各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、鎌倉市の住宅地で、花と芝生の美しい庭づくりをされているこちらのみなさんです。
ごく普通の児童公園が、住民の声で花を楽しむ公園に生まれ変わり、27年間でのべ2万人以上のボランティアの手で美しく育てられてきたこちらの公園は、大臣賞も受賞。地域に愛される「花の公園」のきれいと長続きの秘訣をお聞きしました。
「花の公園」と呼ばれ地元の人に愛される公園
鎌倉市にある七里ガ浜東二丁目公園(しちりがはまひがし2ちょうめこうえん)。江ノ電七里ヶ浜駅から歩いて10分ほど、戸建て住宅が立ち並ぶ七里ガ浜東地区の一角にある街区公園です。
公園に一歩入ると、きれいな芝生とたくさんの花壇で咲く色とりどりの花が出迎えてくれ、ハッとするほど美しい景色が広がっています。地元の人たちに「花の公園」という愛称で呼ばれ、親しまれているというのも納得です。
園内は青々とした芝生が広がり、公園の中央にある楕円形の花壇のほか、斜面を使った階段上の花壇、テーブルとベンチのある藤棚、バリアフリーでアクセスできるスロープがあります。ぐるっと一周公園を取り囲むようにたくさんの花や木が植えられ、10種類ほどのバラが育てられているコーナーもありました。

こちらの公園で活動をされているのは、七里ガ浜東二丁目公園愛護会のみなさんです。会長の村谷宏三さん、小野澤純子さん、佐藤真由美さん、須藤冨ゐさんほか、メンバーのみなさんにお話をお聞きしました。

住民の熱意が公園を大改造、建設大臣賞に!
ここ七里ガ浜東二丁目公園は、1960年代に開発された住宅地の中にあり、当初はブランコやすべり台、砂場などがある一般的な児童公園だったそうです。地域の子どもたちの成長とともに次第に雑草が目立つようになり、一時はちょっと怖いくらいの公園だったというお話も。
その後、公園に変化が訪れます。地元住民たちの熱心な働きかけで、市の公園改修プロジェクトの対象になり、住民参加の会議を重ね、大改造工事を経て、1998年春「花と芝生の公園」に生まれ変わりました。

花の公園にリニューアルするにあたり、二丁目の住民全員にアンケートを取って声をかけ、花好きの住民が集まり公園愛護会を結成。会員のみなさんの自主活動による維持管理が始まりました。
ここでユニークなのは、組織のあり方です。それは、全員平等、出席欠席自由、円滑な運営のための幹事、奉仕のみで会費徴収なし、といったもの。メンバーの自主性に任せた自由度の高い運営方針は、愛護会スタート以来今なお続いているといいます。
住民主体の熱心な花の公園づくりは高く評価され、2000年「全国花のまちづくりコンクール」の団体部門最優秀賞の建設大臣賞に!
村谷さんが持ってきてくださった当時の写真アルバムや初代会長の井上さんが載った朝日新聞の記事を見ながら、自治会館に飾ってあるという扇千景大臣からもらった表彰状や当時の話に花が咲くみなさん。口々に楽しかったことや苦労話を聞かせてくださいました。

タネから、庭から。持ち寄りで増える花々
二丁目公園にはたくさんの種類の花や木がありますが、これは長年みなさんが少しずつ増やしたり、持ち寄ったりして育てたもの。宿根草や多年草に加えて、一年草が彩りを添えています。
車を出して遠方まで花苗を買いに行っていたこともあるそうですが、最近では県の花苗配布に申し込みをしたり近所のお店で購入するほか、タネから育てた苗を持ち寄ったり、ご自宅のお庭から株分けして育てられているお花も多いそう。

タネからの花苗育てはメンバーのみなさんや近隣の住民の方々の寄付というスタイル。タネを預かって育てて失敗したらどうしよう?と不安になるより、育ったものを寄付する方が気持ちがラクだからだそうです。そうやって、日々花が増え、美しい景色がつくられています。
かつては、自治会の夏祭りでフリマやかき氷の屋台を出すなどして、花苗の購入資金を稼いでいた時代もあったんだとか。倉庫や芝刈り機などの備品は、宝くじ助成金で購入するなど、工夫が光ります。
七里ガ浜は自治会活動が熱心な地域で、夏祭りは多くの人で賑わう人気のイベントです。自治会の活動をInstagramで発信されていて、そのインスタがきっかけで今回の取材が実現しました。(この日の様子も紹介くださっています)
村谷さんは自治会長をされていた経験もおありで、今回のインタビューにあたりたくさんの資料をご用意くださいました。


