大阪公立大学の大学院生が、大阪市の公園愛護会の皆さんの活動を紹介する「大阪となりの公園愛護会」。公園の利活用やランドスケープ設計を学び研究する大学院生の視点で、公園ボランティア活動を紹介します。
鶴見北公園をきれいにしている人たちとは…
今回、取材に訪れたのは、大阪市鶴見区にある鶴見北公園(つるみきたこうえん)。「イオンモール鶴見緑地」の近くにあり、すぐ裏には「鶴見小学校」があります。
こちらの公園に関して、公園ボランティア実態調査アンケートでこんなコメントをいただいていました。
「この公園はいつもキレイで気持ちが良い」と褒められた時や、労いの言葉を掛けられた時、一番うれしい。夕方には遠方からも子どもが多く遊びに来るようになった。きれいな公園ほど人がよく集まると聞いて、やりがいを感じる。
この公園をきれいにしている人たちとは、どのような方々なのでしょうか。
こちらの公園で活動をされているのは鶴見北公園愛護会の皆さん。代表の宮本義次さんをはじめ、皆さんにお話をお聞きしました。
鶴見北公園は、裏に小学校があるほか、近くに4つの保育園と1つの学童保育施設があり、昼間は保育園の園児が順番にお散歩に、放課後には小学生が訪れ、子どもの遊び場になっています。他にも普段の犬の散歩ルートとして、また春には桜が満開になりお花見の場として地域の人たちに親しまれているそうです。
そんな子どもの遊び場でもある鶴見北公園だからこそ、「子どもたちのためにも公園をキレイにしてあげたい。」と美化活動を続けておられる方々がいます。
「草ボーボーの幽霊屋敷にしたくない」が活動のきっかけ
かつては、現在の活動メンバーである安井さんのお父様が人知れず鶴見北公園の清掃をやっておられたのが、いつしか雑草で荒れるようになり、町内会で宮本さんに愛護会活動をやってもらえないかと声がかかったのがきっかけだそうです。愛護会活動を引き受けたものの何から手を付けたら良いかわからない、そこで宮本さんは鶴見北公園はもちろん、すぐ近くにある鶴見北中央公園や市内の公園を数多く見て回ったのだとか。
すると気が付いたのは、鶴見北公園をはじめ公園が抱える現実でした。当時、鶴見北公園では犬のフンが放置されており、近所の子どもたちは歩いて5分ほどの鶴見北中央公園までわざわざ遊びに行っていると耳にしました。他の公園を見ても、雑草で荒れた公園が多かったのだそう。
「いろんな公園を見たけど、草ボーボーで幽霊屋敷みたいでな、自分のとこ(鶴見北公園)もこうなりたくないと思ったんや。」と当時の思いを語ってくださいました。
今では落ち葉一つなくきれいな鶴見北公園ですが、かつてはごみがほったらかしでした。昔は何と、電化製品やベッドが捨てられていたことも!しかし今では、愛護会の皆さんがキレイにすることでごみを捨てる人がかなり減り、地域の防犯にも役立っているのだとか。
一方、落ち葉には今でも苦労されているそうです。私が取材に訪れたのは6月なので、比較的落ち葉も少なかったですが、秋にはソメイヨシノやクスノキの落ち葉が多く、多いときでごみ袋20袋以上も集まることがあるそうです!
では、この鶴見北公園ではどのようにしてキレイな状態を維持されているのでしょうか。
鶴見北公園を守る愛護会の職人たち
ここで活躍するのが鶴見北公園を守る5人の職人たち、鶴見北公園愛護会の皆さんです。
鶴見北公園の美化当番表をキッチリつくり、愛護会では週2回清掃活動をされています。ほうきや熊手、ブロワーを駆使し、落ち葉を次々に集めていきます。
普段はほうきや熊手を使い分けられているそうで、「道具も適材適所の使い分け」が大切なのだそうです。
「桜の花びらのような細かいものは笹ぼうき、落ち葉を一気に集めるには柔らかく幅が広いほうき。熊手は目が粗いし重いな、角度のついたほうきは使いやすい。」と語る姿はまさしく職人。
そしてこの一言、
「やらんとわからん。」
全くその通りです。
さらに登場するのがブロワー。地域のために町内会より予算を出して購入されたほか、植田さんに至ってはご自分で「マイブロワー」を持参されているのだとか。これがあることで、フェンスの下の落ち葉も取りやすくなっているのだそうです。機械も上手く使って工夫されているのですね。
さらに目につくのがこのリヤカー、そこには「寄贈」の文字が。ん……「寄贈」?
