2021/4/26

引っ越し先でも公園ボランティア。立ち上げ、継続、バトンタッチしていくこと。

塚越公園(伊勢原市)

いろいろな公園ボランティアの知恵やアイデア・情熱をシェアするコーナー「となりの公園愛護会」。第6回は、引っ越し先でも公園愛護会を立ち上げて、上手にバトンタッチされている、こんな方。

引っ越し先でも公園愛護会を立ち上げて長年活動!

アンケートでこんなコメントをいただいていました。

公園のボランティアは横浜市で約10年、その後伊勢原市で約10年、やらせていただいております。うれしい事は、通りかかった人が「いつも、きれいなお花をありがとう」「散歩コースでお花を見るのが楽しみです」とお声をかけて下さることや、暑い日にお茶を買って差し入れしてくれたこと。公園の清掃や水やりを終え、きれいになった公園を歩くことです。

以前お住まいだった横浜でも、その後お引っ越しされた伊勢原でも、公園愛護会の活動をされているとのこと。場所を変えながらも、通算で20年も続けていらっしゃるというお話に「これは長く公園ボランティアの活動を続けるヒントがあるかも!」ということで、お話を伺ってきました。

伊勢原市にある塚越公園。近くには住宅のほか、国道や工場・スーパーがある、坂道や斜面を生かした公園です。園内には、乗り物をモチーフにしたレトロな感じの遊具や、3つの壁画、螺旋階段をはじめ様々な階段や坂道があり、一番上には展望台もある、ユニークな公園です。

こちらの公園ボランティアをしているのは、お近くにお住まいのお花好きの女性たち。佐藤さんにお話を伺いました。

基本的な活動は、公園の周辺に作られた花だんの管理。そのほか、遊具のあるエリアのゴミ拾いなどもされているそうです。斜面の樹木管理などは、市が定期的に行っているとのことでした。

はじめて公園愛護会に関わったきっかけは何ですか?

「横浜にいた頃、勤務先のビルの窓から見えるところに、新しく公園ができたんです。しばらくしたら、その公園の草がだんだん伸びてきて。公園ができていく時からずっと見ていたので、気になってしまって。」そんな時に、公園のボランティア募集の看板を見つけて、公園愛護会という制度があることを知り、早速電話してみたそうです。

高速道路のインター脇にある公園で、はじめは葛とヨモギが大量に生えていたそう。スタートは、とにかくそれをどうにかするところから。キレイになるのが楽しくて、おひとりでコツコツ作業を続けられていたそうです。

その後、退職とともにお引っ越し。横浜から伊勢原に移られたそうですが、引っ越しても気になるのは、公園のこと。「そろそろ草が伸びてきた頃かな」と、しばらくはわざわざ車で通って除草作業をされていたそうです。

バトンタッチのきっかけは、ちょっとした会話から

そうやって約3年もの間、時間を見つけては、横浜の公園に通って愛護会活動を続けていたある日、他にも除草作業をする人を目にします。聞いてみると、ずっとキレイだった公園の最近の状況が気になったのか、その方も時々作業をするようになったそうで、「これは!」と正式にバトンタッチをされたとのことでした。

そんな折、伊勢原の方でも、たまたま市の広報誌を見て、伊勢原にも公園愛護会の制度があることを知ったそうです。早速、市役所に電話をすると、「ここがちょうど空いてます」と、今の塚越公園を紹介してもらったとのことでした。伊勢原での活動のスタートです。

公園ボランティア歴、20年!好きだから、続けられる

横浜で10年、その後伊勢原でも12年、合わせて20年間(うち2年間は両方を兼任)、公園のボランティア活動を続けられている佐藤さんは、もともと花が好きで、お住まいのマンションのベランダでも50-100くらいの鉢植えを育てていたとのこと。ずっと花のある生活をされているそうです。

「公園のボランティアは楽しくて、好きなんです。」20年もの間、公園ボランティアの活動を続けてこられた秘訣を伺ってみると、「好き」というシンプルな言葉を返してくださいました。花が好きで、楽しくて。そして、雑草だらけの公園がキレイになったときの達成感。遊びに来た人や、ご近所の人が、喜んでくれること。

無理はしないこと。活動日も、毎月固定で決めると苦しくなっちゃうから、不定期だそう。気になった時、お花が手に入った時、お天気がちょうど良い時。義務感を持たずに、そんな風に気ままに取り組んでいるから、長く楽しく続けられるのかも、と教えてくださいました。

園芸の知識はどうやって身につけたのですか?

花育ての勉強は、子どもの頃いつも見ていた花好きのお父さんの姿を思い出したり、本を読んだり、お店の人に聞いたり、NHKの「趣味の園芸」を見て学んだとのこと。

萎れかかってケースで安売りしている花も、きちんと植えてあげれば、また元気に定着して咲くこと。高い花を植えて、すぐに抜いて持ち去られてしまった過去もあったそうで、残念な気持ちにならないためにも、活動費のおサイフのためにも、ケースの安売りを有効活用されているんだとか。花も喜んでいるかもしれません。

公園の花だんの他に、ご自身で畑もされているとのことで、土と植物との愛に溢れていらっしゃいます。この日は、美しく咲き誇る山吹の花をおみやげに持たせてくださり、花が終わったら挿し木にできることも教えてくださいました。

声をかけ合うところから、仲間が増えていく

お話を伺っていると、塚越公園での活動をしながら、近くのすみだ公園や、北ノ根公園での愛護会も立ち上げられたということ。なんと、横浜時代から合計4つの愛護会を立ち上げて、そのうち3つをバトンタッチされていました。

仲間集めは「声をかけてくれる人がいて。一緒にやるようになったんです。」とのこと。お花のお手入れをしていると、立ち止まって見ていく人がいたりして、そういう人は活動に興味を持ってくれていることが多いので、「もしよかったら、一緒にやりませんか?」などと、声をかけるようにしているそうです。

「きれいなお花をいつもありがとう」と労いの言葉をかけてくれる人もいれば、近くの自販機で冷たいお茶を買って差し入れしてくれた人もいたそうです。市からもらったたくさんの球根がきっかけになって、仲間や活動が広がっていったというエピソードも話してくださいました。

バトンタッチするときに大切にしていることは何ですか?

担い手不足や後継者不足の問題は、あちこちで課題に挙げられています。そんな中、複数の愛護会を立ち上げられて、継承・バトンタッチされている、その秘訣をお聞きしました。

まずは一緒にやること。一緒にやりながら頼んでみて、サポートが必要なうちは一緒にやり続けること。一緒にやっている間にやり方をきちんと教えること。そして困ったときにはどうしたらいいかの相談先を伝えておくこと。そんなに大したことはないんです、そのくらいかな、と優しく笑いながら話してくださいました。今は3つの公園をそれぞれが担当しながら、お互い手伝ったりすることもあるそうです。

楽しく、無理なく。好きな気持ちと、達成感。繋がりながら、それぞれのペースでやっていく、そんな皆さんの熱心な活動ぶりには、市役所からも注目・感謝されているとのことでした。

【基本情報】

団体名コスモス会
公園名塚越公園 (伊勢原市)
面積2,060m2
基本的な活動日およそ2週間に1回、不定期
いつもの活動参加人数1-3人
会の会員数6人
活動内容ゴミ拾い, 除草, 落ち葉かき, 低木の管理, 花壇の管理, 植物の水やり, 施設の破損連絡, 愛護会活動のPR, 新メンバーの募集や勧誘, 遊びの見守り, 公園再整備に関する活動, 会員相互の話し合い
設立時期2009年(平成21年)11月
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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