2022/5/23

ソーラーパネルの下の畑で野菜を育てる地域みんなの自給自足公園

五郎兵衛コミュニティーパーク(茅ヶ崎市)

あちこちの公園ボランティア活動を紹介するコーナー「となりの公園愛護会」。今回は、地域の人々が畑や田んぼの活動を楽しんでいる、こんな公園愛護会。

畑の上にソーラーパネルがある自給自足公園

公園ボランティア実態調査アンケートでこんなコメントをいただいていました。

当会の公園は畑の上にソーラーパネルを設置し、その下で畑を行う実験を行っています。その施設を小学校、農家等、見学が有り、その対応をした時は充実感が有りました。収穫した野菜を皆で公平に分けることは、喜びです。

雨上がりの新緑が美しい5月の活動日に、お話をお伺いしました。

(住宅街の中に現れるオアシスのような空間、奥はJR相模線の線路)

茅ヶ崎市にある五郎兵衛コミュニティーパーク(ごろべえこみゅにてぃーぱーく)。茅ヶ崎と橋本をつなぐJR相模線の線路傍にある、ひらけた場所です。ここは「仮称 西久保新駅」の用地として茅ヶ崎市が取得した土地で、開発が始まるまでの期間、地域コミュニティの場として暫定有効活用しているというユニークな場所。

このコミュニティーパークをつくり、日々進化させているのは「駅と緑と絆の会」の皆さん。会長の鈴木國臣さんと、書記局の佐々木幹夫さん、皆さんにお話をお聞きしました。

(左から佐々木さん、鈴木國臣さん、副会長の鈴木敏男さん)

畑があって、田んぼがあって、電気も作る、地域のオアシス

この場所は、JR相模線の新駅候補地だったものの、計画が進まず、年に数回市の草刈りが入っても草が生い茂り、長い間荒廃地のようになってしまっていたんだとか。この場所を、地域みんなの楽しめる場所にしようと地元住民が立ち上がり、市と協力しながら、地域みんなのオアシスのような場所ができていったそうです。

「畑をやってみたいね」「ここは元々田んぼだったから、田んぼもやってみたいね」という、皆さんの様々な思いを起点に、話し合いを繰り返しながら、市や多くの人の協力で、今のようなコミュニティーパークが出来ていったとのことでした。

今では、4種類の野菜を育てる畑に、小さな田んぼ、早めのお花見が楽しめる春めき桜、季節の花が楽しめるいくつもの花壇、梅やビワ・ブルーベリー・栗などの果樹、ブドウやキウイの棚、水を得るための井戸、畑の上にはソーラーパネル、など、とてもたくさんの植物と人、そして鳥や虫も共存する、楽しい空間になっています。

これまでの経過は、地元タウン誌と茅ヶ崎市が運営するWEBマガジン ”ちがすき” にもレポートされています。

(花やハーブに果樹など、さまざまな種類の植物が育つ園内)

4分割して4つの作物を輪作する畑

畑は4つに分割されていて、ジャガイモ、玉ねぎ、里芋、さつまいもが作られていました。ずっと同じ作物ばかりが続かないよう、翌年は隣で、その次はそのまた隣で、と育てる場所と作物をクルクル回していく輪作計画です。

4つのうち2区画はソーラーパネルの下。ソーラーシェアリングという方法で、太陽光を作物の栽培と発電で分け合う仕組みで、隙間があるので、ソーラーパネルの下でもしっかり育つそうです。

この日は、5月のさつまいも苗の植え付けの日。親子の参加もありました。まずは佐々木さんから苗の植え方を説明。そして畑を耕して畝作り。藁や石灰を混ぜ込んだ土に、みんなで苗植え。苗は8畝に25本ずつ、合計200本の紅あずまの苗があっという間に植えられていきました。

(畑の畝作り、ベテランメンバーがやり方をレクチャー)

力持ちチームが畑を耕している間、お花チームは、咲き終わったチューリップの球根を掘り出したり、草むしりをしています。

(春はやっぱりチューリップ!今年もよく咲いたわね〜と会話にも花が咲く皆さん)

