大阪公立大学の学生が、大阪市の公園愛護会の皆さんの活動を紹介する「大阪となりの公園愛護会」。公園の利活用やランドスケープ設計を学び研究する学生の視点で、公園ボランティア活動を紹介します。
今回、取材に訪れたのは、大阪市西淀川区にある西姫島公園(にしひめじまこうえん)です。
1日の活動は挨拶から始まります。今日も大きな声で「おはようございます!」
取材前に、大阪市の自治体職員さんからこのような情報をいただいていました。
西姫島公園愛護会の皆さんは、公園の清掃や除草を毎日してくださっているので、公園がとてもきれいに保たれています。公園緑化にも積極的で、草刈機の貸し出しなど、公園事務所とも密に連携しています。
毎日清掃や除草をされてているとは、どのような方々が活動されているのか気になります!
取材当日、阪神なんば線の福駅から徒歩約10分、住宅と工業系の建物が入り交じった街並みに静かに佇む西姫島公園へ向かうと、「おはようございます!」と爽やかな挨拶が聞こえてきました。取材に訪れた筆者を迎えてくださったのは、西姫島公園愛護会会長の川並加津彦さんです。
公園のグラウンドでグラウンドゴルフをしているシニアの方々やお散歩やお買い物で公園を通ったご近所さん、公園のそばを通る業者の方にまで挨拶をされており、素敵な人柄が伝わってきました。

毎朝公園に出て皆さんに挨拶をされているという川並さん。夏頃に体調のご都合で公園に出られないない時期があったそうですが、「その間は川並さんの元気な挨拶の声が聞こえなかった」とグラウンドゴルフで集まっているシニアの皆さんが心配していたとのことです。
「みんなが静かでよかったわって言うねん!」と笑う川並さんですが、そこには川並さんが元気に公園愛護会の活動に戻ってきたからこそ言える皆さんなりの愛情と、元気になった川並さんの挨拶を聞けることの喜びが隠れています。愛護会の枠を越えた、地域での仲の良さが感じられるエピソードです。

みんなの連携で公園をきれいに保ちます
この日は、現在姫島宮西第四振興町会の会長を務め、以前は西姫島公園愛護会会長も兼任されていた伊佐見俊行さん(冒頭の写真左から2番目)と、公園の目の前にお住まいで、毎朝6時頃から芝生のお手入れで公園へ来ているという滝本慶子さん(同 一番右)にもお話を伺いました。
かつては町会の会長である伊佐見さんが愛護会の会長をずっと務めておられましたが、若い人に引き継ぐことになり、現在の川並さんにバトンタッチされました。川並さんは「負けていられないですね」と話します。
滝本さんがお手入れをする芝生を見せていただきました。かつてはここにイチョウなどの木々が植えられていたのですが、銀杏の臭いをなんとかしてくれないかと市に伝えたところ木が取り除かれてしまい、雑草が繁茂するようになったのだそうです。そこで、花や芝を定期的に管理するようにしてきれいな状態を保っているとのことでした。
なんとこの範囲の芝生を、滝本さんが1人でお世話をされています。滝本さんにとってこの公園は「庭みたいなもの」だそうで、休むこともなく毎朝芝生のお手入れを続けています。さまざまな工夫を重ねながらこだわりの芝生を育てていらっしゃることを、いきいきとお話くださいました。

そんな芝生のすぐそばに、「ふれあい花壇」が設置されています。この日は花壇の半分程度にジニアなどが咲いていました。春や夏には花壇いっぱいにお花が咲いて、公園を彩っているそうです。
これらの花苗は、ボランティアの方が育てている苗をコミュニティセンターからもらってくることが多いとのことで、愛護会活動と地域の繋がりの強さを感じました。お伺いした10月は、冬の花の植え付けに向けた準備として、花壇の土の攪拌をして、腐葉土や肥料を入れていらっしゃいました。

