2025/6/17

里山づくり、コミュニティガーデン、子どもの外遊び、3団体で公園づくり

さいわいふるさと公園(川崎市)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、川崎市幸区で子どもからお年寄りまでみんなが集えるふるさとのような公園づくりをされているこちらのみなさんです。里山づくり、コミュニティガーデン、子どもの外遊びという軸をもつ3つの団体が協力しながら公園を素敵な場所にしています。

旧国鉄 新鶴見操車場跡地に広がる緑豊かな公園

川崎市幸区にあるさいわいふるさと公園。JR横須賀線の新川崎駅から歩いて10分ほど、東洋一の操車場と呼ばれた旧国鉄の貨物の拠点「新鶴見操車場」の跡地再開発のひとつとして整備された近隣公園です。

すぐそばにはJR貨物の車両基地があり、産学官連携で科学技術や産業を創造する研究開発拠点「新川崎・創造のもり」に隣接するこの公園には、近くのマンションや住宅地・研究所からも多くの人が訪れています。

広い園内には、雑木林や池などがある「緑の散策ゾーン」と、美しい花が咲き誇るコミュニティガーデン、子どもたちが遊びまわる広場と林のある「わんぱくふれあいゾーン」、多目的広場やトイレのある「多目的ゾーン」があります。

(さいわいふるさと公園案内図:画像提供 夢見ヶ崎プレーパークをつくる会

暫定緑地の頃から活動する3つの団体が公園になった後も活動中!

さいわいふるさと公園は、新鶴見操車場の跡地再開発の一環でつくられました。まだ公園として整備される前、2003年頃に暫定緑地としての利用が始まると、植樹や緑化のワークショップ、コミュニティガーデンづくり、ドングリやクリを拾って楽しめる雑木林づくり、ススキ広場やお花畑づくりなど、この地に自然を取り戻すためのさまざまな活動が市民の手によって行われました。

山や森が好きな人たち、花が好きな人たち、子どもたちのための遊び場づくりをする人たちが集まり、地域のふるさとを作るため始まったボランティア活動は、2010年に公園として整備された後も、それぞれのフィールドで引き続き行われています。

それぞれの個性や特徴を生かし、交流しながら、3つの団体の活動は20年以上続いています。3つの団体の共通の活動日である5月の第2日曜にお伺いしました。

(花ももの丘でみんなを見守るこの立派なケヤキの木も、暫定緑地利用の頃にみなさんが植えたもの)

緑の散策ゾーンで里山づくりをする「さいわい夢ひろば友の会」

南北に長い園内の北に位置する「緑の散策ゾーン」で里山づくり活動をされているのは「さいわい夢ひろば友の会」のみなさんです。会長の江崎佳章さんにお話をお聞きしました。

「ご存知のように、人の暮らしとともにある里山には、維持管理が必要なんです。維持管理をしないと『里山』にはならないので」と話してくださった江崎さん。さいわい夢ひろば友の会では、およそ6,200m2という広いエリアで、雑木林の下草刈りなどの保全や、園路の整備、池の管理、ススキ原っぱやお花畑の維持管理、10ヶ所ある花壇のお手入れなど、年間140日ほど活動をされています。

(さいわい夢ひろば友の会 会長の江崎さん)
(さいわい夢ひろばの全体図を見せてくださいました:季節を感じる風景があちこちに)

お伺いした5月は、新緑がとても美しい雑木林が広がっていましたが、春には、河津桜にサクラ・花もも、お花畑の菜の花・レンゲ・矢車菊、花壇のストックやパンジーなどが園内を彩っていたそうです。これからアジサイの季節を迎え、秋にはススキの原っぱや、コスモス・ドウダンツツジやケヤキの紅葉など、年間を通してさまざまな風景を楽しむことができます。

2000年の活動スタートから25年、木を植えるところから始まった雑木林は、小鳥たちが多く訪れる場所になりました。もともと工事の残土でできた山は、土の質が良くなかったため、肥料や土づくりから工夫を重ねてこられたそう。普段は人が入らず、鳥や虫など生き物のすみかを大切にする林として管理していらっしゃいます。木はできるだけ自然のままに育っていけるよう、下草刈りを主体に。カルガモが訪れ子育てをするという池は、人工池のため夏と冬に池に水の供給をするという活動も!ふるさとの里山づくりのため、さまざまなお手入れをされていることを教えてくださいました。

(落ち葉や木の枝はできるだけその場所の土に還す)
(園路や階段なども、友の会のみなさんで整備されたそう!)

