2023/1/17

愛護会の設立で生まれ変わった公園

我孫子公園(大阪市)

大阪公立大学の大学院生が、大阪市の公園愛護会の皆さんの活動を取材し紹介する「大阪となりの公園愛護会」。公園の利活用やランドスケープ設計を学び研究する大学院生の視点で、公園ボランティア活動を紹介します。

2回目となる今回は、愛護会の結成によって公園が生まれ変わったという我孫子(あびこ)公園愛護会。花壇の活動も楽しまれている皆さんです。

我孫子公園愛護会の皆さん

公園ボランティア実態調査アンケートでこんなコメントをいただいていました。

公園内のごみ放置、不法投棄は減少傾向で公園内で遊ぶ子供たちや親子連れの方が増加。園児や福祉老人入居者、学童保育の人たちが毎日来ています。ふれあい花壇への悪戯等がなくなり、花満開時には近隣の老人施設や保育園から多くの人が見に来られるようになりました。

JR我孫子町駅から徒歩3分の距離にある我孫子公園は、南側の大きいグラウンドが特徴的な公園で、取材当日の朝も少年野球の小学生たちが練習で汗を流していました。

一方、北側は、山型遊具、ブランコ、砂場、すべり台などの遊具が充実し、親子や友達同士で楽しく遊ぶ姿も多く見られ、地元では「児童公園」と呼ばれて親しまれています。

(大きいグラウンド:小学生が一生懸命に野球の練習をしています)
(充実した遊具:子どもや親子連れに人気だそうです)

実はこの我孫子公園は、この記事の執筆者である中辻の出身中学校・高校にとても近く、何度かグラウンドで友人と野球をしたことがあります。今回はそんな思い入れのある公園の愛護会を取材させていただけるということで、何かのご縁を感じ、とても楽しみにしていました。

こちらの公園でボランティア活動をしているのは、大阪市住吉区の我孫子公園愛護会の皆さんです。愛護会会長の小山耕司さんにお話をお聞きしました。

(取材を快く受けていただいた小山さん)

愛護会の設立で生まれ変わった我孫子公園

昭和19年、かつてため池があった場所につくられた、我孫子公園。実は、今の我孫子公園愛護会が設立される前にも、公園管理活動を行っていた愛護会があったものの、メンバーの高齢化に伴い解散してしまったそうです。

日常的に公園を見守る人がいなくなったことにより、草が生い茂り、ポイ捨てごみの多い、暗いイメージの公園になってしまい、人が立ち寄り難い公園になってしまいました。

そんな状況を見かねた小山さんは、「地域の財産であるこの公園をどうにかしないといけない」という思いで有志を集め、2014年に我孫子公園愛護会を設立しました。

(コミュニケーションをとりながら落ち葉かきをする皆さん)

愛護会設立以降、継続してきた管理活動が実を結び、徐々に近隣の老人ホームの方や子ども連れがたくさん来るようになり、現在のような、多くの人が利用する人気の公園へと生まれ変わったそうです。

近隣で活動されている公園愛護会の方からも、「地域で一番きれいな公園」とよく言われるそうです。私も取材前に公園を一周歩いてみましたが、驚くほどごみが落ちておらず、こうした日々の管理活動が利用者増加につながるのだと改めて実感しました。

また、地域の活動拠点として、グラウンドでは盆踊りも行われており、コロナの影響で現在は中止しているそうですが、二十年以上も続いていると言います。

人々を温かく迎え入れる「ふれあい花壇」

北側のエントランスから公園に足を踏み入れると、まず目の前に見えるのは、きれいに手入れされた「ふれあい花壇」。

実はこの花壇の花は市販のものではなく、区民ボランティアの手で種から育てられた花苗です。住吉区では『花さかスミちゃんボランティア(種から育てる住吉区の花づくり)』という事業があり、グリーンコーディネーター(GC)をはじめとする緑化ボランティアの皆さんが丹精込めて種から育てた花を、まちなかの公園、道路、学校、幼稚園、保育所などに植えているそうです。

