各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、陸と海の出会う水辺を楽しみながら、貴重な汽水域の環境保全をするこちらのみなさんです。
歴史ある汽水域の水辺「ふなだまり」のある公園
横浜市金沢区にある富岡並木ふなだまり公園(とみおかなみきふなだまりこうえん)。京急富岡駅、シーサイドライン並木北駅のどちらからも歩いて10分ほど、金沢シーサイドタウンの住宅地にある都市緑地です。
かつて海だったこの地は、1970年代の埋め立て事業で周囲に住宅が整備される中、800年の伝統を誇る富岡八幡宮の祇園船神事のために残された「ふなだまり」が、住民憩いの親水空間として整備された公園です。富岡八幡宮の祇園船神事は、横浜市無形民俗文化財の第一号に指定されている特殊神事で、今もなお毎年7月に行われています。

海水と淡水の混じり合う汽水域は、魚や鳥などさまざまな生き物が集まる貴重な環境としても知られており、ハゼやボラ、クロダイなどの釣りを楽しむ人も。横浜の中でも貴重な砂浜のある水辺です(市内に4カ所ある砂浜のうちの1つが、ここふなだまりなんだそう!)。

陸と海の両方から環境を守る公園愛護会
この貴重なふなだまりの環境を守り、次世代に繋げる活動をしているのが、富岡並木ふなだまりgionbune愛護会のみなさんです。毎朝の清掃や、早朝の太極拳、毎月の環境調査のほか、ふなだまりを楽しむためのさまざまな取り組みや地域イベントへの協力をされています。
愛護会のホームページも充実!ふなだまりの歴史や愛護会の活動も詳しく紹介されています。
お伺いしたのは、7月の環境調査の活動日。会長の髙島哲さんと石井彰さんほか、みなさんにお話をお聞きしました。石井さんは、ご自身の専門性を生かして、愛護会の環境調査部会の会長としてふなだまりの水質調査を担当されています。

毎朝のゴミ拾い「毎日がゴミポタ」
愛護会が結成されたのは2017年の夏。毎日自転車で陸上のゴミポタ(「ゴミ拾い」+「ポタリング」 )をしていた髙島さんとSUPで水上のゴミを回収していた青年(前会長)との出会いから始まったといいます。
愛護会結成以来、毎朝早朝にふなだまりのゴミ拾いをされている髙島さんたち。なんと年末年始と雨の日以外、夏は4時半、冬は5時半から!1時間ほど陸上と水辺のゴミを拾い、分類して、重量を測定しているとのこと。
当初は、投棄された家庭ゴミや海底のヘドロ、死んだ魚、落ち葉などが大量にあり、その量年間600kg、魚が400尾だったと振り返ります。毎朝のゴミポタと、月1の「親子でゴミ拾い」(現在はお休み中)により、ゴミは5年でほぼ半減。10年近く経った今もなお、水曜以外の週6日毎朝、夜明けのゴミポタは続いています。
10年前は小学生から「汚くて、臭くて、危険だから、遊ぶのを親から止められている」と言われていたふなだまりも、今は親子連れや散歩を楽しむご近所さん、趣味の釣り人で賑わい、地域の人の憩いの場として、さまざまな世代に親しまれています。


水辺を楽しむウッドデッキを「まち普請」で整備
ふなだまりのシンボルとなっているのが、この「ウッドデッキ」です。2018-2019年にヨコハマ市民まち普請事業に応募し、整備が実現しました。(詳細は、横浜市の令和元年度整備事例「歴史と環境をテーマに安心して楽しめる里海公園づくり」にも掲載されています)

土木事務所から公園の使用許可を得て整備されたウッドデッキは、完成から6年以上が経過した今、祇園船神事の拠点となる御旅所や、地域のお祭りサマーフェスタの花火の観覧席やゴミ回収のエコセンターになるなど、地域になくてはならない大事な場所に育っているといいます。
愛護会のみなさんが日常の清掃などのお手入れをするほか、ペンキ塗りなどのメンテナンスも定期的に実施。維持管理費と最終的な解体費用を確保しながら、愛護会が所有しています。

ウッドデッキで太極拳や七夕祭り、祇園船神事も
高齢化が進む並木・富岡地域の住民の健康と孤立化を防ぐことを目的として、2021年から太極拳クラブの活動がスタート。「太極拳の仲間に入りたくて愛護会に入ったんですよ」というメンバーの方もいらっしゃいました。この素敵なウッドデッキで、ふなだまりの風を感じながら行う早朝の太極拳はとても気持ちが良さそうです。

