地域の公園ボランティアを紹介するコーナー「となりの公園愛護会」。いろいろな活動をされている皆さんにお話を伺って、その知恵やアイデア・情熱をシェアしています。第5回は、高校の生徒会活動として地域とつながるユニークな愛護会。
高校生のボランティア活動としての地域の公園愛護会!
アンケートでこんなコメントをいただいていました。
高校のボランティア活動として位置付けており、2019年10月より活動しています。毎月有志のボランティアを募り、15~20人ほどで清掃活動をしたり、子どもたちと交流したりしています。
高校生の公園愛護会。毎月の活動は、公園そうじに加えて地域の子どもたちと一緒に遊ぶこと。地元の自治会や、子どもたちとの関わりを大切にしながら、ハロウィンイベントなども開催したとのことで、「これは公園愛護会の新しい担い手として学校が取り組む先進事例では!」ということで、お話を伺いに行きました。
伊勢原市にある城ノ腰公園(じょうのこしこうえん)。住宅地にあり、多年齢向けの遊具ゾーンと、雨水調整池を兼ねた広場ゾーンのある、少し広めの街区公園です。
こちらの公園ボランティアをしているのは、私立向上高等学校の生徒会「なおき会」を中心とした有志の皆さん。担当の植原先生と、参加されていた生徒の藤原さん、佐藤さん、大深さんにお話を伺いました。
基本的な活動は毎月1回、おもに土曜の午後。生徒会「なおき会」の主催で、クラス掲示や全校集会で広く呼びかけて、その都度、参加したい生徒さんが集まっているそうです。ゴミ拾いや、落ち葉掻きなどを基本にしながら、清掃後に子どもたちと一緒に遊ぶところまでを活動としていて、気軽に参加できるボランティア活動として、定着しているようです。
どのような活動をしていますか?また、学校での位置付けは?
「全校生徒誰もが気軽に参加できるようなボランティア活動として、生徒会主催で行っています。」向上高校はボランティア活動が活発な学校で、学校主体の献金活動をはじめ、生徒会主催でも、市内のひとり暮らし高齢者を訪問したり、聴覚障害について知る講座を行ったり、地域のお祭りや花火大会・マラソン大会などでボランティア活動をしているそうです。
その「心の教育」の中でも、地域の公園そうじは、気軽に参加できて楽しめるカジュアルな活動なので、生徒さんたちの初めてのボランティア活動の入口としても、人気があるようです。みんなが参加しやすいように、時間を土曜の授業後にしたり、はじめてだけどやってみようという気持ちを応援するような工夫をしているとか。
およそ1500人の全校生徒に広く声をかけていて、担任を通して参加希望が届いたり、部活単位で参加したりと、毎回いろいろなメンバーが集まり一緒に活動することで、学年やクラスを超えた校内の交流にもなっているとのこと。公園そうじを通して、校内にも知り合いが増え、ゆるやかな繋がりが広がっていく。いろいろな楽しみがありますね。
活動は毎回、公園そうじに加えて「子どもたちと一緒に遊ぶ」ことを必ずセットにしているそう。そうじが終わる頃、公園で遊んでいる子どもたちに高校生から声をかけて一緒に遊んでいるそうです。コロナ前、ハロウィンの時期には、地域の子どもたちに向けてハロウィンイベントを企画。告知をしたら、お知らせが口コミで広がって、大盛況だったそう。また、自治会の焼き芋大会に活動日を合わせて、公園そうじから、子どもたちとの遊び、そして焼き芋の片付けまでお手伝いしたり、楽しく充実した活動をされていることがよくわかります。
地域の公園愛護会を担うことになったきっかけは何ですか?
「地域の自治会からお話があって。これまでにも地域や地元自治会との繋がりはあり、交流していました。」生徒さんたちの毎日の通学路になっていることからも、地域との繋がりは大切にされていて、これまでも様々な活動をしてこられたそうですが、今回初めて地域の公園のひとつを担当することになったとのこと。公園愛護会の活動は、話がなければ知らなかったし、取り組む機会もなかったそうで、声をかけてもらってよかった、と担当の植原先生も話してくださいました。
やってみて気づいたことは?
