2022/3/18

自然の草地を生かしたガーデンづくり。スプリングカットバックを体験。

谷津坂第一公園(横浜市)

各地の公園ボランティアのさまざまな活動を紹介するコーナー「となりの公園愛護会」。今回は、元々あった野草の魅力を引き出して、美しく楽しい野原の風景を作っている、こんな公園愛護会!プロのガーデナーが携わる公園ボランティア、草花の新たな楽しみ方や活動のヒントがありました。

野原にチューリップが咲く公園!?

春にはチューリップをはじめさまざまな花が咲き、夏は伸びる草も楽しみながら緑と生き物も観察、秋は風に揺れる草花と遊び、冬は枯れる様子も楽しめる、そんな野原をつくっている人々がいる!という話を聞きました。今回は春を迎えるための恒例行事「スプリングカットバック」が行われるとのことで、お話を伺いに行ってきました。

横浜市金沢区にある谷津坂第一公園(やつざかだいいちこうえん)。京急線の駅から歩いて5分ほどの住宅地にある広く平らな街区公園です。園内は遊具ゾーンとのはらゾーンに別れていて、周りの道からも公園の様子が感じられる、見通しの良い公園です。

こちらの公園でボランティア活動をしているのは、谷津坂第一公園愛護会、通称:のはらぐみ の皆さんです。立ち上げメンバーの平工詠子さん、伯母はる美さんをはじめ、のはらぐみの皆さんにお話をお聞きしました。

(前列の中央が平工さん、右が伯母さん)

草が風に揺れる、自然のままの姿が美しい場所

平工(ひらく)さんも伯母(うば)さんも、庭づくりや植栽をお仕事にしているガーデナーで、言わば花と緑のプロフェッショナルな方々。そんなお二人がこの公園に関わることになったきっかけは何だったのでしょうか。

「ここの草の美しさに魅せられて。見つけてしまったんだよね。」自然のままに伸びた草の中に、犬の散歩の人が歩いてできた獣道のような通路があって、風草が揺れる景色がとても幻想的で美しかったこと。こんな場所がぽっかり残っていたんだという驚きとワクワクを、お二人は話してくださいました。

それは、人々に気にされず、ともすると「荒れている」と言われがちな風景ですが、自然がそのままになっている公園を見つけた!という着眼点がはじまりだったようです。

のはら公園が出来た経緯

「この自然のままの草地を生かしながら、人が楽しめるような野原にすることはできないか?」と考えたお二人は、多年草や球根を使った提案書を作って横浜市に出してみたそうです。

すると、お二人が講師になって実践型の講習会を行うという形で実現することに。継続してお世話をしていく愛護会のメンバー募集も兼ねて、全8回の講習会が行われました。参加者は、同じ金沢区の別の公園で愛護会活動をしている人や、平工さん伯母さんの取り組みに興味を持った人たち。遠方からの参加もあったようです。

そこでまずは、秋から冬の間に、歩きやすい道を作るための刈り込みをしたり、多年草の植え込み、春咲きの球根植え、冬草の刈り込みなどを行って春を迎える準備、などおよそ1年をかけて野原の整備を行っていったそうです。

この地区に古くから住んでいる方は「昔はここで盆踊りをしたこともあったけど、隣の公園ができたらそっちでやるようになって、こっちは草ぼうぼう。草の中に遊具が埋もれているような公園だったよ。」と話してくださいました。この活動が始まる前は、公園愛護会もなく、遊びに来る人も少ない公園だったようです。

この活動が始まった翌年に、遊具エリアの再整備が行われ、さらにその翌年には、のはらエリアも暗渠(あんきょ:地下の排水路)の整備などが行われ、より充実した環境に。「のはら公園」と呼ばれ、ご近所の人からも親しまれる公園になりました。