グリーンコーディネーター(GC)とは、花と緑について専門的な知識を有し、地域における様々な緑化活動等の中心的な役割を担う人材で、大阪市認証ボランティアです。GCには小山さんも所属されているとのことでした。

花の植え替えは春と秋の年2回しており、過去には公園愛護会の声かけによって集まった子どもたちと一緒に植え替えをしたこともあるそうで、まさに地域の「ふれあい」を提供する場となったみたいです。

(ふれあい花壇:ハボタンやキンランジソなどが綺麗に植えられていました)

花壇の花の植え替えをしていた女性メンバーにお話をうかがうと、「自宅のマンションのベランダにはスペースがない分、この花壇だと、まるで自分の庭のように可愛がってお手入れすることができて、時々元気に育っているか見に来るのが楽しみなんです」と教えてくださいました。

(手際よく花壇の植え替えを行う仲良しな女性3人組)

見慣れない植物が花壇に…

そんな素敵なエピソードを聞きながら、ふと花壇に目をやると、一つ見慣れない植物が植えられていることに気づき、愛護会メンバーの方に尋ねました。

なんと菜の花だそうです。

菜の花と言えば、黄色い花が綺麗なお花畑のイメージしか私はありませんでしたが、これはまだ成長段階のようです。私の菜の花のイメージと違ってびっくりしました!

(春を告げる花と言えば菜の花。花が咲くまで待ち遠しい!)

何気ない風景が公園掃除を楽しくするアイデアに

一方、落ち葉かきをしていた男性メンバーの方からは、独自のほうきのかけ方を教えていただきました。

それは、近くにあるあびこ観音の境内の清掃からインスピレーションを受けたそうですが、ただ単純に落ち葉かきをするのではなく、まっすぐに砂の模様が入るようにほうきで掃くと、きれいになって楽しくなるということでした。

(美しい石庭のような落ち葉かきの跡)

愛護会の想い “地域の財産を大切にしたい”

小山さんは全体の活動だけでなく、毎日5時半から、他3人のメンバーと、ラジオ体操からスタートし、ごみ箱のごみの回収や、砂場などの清掃を行っているそうです。

他にも、グラウンド外周部の低木の剪定や、藤棚の剪定、水やりも自身で定期的に行っているそうです。「公園を綺麗にすることで、幼稚園からご老人まで、多世代の多くの人に公園を使ってもらえることが一番のやりがいです」と熱く語ってくれました。

かつて地域の人に遠ざけられていた公園が、活気のある綺麗な公園に生まれ変わったのは、何よりも愛護会メンバーの”地域の財産を大切にしたい”という想いが原動力になったのだとインタビューを通じて強く感じました。

そんな愛護会の方々のありがたさを感じながら、私も久しぶりに我孫子公園で高校時代からの旧友とキャッチボールをしたくなってきました。

(小山さんが定期的に剪定しているグラウンド外周の低木)
(クスノキの枝を丁寧に剪定しています)

【基本情報】

団体名我孫子公園愛護会
公園名我孫子公園 (大阪市住吉区)
面積9,024 m2
基本的な活動日第1,3日曜日
いつもの活動参加人数約10人
会の会員数26人
活動内容ごみ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり
設立時期2014年11月
参加者イメージアクティブシニア
活動に参加したい場合は活動日に作業している人にお声かけください!いつでもウェルカム!
取材・執筆
取材・執筆
中辻 魁人

学生時代に始めたレポーター活動にやりがいを感じ、社会人になった今も継続。卒業論文、修士論文ともに公園の利用ルールについて研究し、どうすれば誰もが自由に使いこなせる公園になるか日々考えている。大阪公立大学大学院 緑地計画学研究室卒業。大阪府堺市出身。現在は関西に基盤を置く不動産会社に勤務。

学生時代に始めたレポーター活動にやりがいを感じ、社会人になった今も継続。卒業論文、修士論文ともに公園の利用ルールについて研究し、どうすれば誰もが自由に使いこなせる公園になるか日々考えている。大阪公立大学大学院 緑地計画学研究室卒業。大阪府堺市出身。現在は関西に基盤を置く不動産会社に勤務。

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