2024/10/10

竹のようにのびのびと!お馴染みの仲間たちと20年以上の里山・竹林保全活動

千里第二緑地(吹田市)

さまざまな公園育て活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回ご紹介するのは、お馴染みの仲間たちと20年以上も里山・竹林の保全活動を続けている、大阪府吹田市のすいた里山倶楽部の皆さんです。

住宅地のすぐ横には里山が!

今回取材に伺った場所は、阪急北千里駅から徒歩20分と少しのところにある「千里第二緑地(せんりだいにりょくち)」。再開発が進む住宅地の横にある階段を上ると、里山への入口が見えてきます。

(千里第二緑地の入口。住宅地の横にこんな里山が…!)

周りにそびえる竹の隙間から木漏れ日ならぬ竹漏れ日が差し込み、残暑の厳しい9月初めでもほんのり涼しいことに驚きました。

里山の中からは、新しく開発が進む住宅地の工事現場が見えます。こんな住宅地のすぐ隣に自然豊かな里山があるなんて、これまた驚きですね。

(里山の中からはこんな景色)

今回は、ここで里山・竹林の保全活動をされている「すいた里山倶楽部」の活動を見学させてもらい、代表者の前川光宏さんをはじめ、メンバーの皆さんにお話を聞きました。

(すいた里山俱楽部・代表者の前川光宏さん)

まずは前川さんに、この千里第二緑地の吹田市内での位置づけについて教えていただきました。

吹田市内には、万博記念公園、市内5つの大学のキャンパス、公園・道路の緑、市が保有している千里第一緑地から千里第八緑地までの8つの緑地があります。そのおかげで吹田市は緑被率が26.1%と大阪府の中でも高く、その中でここ千里第二緑地は丘陵地の中に位置し、この周辺では緑被率が50%以上と特に緑豊かな場所なのだそうです。

前川さんをはじめ、すいた里山倶楽部の皆さんは、20年以上も吹田市の大切な緑地を守る活動を続けてこられました。

(青々とした緑が広がる千里第二緑地)

いざ竹林整備!

活動の始まりはメンバー全員でのミーティングから。この日の議題は「夏季の活動頻度」と「今回の作業内容」の2点です。

今年の夏は酷暑が続いたため熱中症対策としてしばらく活動をお休みし、今回は1か月半ぶりとなります。今後半日だけでも活動を続けるか、涼しくなるまでお休みするか、メンバーで話し合い、半日だけでも活動を続けることに決定しました。

続いては、今回の作業内容についてです。久しぶりの活動で雑草が茂っており、メンバーが活動外で通路の雑草を刈ってくれたそうです(優しい!)。熱い中で行う雑草刈りは重労働で、今回いつも行っている枯れた竹の伐採に加えて雑草刈りを行うかどうか検討しました。これには色んな意見が出ましたが、今回は枯れた竹の伐採のみとし、最終的には現地を見て回って決定することになりました。

(まずはメンバー全員でミーティングです)

この時驚いたのが、前川さんの進行(ファシリテーション)の上手さ!

メンバーの意見を聞くときも、まず初めに選択肢を提示して答えやすいようにし、「皆さんどうですか、〇〇さんどうですか。」と適宜、個人の意見を引き出しつつ、最終的には多数決で全員の意見が平等に反映されるようにされていました。

メンバーの皆さんも積極的に自分の考えを発表し、活動の方針をしっかり共有できていました。

そしていよいよ作業です。まず私は千里第二緑地をぐるっと一周、前川さんに案内してもらいました。

(私もヘルメットをお借りしていざ出発です!)

歩いてみると、里山と竹林、そして池もあって自然豊かな場所であることがよくわかります。余分な枝や枯死した木は伐採し、下草もきれいに刈られているため、林床に日光が差し込みます。

林内は斜面地が多く落ち葉でよく滑るため、こういった場所を歩くのに多少慣れている私でも歩きづらく大変なのですが、前川さんはサクサク歩いていきます。

(よく手入れされた明るい里山・竹林を慣れた様子で歩く前川さん)

さらに、歩いているとこんな看板が。

すいた里山倶楽部の活動は吹田市の公園等自主管理支援制度の登録団体として行っていますが、これまで、花王株式会社「花王・みんなの森づくり活動」や、一般財団法人セブンイレブン記念財団、大阪府からの助成、イベントの収益などを、備品や機材・資材の購入に充ててこられたそうです。

(緑地内の看板。この千里第二緑地がすいた里山倶楽部と吹田市の協働で守られていることや、お知らせ、活動がさまざまな助成を受けていることが書かれています)

さて、一周したところで今回の活動のメインとなる竹の伐採を見学させてもらいました。

手順は、
① 主に密生している竹を間引くように「切る竹」を決め、赤色で印をつけます
② 他の竹や竹製の手作り垣など、障害物の無い方向を切り倒す方向に決めます
③ 倒す方向に人がいる場合は声をかけ、のこぎりやチェーンソーで切り倒します

の3つで、切り倒した竹はのこぎりで切り分け、枝を取り、1ヶ所に積み上げます。

(切った竹の根元に紐を巻き、協力して紐を引っぱります)

ここでポイントは竹を切る高さで、出来るだけ低い場所で節のすぐ上を切らないとくぼみに雨水が溜まり、蚊が出てくるので注意しているのだそうです。

(竹は地面ギリギリで切ります。切った後は写真ような断面に!)