「活動を始めて1年半ですが、【公園そうじ+子どもと遊ぶ】という活動は、気軽に参加してもらいやすく、ボランティア=堅苦しいというイメージも崩せて、やってよかったです。」ひとりでも参加できるし、友達も誘いやすい。参加のハードルが低いことで、リピーターも多く、楽しみながらやってくれているのは嬉しいですね、とおっしゃっていました。
部活動単位で参加されるグループもあるそうで、野球部が参加したときは、そうじの後子どもたちと一緒にキャッチボールをしていて、子どもたちもとても喜んでいたそうです。
ボランティア活動のはじめの一歩に
高校に入って、ボランティアがあるよと聞いて、「どんなものかな?わからないけど一度やってみよう」と思い、参加してみたという1年生の佐藤さん。部活に入っていないけれど、この活動に参加したことで、上の学年の人と関われ協力できたことが楽しかったとのこと。
地域の公園そうじに参加してみて、道に落ちているゴミにも目が行くようになり、いつも誰かが掃除をしてくれていることに気づいたそうです。学校での活動が第一歩になった佐藤さんは、これからいろいろな人と関わったりボランティアの幅を広げていきたいと話してくださいました。
将来保育士になりたいから、小さな子と関われる機会はうれしい
同じくボランティア活動は初めてだったけれど、クラスで声を掛け合って参加してみたという1年生の大深さんも、気軽に参加できたし良かったとのことでした。公園がきれいになるのが気持ちが良いし、協力の大切さに気づいたそうです。
将来保育士になりたいという大深さんは、そうじ後の子どもと遊ぶ時間も楽しくて、小さな子と関われる機会はうれしいと話してくださいました。
公園そうじをするようになったら、いつもの景色が変わって見えた
中学の時から福祉施設の訪問や公園清掃などのボランティアに参加することがあって、ボランティア活動に興味があったという2年生の藤原さんは、去年から活動に参加されているそう。これまで育ち暮らす地元のほかに、毎日通学しているこの地域でも、子どもたちと遊んだり地域の人と関わりが持てることはうれしいことだと話してくださいました。
また、公園そうじに参加するようになって、最初に始める前と比べると、植物や虫など公園の景色をよく見るようになったそうです。こっちはこんな花が咲いている、こんな風に手入れされているなど、公園の特徴を見るのが楽しくなって、それまで見ていたいつもの景色が違って見えるようになったという気づきを共有してくれました。
これからもいろいろなボランティア活動に参加していきたいと話してくれた藤原さん。今後は、そうじだけではなく、障害のある人や高齢者など人の手助けができるような活動にも参加してみたいとのことでした。インクルーシブ公園(*)も増えている中、遊びもボランティアもいろいろな可能性が広がりますね。
(*) インクルーシブ公園:性別や年齢・言語・能力・ハンディキャップの有無に関わらず、共に遊べて、違いがあってもそれぞれが楽しめる公園。(詳しくは:パークフル「これからの公園」をどうぞ)
大切にしていることは?
「誰もが、参加しやすいことですね。」ん〜と悩みながらも、そう答えてくださった植原先生。公園そうじや子どもと遊ぶことは、難しいことじゃない。地域の人とこんなイベントするよ、ただの清掃だけじゃなくて、子どもたちと遊べるよ、と呼びかけることで、学校に来ているからついでにやってみようかな、友達誘ってみようかな、と気軽に参加するきっかけにする。「ボランティア」というと、難しくて堅苦しい高尚なものというイメージに陥りがちだけど、もっとリラックスして一歩を踏み出してみてほしい、そんな思いが溢れているようでした。
新たな公園愛護会の担い手としての「学校」の可能性
高校が地域の公園愛護会を担うことについて、伊勢原市役所みどり公園課の担当青木さんにお話を伺ってみました。従来の公園愛護会の担い手としての自治会・町内会の活動が縮小傾向にあり、公園愛護会の担い手が減っている中で、新たな担い手として「学校」や「企業」の可能性を考えられ、地域の自治会を通して向上高校に話をされたそうです。とても良くやってくださっていて、これからも大いに期待されているとのことでした。
他の学校にも声をかけたり、自治体としてもいろいろな工夫をされているようです。
公園愛護会の新たな担い手としての学校の活動。そして10代の青年たちの地域での活動。私たちも引き続き注目&応援させていただきます!
【基本情報】
団体名 | 私立向上高等学校なおき会 |
公園名 | 城ノ腰公園 (伊勢原市) |
面積 | 10,233m2 |
基本的な活動日 | 毎月月末近くの土曜日の午後 |
いつもの活動参加人数 | 20-30人(定員として30人を設定) |
会の会員数 | 全校生徒 約1500人 |
活動内容 | ゴミ拾い, 除草, 落ち葉かき, 地域のイベント, 子ども向けイベント, 他団体と連携したイベント, 遊びの見守り |
設立時期 | 2019年(令和元年) |
参加者イメージ | 学生 / 職員 |