また、ウッドデッキで行われる七夕祭りも毎年恒例のお楽しみ行事です。なんと同じ金沢区内の緑地から竹を切り出してトラックに載せて運んでくるところから愛護会のみなさんが行っているという本格イベント!
こうして、今年も7月4日から7日まで、ウッドデッキに立てられた笹に子どもたちや地域の人々の願い事の短冊や折り鶴などが飾られました。
祇園船神事でもウッドデッキが大活躍です。お囃子に参加するメンバーの方もいて、写真や動画を見せてくださいました。

ボートで出航!水域の環境調査を毎月継続
お伺いしたのは、毎月定例で行っている環境調査の日。ボートに乗って、水上のゴミを拾いながら、ポイントごとの水質を調査し、記録を続けているみなさん。この日は、髙島さん石井さんのほか、環境調査部会のメンバーである大石さん、片田さん、嘉門さん、清乃さん、富田さん、三上さん、山田さん、そして飛び入りで参加されていた安田さんご夫妻が朝から準備をされていました。
ウッドデッキ前の基点から対岸までのおよそ190mを、25mごとに、水深・水温・pH・電気伝導率・塩分濃度・濁度・溶存酸素量・色相・臭い・ゴミなどの項目について記録を取り、生態系の観察を行っています。
愛護会の活動開始以来行われてきた水質の調査も、2021年からはお仕事で水質調査を40年以上続けてこられた専門家でもある石井さんがリーダーとなり、今の形になりました。1年の中で季節の移り変わりの周期がありますが、10年続けると環境変化の傾向がわかるそう。コツコツとデータを積み重ね、未来に向けて市民に公開できるようにしていきたいと話してくださいました。
25mごとに印のついたロープを使って、あっちとこっちで引っ張りながらボートの位置を定め、旗を合図に次のポイントへ進んでいくのですが、段取りと役割分担は手慣れたもの!見学していると、あっという間にボートは対岸に到着していました。





調査結果の報告会は、おつかれさまのピザパーティーで
調査が終わると、結果の報告を兼ねた少し早めのランチパーティーが始まりました。近くのスーパーで調達したピザを囲んで、おつかれさま。お待ちかねの楽しい時間です。
石井さんから今日の水質調査の結果がみなさんに共有されました。夏になると死んだ魚が増えるという状況について(ハゼやフグなどの小さな魚以外にも、50cmのクロダイ、80cmのスズキなどの大きな魚もいるそう!)、酸素の状態や水温、水の濁りの様子などの観察を続けながら、理由を推定しているそうです。
また先日髙島さんと石井さんで、近隣の小学校の出前授業に協力された時のお話も。小学2年生の子どもたちから、身近で不思議な水辺「ふなだまり」の魚や生き物、水、歴史、七夕や祇園船などのイベント、愛護会の活動について、たくさんの質問攻めにあったこと、授業や子どもたちの様子についての話で盛り上がっていました。

地域とともに、豊かな水辺の環境を次世代へ
毎朝の「ゴミポタ」による地道な清掃活動から、憩いの場となったウッドデッキの整備、そしてボートを出しての本格的な水質調査まで。富岡並木ふなだまりgionbune公園愛護会のみなさんの活動は、単なる維持管理にとどまらず、地域の人々が自然と集い、笑顔になれる居場所づくりへと広がっています。
10年の歩みの中で少しずつきれいになり、生き物と人が共生する場所へと生まれ変わった「ふなだまり」。地道に積み重ねられた環境調査データや、地域にひらかれたイベント、小学校での出前授業などを通して、歴史ある貴重な汽水域の環境はしっかりと次の世代へと引き継がれているようです。
「ふなだまりで潮干狩りが夢!」というみなさん。道ゆく人への明るい挨拶や、子どもたちに積極的に声を掛ける姿も印象的でした。人と生き物が共生できる親水公園にすべく、陸と海の両方から水辺を見守る地道で温かい取り組みは、これからも地域の憩いの場を育み、未来に繋がっていくことでしょう。



【基本情報】
| 団体名 | 富岡並木ふなだまりgionbune公園愛護会 |
| 公園名 | 富岡並木ふなだまり公園(横浜市金沢区) |
| 面積 | 43,648 m2 (そのうち約70%(30,600m2)は水域) |
| 基本的な活動日 | 毎日がゴミポタ(毎朝)、ウッドデッキで太極拳(火・木・土)、環境調査(毎月)ほか |
| 会の会員数 | 42名(うち環境調査部会17名) |
| 活動内容 | ゴミ拾い、環境調査、地域のイベント、落ち葉かき、花壇の管理、堆肥づくり、施設の破損連絡、利用者へのマナー喚起、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、子ども向けイベント、他団体と連携したイベント、高齢者など地域の声がけ |
| 設立時期 | 2017年8月 |
| 主な参加者 | ご近所の有志のみなさん、ふなだまりを愛するみなさん、水辺の環境に関心のあるみなさん |
| 活動に興味のある方は | 活動日にウッドデッキにお越しください!スケジュールはホームページでご覧いただけます |