〜い敷地に多種多様な遊具とベンチが程よい間隔で設置されており、遊びにも休憩にも窮屈感を感じない雰囲気。
花壇とプランターの管理・手入れは、公園の目の前にある第一三共株式会社 葛西研究開発センターにお勤めの皆さんが行っています。
お昼を食べたあとのリフレッシュに公園へ
活動はお昼休みに行っているそうで、この日は12時40分ごろに公園に集合。ホースやバケツ、ジョウロを会社の物置から持参し、花壇に水やりをします。
天気に左右されますが、冬場は月に1回ほど、夏場は週に2〜3回のペースで活動中。3人のリーダーがかわりばんこで当番となり、ご自身が所属する部署に声がけをして毎回メンバーを募っています。
この日は、Cチームリーダー赤井さんと同じ部署の方々が5名参加されていました。水飲み場やトイレから水をジョウロにいれて、いざ水やり開始。和気あいあいとした雰囲気で、とっても楽しそう。
普段は特に公園と接点がないという男性社員の方。この活動には時々参加されているんだそう。
「お昼休みのちょっとしたリフレッシュとして気楽に参加しています」と話してくださいました。
活動は約10分ほどで終了。花壇・プランターの量からして10名以下の人数でもあっという間に作業が済むんだそう。限られたお昼休みでも、10分だったら参加してもいいかなって思えますね・・!
花壇は年に2回、植え替えを行っています。植え替えは、全グループに呼びかけて参加者を募集。いつもより多く参加者が集まるので、この時も昼休み内で作業は終わるんだとか!チームワークが感じられますね。
取材時は、11月に植えたパンジー・ビオラ・ダイアンサスが咲いていました。花の種類は江戸川区が委託しているお花屋さんからいくつか候補をもらいその中から選んでいるんだとか。
「土が合わないのか、どうしても咲かない花があったりするので、それ以外で選んでいます。」とAチームリーダーの南さん。
リーダーは当時の活動責任者より誘われたり、リーダーが誘いあったりして現在の3名となりました。
特別花に詳しいわけではないとのことですが、歴代リーダー達の知恵を引き継ぎ、この土地に合った花を選んで植えているんだそうです。
ちなみに、活動に使うホースやスコップといった物品は会社で購入。夏場は日陰のない中での作業ということもあり、お茶を提供しているんだそう。ただ、消耗品の購入は現在ほとんどないので毎回かかるお金は少ないとのこと。
目指すのは個人に負担をかけない運営
活動の後は、事務局兼Bチームリーダーを担っている板鼻さんにお話をお伺いしました。
公園での活動を始めたのは、2012年。江戸川区から「公園で活動してみないか?」とお誘いがあったそうです。当時、総務担当でたまたまこの電話の対応をした板鼻さんが、やってみようと前向きな返答をしたのが始まり。
それ以前にもボランティア活動として、周辺のゴミ拾いに取り組んでいましたが、固定のメンバーに負担がかかったり、車通りが多く危ないなど様々な事情で取りやめていたそうです。そんな経験も踏まえ、個人に負担のかからないやり方を考えてきました。
3リーダー当番制にしたのも、声掛けする先も増えること、1回の活動に必要な人数も少なくすむことからだといいます。
毎回の参加を義務化しない、休み時間での短時間の活動、特別な持ち物・知識を必要としない…
今でも十分気楽に参加でき、負荷の少ない運営だと思いますが、もっと固定しないようなやり方を考えていきたいと話す板鼻さん。その心意気がすごいです。
板鼻さんご自身は転勤もあり離れていた期間もありましたが、活動は11年間継続。人に依存せず、活動が続くヒントは、ひとつの企業ならではの運営方法にあると感じました。
現在、板鼻さんが積極的に取り組むのが、社内での発信。葛西事業所内だけでなく、全社向けにも活動を定期的に報告することを心がけています。活動告知も多くの社員さんに見ていただいているそうです。
地域との大きな接点!
活動のやりがいはなんですか?とお聞きすると「お花の興味が広がった」「太陽光を浴びてリフレッシュできること」など様々な意見が上がりましたが、「近所の人にいつもありがとう、と言われると嬉しい」という意見には皆さん声を揃えて共感されていました。
医薬品の研究を行っている企業柄、地域の方との接点を常日頃から持ち、お互いの理解を深めることはとても大切。こういった言葉はメンバー個人への声掛けでもありますが、会社の信頼にも繋がる一声と言えそうですね。
SDGsとしての取り組みにも◎
第一三共株式会社はSDGs活動として、規格外の食品を加工した大豆シートを使ったメニューを食堂に導入したり、ワケあり品を安く提供する「もったいない袋」を購買で販売したりと様々な取り組みを積極的に行っています。宇喜田川公園での活動もSDGs活動の一つ。
企業のSDGsへの取り組みというと、どこか難しく「ピンとこないよ」という方も多いかと思います。その点、公園ボランティアなら日常的に社員が直接参加できるので、SDGsへのハードルを下げる良いきっかけになるなと思いました。
企業 × 公園ボランティア
良い意味で、やらされている感がないなぁと感じたのは、企業だからこその活動時間、業務と兼業出来るような作業内容と、どこまでも意識され、負担が掛からないよう配慮されているんだ、とインタビューで気が付きました。
また企業こそ、社内事情など様々な理由で、これまでやってきた取り組みを突然やめてしまうこともあるかと思いますが、11年間毎月毎週コツコツと作業されていることは本当に素晴らしいことです。
これからも和気あいあいと笑顔あふれる活動を続けて行ってほしいと思いました。
【基本情報】
団体名 | 第一三共株式会社 葛西研究開発センター |
公園名 | 宇喜田川公園 (江戸川区) |
面積 | 2,073 m2 |
基本的な活動日 | 随時(夏場週2~3日、冬は月1回ほど) |
いつもの活動参加人数 | 7~8人ほど |
活動内容 | 花壇の管理 |
設立時期 | 2012年 |
参加者イメージ | 職員 |