さつまいもの苗植えが終わったら、梅もぎが始まりました。木になっている梅の実を探して手でもいでいきます。子どもたちも、お父さんも、みんな大活躍でした。

(梅の実、見つけた!届くかな?自分で採れると喜びも大きい)

いろんなメンバーそれぞれが力を発揮

メンバーの中には、知識も経験も豊富なプロの農家や、農機具を直せる人、刃物研ぎ名人、花好きさんなど、いろいろな方がいらっしゃいます。年間計画で畑や田んぼの活動やイベントが予定され、毎月様々なお楽しみがあります。次回6月は田植えの予定。

「田植えでも何でも、経験できるものはしておいた方がいいですよね。食べもののことだから。」と話してくださった佐々木さん。自然相手に、無理せず、楽しく、ぼちぼちと、農業は広がりがあって面白いこと、植え続けていくことの大切さを教えてくださいました。

コロナ前は、田んぼで採れたお米でお餅つき大会をやっていたとのことで、それはもう美味しくて楽しいイベントだったそうです。

(いよいよ来月は田植え!田んぼの水はソーラーの電力で汲み上げた井戸水を使う)

17年前の団体発足時からのメンバーという方も、収穫祭や桜まつりの思い出を話してくださいました。コロナ禍でイベントが縮小になっても、「ここに来ると人と会えるのが楽しみ、皆さん良い方で。畑があって、緑があって、気持ちが良いです。」とおっしゃっていました。

この春からメンバーになったという方もいらっしゃいます。「前から興味はあって。みんなで作って分けるという、買うだけじゃない関わりが良いですよね。」と、話してくださいました。お子さんと色々な経験ができるのも魅力です。

たとえ災害があっても、世界情勢がどうなっても、ここに来れば大丈夫!という場所があることは、日々の暮らしの中でも大きな安心感に繋がります。

(子どもたちも一緒に作業を体験しながら、楽しい時間)
(小麦。昔は育てた小麦で手打ちうどんをつくったこともあるんだとか)

みんなで公平・オープンに

ここで採れたものは、参加者みんなで公平に分けているそうです。この日も、畑で育つ新玉ねぎがみんなのお土産になりました。参加している家族の数分のお土産を用意するという作業も活動のひとつ。季節ごとにいろいろな作業をして、その時のいろいろな恵みを、参加した人たちで分けているとのことでした。

そして、何か問題があっても、それをオープンにして、みんなで解決策を考える、という運営方針にも、公平性を大切にされている姿勢を感じます。

季節の野菜や果物、お米、水に電気、17年間で自給自足をここまでやってきた地域のコミュニティーパーク。みなさんの「やってみたい」が次々と実現されていくようです。

(大きな紙に手書きしてきたお花エリアの新たなプランを提案するメンバーさん)

今後やってみたいことについてお聞きすると、「これまで食料が原点でやってきたけど、今度は藍染の藍を始めてみようかと、いま家で苗を育てているんですよ。」と話してくださった佐々木さん。

「藍が育つと、今度は藍染めをしてみようか、じゃあ染めた布で何かつくってみようか、とか、この前植えた綿が育ったら糸を紡いでみようかとか、そこから新しい可能性がまたどんどん広がっていくでしょ。」と笑顔の鈴木さん。

ここには、人の繋がりや、季節の楽しみ、自然とのふれあい、農体験、学びや協力、地域の安心、いろいろなものがあり、さらに広がり続けているようでした。

(植えたばかりのさつまいも。隣は先月植えた里芋畑)
(元気に育つ玉ねぎ。葉っぱが倒れてきたらそろそろ収穫OKの合図とのこと)
(キウイの花。今年はよく咲いているので豊作になりそう?)

【基本情報】

団体名駅と緑と絆の会
公園名五郎兵衛コミュニティーパーク (茅ヶ崎市)
面積2,900  m2
基本的な活動日定例作業日は毎月1回、年間計画あり
いつもの活動参加人数15-20人
会の会員数40人くらい
活動内容除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、畑、田んぼ
設立時期2005年
参加者イメージ子ども / 子育て世代 / その他大人
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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