ススキの原っぱは、秋には子どもたちの背丈より高く伸びたススキで、迷路を作るそうです。冬に刈り取ったあと春までの期間は、子どもたちの遊び場として開放しています。春先につくしを取ったり、でこぼこした地面を走ってバランス感覚や体幹の強さを育んだり、遊びも広がります。

さいわい夢ひろば友の会では、近隣の小学校の校外学習の自然体験にも協力されています。「春さがし」や「秋さがし」といったテーマで子どもたちが自由に散策しながら、季節の植物を観察したり、自然をいっぱいに感じる機会を提供しているそうです。

さいわい夢ひろば友の会の定例活動は、毎月第二日曜、第四土曜の10:00-12:00と水曜午前。会の基本は「自分のできることを、自分のできる方法で、参加する」。お子さんや親子参加の方もいらっしゃいます。年4回季節ごとに発行される「友の会だより」のほか、活動の様子はブログでも詳しく見ることができます。

(雑木林の入口にあるボランティア小屋が、さいわい夢ひろば友の会の活動拠点)

コミュニティガーデンづくりをする「新川崎ふるさとづくりの会」

緑の散策ゾーンの南の端にある花壇のエリアでコミュニティガーデンづくりの活動をされているのは「新川崎ふるさとづくりの会」のみなさんです。公園の中でもひときわ美しい花が咲き誇るコミュニティガーデンでは、バラがちょうど見ごろを迎えていました。会長の沼田京子さんをはじめ、メンバーのみなさんにお話をお聞きしました。

(新川崎ふるさとづくりの会 会長の沼田さん(中央))

新川崎ふるさとづくりの会では、コミュニティガーデンでの花づくりやバラ育てを行っています。ガーデン内に咲く数々の花は、なんとすべてメンバーのみなさんがタネから育てたものだそう!「初めての人にもわかるように、やり方をレクチャーして、育苗トレーで苗ポットづくりをするんですよ」と教えてくださいました。

「ここにはいろんなスペシャリストがいるんです」と話してくださった沼田さん。苗づくりやガーデンづくり、バラ育て、花やハーブを使ったお楽しみ、落ち葉腐葉土や米糠を使った肥料”ぼかし”づくりなど、メンバーのみなさんが得意なことを持ち寄って楽しく運営されているようです。

(四季折々の花や人とのふれあいを楽しむコミュニティガーデン)

新川崎ふるさとづくりの会の活動は、こちらも公園が整備される前の暫定緑地の頃、お花好きのみなさんによって始まりました。

ただ花壇を作るのではなく、人とのふれあいも楽しむのが「コミュニティガーデン」。地域の人たちみんなが集える場にしようと、さまざまな工夫をされてきました。かつては、デイサービスを利用するお年寄りの人と一緒にハーブを摘んでお茶を飲むという心温まる企画も行われていたんだとか。

公園開園時に整備された立派なアーチにはローズライフアドバイザーの有島薫氏によって植えられバラがたくさん咲いているほか、ガーデンの一角には、車椅子でも楽しめる花壇「レイズドベッド」もあります。1998年から続く活動ですが、3年前にリニューアル。

昨年2024年には、川崎市公園緑地協会の主催する 第20回「わがまち花と緑のコンクール」団体部門で「全国都市緑化かわさきフェア記念賞」を受賞されました。これは、さいわいふるさと公園全体での受賞で、コミュニティガーデンはもちろん、地域に根ざした活動を続けてきたことも評価されたようです。

(歩くだけでバラの良い香りに包まれます)

