2025/9/2

公園をつくるところから始動!子どもたちと楽しむ利活用愛護会

駒場公園(名古屋市)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、名古屋市で新しい公園づくりに立ち上げから関わっているこちらのみなさんです。

活動のきっかけは「地域に公園をつくりたい!」という、住民の切実な声でした。公園ができた今は、多世代で楽しく公園を使った活動をされています。夏休みのラジオ体操と一緒に行われた公園掃除+お楽しみイベントにお伺いしてきました。

「公園がほしい!」住民の声から始まった、やりたいコトから考える公園づくり

名古屋市瑞穂区にある駒場公園(こまばこうえん)。名古屋市営地下鉄 桜山駅から歩いて5分ほど、多くの学校や博物館が立ち並ぶ住宅地の一角にある公園です。

園内に踏み入れると、公園の愛称である「コマパ」と書かれたウォールベンチがお出迎え。そのほか、かわいらしい白い築山と広場、屋根付きのベンチやテーブル、水遊び場などがあり、明るく見通しの良い空間が広がっています。

こちらの公園は、なんと「子どもが遊ぶ場所がない!公園がほしい!」という地域のお母さんたちの声から生まれたのです。

(公園がほしい!という地域住民の声がきっかけで作られた駒場公園:地域のみなさんのこだわりがつまった公園です)

公園新設の要望書の提出から、公園づくりに積極的に関わってきたみなさんが、公園完成後も、駒場公園利活用愛護会(通称:コマパ会)として、公園育てを続けています。コマパ会の西﨑久芳さん、伊藤正人さん、國定雅代さん、犬塚ゆう子さん、小黒真友子さんほか、みなさんにお話をお聞きしました。

(左から、犬塚さん、小黒さん、伊藤さん、西﨑さん、國定さん)

國定さん、犬塚さん、小黒さんは、地域に子どもたちの遊ぶ場所がないことに危機感を覚え、2016年地域のお母さん・お父さん達とともに桜山公園づくりの会を立ち上げます。西崎さんを中心とした汐路学区の方々とともに副市長への要望書の提出をしたり、「どうしたら公園がつくれますか?」と市役所の緑政土木局に聞きに行ったり、タウンミーティングで市長に直談判したこともあるんだとか。

汐路学区は、元々身近な公園が不足している学区で、名古屋市はその解消を目指し「街区公園適正配置促進事業」に取り組んできました。地域の方も、公園の候補地となる土地の情報を探したり、検討会が開かれることになった際にいろいろなアイデアが出せるよう全国の公園の情報収集や視察などを熱心に続けていたといいます。

そんな中、県警宿舎の跡地をなんとか公園にできないかと、県や市に働きかけ、2020年の春、今の場所に公園が作られることが決定したことを教えてくださったのは、現在はコマパ会の会長で、学区の区政協力委員会委員長として地域の声をまとめている西﨑さんです。

その後、2020年6月から計9回にわたる公園づくり検討会が開催されました。ここでユニークなのが、公園でやりたい「コト」から公園づくりを考えるという点です!

「ファシリテーターにまちづくりの専門家である三矢勝司さんが入ってくださったことも特別でした。市と地域のつながりの輪をつくり、コトとモノをつなげてくださいました。」と國定さんは振り返ります。

検討会では、住民や子どもたちはもちろん、市の職員や設計の担当者も一緒に、「こんな公園になったらいいな!」「公園でこんなコトしたい!」というビジョンを話し合っていったそう。現地や周辺を散策して敷地の活かし方を考えたり、デザインした公園が実際に使われる様子をシミュレーションしたり、じっくりと話し合いを重ねて、市と市民が相互理解しながら検討会を進めることができたためステキな公園ができたことを教えてくださいました。

この公園づくりの詳細は、名古屋市の当時の担当職員さんがまとめた論文「駒場公園の整備について~やりたいコトから考える身近な公園づくり~」に記されており、令和4年度 国土技術研究会で優秀賞を受賞しています。 

