みんなの公園愛護会では、地域の人々や公園ボランティアとともに、公園をより良くしようと頑張る行政の取り組みにも注目しています。
酷暑の中ぐんぐん成長する公園や緑地の草刈りに苦労しているという声をよく耳にしますが、愛知県瀬戸市では、ヤギやヒツジのアニマル除草隊が活躍しているとのこと。瀬戸市が民間企業や地域と連携して行っている「アニマル除草」について、お話をお聞きしてきました。
環境にも人にもやさしいアニマル除草
人による除草に苦労している斜面や緑地などの雑草を、ヤギやヒツジに食べてもらう「アニマル除草」。地球にやさしく、人にもやさしい除草方法として、持続可能なあらたな取り組みに挑戦しています! 瀬戸市ホームページより
現在、瀬戸市の一部の緑地で行われているアニマル除草について、瀬戸市 建設課 公園緑地係の鈴木彰浩さんにお話をお聞きしました。

アニマル除草の取り組みが始まったのは、2021年の秋でした。地元の造園業者で瀬戸市内の都市公園64公園の指定管理も請け負っている朝凪造園の代表丸山洋一さんの発案で、急な斜面での除草にヤギやヒツジたち動物の力を借りてはどうかと、陶祖公園の斜面地を使って実証実験が行われました。
草刈機の騒音やCO2排出の問題もなく、これまでトラックで運んで焼却処分をしていた刈り草は動物たちの栄養となり、糞は土を豊かにするという環境への好循環やコスト削減にも繋がっているとのこと。そして何より、その姿や存在は癒しになり、地域や家庭での会話のタネとなり、人々の楽しみが増えているそうです。
危険な急斜面で大活躍
とくに人が入って作業するのが危険な斜面地でアニマル除草隊が大活躍。本来は山の斜面に住むヤギやヒツジたちは、人が立っているのも大変な急斜面や木が生い茂って立入困難な場所とも相性が良いそうです。
現在、アニマル除草が行われているのは、東山町2丁目ちびっこ広場東側の斜面緑地と、西山町1丁目西山広場。どちらも住宅地の中にある、斜面のある緑地です。アニマル除草隊は、毎年6月頃になるとフェンスで囲われたこの地に放たれ、草がなくなる10月頃まで日々草を食べて活躍したあと、拠点となる小屋がある陶祖公園に戻って冬場を過ごしているそう。現在は9頭のメスのヤギがアニマル除草隊として活躍しています。

1軒ずつ丁寧に回って地域の合意形成、今では癒しの人気者に
地球にも人にもやさしいアニマル除草ですが、地域の協力なしには成り立ちません。市役所と地元の造園業者、地元自治会が連携しながら進められているのが、非常にユニークなポイントです。
アニマル除草隊が活躍する效範連区自治協議会の会長 加藤文弥さんと副会長 尾関純生さんにもお話をお聞きしました。
東山町2丁目ちびっこ広場横の市有地の斜面にアニマル除草隊が初めて入ったのは2022年の6月。始めるにあたっては、隣接するすべてのお宅の合意を取り付けてのスタートでした。「一人でも反対があるとできないことだから」と会長の加藤さん。30-40軒ほどあるお宅に、副会長の尾関さんが何度も丁寧に説明をして回って、1軒ずつ地域の理解を得ていったそう。

初年度こそ、臭いや鳴き声に対する不安の声があったものの、いざ導入してみると良い反応ばかりで、その年の終わりには「今年で終わりですか?来年もやってくれますか?」という声まで届いたそうです。
「毎朝ヤギさんたちの姿を見ると癒される」「孫が喜んでくれて嬉しい」「鳴き声もかわいい」など、今では地域の人気者になっているアニマル除草隊員たち。
それまでは、年2回は業者による除草が入るものの、すぐに2m近い高さほど草が生い茂り、鬱蒼として見通しの悪い「まるでジャングルのようだった」という斜面は、アニマル除草隊員たちの働きで、スッキリした草地となりました。(初年度の9週間にわたる挑戦の経過は瀬戸市のホームページでも紹介されています)
現在活躍中のアニマル除草隊員のみなさん
猛暑のなか、弱音も吐かず毎日頑張っているアニマル除草隊のみなさんをご紹介します。現在は9頭のヤギさんたちが活躍中!ツノがあって体が小さめなのがシバヤギ、ツノがなく大きめなのがネーザン種です。




日々のお世話は地元の造園会社が
アニマル除草隊員たちの日々のお世話をするのは、朝凪造園株式会社のみなさんです。アニマル担当の長江亜由美さんと都市公園指定管理責任者の福島英明さんにもお話をお聞きしました。(代表でアニマル除草の発案者である丸山さんはお仕事の都合でこの日はお会いできませんでした。残念!)
アニマル除草の協力事業者である朝凪造園のみなさんは、隊員たちの引っ越しや、日々の健康観察、環境整備などを担っています。アニマル担当の長江さんは、隊員たちのお母さん的存在で、長江さんの姿が見えると(車が見えただけで!)みんな大はしゃぎで出迎えてくれました。

