大阪公立大学の大学生・大学院生が、大阪市の公園愛護会の皆さんの活動を取材し紹介する「大阪となりの公園愛護会」。今回から新たなメンバーも加わり、公園の利活用やランドスケープ設計を学び研究する学生の視点で、公園ボランティア活動を紹介します。
今回は、大阪市鶴見区の鶴見緑地(つるみりょくち)愛護会。花博記念公園としての面をもち、広大な敷地と質の高い緑地をもつ鶴見緑地での活動について伺いました。
1990年の花博から、お花を育て続けています!
大阪市鶴見区に位置する鶴見緑地は、大阪メトロ長堀鶴見緑地線鶴見緑地駅から降りてすぐのアクセスが良い公園です。1972年に開園し、1990年に開催された「国際花と緑の博覧会」、通称「花博」の会場となりました。現在も各国のイメージに沿った国際庭園があります。バラ園、風車の丘、大きな芝生広場なども有する面積約122㏊の公園です。
こちらでボランティア活動をされているのは、花博フラワークラブこと鶴見緑地愛護会の皆さん。2月の活動日にお伺いし、会長の黒田加代さん(上の写真の前列の一番左)とメンバーの皆さんにお話をお聞きしました。鶴見緑地でのボランティア活動は歴史が古く、成り立ちもユニークです。
1990年、国際花と緑の博覧会(以下、花博)開催にあたって全国ボランティアが募集されました。そこで集まったボランティアが「せっかくだからここで活動を続けたい!」と結成した団体が、鶴見緑地愛護会の前身である花博フラワークラブです。
結成当初のメンバーは100人以上おり、淡路島や岡山県からなど、大阪府以外からの参加者も大勢いらっしゃったとか!時間の経過とともに地元の方を中心とした活動になったそうですが、花博の規模の大きさがうかがえます。
現在も結成当時からのメンバーが多く、その活動歴は30年以上に渡ります。花博フラワークラブの文字が入ったジャンパーやエプロンを身に着けて活動されており、団体の歴史の長さと花博やお花への愛の深さを感じました。
お互い教えあいながら、丁寧にお世話をしています
取材日に見学したのは緑地内の国際庭園に位置するオーストリア庭園の整備。音楽の都ウィーンのウィーン市立公園をモデルとして作られたこの庭園は、入口にアーチがあったり、奥にはワルツ王として知られるヨハン・シュトラウスの像があったりと日本ではなかなか見られないものが目に飛び込んできます。
この日の活動は春の開花に向けての花壇の手入れ。最初に雑草抜きを見学させていただきました。雑草を抜くと一口に言っても、その作業量は相当なものです。土の養分を吸う余計な雑草を手際よく取り除いていきます。この日は並行して、密集していた植物を分散する作業も行っていました。花壇の植物がのびのび育つことと、咲いた時の見栄えを両立させています。ほかにもアジサイの枯れ枝の除去など、植物に応じた適切な手入れを見学することができました。
筆者はお花についてあまり詳しくないのですが、取材中にもお花の名前やどんな花をつけるのかなどたくさん教えていただきました。このようなフラワークラブのみなさんによる細やかで定期的な手入れによって、私たちは美しい庭園を楽しむことができるんですね!
メンバーには園芸植物に詳しい方や雑草に詳しい方もいらっしゃって、メンバー同士での草花の教えあいで盛り上がるなど、とても良い雰囲気でした! 実際、体験入会をした方は居心地が良くてほとんどの人がそのまま入会するそうです。この日は今にも雨が降りそうなどんよりした曇り空でしたが、なんとか作業が終わるまで天気は持ちこたえました。もし作業中に雨が降ってきたら、その日は外での作業はそこまで。無理をせずに活動をしています。
バラの育て方と夏場の活動の工夫
つぎに見せていただいたのはオーストリア庭園の隣に位置する園路沿いのバラ。会長の黒田さんによると、バラを成長させるための肥料で雑草もよく育ってしまうため、管理がとても大変だそうです。
特に夏場には、その暑さから雑草の背丈がバラを超えてしまうほどになるため手入れの頻度を高める必要があります。しかし、熱中症になってしまうリスク等を考えて活動を控えざるをえないような日が多く、整備が行き届かないこともしばしばあるそうです。
フラワークラブでは、夏場の水やりや雑草取りなど外での活動は必ず2人以上で行うことと決めています。万が一の事故を防ぐためにも必要なルールですが、作業が多い夏場に十分な活動ができないことが悩みとなっています。
