2023/4/24

収穫の喜びを分かち合いながら、多世代がつながり交流する公園

染井よしの桜の里公園(豊島区)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、東京都豊島区のソメイヨシノ発祥の地で、花を育てて地域の人の輪を広げている、染井よしの町会四季の会の皆さんのお話、後編です。

前編はこちら ▼

活動はおしゃべりしながら楽しい時間

四季の会の活動は毎月2回、土曜日の朝に行われています。この日の作業は、ツツジの下の草抜き。増えてきたユリの芽や、新しく植えたアジサイなどの花を守りながら、生えてきた草や、落ちた桜の花びらを取っていきます。

皆さん手際よく、楽しそうに作業をされていました。根本がスッキリすると、風通しと見通しが良くなり、満タンの大きな袋がいくつもできていきます。

(公園の柵の外側もどんどんキレイになっていきます)

メンバーの皆さんが身につけているのは、四季の会おそろいのエプロン。濃紺デニムの生地にワンポイントのピンク色の刺繍が映えます。皆さんそれぞれのコーディネートで楽しんでいらっしゃる雰囲気がステキです。

(デニムに映えるピンク色の刺繍は、染井よしの町会のジャンパーの色とリンク)

作業がひと段落すると、花の鑑賞会が行われていました。「牡丹にツボミがついたよ」「スズラン咲きましたね」「クレマチスのツボミも増えてきましたね」など、いろいろな花が育つ様子を皆さんで一緒に喜んでいるような温かな会話が生まれていました。

みんなで使える原っぱと畑づくり

公園に隣接する広場には、ソメイヨシノの桜の苗床と、原っぱ、畑があります。桜の苗床では、染井生まれのソメイヨシノを守り育てていて、これまでに200本ほどの苗木を育て、全国に送り出してきたそうです。

広場は、公園ではなく、地域まちづくり課の管理地ですが、閉鎖して雑草だらけになってしまうくらいなら、地域のために使わせてほしいと、四季の会でお手入れをすることに。

広場の一部は、保育所の仮園舎として使われた時期もあったそうで、撤去後の土には石がゴロゴロ。石をひとつひとつ取り除きながら、土の改良を続け、芝とシロツメクサをタネから育てた原っぱと、畑、植物の苗を育てる場所といった今の形ができたことを教えてくださいました。原っぱは開放されているので、公園の延長としてみんなが自由に利用できるようになっています。

(原っぱのまわりにも花がいっぱい。中央奥が桜の苗床、左側のプランターの奥は花苗育成スペースや畑もある。)

畑は、子どもたちに野菜がなっているところを見せたいという思いで運営。スーパーでしか見たことのない野菜が実際に育っている姿をみて喜んでもらえることが嬉しいと話してくださいました。

いろいろ試した結果、最近はミニトマトやゴーヤ、ダイコン、バジルなどを育てているそうです。夏には、公園に遊びに来る子どもたちにミニトマトを振る舞ったり、11月の町会の餅つきの時には、この畑で採れたダイコンでからみ餅をつくるのが、恒例になっているんだとか。

(菜の花が咲き誇る畑、この翌日には畑の土を耕して夏に向けた苗植え準備が行われます)

地域の多世代がつながり交流する公園

作業のあとは、メンバー皆さんでおつかれさまの交流タイム。お茶とお菓子が用意され、椅子をまるく並べて、楽しくおしゃべり。作業をしたあと、お茶とお菓子で歓談するのは、染井よしの町会の恒例だそうです。

(お茶の準備をしている間も、おしゃべりに花が咲いています)

「人が温かいんですよ。来ると温かく受け入れてくれる土壌があって、マンション住まいですが、地域のいろいろな世代のつながりができました。」と笑顔で話してくださったのは、小学生のお子さんをもつ杉田さんです。夕方公園で遊んでいたお子さんが田原さんたちにミニトマトやブラックベリーをもらってきたのがきっかけで、四季の会を知り、活動に参加するようになったとのこと。

「こんなにステキなお花がある中でおしゃべりしながら雑草抜きができるのは楽しいです」という小林さんも、もうすぐ3歳になるお子さんをお持ちの奥田さんも、来れる時にご自身のペースで参加していると話してくださいました。皆さん家族ぐるみで楽しく関わっているようです。

「収穫が楽しいですね。ブラックベリーやトマト、シソ、ミントにハーブ、お土産があるのは楽しいです。」と話してくださった植物好きの秋山さんは、ご主人も桜の木の消毒などに参加されているとのこと。マンションのベランダで育てきれなくなったという植物が、四季の会の花壇で元気に育っていました。

四季の会がつくられた時の町会長で、桜の里公園やソメイヨシノ桜の苗床が整備される際にも活躍されたという顧問の関根さんは、ブラタモリやおはよう日本など染井の町を紹介するテレビに何度も出演されている地元の有名人。明るい人柄でメンバーの皆さんの笑いを誘います。

「月2回の作業の8割は草抜きだから、少しくらいは楽しみがないとね」と、皆さんのお土産用にスイセンの切り花をたくさん用意する優しい田原さん。

染井の地に住み、江戸一の植木職人と言われた伊藤伊兵衛にちなんで、「この町を緑と花があふれる町にしたいと夢を持って日々励む田原さんは、現代の伊藤伊兵衛ですよ。」と誇らしげに話す坂田さん。

(ちょうど見頃を迎えたスイセンを今日のお土産用にカットする田原さんと石田さん)

今後は、できることなら他の団体と、植物の交換や、技術の交換や交流もしてみたいとおっしゃっていた四季の会の皆さん。いろいろな植物とともに、いろいろな夢もあふれる染井よしの桜の里公園でした。

(賑わう園内には、かまどスツールや井戸など防災機能も充実)
(咲き始めは緑色でだんだんピンク色になっていくという「鬱金桜」が見頃でした)

【基本情報】

団体名染井よしの町会 環境部 四季の会
公園名染井よしの桜の里公園 (東京都豊島区)
面積2,705 m2
基本的な活動日毎月2回 第2・4土曜日 9:00-11:00
いつもの活動参加人数10名くらい
会の会員数20名
活動内容ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、利用者へのマナー喚起、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、子ども向けイベント、高齢者など地域の声かけ
設立時期2014年
参加者イメージ町会の有志メンバー、シニア世代、子育て世代
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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