初代会長の思いを継ぐ芝生育て
たくさんの花とともに二丁目公園を魅力的な場所にしているのは、園内一面に広がる青々とした芝生です。
この日、遊具の下などの雑草を抜いていたのは、須藤さんです。初代会長から直々に芝生育てを教わったという須藤さんは、週に2-3日気になった時に草取りをされているそう。「私は草取り専門、好きだから。」と話してくださいました。ご自宅からお風呂用の小さなイスを持参しての雑草取りも師匠直伝のスタイルです。
芝刈りは、2-3週に一度、松井さんの男性陣を中心に。松井さんは、シルバー人材センターの樹木剪定のリーダーもされているそうで、藤棚のフジをはじめ園内の木もほとんど松井さんを中心としたメンバーがお手入れされているとのこと。


全員平等、出席自由、無理せず、楽しく
全体での活動は、春と秋の花の植え替えと、その準備としての土づくりです。普段の活動は、水やりと草取りが中心で、花がら摘みやゴミ拾い、施肥、剪定や芝刈りなども随時行われています。
水やりは雨の日を除いて毎日のことなので、曜日ごとの当番制になっているそう。メンバーの自主性を大切にされているため、やれる人が、やれる時に。お当番も無理のない形で、出られる日を申告して、おやすみもOK。
ボランティアだから無理をしないことと、仲間がいることが、楽しく続けられる秘訣のようです。愛護会スタートから27年、公園の目の前にお住まいだというお二人は「よく続いているわよね」と笑顔で話してくださいました。

花を育て、きれいな公園を守り続けていることが、みなさんの誇りと喜びにもなっています。やりがいをお聞きすると、「作業をしてスッキリすると、気持ちが良いですよ」「充実感の積み重ねよね」「運動にもなるしね」と次々に答えが。花の写真を撮ったり、絵を描いている人など、楽しんでくれる人を見るのもうれしいというお話もありました。
20年以上活動されている方も多くいらっしゃいますが、最近新しく入会したメンバーもいます。1年ほど前から参加されているという方は、ご自宅の庭でもガーデニングを楽しんでいるそうですが、仲間がほしくて愛護会に参加。「誰かと話しながらできるのは楽しいです」と公園での花育ての楽しさを教えてくださいました。

27年でのべ2万人!積み重ねの記録「作業日誌」
ここでもうひとつ特筆すべきは、公園愛護会スタート時から続く作業日誌の存在です。ここには、日付と作業内容や引き継ぎ事項に加え、活動開始からののべ人数が書かれています。これまでに参加したボランティアの人数は、この日でなんと21,826人!
1998年のスタートから、2005年にはのべ1万人、2016年にはのべ2万人を超え、まだまだ記録は更新中。毎日の水やりや草取りなど、地道な作業をコツコツと続けてこられた積み重ねが、この数字として現れています。

豊かな地域コミュニティも育てる公園育ての可能性
お手入れ作業の様子を見せていただいた後、藤棚のテーブルを囲んで、公園や愛護会の歴史を振り返り、さまざまなお話を聞かせていただく楽しい時間となりました。
活動は公園の外へも広がっています。二丁目公園で育てた花々を自治会の文化祭で飾ったり、藤のツルを使ってリースづくりをしたり、フラワーアレンジメント教室をしたりという発展編のお楽しみもあるとのこと。

花と芝生の公園にリニューアルしたからこそ生まれた地域活動が、27年経った今でもなお豊かに根付き素敵なご近所コミュニティを作っています。
「朝早くコーヒーを淹れて、ここに来てゆっくり飲むんですよ」というお話をしてくださった村谷さん。なんと豊かな日常でしょう。想像しただけで気持ち良くしあわせな気持ちになります。
一度は人気のなくなった小さな公園が、花の公園として生まれ変わり、地域住民の地道で熱心な活動によって地域の人々が集い、楽しむ、憩いの庭に。およそ30年前から続くみなさんの活動は、これからの公園再生や機能特化のひとつのモデルのような先進的な取り組みに感じました。
日々季節を感じられる美しい公園は、散歩に訪れるご近所さんも多いそうで、遊びにくる子どもたち、ベンチでひと休みする高齢者など、自然な会話も生まれる、地域のみなさんのお気に入りの場所として育っているようです。



【基本情報】
団体名 | 七里ガ浜東二丁目公園愛護会 |
公園名 | 七里ガ浜東二丁目公園(鎌倉市) |
面積 | 1,657 m2 |
基本的な活動日 | ほぼ毎日(1-2名)(曜日ごとの当番制)、全体集合は5・6月、11月の土づくり・花苗植替えの時の2回 |
いつもの参加人数 | 全体21名 |
活動内容 | 除草、花壇の管理、植物の水やり、植物の剪定、芝刈り、ゴミ拾い、施設の破損連絡、利用者のマナー喚起、愛護会内の花関連講習会、愛護会活動のPR、地域のイベント |
設立時期 | 1998年4月 |
主な参加者 | ご近所の有志、お花好きのご近所さん |
活動に参加したい場合は | 公園にどうぞ!七里ガ浜自治会のInstagramをチェック! |