2026/5/11

通りがかりに一杯!「ひしゃく」がつなぐ、ゆるやかな花の輪

江川せせらぎ遊歩道(川崎市)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、小川の流れる遊歩道を花で彩り人々が交流する楽しい散歩道にされている、こちらのみなさん!地域の人たちが誰でもお手入れに参加するためのアイデアや工夫が盛りだくさんの活動にお伺いしました。

住民参加で整備された「江川せせらぎ遊歩道」

川崎市中原区と高津区の区境にある「江川せせらぎ遊歩道(えがわせせらぎゆうほどう)」。住宅地の中にぱっと現れる、緑の美しい遊歩道です。地域の人々が散歩を楽しむ遊歩道の脇には、下水処理再生水を有効利用したせせらぎが流れ、カルガモがのんびりと泳いでいます。

計画段階から市民の意見を取り入れるパートナーシップ型事業として2003年に整備された全長2.4kmの遊歩道は、地下に雨水貯留施設を備えており、それぞれ隣接する10町会が中心となって清掃や花壇活動を行うなど、多くの人々の手で守られています。

(途中で見つけた江川せせらぎ遊歩道の案内マップ:エリアごとにいろいろな名前がつけられています)
(緑あふれる遊歩道は、憩いの散歩道として地域の人たちに親しまれています)

この江川せせらぎ遊歩道 清流の道にある下小田中6丁目町会エリアで活動するのは「下小田中6丁目町会 結の花」のみなさんです。江川せせらぎ遊歩道管理運営協議会のもとで活動されており、川崎市の公園愛護会合同連絡会をきっかけに今回の取材が実現しました。会長の村越 俊之さん、宮本淳子さんをはじめ、メンバーのみなさんにお話を伺いました。

(村越さんと宮本さん:地元の子どもたちにも人気のどんぐりハウスの前で)

会話が生まれる遊歩道、得意を生かして心地よく

せせらぎ結の花のメンバーは、みなさん散歩中の会話をきっかけに活動に参加するようになったという方がほとんど。ガーデニング好きな人、お片付け好きの人、力仕事が得意な人、大工仕事が得意な人、アイデアが豊富な人、、いろいろなメンバーがそれぞれの得意を生かして関わっています。

花壇活動は、町会を通して市に申請して行っていますが、メンバーは町会内に限りません。中原区、高津区、遠くは横浜から参加されている方も。花壇づくり、清掃、コンポストを中心に、せせらぎを楽しむためのさまざまな活動をしています。それぞれが好きな時間に来て作業をするスタイルで、できる限り縛りを減らし、自由度を高めているそう。

活動場所は、かつて地域の方々が花を育てていたというエリア。20年の時間の中でお手入れをする人がいなくなり、雑草や草花、木々が伸び放題になっていた場所が、みなさんの手によって生まれ変わっています。

いくつかの目を引く花壇のほかにもさまざまな花が咲くせせらぎ遊歩道は、老若男女問わず地域の人々に親しまれています。

この日も、お散歩中の保育園児が、元気に挨拶をしながらメンバーのみなさんとハイタッチをしていく姿がみられました。細長い遊歩道では、すれ違う人との距離も近いようで、自然に会話が生まれていました。

(お手入れ中にも「こんにちは」「お花きれいですね〜」など自然に会話が生まれます)

「ひしゃく」の魔法。いつでも誰でもボランティア

ここの名物は、なんといっても「ひしゃく」で水やり!せせらぎに流れる水を、柄の長いひしゃくですくって、花壇の花にあげるというもの。しかも、誰でも大歓迎!