誰でも歓迎、参加しやすい活動へ

公園愛護会としての活動は、2020年1月にスタート。いろいろな人が気軽に参加できるように、門戸を大きく開いています。のはらぐみでは、地域の人はもちろん、遠方から来る人も、はじめての人も、大人も子どもも、みんな歓迎。

作業の方法を教えてもらって、それぞれができることを、自分のペースでやっていく。植える植物の種類や位置も、みんなで話し合って決めていく。久しぶりに来ても、楽しめる。園内にはいくつもの黒板や掲示板があって、植物の紹介をしたり、活動の予定が書かれていたり、コミュニケーションが活発な印象です。

(公園の入口にある手づくり掲示板)

そしてもうひとつの取り組みがFacebookでの発信。誰でも気軽に参加できるよう、活動予定や公園の様子を発信をされています。

みんなで一緒に活動を楽しみたい!というのはらぐみの皆さんの思いが、みなさんの良い雰囲気づくりに繋がっているようでした。

はじめてでも、その日の作業のやり方を丁寧に教えてもらえたり、緩やかな会話が生まれ、良い雰囲気です。たまたま遊びに来たタイミングで遭遇したという親子も、その季節季節の草花遊びのような作業を楽しんでいました。

(誰でも参加OKのFacebookグループには季節の植物や生き物の写真もたくさん)

草地のガーデンづくり、具体的にどんなことを?

その場所に自然に生えている植物を生かしながら、人の手を加えて、より楽しめるようにしているという草地のガーデン。もともと生えているカゼクサやチカラシバなどの野草の隙間に、バーベナ、セダム、エキナセアなどの多年草を植えて、彩りを加えています。

その場所や環境に合う植物もあれば、合わずに負けてしまう植物もあるそうで、試行錯誤と観察や話し合いを繰り返しながら、いろいろな植物を育てていること、常に変化し続けていることを教えてくださいました。

(コスモスと草が風に揺れる秋の風景:Facebookより)

そして何と言っても、こののはら公園の名物は、「ミックス球根のばらまき植え」です。複数の種類のチューリップやヒヤシンスなど、咲く時期の異なる球根をたくさん混ぜて、空に放るようにばらまいて、落ちたところに植えるというもの。ばらまき植えをすることで、時間差で次々と花が咲き、移り変わる景色が楽しめます。人が並べて植えるよりも自然に近い景色ができる上、変化を楽しみ続けることができるそうです。

これは毎年12月頃に100人以上が参加するという、恒例のイベント。最近は、近くにある横浜市の施設「こども家庭支援センター さくらの木」が球根提供の協力をされているとのことで、地域の子どもたちにも大人気です。

チューリップが咲いた頃には、花でアレンジメントを作るイベントなども行っているそうで、季節ごとの楽しみが1年中続きます。

(球根ばらまき、球根を空に向かってポイッ!:Facebookより)

スプリングカットバックとは?

そして、お伺いした日に行われていたのは、こちらも冬の名物になってきたという「スプリングカッドバック」です。

スプリングカットバックとは、冬の間に枯れた草を切り戻して、春をきれいに見せるための作業のこと。切った草は、チョキチョキ細かく刻んで再び土に戻すことで、土の状態が良くなるそうです。なんというエコな循環でしょう!この効果で、固かったここの土も、ふかふかになってきたとのことでした。ゴミも出ないし、土にも植物にも良い地産地消の肥料です。

(枯れ草をハサミで上の方からチョキチョキ切っていく平工さん)
(みんなでチョキチョキ、バリカンも登場)

皆さんにまざって、私も作業の内容を教えてもらい、いざ挑戦。わかりやすく説明してもらい、初めてでも一緒に作業ができました。枯れて乾燥した茶色い草を、ハサミや刈り込みバサミでチョキチョキ切っていきます。通路と草地ゾーンの境界になる縁は、枠として少し高めに残して切ります。もう出始めているチューリップの芽を気にしながら、エリアを分担して、どんどん切っていきました。チョキチョキ、ザクザク、という音も心地良い感じです。