さらに、枝を取る際には道具が登場!

枝の「払い棒」と呼ばれています。竹の枝を幹から取り除くのに使い、その名のとおり、枝の根元で払い棒を使って払い落とします。簡単にやっているようですが、メンバーの山本さんによると「実は上手くやらないと手が痺れる」とのこと。メンバー考案で鉄の棒になりましたが、昔の人は竹の細い棒で枝を取っていたのだとか。

(お手製の払い棒はひもが付いていて、手が離れても飛んでいかず安全!)

皆さん慣れた様子で手際よく作業を進めていきますが、やはり竹を切り倒すという危険な作業のため、しっかりと声を掛け合っている姿が印象的でした。

途中では水分補給のために休憩もとります。つかの間の談笑タイムで、話の内容は近所の住宅地の再開発など地元トークや世間話ですが、おやつを持ってきてくれるメンバーもいて皆さん話がどんどん弾みます。体力勝負の作業なので、休憩をとってペースを整えるのも長く続けやすくする秘訣なのかもしれないなぁと思いました。

(つかの間の談笑タイムも楽しみのひとつ)

休憩後も皆さんで力を合わせてみるみるうちに竹の伐採が進み、きれいに整った竹林に生まれ変わって明るく日光が差し込むようになりました!

(下草も少なく、きれいに満遍なく生えた竹林になりました!)

今までは、このような里山・竹林の保全活動に加え、依頼があれば特別活動として小学校で竹工作を教えたり、吹田市が始めた市民タケノコ堀りや千里の竹あかりの運営協力をされていたそうですが、コロナ禍以降無くなってしまい、今は千里第二緑地の保全に専念されているそうです。

特に「千里の竹あかり」とは、秋の夜に竹林で約3500本の竹筒の中にろうそくを浮かべ、幻想的な光を楽しむ市主催のイベントで、すいた里山倶楽部が毎年協力していました。イベント前の9月あたりから11月までの2ヶ月ほどの間、ろうそくを浮かべる竹筒づくりに専念して準備されていたのだそうです。2022年に20回目を迎えた際に終了となってしまい、残念に思うメンバーも少なくありませんが、皆さんのお話から当時の苦労と感動が忘れられない様子が伝わりました。

皆さん終始、和やかに上手く協力して作業をされていましたが、ここまで息の合った連携体制がとれるのは「20年以上の付き合い」という長い活動の歴史に秘密があります。

はじまりは「すいたシニア環境大学」でのつながりから

すいた里山倶楽部の活動の歴史は古く、設立のきっかけは20年以上前に吹田市が環境教育のできる人材の育成を目指して開催していた「すいたシニア環境大学」の存在でした。

当時、前川さんは地域で知り合いを増やしたいと思い、手話や詩吟といった活動に参加し始めたところ、すいたシニア環境大学ができたのを機に2期生として入学しました。すいたシニア環境大学では大学の先生などの講習や実際の現場に出るような実習、グループ活動がありました。

前川さんは卒業後『環境(エコ)の語り部』として小中高校の環境学習支援を行い、様々な経験する中で、「その先はどうなるのか」、「環境に関する活動は何かできないのか」と感じたそうです。その後、卒業した1期生と2期生でNPO法人「すいた環境学習協会」を設立するに至りました。

現在の「すいた里山倶楽部」は3年前に「すいた環境学習協会」が解散した後、その中にあった「すいた里山クラブ」の活動を受け継ぐ形で設立されたものですが、前川さんはもちろん、メンバーのほとんどがすいたシニア環境大学の卒業生でNPO法人に加わった仲間なのだとか。

メンバーの植山さんは「今までやっていた仕事と全く違うことをしてみたい」と思っていたところ市報の応募で、安本さんは自然が好きで緑のあるところで活動したいという思いで、山本さんは知り合いの誘いで、と入学のきっかけは様々ですが、今ではお馴染みです。

(活動後に談笑する姿や仲良くお昼ごはんを食べる姿が微笑ましいですね)

活動場所となっている千里第二緑地も、活動当初は木や竹が茂って暗く、治安も良くなかったそうで、ゾーニングをし、保全活動を開始しました。「吹田の美しい自然の緑を守ろう」を合言葉にし、西側から順番に、大まかに雑木林ゾーン・アカマツ林ゾーン・竹林ゾーンに分けて整備を進めていきました。そして、20年以上続けたその活動が認められ、推薦により2016年に吹田市環境賞(市長賞)、2017年には国土交通大臣賞を受賞するに至りました。