これは、メンバーという形に限らず、遊歩道を利用する人が気軽に関われる方法はないかと考えた宮本さんたちのアイデアです。「見るだけでなく関わることによって、その場所への愛着が増し、大切にしたいという気持ちも生まれやすいのではないかと感じています」と宮本さんは話してくださいました。

そのため、遊歩道内の樹木には、水やり用のひしゃくがあちこちにぶら下がっています。ひしゃくは、ひとつひとつ違っていて、なかにはお鍋を再利用した手作りひしゃくも。

(木にぶら下げてある「ひしゃく」。奥の方にはお鍋から作ったひしゃくも)
(現場をきめ細かくみているメンバーの坂本さん。せせらぎに流れている水をすくって〜)
(花壇の花にお水をあげます。やさしく、やさしく〜)

私もやってみましたが、これがなんとも言えない楽しさ!ひしゃくは、ひとつひとつ重さや長さなど使い心地が違うので、お気に入りのひしゃくを探してみるのも面白いかもしれません。

と、今では定番となったせせらぎの誰でも水やりひしゃく体験ですが、はじめは、ひしゃくをおいても、誰も触ろうとしなかったそう。

そこで、自分から水やりをやってみたくなるような働きかけができないか?という思いから「ひしゃく体験〜大きなひしゃくでお花に水をあげてみよう〜」という掲示物を出してみたところ、小さな子どもたちが楽しそうに水やりをするようになったとのこと。コロナ禍の全盛期だった当時は、ひしゃくと一緒に手指消毒用の消毒液も常備しながらの取り組みだったと振り返ります。

「せせらちゃん」という水やりキャラクターも誕生し、せせらちゃんのいる花壇は水やり歓迎のマークとなっています。ポスターで呼びかけることで心の距離が縮まり、「自分もやっていいんだ」と一歩踏みだすきっかけになるのですね。今も「通りがかりに、ひしゃくで一杯。」といった楽しい呼びかけポスターがありました。

現在では水やりはすっかり定着し、水やりをしたいというお子さんのために、わざわざせせらぎに足を運ぶ親子もいるんだとか。

(せせらぎ遊歩道のポスターたち:花壇エリアや、ひしゃく体験、水やり歓迎の案内も)

一輪だけでも歓迎、花がら摘み

遊歩道を利用者が気軽に参加できる取り組みは、ほかにもあります。花が次々と咲くように、咲き終わった花を摘む「花がら摘み」も誰でも大歓迎。

ポスターには、やり方が写真つきで丁寧に示され、となりには竹筒の「花がら入れ」が置かれています。集まった花がらはコンポストで堆肥化されるそう。

(花がら摘み歓迎コーナー:竹細工でつくられた看板や屋根にも工夫が光っています)

このような小さな関わりは、少しずつ増えているとのこと。ボランティアメンバーにならなくても、気づいた時に少しだけ、ゆるやかに関われるこのような仕組みがあることで、多くの人たちが花育てに参加することができています。

散歩が楽しくなる道、川柳や水琴窟も

みなさんの活動は、花壇づくりだけではありません。遊歩道の散歩が楽しくなるような仕掛けづくりと工夫がまだまだあります。

遊歩道の木々には、笑点の大喜利から話題になった「18歳と81歳の違い」が。歩いていると、クスッと笑えるネタが次々と現れ、なんだか健康になれそうです。

(これは「自分探しをしているのが十八歳、自分の家を探しているのが八十一歳」。ほかにもいろいろありました)

さらに花壇の脇には、手づくりの水琴窟が!水の音色を聴くための竹筒も用意されています。水が身近にあるからこその風流な楽しみですね。

水琴窟は、近くの農家さんから譲り受けた壺を使って、村越さんが実験を重ねて自作したという制作エピソードも教えてくださいました。(その様子はタウンニュース川崎中原区版でも紹介されています)

(水琴窟コーナーではメンバーの橋本さんが実演してくださいました)

子どもたちのアイデアもどんどん形に

近隣の4つの小学校とつながりを持ちながら活動しているという結の花のみなさん。水滴マークのイラストに「せせらちゃん」という親しみやすい名前をつけてくれたのも近隣小学校の児童だそう。

花壇づくりも、下小田中小学校の園芸委員会のみなさんとの協働で行っています。5・6年生の園芸委員会の約30人が、毎年依頼したお題に沿って事前学習をしているんだとか。