アニマル除草隊の活動エリアにどのくらい食べられる草があるかを見ながら、活動する隊員数を割り振り、移動させているとのこと。活動エリアはフェンスで囲われていますが、少しでもスキマがあると脱走してしまうので、油断はできません。(脱走してしまったこともあるそうですが、地域の方が捕まえてくれたそう。地域のみなさんも優しい!)
2日に1回のペースで隊員たちにきれいな水を運び、様子を見ているという長江さんたち。暑い中、斜面の上まで水の入った重い容器を運ぶのも一苦労です。


当初はヒツジやオスのヤギもいて、ヒツジの毛刈りイベントや、ヤギの出産ラッシュもあったそう。家庭動物管理士の資格もお持ちの長江さんはヤギたちのお産の手伝いや赤ちゃんたちのお世話もしたんだとか。
ヤギの出産や赤ちゃんたちのお世話は、かつてクジャクが飼われていたケージのある宮前公園で行われました。(ファンの方によるヤギの赤ちゃんたちの成長動画が朝凪造園のInstagramで見られます)
ふれあいイベントや学校授業で環境学習の機会にも
アニマル除草隊は、子どもたちの環境学習や地域の人々が動物にふれあい癒される機会にも貢献しています。自治会と子ども会主催のふれあい体験イベントでは、朝凪造園の協力のもと、えさやり体験や隊員たちの命名(めぇ〜めぇ〜)会、ポニー馬車の乗車体験も行われ、毎年とても賑わうそうです。

小学校の授業でアニマル除草を取り上げたり、近隣の保育園や幼稚園の園児たちも楽しみにしているという声が先生たちから届くそうで、子どもたちの学びの機会にもなっているとのこと。
5年で除草ミッションは成功、次なる課題は
こうして效範連区で2022年から続くアニマル除草は今年で5年目を迎えています。この4年間で生える草の質も、土の質も変わってきたとのこと。
隊員たちは、毒性があるもの以外は基本なんでもOK、多少のトゲもお構いなし、ヤギが好んで食べる柔らかい草はどんどん食べられ、以前見られたような背の高い草も無くなり、笹や芝が増えてきたといいます。
お伺いした日は8月の始めでしたが、食べられるところはほぼ食べ尽くした感もあり、長江さんたちは自治会館の脇に生えるクズを刈って「おやつ」として隊員たちに持って行っていました。
もう食べられる草はなくなったので、2年くらい休んでもいいかもというお話も。草が生えなくなったので、除草という面では完成に近い状態になりました。
「除草ミッションとしては、5年で成功ということだね」
「でも、近所の人たちはヤギさんたちアニマル除草隊が来るのを毎年楽しみにしているから、困ったね」
と次なる課題が出てきていました。スタートから5年目で除草は完了したものの、癒しの存在としてすっかり地域の人たちの人気者となり、来訪が楽しみに待たれているアニマル除草隊員たち。場所を変えるにしても、新たな場所での地域の人たちの理解と応援が必要となります。
地球にも人にもやさしいアニマル除草。草刈りのコスト面や環境負荷、そして地域の人たちに喜んでもらえる事業になっていることから、市役所としても広がってほしい取り組みだといいますが、導入への一番のハードルは「地域の合意」とのこと。自治会加入率が低下する昨今、隣接する全てのお宅の合意を得るというプロセスをコツコツと実行することは容易ではないようです。
「やってみれば、いいことばっかりなんだけどね」と笑顔で口々に話してくださったみなさん。このアニマル除草の取り組みが、他の地域にも広がり、あちこちで隊員たちが美味しい草を食べ、地域の人たちが癒されながら優しく見守り、美しい緑のまちの風景が増えていくとステキだなと思います。



おまけ:
效範連区自治協議会のみなさんが、取材を受けた日のことをホームページに掲載してくださいました。效範連区では、特定外来生物の「オオキンケイギク」の駆除イベントを毎年行っていて、10年目となった今年は、子どもから大人まで250人が参加するなど、環境を守るためのアクションも活発な地域です。すごいですね。
【基本情報】
| 取り組みの名称 | アニマル除草 |
| 実施自治体 | 瀬戸市(愛知県) |
| 事業の概要 | 人による除草に苦労している斜面や緑地などの雑草を、ヤギやヒツジに食べてもらう「アニマル除草」。地球にやさしく、人にもやさしい除草方法として、持続可能なあらたな取り組みに挑戦しています。 |
| 取り組みの詳細 | 瀬戸市のホームページをご覧ください。 |
