公益財団法人 東京都公園協会「2026 年度公益事業推進課 ボランティア活動レポート作成業務委託」として、一般社団法人みんなの公園愛護会が取材・執筆を行った記事です。
面積も広く、利用する人も多い都立公園。活動している公園ボランティアの方々の活動テーマも多彩。まさに「推しの公園」活動として行われている公園ボランティアの様子をお届けします。
地域のファミリー層を中心に多くの人が訪れる都立宇喜田公園。その一角に、訪れる人々を爽やかな香りと色鮮やかな花々で出迎えてくれる癒やしの空間「ハーブガーデン」があります。取材に伺ったこの日も、ウォーキングする方、犬の散歩をする方が訪れていました。
ここで活動しているのが、2017年の発足以降、継続してハーブガーデンの維持管理を行っている「宇喜田公園ハーブボランティア・リンデンバウム」の皆さんです。植物を育てるだけでなく、そこから生まれる仲間や地域との交流など、香り豊かな活動の軌跡をご紹介します。
季節ごとに表情を変えるハーブガーデン、地道な手入れ
宇喜田公園ハーブボランティアの基本活動は、毎週水曜日の午前中に行われています。さらに、天候や植物の生育状況に応じて、定例活動日以外にも都合のつくメンバーが手入れのために訪れるそうです。
春にはオレンジや黄色のカレンデュラが咲き誇り、夏には鮮やかな紫色のラベンダーが風に揺れ、そして晩秋にはアメジストセージがシックな彩りを添える。冬でもピンクのコスモスが風に揺れる。こうした四季折々の美しい景観は、ボランティアの皆さんによるこまめな除草や施肥(肥料やり)、そして冬場に行われる春に向けた土づくりなど、地道な作業の賜物です。

活動日にはメンバー同士で和気あいあいと声を掛け合いながら、ラベンダーの根元に腐葉土を置くなど、植物一つひとつの状態に合わせた丁寧なケアが行われています。最近では、堆肥づくりにまで挑戦しています。
代表で1期生の大場くみ子さん(集合写真2列目右から3番目)は、「植物や土に触れる気持ちよさだけでなく、良い人が集まっています。おかげで辞める人がほとんどいません」と話します。大場さんがガーデンを訪れる人に挨拶をし、話しかけているのが印象的でした。「挨拶をすると気持ちいいのと、犬の落としものやハーブの抜き去りも減りますよ」と話していました。
育てるだけじゃない!ハーブで「地域力」を醸成
同会の大きな特徴は、ハーブを「育てて終わり」にしない点にあります。
花壇の手入れに留まらず、維持管理、剪定作業で出たラベンダーなどの枝葉(ハーブ)を、公園の散策者や地域の施設等へ「おすそ分け」として配布する活動を積極的に行っています。取材に伺った7月1日にも剪定作業で出たローズマリーの配布を行っていました。




ただ美しい花壇を眺めるだけでなく、ハーブの香りや手触りを直接地域の人々に届けることで、公園と住民、そして住民同士のコミュニケーションが生まれます。こうした植物を通じたあたたかい交流が、地域への愛着や「地域力」を育む大きな役割を果たしています。
ハーブの魅力を伝える体験イベントで活用方法を発信
公園ではイベントが定期的に行われており、公園サービスセンターを中心として、ハーブの魅力を伝えるワークショップが積極的に開催されています。具体的なプログラムについては、ボランティアメンバーが自ら知恵を絞り、地域のニーズに合わせた多彩なアイデアを形にしているそうです。
例えば、園内のハーブガーデンで剪定したハーブを活用した「ハーブソルト教室」。参加費500円で作ったハーブソルトを持ち帰ることができるこの少人数制のワークショップは、募集開始からすぐに定員が埋まってしまうほどの人気企画です。
ハーブを育てた後の活用方法を発信することで、来園者にみどりの魅力を発信していく「攻めのボランティア」の姿勢が、活動をより活気あるものにしています。

