2022/6/30

いつでも気軽にボランティア、だれでもお掃除セットを公園に設置

江戸川区(東京都)

みんなの公園愛護会では、公園ボランティアをサポートし、地域の公園をより良くしようと頑張る行政の取り組みにも注目しています。

公園を「地域の庭」として、地域の人々が主体的に活用できる取り組みを進める東京都江戸川区で、「いつでも」「誰でも」「気軽に」「できる範囲で」公園の掃除や水やりができる「だれでもお掃除セット」が設置されていると聞きました。

行政主導で、公園にだれでも使える清掃道具を常設するという「だれでもお掃除セット」の取り組みについて、江戸川区役所 水とみどりの課の荒金由美さん、菊地孝一さん、秋浜圭太さん​​にお話をお聞きしました。

だれでもお掃除セットとは?

ホウキ、ちりとり、水やりのじょうろ、ゴミ拾いトング、ゴミ袋をセットにした棚で、公園の一角に設置されています。公園を利用する人が好きな時に使うことができ、集めたゴミは区で回収しているとのこと。

毎朝ラジオ体操が行われている公園、町会活動やボランティア活動が盛んな公園から始まり、現在は区内の31カ所の公園に設置されているそうです。うちの公園にも設置してほしい!という要望もあり、その数はどんどん増えている模様。

(中央森林公園の「だれでもお掃除セット」、よく使われている様子がホウキから伝わってきます)

だれでもお掃除セットは、登録ボランティアの方はもちろん、ご近所の方や、遊びにきた親子、公園を利用する保育園の先生たちや、ラジオ体操のあとにみんなで毎朝、など、多くの人に利用されているそうです。子どもたちも公園遊びの一環として掃除を楽しんだり、とにかく日々よく使われている様子が、お話からも、道具からも、よく伝わってきます。

「壊れたり、無くなったりといったことも、時にはありますが、予想していたよりもずっと少ないですね。みなさんよく使ってくださっています。」と話してくださいました。

集めたゴミは、ゴミ袋に入れて、棚の下の箱の部分に入れておくことができます。公園の清掃をするシルバー人材センターの皆さんと協力しながら、定期的に分別・回収しているそうです。ゴミの分別方法も、箱のフタの部分に記載されていて、親切です。

ベテランの職員さんのアイデアで改良されているそうで、最近は竹ボウキも追加されたとのこと。

(棚の下はゴミ袋の収納スペース。フタに紐がついていたり、工夫が随所に光ります)
(竹ボウキは、横の筒にポンとさして収納。画期的!)

公園利用者にも好評

だれでもお掃除セットが設置されている中央森林公園で、公園にいらっしゃった方にお話をお聞きすると、こんな声がありました。

今さっきも保育園の先生が使ってたところよ。朝もラジオ体操のあと掃除してる人がいたりね。みんなよく使ってますよ。
(健康のためにいつも来ているというおしゃべり仲間の皆さん)

うちの子も遊びたくてホウキを使ったことがあります。この前、小学生がみんなで思いっきり掃除をしているのを見て、良いな〜と温かい気持ちになりました。
(小さなお子さん連れのお母さん)

実際に公園を利用しているご近所の方にも、評判が良いようです。

(公園内には、子ども向け遊具はもちろん、気持ちの良い散歩道や、健康のためのリフレッシュ遊具もあり、様々な人が楽しく利用できます)

「地域の庭」として公園をみんなに活用してほしいという思いから

誰でも使える清掃道具を公園に常設する取り組みは、個別の公園愛護会や公園ボランティア団体が実施しているケースは、これまでにも紹介してきましたが、行政主導で複数の公園に同じセットが展開されている例は、少ないように思います。

あらかじめ申請や登録をしたボランティアに限らず、公園を利用する誰もが、いつでも気軽に、公園の美化に関われることは素晴らしいことですが、スタートしたきっかけは何だったのでしょうか?