検討会の内容や様子を伝える「汐路学区の公園づくり検討会NEWS Letter」が発行され、地域住民にもタイムリーな情報共有がされました。

(検討会の様子を伝える「汐路学区の公園づくり検討会NEWS Letter」:写真提供 コマパ会)

進化し自由に遊べる公園、愛称は「コマパ」

公園づくりの中でみなさんがこだわったのは、自由度が高く進化する公園です。そして、やりたい「コト」と「モノ」を具体的に結びつけることを重視しました。

たとえば、すべり台やブランコのように人数や遊び方が限定される遊具ではなく、みんなで自由に遊べる築山を採用。そして暑い日でも外で遊びたい!という願いを叶える水遊び場。大人が子どもを見守るための、屋根付き休憩所には、雨や日差しを遮る大きな屋根と、テーブルや広々としたベンチがあります。

モノが少ないからこそ、遊びを考え、工夫しながら楽しめる公園になっています。

また、自慢したくなるような統一感のあるデザインにもこだわりが光ります。公園全体での色使いや、ウォールベンチ、看板や倉庫など細かいところのおしゃれにもこだわった、豊かな日常のある公園になりました。

どの遊具や施設も、さまざまな年齢の子どもたちが自然に関われるように工夫されているようで、ボタンを押すと一定時間ミストが出る水遊びポールは、誰かがボタンを押すと子どもたちが次々に集まってきて順番に押して楽しんでいました。(水遊びポールは夏季のみ遊ぶことができます)

(ボタンを押すと一定時間ミストが出る水遊びポール、奥には屋根付き休憩所として広いテーブルとスクエアベンチも)

みんなが親しみやすい公園になるよう、ニックネームを子どもたちから募集し、「コマパ」という愛称が誕生。「コマパ行こう!」子どもたちにもすっかり定着しているそうです。

この愛称に合わせて、公園のコンセプトも生まれました。

:子どもも大人も
:まちのみんなで見守り育み育まれていく
:パーク

今では、赤ちゃん連れの親子から保育園児、下校後の小学生、インスタの撮影をする中高生、野球の素振り練習をする少年、犬の散歩をするご近所さんまで、さまざまな年齢の人たちが、公園で思い思いの時間を過ごす「みんなの居場所」になっているそうです。

「子どもたちの居場所ができました。これまでは自転車に乗っていく場所かショッピングセンターしかありませんでしたから」と話してくださった伊藤さん。朝から晩まであらゆる年代の子どもや学生たちの居場所になっていることを、みなさんが笑顔で教えてくださいました。

禁止ばかりにしないルールづくり

整備工事の期間中は、公園でやりたいコトの実現に向けて、愛護会の設立準備やオープニングイベントの開催、ルールづくり、公園を楽しく使える工夫などが話し合われました。

ルールづくりでこだわったのは、禁止ばかりにしないこと。ルール看板のデザインも工夫されています。

(公園のコンセプトも一緒に書かれた、駒場公園のルール看板)

ボール遊びは、柔らかいボールならOK。ここで特筆すべきは、誰でも使えるボールが公園に置いてあること!「コマパボックス」と呼ばれる自由に使うことができる倉庫に、ボールや長縄、掃除道具などが入っていて、誰でも自由に使えるようになっています。

時々なくなってしまうこともあるそうですが、公園に誰でも使える共有の遊び道具があるのはうれしいですね。

(ボールや長縄、掃除道具など自由に使うことができるコマパボックス)

市内でここだけ、公園”利活用”愛護会

コマパを育てる「コマパ会」は、公園のオープンと同時に2022年1月に活動を開始。活動日は毎月第2・第4日曜日で、ラジオ体操と公園清掃がセットになっているほか、プラスでお楽しみイベントが行われることもあります。

誰でも参加OKなので、ラジオ体操のついでに清掃に参加する人や、子どもが普段公園で遊んでいるからと日曜の朝に一人でさっと参加するお父さんなど、毎回いろいろな人がこられるそう。