ゼロからハーブガーデンを育て、今では公園の見どころに

都立宇喜田公園の管理運営を担うのは、指定管理者であるアメニス東部地区グループです。園内に常駐の拠点を持たない体制ながら、同グループが管理する大島小松川公園サービスセンターから職員が駆けつけ、きめ細やかな施設管理とボランティア活動の伴走支援を続けています。
2017年のハーブガーデン開設当初からこの歩みを見守り続けてきた、副サービスセンター長の野沢徹さんに、これまでの協働の軌跡についてお話を伺いました。
「今は色鮮やかなハーブが咲き誇るこの場所も、かつては中央に小さな花壇があるのみで、現在のメイン通路の両脇は素朴な景観でした。」と当時を振り返ります。転機となったのは、景観向上のために「両脇にラベンダーを配置する」というガーデナーの大胆な提案でした。整備前は、今の豊かな景観に変わることは想像できなかったといます。
始まりは、ボランティア1期生6名による、厳しい暑さの中でのゼロからの開墾作業だったそうです。予算が限られていたため費用を抑えた方法を模索し、ガーデナーの指導のもと、一本一本の挿し木により長い年月をかけて大切に育ててきました。しかし、「予算が限られていたからこそ、自分たちの手を動かし、時間をかけて植物を育む喜びを知ることができた」と語るその言葉には、ボランティアの皆さんと共に困難を乗り越え、ハーブガーデンを築き上げられた熱意を感じました。野沢さんは謙遜して「仕事ですから」と語りますが、深い愛情が込められているように感じました。


景観まちづくり賞など数々の受賞、そして未来へ
こうした長年にわたる地道な花壇管理と、地域交流・賑わい創出への多大な貢献は高く評価されています。
2024年には江戸川区の「第13回 景観まちづくり賞」に選出されたほか、2025年には「第36回全国『みどりの愛護』のつどい」においてもその活動が表彰されました。
発足から約10年。数々の受賞の喜びも糧として、ボランティアの皆さんは今日もハーブガーデンのお手入れに励んでいます。
これからも公園を拠点とした、緑豊かで潤いのある住みよい街づくりに貢献する。芳醇なハーブの香りと共に、宇喜田公園の風景はこれからも地域の人々に愛され、守られていくことでしょう。
■取材後記
ボランティアに参加するきっかけとして多く聞かれたのは、子育てや介護が一段落した時期や、ペットを見送った後といったタイミングでした。新しくできた自由な時間をハーブを育てる仲間と共有する様子は、まさに第二、第三の青春の舞台そのもの。多くの公園ボランティアがメンバー不足に悩むなか、ここではあえて「年に一度の募集まで待って参加できる人」というハードルを設けることで、結果として長く活動を続けられる熱意ある人々を集めていました。(跡部)
一面に広がるラベンダーも、1本1本の挿し木からコツコツ育てたというから驚きです。自分たちの手で景色が変わっていく手応えは、大変な中にも大きな喜びがあったことでしょう。そして、育てる楽しみに加えて、使う楽しみまで味わえるのがハーブの醍醐味。宇喜田公園のみなさんは、そんなハーブの楽しみを地域の人たちにもひらいてシェアしているのが印象的でした。(椛田)
団体情報
| 公園名 | 宇喜田公園 |
| 団体名 | 宇喜田公園ハーブボランティア・リンデンバウム |
| 設立 | 2017年 |
| 活動内容 | ・園内ハーブガーデンの維持管理 ・剪定作業で出たハーブの地域配布 ・ハーブを使った体験イベントの自主企画・運営など |
| 活動日 | 毎週水曜日 |
| メンバー数 | 約24名 |
| 受賞歴 | 江戸川区景観まちづくり賞(2024年) 全国「みどりの愛護」功労者として国土交通大臣表彰受賞(2025年) |
| ボランティア活動に参加するには? | 毎年 4 月に会員募集 |
| 助成金情報 | 公益財団法人 東京都公園協会では「都立公園事業に参加協力する都民への助成金」を設けています。詳しくは以下のリンクをご確認ください https://www.tokyo-park.or.jp/public/volunteer/about/ |