ガーデン内には、各地のステキなガーデンからお裾分けしてもらったタネから育てた花も多くあるそう。この日元気に咲いていた青紫色の花アスペルラは、山梨県北杜市でステキなお庭づくりをされている方のところにメンバーで訪問し見学した際に分けてもらったタネから育てたものだそう。ガーデンづくりにかける情熱と、この人たちならちゃんと育ててくれるだろうという信頼があってこそできるお花のコミュニケーションですね。

(お裾分けしてもらったタネから育てたアスペルラ、青紫色が美しい)

新川崎ふるさとづくりの会の活動は、ガーデンのお花のお手入れや水やりはもちろん、親子で参加できる植え付け体験、藍のたたき染め体験、押し花しおりづくり体験、ガーデンで採れたバラの実やワタを使ったクリスマスリースづくりや、レモングラスを使ったしめ縄づくりなど、多岐に渡ります。また会員同士で日帰り旅をする「大人の遠足」もあるんだとか。

この日はガーデンのお手入れに加えて、有島薫氏によるバラの鑑賞会と勉強会も行われていました。ガーデンの様子や活動日・イベントの情報は、Instagramでお知らせしています。

(初心者でも詳しい皆さんにいろいろ教えてもらえるのは心強いですね)

わんぱくふれあいゾーン:小倉わんぱく広場

公園の中央に位置する「わんぱくふれあいゾーン」で子どもたちのための遊び場づくり活動をされているのは「小倉わんぱく広場」のみなさんです。リーダーの林晴美さんをはじめ、メンバーのみなさんにお話をお聞きしました。

小倉わんぱく広場は、子どもたちが五感を使って主体的に遊べる環境をつくるため、子どもたちが走り回って遊べる原っぱづくりや、わんぱく山の雑木林のお手入れ、花壇、環境教育園での野菜づくりなどの活動をされています。

(小倉わんぱく広場 リーダーの林さん(中央右))

小倉わんぱく広場も、公園が整備される前の暫定緑地だった2004年から活動を続けている団体です。個人会員を中心に、夢見ヶ崎プレーパークをつくる会や、青空自主保育グループのメンバーと協力して、公園の管理作業を行っているほか、毎月第三日曜にはプレーパークを開催しています。

この日の活動は、環境教育園と呼ばれる畑への、サツマイモの苗の植えつけです。環境教育園では、サツマイモとジャガイモ、そして今年は里芋も育てているそう。

道具の運び出しから子どもたちが大活躍。隣で咲き終わった菜の花を根っこから抜いたり、意欲的に活動をしていました。この日は暑かったので、植え付けの後の水やりが子どもたちのご褒美タイムに。あっという間に泥だらけになり、いつの間にか泥遊びで盛り上がっていました。水が気持ち良い季節になってきましたね。

(一輪車を上手に使う姿が頼もしい!)
(植え付け後、畑の畝が泥のプールのようになっていました)
(環境教育園の脇には、年間の活動予定のお知らせも。申込不要で気軽に参加OK!)

暫定緑地の時に植樹したというわんぱく山の雑木林の木々も、大きく育って良い日陰を作っていました。わんぱく山の雑木林は日常的に子どもたちが自由に入って遊べ、どんぐりを拾ったり、虫取りをしたり、木のぼりをしたりという貴重な遊び環境になっています。

小倉わんぱく広場の活動日は毎月第二土曜、第二日曜、第四火曜の午前と、第四金曜の午後です。活動予定は園内に掲示されているほか、活動内容やこれまでの取り組みの歴史は夢見ヶ崎プレーパークをつくる会のホームページに掲載されています。

(わんぱく山の雑木林:走り回ったり、どんぐりを拾ったり)

ボランティアの一員になる入口:ふれあい応援隊

さいわいふるさと公園の活動はこれだけではありません。3つの管理グループを応援し、自然体験や公園管理ボランティアの入口を体験できる「ふれあい応援隊」の活動があります。