一昨年は「色の相性や高さを考えて植える」、昨年は「テーマに合った色を選び、花壇に名前をつけてプレートを作る」といった内容で、子どもたちのアイデアをもとにガーデニング好きの藤田さんを中心としたメンバーが、花壇のデザインと植物の選定をして、みんなで一緒に植えるとのこと。

花壇には「やさしい雰囲気」というテーマに「ふわふわの里」という花壇の名前が書かれたプレートが。そのほかにも、「すっきり」「すずしい花」「明るい」「落ち着いた雰囲気」など、子どもたちの言葉が並んでいました。

「子どもたちも、自分が担当した花壇はやっぱり気になって、水やりに来たり、お手入れをしに来てくれますよ」とうれしそうに話してくださったみなさん。

試験的に生ごみ堆肥を使ってみたり、段差をつけた立体花壇にして高さを出すなど、工夫はどんどん広がります。

(ここは、やさしい雰囲気がテーマの「ふわふわの里」。下小田中小学校の園芸委員のみなさんと一緒につくっています)

誰もが「役目」を持てる、現代の温かなコミュニティ

この活動に参加して、知り合いができ、会話が増え、楽しみが増えたというみなさん。地域とのつながりができ、リタイヤ後の社会参加や孤独解消、生きがいにもつながっているというお話を口々に聞かせてくださいました。

毎日のように立ち寄ってお手入れをするメンバー、来られる時だけ、掃除だけ、コンポストだけ、大工仕事だけ、多様なメンバーが多様な関わり方をしているのもユニークです。

退職後に犬の散歩がきっかけでメンバーになった太田さんは、「ありがとう」と声をかけてもらうことで、役に立つ喜びを感じていることを教えてくださいました。

サノマキコさんは、このせせらぎ遊歩道を舞台にした絵本「せせらぎニュース」を制作し、近隣の小学校で読み聞かせボランティアをされています。(絵本の詳細はInstagramで!)

(絵本「せせらぎニュース」には、結の花の花壇やひしゃく、水琴窟も登場します!)
(大工仕事が得意なメンバーお手製の堆肥箱。折りたたみ式のフタにおしゃれな取手も)

どんぐりハウス前には、どんぐりアートが飾られたり、どんぐりごまや大きな松ぼっくりが「ご自由にどうぞ」と書かれたプレゼントコーナーに置かれたりと、地域の人たちの交流の様子が伺えます。

「地域住民の憩いの場であり、メンバーにとってもひとつの居場所として機能できたらいいですね」と笑顔で話してくださった宮本さん。「いろんな人が仲良くできているのが何よりです」と村越さん。

さまざまなチャレンジをするみなさん。「まだまだ課題はありますが、今後も、いつでも誰でも、気が向いたときに、気になることややってみたいことを気軽にできるような花壇を目指して工夫していきたいと考えています」と話してくださいました。

これからカルガモの子育てシーズンに入るという江川せせらぎ遊歩道。人々の温かい交流は続きます。

(まもなく生まれてくる赤ちゃんカルガモのための階段も用意されています)

【基本情報】

団体名下小田中6丁目町会 結の花
(江川せせらぎ遊歩道管理運営協議会 下小田中6丁目地区)
公園名江川せせらぎ遊歩道(川崎市中原区・高津区)
面積花壇 約 200m2
基本的な活動日各自の自由。作業進度や連絡事項などはグループラインで簡単に共有。イベントや季節の花の入れ替えなど共同作業が必要な時は日程を決めて作業。
会の会員数13名
活動内容花壇の管理、除草、遊歩道などの清掃、小学校との協働、コンポスト、季節のイベントなど
設立時期2020年
主な参加者ご近所のみなさん
活動に興味のある方は作業中のボランティアに直接お声がけいただくか、メールでご連絡ください
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフトしたのち、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフトしたのち、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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