また、西姫島公園の近くに位置する障がい者向け支援施設である”風の子そだち園”の方も、よく10名ほどで公園の清掃活動をされているそうです。愛護会に限らず、さまざまな人が公園に関わっていることは素敵なことですね。公園が、地域の方との交流をより強くするきっかけの場になっているようです。
いつも活動しているからこそ、きれいにしたくなります
毎日のように公園で活動をするのは滝本さんだけではありません。川並さんもほぼ毎日清掃をしています。3日に1回でもいいのではないかと言われることもあるそうですが、毎日見ているからこそ、少しでも乱れていると気になってきれいにしたくなるのだそう。きれいな公園を保つ秘訣は、心がけだけでなくいつも公園に愛着を持って活動をしていることにあるのかもしれません。

西姫島公園のグラウンドは、毎週月曜日、水曜日、金曜日はシニアの皆さんのグラウンドゴルフに、土日には少年野球の練習に使われています。
お伺いしたこの日はグラウンドゴルフに使われる金曜日でした。「明日に少年野球の子どもが来るから、危なくないように草を刈ったるねん」と川並さんが教えてくださいました。
基本的にはグラウンドが使われていない日に草刈りを行うのですが、草の伸びが気になるときにはグラウンドが使われる日でも利用のない時間を狙って作業をするのだそうです。グラウンドゴルフをしているシニアの皆さんが帰ったら、グラウンドの中や周りに生えた草を刈り取っていきます。
草刈機、芝刈機は市の公園事務所から借りることができるので、西姫島公園では機械をうまく活用しながら草刈りや芝生のお手入れをしています。

遊具や砂場は近隣の保育園、幼稚園の子どもたちがよく遊びに来るそうで、特に砂場の清掃に気をつかっていらっしゃいます。西姫島公園が犬の散歩ルート上にあることもあり、かつてはフェンスで囲われた砂場がドッグラン化してしまって犬のフンに困っていた時期がありました。
また、公園内にごみ箱が設置されていたこともあって、犬のフンだけでなくたばこも捨てられることが多く、公園事務所と相談してごみ箱を撤去する決断をしました。現在もごみのポイ捨ては少なからずありますが、ごみ箱がなくなったことでごみが減ったそうです。
取材中に川並さんとおしゃべりをしていたご近所の方も、「ごみ箱をのけて正解やった」と頷きます。便利になりすぎたことが誰かの不便になっているかもしれないと気付かされました。



大きな石も気づいた人が取り除いてかごや一輪車に集めていきます。つまづいたら怪我をしてしまいそうな大きさの石もあるため「石を放置するような危ないことはできない」とおっしゃっていました。



何もなくても見に来たいと思える場所
熱心に活動されている川並さん。町会の人や、散歩で公園を訪れた人から「いつもきれいにしてくれてありがとう」と言ってもらえるとき、お金の問題じゃなくてボランティアでやっていてよかったとやりがいを感じるそうです。「『今日もがんばってきれいにしてくれてるね!』って言われるのが嬉しくてしゃーないねん」と語る川並さんから笑みがこぼれます。
公園についても、「案外、そうやってきれいにしようとする意識が、公園を利用する人たちの中にもあるみたい」とのこと。愛護会による日々の清掃はもちろんですが、地域の人が公園をきれいにしよう、きれいに使おうとする意識をもって公園を利用することで、公園がきれいに保たれています。
川並さんは、「毎日やってるから癖になってるんや」とこれまでの活動を振り返ります。何も用事がなくても見に来たいと感じるほど、この公園が生活に馴染んでいるのだそうです。
ちょうど取材が終わるタイミングでグラウンドゴルフのシニアの方々が帰っていきました。川並さんは一人ひとりに挨拶をし、軽く雑談をして皆さんを見送ります。川並さんの人柄と行動が、今日も西姫島公園を舞台に地域の繋がりを育てています。
【基本情報】
| 団体名 | 西姫島公園愛護会 |
| 公園名 | 西姫島公園(大阪市西淀川区) |
| 面積 | 7,268 m2 |
| 基本的な活動日 | 毎日朝9時頃から |
| いつもの活動参加人数 | 3-4人 |
| 会の会員数 | 10人 |
| 活動内容 | ごみ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、利用者へのマナー喚起 |
| 設立時期 | 1950年(町会設立と同時期) |
| 主な参加者 | 近隣の方、障害者施設の方 |
| 活動に参加したい場合は | 直接お越しください |