ふれあい応援隊は、年度ごとの登録制で、活動日は3つの団体の共通活動日である第二日曜。親子参加や地域の知り合いづくりがしたい大人など、毎年10組程度を募集し活動しています。

たとえば、親子でお花の植え替えをしたり、夏場の草刈りや秋の落ち葉掃きなど、人手が必要な作業を応援するほか、川崎市公園緑地協会の協力で間伐作業をして持続可能な里山循環の話を聞いたり、間伐材を利用してシイタケの駒打ちをしたり、米ぬかや落ち葉の堆肥づくりをしたり、といった、少し特別な体験ができるのも、さいわいふるさと公園ならではの楽しいところです。

ただ体験するだけのお客さんではなく、ボランティア活動メンバーの一員として年間を通して活動をすることで、公園の維持管理に一歩踏み込んでいけるほか、市のボランティア保険の適用対象にもなることを教えてくださいました。

ふれあい応援隊の年会費は300円/人、500円/家族。活動や申込についての詳細は、さいわいふるさと公園管理運営協議会のFacebookページで案内されています。

(わんぱくゾーンの間伐と椎茸のほだ木の切り出しを行っている様子:写真提供 さいわいふるさと公園管理運営協議会

それぞれのペースで活動しながら丁寧にコミュニケーション

このように、さいわいふるさと公園には個性的な活動をする3つの団体があり、それぞれのペースで活動を続けています。定例会議でお互いの活動や予定を共有するだけでなく、毎月第二日曜は活動時間を合わせて、同じ公園で活動するお隣さん同士お互いに顔を見ながらコミュニケーションを取っていることや、3つの活動を体験しながら応援する「ふれあい応援隊」の活動を作って連携の工夫をされているのが印象的です。

2018年からは、川崎市の公園管理運営協議会として合同で市からのサポートを受けていましたが、この春からは3団体それぞれが独立した公園管理運営協議会として登録されることになったそうで、新しい体制がスタートします。

今回見学させていただき、それぞれの活動がとてもユニークで素晴らしいのはもちろん、あちこちに子どもや親子で参加するメンバーがいて楽しそうに公園づくりに関わっているのが印象的でした。これからも3つの団体がそれぞれ個性を生かして充実した活動を継続しながら、有機的に連携して、より良い公園づくりが行われていくことが楽しみです。

(さいわい夢ひろばの原っぱではタネを採るための菜の花を乾燥中、奥がススキの原っぱ)
(コミュニティガーデンには花を楽しむためいろいろな人が訪れます)
(わんぱく広場には大きな土管があって、子どもたちに大人気!)

【基本情報】

公園名さいわいふるさと公園(川崎市幸区)
面積18,148 m2

団体名さいわい夢ひろば
基本的な活動日第二日曜、第四土曜の10:00-12:00と水曜午前
活動内容里山の保全、除草、花壇の管理、植物の水やり、腐葉土づくり、池の管理、地域のイベント、子ども向けイベント、小学校との連携
設立時期2000年
詳しくはさいわい夢ひろばのブログをご覧ください

団体名新川崎ふるさとづくりの会
基本的な活動日第一金曜、第二日曜、第四木曜の月3回
活動内容花壇の管理、植物の水やり、腐葉土づくり、地域のイベント、子ども向けイベント
設立時期1998年
詳しくは新川崎コミュニティガーデンのInstagramをご覧ください

団体名小倉わんぱく広場
基本的な活動日第二土曜、第二日曜、第四火曜の午前と、第四金曜の午後
活動内容ゴミ拾い、除草、花壇の管理、植物の水やり、腐葉土づくり、地域のイベント、子ども向けイベント、遊びの見守り、里山保全、畑の管理
設立時期2004年
詳しくは夢見ヶ崎プレーパークをつくる会のホームページをご覧ください

団体名ふれあい応援隊(さいわいふるさと公園連絡会)
基本的な活動日第二日曜の10:00-11:30(8月を除く)
活動内容除草や花植えなどの管理活動を通した自然体験
詳しくはさいわいふるさと公園管理運営協議会のFacebookページをご覧ください

取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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