団体の正式名称は「駒場公園利活用愛護会」。利活用と名前がつくのは名古屋市ではここだけです。

西﨑さんによると、市・学区の連絡協議会・愛護会の三者で協定を結び、利活用愛護会として、清掃や除草といった一般的な美化活動以外に加え、公園を積極的に利用するイベントの実施や利用調整、ルール決めなどの活動も行っているそうです。

(活動のスタートはラジオ体操から!この日は夏休みの地域のラジオ体操と一緒に行われていました)

公園清掃タイムは、子どもたちも大活躍!コマパボックスから慣れた様子で道具を出して、砂を掃いたり、草をぬいたり。ウォールベンチや築山のぞうきんがけも始まりました。

ウォールベンチでは「ぞうきんどんじゃんけん」が。築山では上から下にいろんな姿勢でぞうきんがけをしていたかと思ったら、後半は上からジョウロで水を流してウォータースライダー状態に。みんなで遊びながら公園をピカピカにしていました。

公園掃除そのものが、楽しい遊びイベントになっていますね。

(公園清掃タイムにもいろんな遊びが生まれています)
(築山もぞうきんがけ!すべったり水を流したりして、掃除も遊びも進化!)

「やってみたい」を形に!楽しいイベントやコマパルタイム

コマパ会では、これまでに公園を楽しむたくさんのイベントを行ってきました。

公園のオープニングイベント、花植えイベント、出張プレーパーク、本を載せた専用車が地域に来てくれる「自動車図書館イベント」、水遊びと打ち水大作戦を兼ねた「コマパde水遊び」、こたつイベント、、

また、毎月第2日曜日は「コマパルタイム」として、ご近所で子ども食堂の運営をされている元教員の伊藤さんが先生となり、紙飛行機や立体カードなどの工作教室やいろいろな鬼ごっこやカードゲームなどで遊んでいます。

活動の詳細は、コマパ会のInstagramでチェックできます。

(この日のお楽しみは公園のひまわりで花束づくり、みんな集まれ〜!)

お伺いした日は、公園のひまわりで花束を作ろうというステキなイベントが行われました。春にタネから育てたひまわりの苗を公園の花壇に植え、大切に育ててきたみなさん。今日は元気に咲いたそのひまわりの花で花束をつくります。

たね先生のなおみさんに、花の切り方、花束の作り方などを教えてもらい、子どもたちはひまわりの花で花束をつくりました。お母さんやおばあちゃん、友だちなど、それぞれの大切な人にメッセージカードを書いて添えていたのもとてもステキでした。

(このくらいの長さで切ってみようかな?)
(メッセージカードを書いて、花を束ねて、輪ゴムでとめて、、何色の包装紙にしようかな?)

コマパ会ではこれまでたくさんのお楽しみイベントを行ってきましたが、すべて人のご縁と協力で成り立ってきたことを教えてくださった國定さん。

「これからも、自動車図書館イベントやこたつイベント、ひまわりイベントのように『やってみたいと思ったこと』を子どもたちと楽しみながら無理せずやっていきたいですね」と話してくださいました。

今後は意見を募って、利用する人たちにより寄り添った内容も考えていきたいそうで、ますますコマパから楽しみの輪が広がっていきそうです。

(道路側からみた駒場公園:みなさん自慢の公園です)

【基本情報】

団体名駒場公園利活用愛護会(コマパ会)
公園名駒場公園(名古屋市瑞穂区)
面積650 m2
基本的な活動日第2・第4日曜日
活動内容ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、利用者のマナー喚起、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、子ども向けイベント、地域住民と連携したイベント、遊びの見守り、高齢者など地域の声がけ
設立時期2022年1月
主な参加者ご近所の有志メンバー、町内会役員、子育て世代、子ども
活動に参加したい場合は公園にどうぞ!Instagramをチェック!
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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