このリヤカーは何と植田さんがカスタマイズして愛護会に寄贈されたもの!取り付けられた筒にはほうきや熊手が収まり、かごにはごみ袋をセット。これで道具やごみの運搬も楽々です。
お話を聞いていると、そんな職人たちの人柄も見えてきます。
会長の宮本さんは真面目な努力家。愛護会の会長になってから、まずどのような活動をすれば良いのか要綱を確認し、市内の公園を見て回りました。さらに、大阪市で発行している公園緑化普及啓発広報紙の「ひふみ」も読み、参考にしたのだとか。この日は、お一人でせっせと花壇のお花の片づけをされていました。入口にあるこの「ふれあい花壇」。お花一つあるだけで、公園に彩りが添えられて明るくなるような気がします。
花で公園を明るくする活動はほかにも。鶴見北公園の名物にもなっている「一鉢花飾り」です。この公園では毎年、地元の子どもたちが鉢に絵を描き、花を植え、12月から翌年3月までフェンスに飾り一緒に育てるという一鉢花飾りを行っているそうです。
ブロワーを使いこなす植田さんは、御年なんと89歳!まだまだ現役で頑張っておられます。
今日は砂場の清掃もされていましたが、その仕上がりは落ち葉一つなく、熊手で砂が平らにならされた跡があり、さながら枯山水のよう。そんな植田さんは手が抜けない性格のようで、町内会でやる時よりもキレイにきっちり清掃されているそうです。ブロワーを持参したり、手作りリヤカーを寄贈したりとその思いが行動にも表れています。
他にも廣田さんや坂元さん、安井さんも、早朝から黙々と清掃活動をされる努力家な人たち。
安井さんは昨年の4月から参加されましたが、
「1回目来た時は『思ったよりしんどい』と驚いた。参加すると言った手前来てみたけど、腰も痛いししんどかった。」とのこと。
しかし、今では手際よく落ち葉を集めていきます。皆さん冬場には早朝の真っ暗で寒い中、ライトを付けながらでも清掃をされているそうです。職人たちの真面目さと熱い思いに頭が下がります。
今こそ愛護会活動に目を向けて…
そんな皆さんの愛護会活動のやりがいや原動力をお聞きすると、「感謝の言葉」「自己満足」「健康」の3つとのこと。公園をキレイに掃除したり花壇を作ったりすることで明るくなり、近所の子どもたちをはじめ遊びに来る人が増えたのが嬉しく、原動力になっているそうです。
「ここの公園は他の公園よりキレイやね。」
「ここはいつもキレイにしてくれてはる。」
という声を聞くとやりがいを感じるのだとか。「ちゃんとキレイにせな。」と気も引き締まるそうです。
だからこそ、このような活動にもっと目を向けてほしいと皆さん口々におっしゃいます。皆さん、愛護会活動に関わることで初めて公園に目を向けるようになったとのこと。
「今でも他の公園を見ると落ち葉とかが目につくようになった。草ボーボーやとせっかくやのにもったいない。公園の維持は奥深いなと感じる。」と宮本さんもおっしゃっていました。
「他の公園に負けたくない!」という気持ちも生まれ、やる気につながっているそうです。
また、これからは愛護会同士の意見交換会のような会合の機会が欲しいというのが皆さんの希望。このような小さな公園は愛護会が無くなったらすぐに荒れてしまうので、継続できるような方策があれば嬉しいとのことです。愛護会同士、ひいては地域同士でつながりの輪が拡がっていけばきっと励みになりますし、素敵ですね。
今や「愛護会」を知っている人も少ない、これからは愛護会の支えによって公園が維持されていることを当たり前だと思わず、もっと関心を持ってほしい、もっと目を向けてほしい、と鶴見北公園愛護会の皆さんは望んでいます。
小さな公園を守る職人たちの存在、そこに「目を向けること」。
たったそれだけで見る世界が変わりますし、まずはそれが大切なことなのだなと改めて気づかされました。
【基本情報】
団体名 | 鶴見北公園愛護会 |
公園名 | 鶴見北公園 (大阪市鶴見区) |
面積 | 1,480 ㎡ |
基本的な活動日 | 毎月火曜、木曜の朝6:00~ |
いつもの活動参加人数 | 5人 |
会の会員数 | (現在は)5人 |
活動内容 | ごみ拾い、除草、落ち葉かき、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、子ども向けイベント、高齢者など地域の声がけ |
設立時期 | 1976年4月(再開は2012年頃) |
参加者イメージ | アクティブシニア |
活動に参加したい場合は | いつでも大募集。活動時に公園に来てください。 |