「江戸川区では、身近な公園を、地域の庭として、多くの人にもっと利用してもらいたいと考えており、その取り組みの第一歩です。花のボランティアは多いのですが、清掃についても、もっと地域のいろいろな人に広く関わってもらえたらという思いから、スタートしました。」と話してくださいました。

江戸川区には、ボランティア制度として個人でも登録できる「アダプト制度」があり、公園でも多くの活動がありますが、花をメインにする人が多く、清掃活動をする人は少ないという状況があったようです。

一方で、子どもと公園遊びをしているお父さんから、区役所に「公園に落ちているゴミやタバコの吸い殻が気になるから、ゴミを拾いたいのだけど、道具やゴミの処理はどうすれば良いですか?」といった問い合わせが入ったこともあるそうです。

そんな中で生まれた新たなアプローチが、いろいろな人に気軽に公園の美化に関わってもらうきっかけを作る「だれでもお掃除セット」として実現したようです。

公園・緑・水辺・まちかど、幅広い江戸川区のボランティア

江戸川区には、公園だけでなく緑道や水辺、そして道や駅前広場などで活動するまちかどボランティアなど、様々な団体や個人がアダプト(里親)登録をして、活動しています。中には、企業、保育園や学校、社会福祉施設などの担い手もいるそうです。

また、落ち葉を公園内でリサイクルして腐葉土にするという取り組みも行われています。剪定した木の枝を編んで丸く囲ったものに、落ち葉や雑草を入れてコンポストにする「バイオネスト」という取り組みも実施されています。

木の剪定枝や大量の落ち葉の処分にかかる手間と費用、運搬や焼却の環境負荷を軽減して、その場でリサイクルの循環を作る、まさに環境部ならではの視点です。

バイオネストは、これまで5つの公園で作ってきたそうですが、作るのも楽しく、時々混ぜたり踏んだりするのも楽しい作業なので、ここにも地域の住民が関わってくれるといいなと話してくださいました。

(バイオネスト:江戸川区のインスタグラムから)

ゲストからキャストになる公園づくり

身近な公園を、地域の庭として、多くの人にもっと利用してもらいたいと考える江戸川区では、地域の人々が主体的に公園に関わっていく「みんなのこうえん」という取り組みを始めています。

清掃や花壇づくり等のボランティア活動をしたり、季節に応じて地域のイベントを行うなど、公園をどんどん使ってもらおうというもの。

昨年末には、小岩公園で試験的に「小岩パークカフェ」というイベントが行われました。樹名板づくりや花植え、かまどベンチで焼きマシュマロ体験、公園内の自然を学ぶグリーンアドベンチャーの取り組みや、プレーリーダーと遊べるプログラムなど、とても賑わった様子が、動画からも伝わってきます。

(小岩公園で「みんなのこうえん」の様子:江戸川区ホームページより)

「青空の下のコミュニティ会館として、公園をもっといろいろな人に、いろいろな方法で活用してもらいたいですね。やっていくうちに、ルール作りが必要になることもあると思いますが、ルールも地域の皆さんと一緒に考えていけると良いなと思っています。」と話してくださいました。

こんなことやりたい!と相談すれば、実現に向けて一緒に考えてくれるそうです。

だれでもお掃除セットも、みんなのこうえんも、地域の人が主体的に公園に関わるためのひとつの取り組みですが、実際に自分が使う/使わないに関わらず、その存在を知っているだけでも、公園への関わり方やスタンスがより身近になる、まさにゲストからキャストになる瞬間をつくるステキな仕組みだと感じました。


【基本情報】

取り組みの名称だれでもお掃除セット
実施自治体江戸川区 環境部 水とみどりの課
事業の目的「いつでも」「誰でも」「気軽に」「できる範囲で」公園内のお掃除や花木への水やりを通してそれぞれの地域の公園として可愛がっていただきたいという思いから設置するものです
取り組みの詳細江戸川区ホームページをご覧ください
自治体からのメッセージバイオネストや、みんなのこうえんにご興味のある方は、江戸川区 環境部 水とみどりの課 調整係(03-5662-0320)まで、お問い合わせください。
江戸ッキーインスタグラムも、フォローしてほしいッキー!!
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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