子どもたちは、通路や広場の落ち葉や枯れ草を集めたり、集めた葉っぱを切り終えた場所に一緒に撒いたり、それぞれができることを、聞いたり教えてもらったりしながらやっていました。はじめ20人ほどだったメンバーも、気づけば50人近くに増えていたという盛況ぶりで、2時間でのはらはすっかり春を迎える準備が進んでいました。

(ふわふわの土になるよう、枯れ草も土に戻します)
(集めた落ち葉もまきます)

この日はちょうど、はじめて焼き芋をやってみようという日で、のはら作業と並行して焼き芋チームがたくさんのお芋を焼いていて、良い香りがしていました。小さな子どもに小中高生、90歳近いという元気なシニア、ご近所の人、少し遠くから来た人、公園でみんなが楽しんでいる風景は心が温まります。

変化し続けているから、いつも気になる公園

のはら公園では、いろいろな種類の植物が次々と姿を見せ、日々景色が移り変わっているので、つい立ち寄って、中に入って歩いたりゆっくりしたりする人が多いそうです。そして、さまざまな昆虫や鳥たちも、この公園を気持ち良い居場所にしているようです。

園内には使わなくなった看板を再利用した黒板ボードがあり、自由に使えるようにしてありました。子どもたちがクイズを書いたり、メッセージを残したり、楽しめる工夫があちこちに散りばめられています。

(みんなのこくばん、チョークボックスは誰かが作ってくれたそう)

のはらぐみの活動には、いろいろな地域の人が参加していましたが、「来るとみんな楽しそうにやっていて、いつ行ってもオープンな感じで仲間に入れるから」と参加の理由を話してくださいました。

ただ決められたことをこなす作業ではなくて、花の種類にしても、みんなで話して、一緒に考えて、決めていくことが楽しいこと。花を買って、植えて、枯れたら、捨てて、また買って、という活動とは違う、流れる自然の良さがあること、一瞬の華やかさだけではない、豊かな循環があることも教えてくださいました。

手づくりの鳥の巣箱を木にかけたり、子どもたちだけでなく大人たちも公園を楽しんでいる様子が伝わってきます。そして、活動に参加すると、その後の様子が気になって、また行きたいなと思ってしまう、そんな場所と活動です。

(あちこちに石を使ったお花の名前サインが。いくつ見つけられる?)

取り入れてみたい場合、まずは何から?

「まずは観察することかな。季節を通して見てみると、変化が見えてくる。種を残してみたり、落ち葉が土に返っていく様子にも発見があるし、無理やりきれいにしなくてもいいと思いますよ。」と、話してくださった平工さん。

そして、植物を増やす楽しみについても、教えてくださいました。多年草や宿根草、球根を育てていると、増えてくるので、近くの公園愛護会同士が繋がって、増えた植物をあげたり・もらったり、というというやり取りが行われているそうです。この日もちょうど大量の球根のおすそ分けがありました。植物の種類も増えるし、会話も増える。育てて、増やして、おすそ分けするという、時間をかけた楽しみが生まれていくこともまた素晴らしいですね。

平工さんは、横浜市の「球根ミックス花壇の作り方動画」にも登場されています。球根ミックス花壇に挑戦してみたい方は、ぜひチェックしてみてください。

(のはら公園では、よりシンプルな組み合わせの球根ミックスにして春の景色をつくっているとのこと)

【基本情報】

団体名谷津坂第一公園愛護会(通称:のはらぐみ)
公園名谷津坂第一公園 (横浜市金沢区)
面積3,655 m2
基本的な活動日毎月1回(園内の掲示板やFacebookで告知)
いつもの活動参加人数20人くらい(球根ばらまきイベントは100人以上参加)
会の会員数どなたでも参加できるので数は無限大
活動内容ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、施設の破損連絡、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、子ども向けイベント、他団体と連携したイベント 
設立時期2020年1月
参加者イメージ子ども / 若者 / 子育て世代 / その他大人
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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