昨年の夏場は外で作業できたのは1日だけだったそうです。鶴見緑地全体を管理しているパークセンターという事務所にお手伝いをお願いしているそうですが、活動したくてもできないような日があるのは辛いだろうなと感じてしまいました。そのような暑い日や雨天で活動ができない日であっても、鶴見緑地に愛着のある皆さんはフラワークラブの事務所に集って園芸ばさみを磨いたりお茶をしたりと、室内でできることをしながらお話をすることを楽しみにしています。
もはや「庭」のような存在
インタビュータイム、会長である黒田さんにズバリ、鶴見緑地はあなたにとってどんな公園?と質問を投げかけると、「私の庭!」と驚きの答えが返ってきました。
こんなに広い公園を庭のような存在と断言できるなんて!そう思える秘訣が気になります。なんでも、ご自分できれいにした花壇や数々の庭園を鶴見緑地に来た人たちに楽しんでもらえたり、フラワークラブの活動中に「お花、きれいですね」と声をかけてもらえたりして交流ができること、そして何よりお花という共通の趣味があるフラワークラブの仲間たちと話せるのが楽しくてやりがいになっているそうです。
愛が深い方が多いとついていけなくなる人もいるのでは?と筆者は聞いていて少し不安になりましたが、「楽しんでやっているから義務があるとかでもないんです」ともおっしゃっていました。個人のモチベーションに合わせて活動できることが長続きのコツなのかもしれません。自分のできることをやる、という言葉も印象的でした。その場所への愛情を育むにはまず楽しむことが大事なのですね。
メンバーについて聞いてみると、「お花が好きで」と参加する方がとても多いのだそうです。「庭」とまで断言できるほど愛がないと鶴見緑地愛護会に入れない、なんてことはありませんのでご安心ください(笑)。
しかし、花博フラワークラブ設立当時のメンバーが多いため、メンバーの中心は80代と高齢化が進んでいることが悩みの一つになっているそうです。最年少は23歳、皆さんお仕事やほかの趣味も持ちながら、フラワークラブの活動も楽しんでいらっしゃるようですが、メンバーの高齢化は多くの公園愛護会での悩みですね…
「これだけ綺麗にできる場所があるのに、自分たちの代で衰退してしまうのは残念」とおっしゃっていたのが印象に残っています。
市民交流も積極的!
伺った日の活動中にも、緑地内を散歩している来園者の方から「ツバキはどこで見られますか?」と声をかけられているシーンを目にしました。作業中に話しかけてくる方は複数いらっしゃるそうで、そこでの交流も楽しみのひとつとしています。
活動は公園の花壇整備にとどまらず、年数回の情報誌「花はな21」の発行や、鶴見緑地公園の公園事務所とパークセンターとの会議、鶴見緑地内の施設「咲くやこの花館」のクリスマスリース作り、年一回「鶴見緑地フェスタ」への参加(来場者に多肉植物の植え付けをしてもらう)など市民交流も盛んに行われています。
積極的に外部と連携を取れる体制が整っていると活動を知られやすくなったり市民と仲を深めやすかったりと利点が大きいですね。過去には、咲くやこの花館と連携したイベントも行っており、人気を博していました。
インタビューを終えて
インタビューを通じて、メンバーのみなさんの鶴見緑地への愛着と親しみの大きさを大いに感じることができました。「管理が行き届かないことで衰退していったり、お花がショボショボになるのは嫌」「『お花きれいですね』と言ってもらえるのが嬉しいので続けていける」など、今後の活動にも意欲的だったことが印象的でした。鶴見緑地は2025年の大阪万博のサテライト会場に決定するなどこれから変化が見込まれていますが、その中でフラワークラブがどのように活動していくのか、変わるところ・変わらないところは何なのかなどに注目していきたいです。
今回フラワークラブの活動に参加させていただいたことは、このように大きな公園で活動を続けていくことの楽しさと難しさを学ばせていただく良い機会となりました。
フラワークラブの皆様ありがとうございました!
【基本情報】
団体名 | 花博フラワークラブ 鶴見緑地愛護会 |
公園名 | 鶴見緑地公園 (大阪市鶴見区) |
面積 | 1,218,000 m2 |
基本的な活動日 | 偶数月の火曜日、奇数月の金曜日 |
いつもの活動参加人数 | 15~16人 |
会の会員数 | 34人 |
活動内容 | 花壇の管理、除草、植物の水やり、鶴見緑地フェスタへの協力、他団体と連携したイベント、利用者へのマナー喚起、新メンバーの募集や勧誘、機関紙の発行 |
設立時期 | 1990年(当時「花博フラワークラブ」) |
主な参加者 | アクティブシニア、地域のお花好きのみなさん |
活動に参加したい場合は | 鶴見緑地パークセンターへ連絡して愛護会に参加したい旨をお伝えください! |