前川さんは地域のことだけでなく竹のことにも詳しく、千里第二緑地に生えている竹についても教えてくださいました。ここに生えている竹は実は1種類ではなく、一般的な竹のイメージとなっている孟宗竹(モウソウチク)と節からトゲのようなものが生えている四方竹(シホウチク)、淡竹(ハチク)など数種類あるのです!四方竹は珍しく、その名のとおり切り口が四角く節からはトゲが生えていて、秋にタケノコが生えてきます。私も初めて見ました!

(左は孟宗竹で右は四方竹。四方竹には節にトゲが!)

メンバーが活動しやすいように、優しさが詰まっています

メンバーの中には他の団体の活動を兼任している人もいますが、みんなが活動しやすいような工夫も欠かせません。そのひとつが活動予定が把握できる情報紙、「すいた里山倶楽部・通信」です。作成は事務局長の大路さんの役目です。その情報紙はネットやFAXのほか、手紙でもメンバーに配布しているんだとか!現在参加しているメンバーだけでなく、普段参加していないメンバーも「また来ようかな」と思えるように、また、辞めてしまったメンバーも懐かしく思ってもらえるように、とこまめに作成を続けておられます。メンバーを大切に思う優しさが詰まっていますね。

(大路さん手作りの「すいた里山俱楽部・通信」。その月の活動予定のほか、緑地内で見つかった生き物の写真やよもやまばなしも)

これからも元気に仲良く!

そんなすいた里山倶楽部の皆さんのやりがいを聞いてみると、「来てみんなで楽しく活動できるような場所があるのが良い」、「健康のためにもなる」、「整備したらきれいになるのが良い」との声が多かったです。

中でも、高山植物が好きな山本さんは、「友人と全国へ山登りに行って高山植物の観察をするのが楽しみなので、この活動で足腰が鍛えられて山登りを楽しめるのが嬉しい。」とおっしゃっていました。活動で健康を保ちつつ趣味も楽しめるなんて素敵ですね!私も植物が好きなので、まだ先の未来ですが、こんな風に健康的に趣味も楽しめるような過ごし方に憧れます。

(作業中も談笑中も、ずっとメンバーの皆さんの距離感が近いのが素敵です)

メンバーの皆さんに今後の目標をお聞きしたところ、「人が揃わないと活動できないので何とか続けたいね」とのことでしたが、中には「死ぬまでに100回来ることを達成したい」と言っておられる方もいました。

今回1か月半ぶりの活動だったということもあり、活動前に集まった皆さんが「生きてはった?」「元気やった?」と声を掛け合う姿や、老後の楽しみとして終始、元気に仲良く活動されている姿が印象的でした。いつまでも楽しんで活動を続けられると良いですね!

(分担して効率よく作業します)
(竹に巻いた紐を引っぱるのも力作業!)
(イベントで使う竹ろうそくの材料を試作中です)
(里山の中には何と池もあります!)
(枝の払い棒を、置き場所がわかるよう竹の切り株に刺す光景もここならでは)

【基本情報】

団体名すいた里山倶楽部
活動場所千里第二緑地(吹田市)
面積約20,000 m2
基本的な活動日毎月第1土曜日、第2金曜日、第3木曜日、第4火曜日(雨天時中止)
いつもの活動参加人数14~15人ほど
会の会員数約30人
活動内容里山・竹林の保全整備、環境学習の場の提供、普及啓発イベント、地域のイベントへの参加、その他
設立時期2004年(NPO法人設立)、2021年(「すいた里山俱楽部」設立)
主な参加者アクティブシニア
活動に参加したい場合は代表の前川さんや大路さんにお声がけください(看板やWEBにて情報公開中)
取材・執筆
取材・執筆
中元 菫

学生の時に公園愛護会の存在を知り、レポーター活動を始めたことをきっかけに公園を見る目が変わりました。レポーター活動を通じて、愛護会の皆さんと肩を並べて同じ目線に立っているような感覚になれて嬉しいです。活動レポートが読んだ人の楽しみや励み、新たな気づきになればと思います。大阪公立大学大学院 緑地計画学研究室卒。現在はとある市の職員として、公園や街の緑を守っています。

学生の時に公園愛護会の存在を知り、レポーター活動を始めたことをきっかけに公園を見る目が変わりました。レポーター活動を通じて、愛護会の皆さんと肩を並べて同じ目線に立っているような感覚になれて嬉しいです。活動レポートが読んだ人の楽しみや励み、新たな気づきになればと思います。大阪公立大学大学院 緑地計画学研究室卒。現在はとある市の職員として、公園や街の緑を守っています。

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